還付金詐欺の手口・見分け方・予防法を解説|逮捕された場合の対策も分かる
還付金詐欺は被害者の金銭欲を刺激することでお金をだまし取る悪質な詐欺で、被害額も大きいため気をつけたい特殊詐欺です。
そこで今回は還付金詐欺の手口や見分け方、予防法について解説します。
還付金詐欺がどうやって相手をだますのか、手順を追いながら確認できます。
だまされないために何に気をつければいいのか、どうすれば被害を未然に防げるのかが分かります。
さらに還付金詐欺で逮捕された場合の対処法についても触れます。
処罰を可能な限り軽くするためのポイントを確認してください。
それでは還付金詐欺の特徴から見ていきましょう。
還付金等詐欺とは?
還付金詐欺とは市町村役場や税務署、電力会社といった知名度が高く信頼できる団体の名をかたり、還付金を受け取れると相手をだまし、お金を詐取する詐欺のことです。
特徴はATMを悪用するところで、ATMを使い慣れていない高齢者などにATMを使って振込手続きをさせるため、被害者は振込を加害者からの入金だと勘違いします。
大金を受け取れるという思い込みが相手への警戒心を薄れさせ、詐欺にだまされやすい状況を作り出すことも還付金詐欺が防ぎにくい原因のひとつです。
警察や各金融機関が「ATMで還付金は詐欺!」というフレーズで注意喚起をするキャンペーンを行っているため、被害は減ってきていますが、ATM以外でお金を受け取る手口も増えており警戒が欠かせません。
還付金詐欺の流れ|どのようにだますのか手口を解説
還付金詐欺がどのような手口で行われるのかを把握するために、犯行の流れを確認しましょう。
還付金詐欺は3つのステップで行われることが多いです。
それぞれのステップで行われることを確認すれば、還付金詐欺に気づきやすくなります。
還付金詐欺は市町村役場の職員などの信頼性の高い団体や機関の関係者を名乗る男から電話がかかってくるところから始まります。
市町村役場の職員をかたる場合は「(本名)様には●●年度分の医療費に過払いがあり、○○円の還付金があります。」などと言って、還付金を受け取る金融機関を聞いてきます。
この段階では被害者に接触するだけで、振込やその他の手続きに関して詳しい話はしません。
市町村役場からの電話らしく振舞い、相手を信用させようとします。
被害者から還付金を受け取る金融機関を聞き出した後は、その金融機関の還付金担当に電話をさせると伝えて市町村役場をかたる男性は電話を切ります。
しばらくすると先ほど伝えられた金融機関の職員を名乗る男から電話が来ます。
還付金の手続きの準備が出来ていることと、キャッシュカードを持ってATMに行くこと、そしてATMに着いた時に連絡する電話番号を伝えると男は電話を切ります。
先ほどの男もそうですが、一方的に要件を伝えて電話を切るのが特徴的です。
疑われるのを嫌うので余計な会話は一切しません。
ATMの前に来て、先ほどの連絡先に電話すると金融機関を名乗る男がATMを操作する手順を指示してきます。
最初はキャッシュカードをATMに挿入し、暗証番号を入力するよう言ってきます。
するとATMの画面には操作内容を決めるメニューが表示されますが、男はここで「振込」を選ばせます。
振り込みは自分の口座から他の口座に送金する手続きです。
この手続きで自分の口座に入金されることは無いため、ATMの操作に詳しい方なら、ここで詐欺に気づくでしょう。
振込を選択すると振込先の銀行口座を入力する画面が表示されます。
男はここで還付金を受ける口座を登録するので、これから伝える口座情報を入力するよう指示します。
もちろんこれは加害者の口座情報で、振込先をATMに入力しているだけです。
振込先の情報を入力すると振込額を入力する画面になりますが、男は問い合わせ番号だと嘘を付き数字を入力させます。
以上で加害者の口座にお金が振り込まれ、還付金詐欺は完了します。
注意したい新しいタイプの還付金詐欺
還付金詐欺はこれまでATMを使うものが多くを占めていましたが、最近ではAMT以外の送金方法を利用するものも増えてきました。
より乱暴な手口を使ったものもあるため、注意したい新しいタイプの還付金詐欺を解説します。
新しい手口を確認して、様々な還付金詐欺に対応できるようにしましょう。
これから注意したい還付金詐欺はネットバンキングを利用したものです。
還付金詐欺は被害者にお金を受け取れると誤解させて、誤ったATM手続きをさせる必要があったためATMは外せない要素でしたが、ネットバンキングで代用できることに詐欺グループが気づいてからは、より手軽なネットバンキングが使われることが増えました。
ネットバンキングを使った還付金詐欺の特徴は従来のものとは大きく手口が異なります。
被害者に還付金があると伝えるところから始まるのは同じですが、その後は銀行口座の暗証番号を聞くだけです。
その後、加害者はその番号を使い被害者名義のネットバンキングを作成し、それを経由して被害者の口座からお金を引き出します。
アプリを使った還付金詐欺とはATMの代わりにスマートホンアプリを使ったものです。
若い世代は還付金が受け取れると言われてもATMまで行って操作するのを嫌がる方が少なくありません。
そこで若い世代をだますためにアプリを使った還付金詐欺が生み出されました。
被害者は自分が利用している銀行が提供しているアプリをインストールするよう指示され、入金処理と勘違いさせられた状態で振込手続きをアプリ上で行います。
アプリを操作している間、加害者から電話で指示されるのは通常の還付金詐欺と同じです。
送金方法を原始的なやり方で行う還付金詐欺も問題になっています。
コインロッカーを使った還付金詐欺は中でも単純な手口を使うため高齢者は要注意です。
医療費の還付金が受けられると相手をだまし、キャッシュカードを街のコインロッカーに置くよう指示し、その後、そのキャッシュカードと詐取した暗証番号で現金を引き出します。
ATMやパソコンを操作できない相手からも現金をだまし取れるため、逮捕されるリスクが高いものの今も犯行は後を絶ちません。
2023年以降、年金の還付金を受けられると相手をだます還付金詐欺が増えており、国民年金を納めている世代は注意が必要です。
年金は重複して支払った保険料を払い戻せる制度があるため、そのことを知っていると還付金があると伝えられた際に「自分にも過払い分があったのか」と誤解する危険性があります。
制度の認知度を利用した悪質な手口と言えるでしょう。
指示役が電話で被害者にATMを操作させる手口は、これまでの還付金詐欺と同様です。
払い過ぎた年金を受け取れると勘違いし、加害者の口座に自身のお金を振り込みます。
還付金詐欺の見分け方|どうすれば見破れるか
還付金詐欺は手口を知っていれば被害に遭いそうになっても途中で気づける場合があります。
しかし、年金の払い戻しなど実際にある制度を巧妙に利用されると見分けが難しいです。
疑わしい電話やメールを受け取った際、還付金詐欺かどうか判断できるように還付金詐欺の見分け方をお伝えしましょう。
還付金詐欺か判別するためには、まず最初に電話やメールをしてきた相手が誰か確認しましょう。
還付金詐欺では市町村役場や税務署、金融機関から電話がかかってくることが多いです。
知名度と信頼性が高い機関が電話やメールで還付金のことを知らせてきたら詐欺で間違いありません。
還付金の知らせを電話ですることは無いと各公共団体は明言しています。
簡単に還付金詐欺を見分けられるので、怪しいと思ったら誰が通知してきたか再確認しましょう。
電話番号を確認することで還付金詐欺だと分かることもあります。
詐欺行為をする者は自分に関する情報を可能な限り隠そうとします。
電話番号もそのひとつで、電話番号で個人を特定されないように、また電話番号で自分が公共団体の者ではないことがバレないように非通知で電話をしてきます。
市町村役場やその他の公共団体に所属する者が仕事で個人に電話をする際に、非通知でかけてくることは絶対にありません。
電話のディスプレイに非通知と表示されたら詐欺かもしれないと疑いましょう。
還付金詐欺では相手をだますために電話で最初に接触する役と、ATMで指示を出す役を別の人間が行います。
そのためATMに行くように指示した後は、2人目の金融機関をかたる者に電話で連絡するよう指示するのですが、この連絡先の電話番号に03や0120で始まる番号を指定してきます。
03の市外局番で始まる電話番号は東京都のものです。
東京都以外の市町村役場が03で始まる電話番号を使うことはありません。
同様に0120で始まる電話番号も利用しません。
折り返しの電話番号がこれらの市外局番で始まる場合は詐欺だと判断してください。
還付金の種類で詐欺だと判断できる場合もあります。
還付金詐欺では税金や医療費、住宅ローンの払い戻しを知らせるものが多いですが、これらは電話やメールで還付金の通知をすることはありません。
通知してきたのがどんなに信頼できる団体の職員であっても、税金や医療費の還付金について話をした時点で詐欺確定です。
正式な電話番号を調べて公共団体に確認の電話をするまでもありません。
どんなに納得できる説明をされても全て嘘なので絶対に信用しないでください。
メールでの詐欺は多く存在します。ビジネスメール詐欺もその一つです。
⇒ビジネスメール詐欺とは?詐欺の手口や実際の事例、対策や相談先などを解説
還付金詐欺の予防方法
還付金詐欺は出し子や受け子など何人もの人間を使って行うため、被害金を受け取った主犯格の加害者を特定するのが難しい詐欺です。
そのため、いかに還付金詐欺を未然に防ぐかが被害に遭わないうえで重要になります。
- 特殊詐欺防止機能のある電話を利用する
- 固定電話を常に留守番電話にしておく
- ATMで引き出せる金額を10万円程度に制限する
- 還付金の話が出たら電話を切って警察に相談する
- 銀行の暗唱番号を誰にも教えない
- 窓口を使って振り込む
- 市町村役場や公共団体に問い合わせる
これから誰にでもできる予防方法を解説しましょう。
還付金詐欺かどうか判別する自信が無い場合は、特殊詐欺防止機能の付いた電話機の設置を検討してください。
特殊詐欺防止機能の内容は電話機によって多少異なる場合がありますが、代表的なものはナンバーディスプレイです。
かけてきた相手の電話番号を市外局番込みで表示してくれる機能で、非通知でかけてきた相手に対しては非通知と表示します。
前述したとおり、還付金詐欺は非通知を頻繁に利用するため、怪しいと感じたらナンバーディスプレイの表示を確認できるでしょう。
通話を自動的に録音する機能も役立ちます。
還付金詐欺があったことを証明したり、おかしな点があれば後で会話の内容を確認できます。
他には電話に出る際に詐欺に注意してくださいとアナウンスしてくれる機能が備わっているタイプもあります。
いずれも還付金詐欺を未然に防ぐのに活躍してくれるでしょう。
還付金詐欺をはじめとする特殊詐欺は電話を被害者との接点にすることが多いため、電話を全て留守番電話にすることで還付金詐欺を含む多くの詐欺を避けられます。
常に留守番電話に設定しておき、留守番電話が受けた後、相手の話の内容を確認してから電話に出るようにすれば特殊詐欺との接触機会を劇的に下げられるでしょう。
証拠を残すことになるため、加害者が留守番電話を嫌がることも、この手法を利用する理由のひとつです。
還付金詐欺に有効な対策のひとつと言えます。
還付金詐欺は被害額が100万円を超えることが珍しくないため、ATMで1度に引き出せる金額を10万円程度に抑えておくと効果的な詐欺対策になります。
とくに消費が少なくクレジットカードを使わない高齢の両親に詐欺対策をする場合に向いています。
窓口で払い戻しをお願いすれば制限した金額以上に引き出せる場合もありますが、その場合、金額が大きいと窓口担当の職員が目的を聞いてくれるので詐欺だと発覚しやすいです。
電話で還付金の話をされたら詐欺の可能性が高いので、すぐに電話を切って警察に相談しましょう。
警察には専用の電話相談窓口があり、平日であれば8:30~5:15分まで相談を受け付けています。
詐欺の電話は昼間自宅に1人でいる人を狙うため、警察の電話相談窓口に相談しやすいでしょう。
電話の切り方は乱暴でかまいません。
相手の大事なお金を平気でだまし取る犯罪者に対する礼節は不要です。
最近は銀行の暗証番号を被害者から聞き出す巧妙な還付金詐欺の被害も目立っています。
相手が本当に金融機関の職員なら自社のデータベースを確認すれば分かる情報であるにもかかわらず、利用者から聞き出そうとするのは詐欺だからです。
暗証番号を聞かれたら詐欺だと判断して、絶対に教えないようにしましょう。
教えないと自宅に押しかけると脅してくるケースもあります。
その場合はすぐに電話を切って警察に通報してください。
間違っても自宅にやって来た詐欺グループのメンバーにキャッシュカードや通帳を渡してはいけません。
ATMを利用せずに窓口で送金手続きをするように習慣づければ詐欺予防につながります。
窓口で手続きをする場合、送金金額が100万円以上の高額だと、お金を何に利用するのか職員に聞かれます。
送金の目的が詐欺被害者のものと似ている場合、振り込みや払い戻しの手続きを取りやめるよう助言してくれるため、被害に遭いにくくなるでしょう。
また、窓口で手続きをしたいと電話してきた相手に伝えた時に、猛反発されるようなら詐欺と判断できます。
詐欺を見破るのにも使えるので、ぜひ窓口を活用しましょう。
相手が市町村役場の職員だと名乗った場合は、その公共団体に連絡をして相手の言ってることが本当か確認しましょう。
相手のフルネームを聞いておいて、金融機関の担当に電話をさせると言って電話を切ったタイミングで市町村役場に電話して、先ほどの名乗った相手が所属しているか確認しましょう。
その際に還付金の話も聞いてください。
仮に同じ名前の職員がいても還付金の話を聞けばすぐに偽物と話していたことが分かります。
還付金詐欺の相談先
還付金詐欺について聞きたいことがある場合や、かかってきた電話が還付金詐欺か否か確かめたい場合に相談できる機関を紹介します。
いずれも無料で利用でき、平日の連絡しやすい時間帯に受け付けているので気軽に利用できます。
消費者生活センターは商品やサービスの契約に関するトラブルについて相談できる行政機関のことです。
電話相談だけでなく対面による相談にも対応しているので、お好みの方法で相談できます。
本来は商業契約に関連した困りごとについてアドバイスしてくれる機関ですが、詐欺に関する相談にも応じてくれるので利用しましょう。
対面で相談する場合は電話の録音記録を持っていくことをおすすめします。
より具体的な助言をもらえるでしょう。
警察は全国各地に特殊詐欺被害の相談窓口を設置しています。
還付金詐欺は被害額が大きく特殊詐欺の中でも注意されているため、相談すれば真剣に対応してくれるでしょう。
「9110」に電話すれば各都道府県の相談窓口につながります。
各地域ごとに還付金詐欺の手口は微妙に異なる場合があるため、地元を管轄する県警に対処してもらうのは頼りになります。
どういった点に警戒すべきか詳しく教えてくれるので、今後の詐欺対策にも役立つでしょう。
還付金詐欺で逮捕されるとどうなるのか
還付金詐欺で逮捕されると、たとえ受け子や出し子といった末端の役割であっても逮捕から数日で勾留されます。
勾留は最大で23日間続き、その間は自由な行動を制限されます。
寝泊まりするのは警察署内の留置場となり、不慣れな生活が続くでしょう。
逮捕直後は家族との面会すら許されず、会えるのは勾留が決まった後で、場合によっては親族に体を拘束された状態で会うことになるでしょう。
詐欺によっては勾留とならず釈放されることもありますが、社会問題となっている還付金詐欺は重大事件であるため高確率で勾留となります。
勾留が決定した後は検察による捜査が行われ、起訴するか否かが決まります。
特殊詐欺で逮捕された場合、起訴される確率は50%以上です。
捜査の結果、起訴されることが決まった場合は刑事裁判が行われます。
還付金詐欺の場合、執行猶予がつく可能性は低く、初犯でも実刑判決が下る場合も少なくありません。
有罪判決とならなければ、その後に釈放されますが、起訴された場合に有罪となる確率は90%以上であるため、釈放の望みは薄いです。
還付金詐欺で逮捕された場合の対処法
還付金詐欺で逮捕されると、検察の捜査を受けることになります。
そこでは余罪に関する捜査も行われ、還付金詐欺以外の犯罪に関わっていないか調べられます。
余罪が見つかると罪は重くなるので、いかに余罪の範囲を限定するかが重要です。
不用意に余罪の範囲を広げないためにできることは黙秘です。
黙秘すれば不用意な発言をする危険性が減るため、余罪が生まれるリスクを下げられます。
余罪が判明するとそれだけ調査が長引くので、黙秘権を効果的に利用することで勾留期間を短くできる場合もあるでしょう。
また、黙秘すれば起訴に利用できる証拠を検察に提供せずに済む場合もあります。
起訴を完全に防ぐ効果は期待できませんが、余罪を増やさないことで重罰化を避けられる可能性はあるでしょう。
黙秘権を行使すべきでないケース
黙秘権の行使は全てのケースで有効とは限りません。
状況によっては黙秘することで勾留期間を伸ばしてしまう場合もあります。
たとえば起訴に利用可能な客観的証拠や状況証拠を検察が用意できている場合、余罪を含めて起訴できる条件が揃っているため、いたずらに黙秘しても何の意味もありません。
捜査にかかる時間を伸ばすだけです。
黙秘を続けて印象を悪くするよりも自白をしたほうが、勾留に伴う負担を軽減できる場合もあるでしょう。
黙秘するか否か個人で判断するのは難しいです。
還付金詐欺の弁護経験が豊富な弁護士に相談して、今後の対応を練り直しましょう。
まとめ:電話やメールで還付金の通知が来ることは無い
還付金詐欺の被害を防ぐには電話やメールで還付金の通知が来ないことを心に留めておくことが大切です。
大金が受け取れると思ってしまうと欲のために警戒心が薄れて相手の指示に従いやすくなります。
還付金は払い過ぎた税金の払い戻しを指すことが一般的で、それ以外で使われることは多くありません。
突然、還付金を受けられると伝えられたら詐欺だと判断すべきです。
まさに「うまい話には裏がある」事例と言えるでしょう。
効果的な対策はATMで1度に引き出せる金額を制限することです。
限度額を引き上げるには手続きが必要で、完了するまでに1週間以上かかるため、大金をだまし取られる危険性は無くなります。
キャッシュカードと暗唱番号を詐取された場合にも一定の効果が期待できるでしょう。
被害額が大きく話題になることが多い還付金詐欺ですが、基礎的な予防法でも十分に対処できるため、これを機会にぜひ対策してみてください。