キャッシュカード詐欺盗の手口・事例・予防法|逮捕された場合に刑罰を軽くする方法も解説
キャッシュカード詐欺盗は特殊詐欺の中では知名度が低いですが、他のものには無い危険な特徴があるため、手口などの基本的なことを知らないと危険です。
そこで今回はキャッシュカード詐欺盗の詳しい手口や対処の仕方、予防法について解説します。
2020年以降に起きた事例を交えながら解説するので、具体的な被害額や加害者についても確認できます。
さらにキャッシュカード詐欺盗で逮捕された場合に刑罰を軽くする方法についても取り上げます。
逮捕された時のリスクを確認して過ちを犯さないようにしましょう。
キャッシュカード詐欺盗とは何か?|特徴と手口を解説
キャッシュカード詐欺盗(さぎとう)とは警察や銀行職員をかたり、キャッシュカードを安全に利用するための処理をすると言って自宅を訪れ、キャッシュカードをだまし取る犯罪のことです。
特徴は手品のように本物と偽物のキャッシュカードをすり替えるところで、すり替えられたと被害者が気づかないうちに口座から現金を引き出します。
詐欺の大まかな流れは次のとおりです。
- 警察や銀行職員をかたり、キャッシュカードの不正利用があったことを伝える
- カードに処理が必要だと嘘をつき、警察のふりをした者が自宅を訪れる
- 被害者にキャッシュカードと暗証番号を書いた紙を封筒に入れさせ封をする
- 被害者に印鑑を持ってくるように伝え、その場を離れているうちに封筒を偽物とすり替える
- 奪ったキャッシュカードと暗証番号で現金を引き出す
細かいところが異なることもありますが、キャッシュカードを封筒などに入れさせ偽の封筒とすり替えるところと、「封筒は明日までそのまま保管してください」などと言って中身を確認させないところは共通しています。
言われるままに封筒を開けずそのままにするため詐欺の発覚が遅れやすく、その間に加害者は口座からお金を奪い逃走します。
二次被害にも警戒が必要
キャッシュカード詐欺盗にだまされると、次々と他の詐欺被害に遭う場合があります。
被害に遭いやすくなる確かな理由は分かっていませんが、犯罪グループの間でやり取りされている標的の名簿に記載されるからとも、主犯格の者が他の詐欺も行っており、一度だました相手のリストを保管しているからだとも言われています。
だまされた後に再度詐欺に遭うことが多いため、警察や弁護士、市町村役場を名乗る者から電話が来た場合は相手が本物か確認することが大切です。
キャッシュカード詐欺盗の事例
キャッシュカード詐欺盗の基本的な手口を押さえたところで、次は事例を見ていきましょう。
実際に起きたキャッシュカード詐欺盗の詳細を知ることで、具体的な手口や狙われる人のタイプ、どんな人物が詐欺を行っているのかが分かります。
2023年12月に岐阜県で90代の男性が警察官をかたる人物から、口座が不正利用されたことが確認できたと伝えられます。
男性は詐欺に巻き込まれたかと不安になりますが、警察が来て口座を停止する手続きをしてくれるというので静かに待つことにします。
しばらくすると自宅に警察官を自称する男が1人訪れ、キャッシュカードを封筒に入れるように言います。
封筒は男が用意しており、男性は言われるままに保管しておいたキャッシュカード2枚を渡された封筒に入れました。
封筒に封をすると男から押印をするために印鑑を持ってくるよう言われ、封筒を置いたままその場を離れます。押印を済ませると男はその場を立ち去りました。
その後、男性が封筒を開けるとそこにキャッシュカードは無く、銀行に確認すると口座から200万円が引き落とされた履歴がありました。
2023年11月に仙台市泉区で暮らしていた90代の女性に、泉警察署の警察官を名乗る男から電話がかかってきます。男は女性に銀行で50万円を引き落としかたずねます。
引き落とした覚えが無いと女性が答えると、男はキャッシュカードを不正利用された可能性があるため、カードを使えないようにする手続きをする必要があると告げます。
その後、銀行職員をかたる男から電話がきてキャッシュカードを新しく作り変えるので暗証番号を教えて欲しいと言われ、女性はその言葉を信じて暗唱番号を教えてしまいます。
するとその直後に自宅に銀行の関係者だと名乗る者がやって来て、キャッシュカードを女性から受け取り立ち去ります。
翌日、女性が銀行口座を確認すると200万円が引き落とされていました。
2023年、警視庁城東署は有名な特撮作品に出演していた31歳の俳優を詐欺容疑で逮捕しました。
逮捕された男は2006年に芸能界デビューをし、ドラマや舞台にも出演していました。
男は知り合いと共謀して東京都内に住む男性からキャッシュカードをだまし取ったとされています。
男性の自宅を訪れた際、男は警察官を装っていたことが防犯カメラの映像から分かっています。
男が逮捕されて間もなく所属していた事務所は男との契約を解除し、被害者に謝意を示しました。
一般男性が知人と共謀してキャッシュカード詐欺盗を起こした事例です。
2022年、東京都に住む30歳の男が80代の女性からキャッシュカードをだまし取った容疑で逮捕されました。
男は複数人の知人と共謀して山梨県笛吹市に住む女性に対してキャッシュカードを更新する必要があると嘘を付き、キャッシュカードを用意して自宅で待つよう金融機関の職員を装い指示します。
その後、仲間と一緒に女性の自宅を訪れ、封筒にキャッシュカードを入れさせ、それをトランプの入った封筒とすり替えて女性宅を離れます。
そして市内のコンビニエンスストアに設置してあるATMで現金29万円ほどを引き出したとされています。
この事件で男は出し子や受け子といった複数の役割を担っており、警察はその手慣れた手口から余罪がないか調査をしたと伝えられています。
キャッシュカード詐欺盗の対処法|電話を受けた後にすべきこと
いきなりキャッシュカードの不正利用があったと告げられたり、場合によっては詐欺グループとの関連性を疑われるため、冷静さを失ってしまうことがありますが、これから取り上げる対処法を落ち着いて行って詐欺かどうか確認しましょう。
まず最初にすべきことは相手の名前をたずねることです。銀行に預けたお金が奪われてしまうかもしれないと思うと、警察官や銀行をかたる相手の言葉を安易に信用してしまうので、相手が本当に信用できるか確認しましょう。
相手に名前を聞いたら折り返し電話をすると言って電話を切ってください。そして地元の警察署に電話して、訪れた男の名前を伝えて在籍するか確認しましょう。
自然と事情を話す流れになるので、詐欺であればすぐに分かります。
キャッシュカードが不正利用されていると言われたら、普段利用している金融機関に電話して本当に不正利用があったのか確認しましょう。
不正利用だと分からなくても、引き落とし履歴を確認してもらえば引き落としがいつあったのか、いくら引き落としたのか分かります。
覚えの無い引き落としがあるか否か簡単に確認できます。
銀行の職員を名乗る者からの電話であれば、そういった連絡をしたのか銀行に確認することも効果的です。
キャッシュカードはどんな時でも肌身離さず持っておきましょう。封筒に入れた場合は、その封筒を手から離さないようにしてください。相手が渡すよう言っても応じてはいけません。もし、相手が渡すよう強要するようなら詐欺です。
もし本当にキャッシュカードが不正利用されていることが分かっているなら銀行側でカードの停止手続きが可能なので、職員が自宅に来て手続きをする必要はありません。
キャッシュカードを常に確保して、相手がどう出るか反応を確かめましょう。
加害者が自宅にやって来た際、暗証番号を紙に書いて封筒に入れるよう指示してきますが、絶対に従わないでください。
封筒をすり替えられてキャッシュカードごと盗まれるため、誰でもATMで被害者の口座から現金を引き出せるようになります。
暗証番号を記載した紙を入れないと不正利用を防げないと言われたら、金融機関の窓口で伝えると主張しましょう。
キャッシュカードに関連した手続きは金融機関でしかできませんから当然のことです。
金融機関に行くと言って相手が難色を示すようなら詐欺グループの一員と判断できます。
それ以上は指示に従う必要はありません。
キャッシュカード詐欺盗にだまされた後にすること
キャッシュカード詐欺盗にだまされてしまった場合は迅速な行動が大切です。
他の特殊詐欺に比べて発覚が遅れることが多いため、詐欺かもしれないと思った時点で、これから紹介する対処法を行いましょう。
詐欺に気づいてから真っ先にすべきことはキャッシュカードを作った銀行にカードの盗難被害を連絡することです。
詐欺の発生から数時間以上経過している場合もあり、口座から現金が引き落とされている可能性が高いですが、何かトラブルがあって引き落としが上手くいかなかいこともあるので、すぐ銀行に知らせてキャッシュカードの利用停止もしくは口座の支払停止を申請してください。
最近は銀行の専用アプリから簡単に手続きできる場合もあります。
アプリから申し込むと手続きにかかる手数料が安くなるので、可能であればアプリから申し込みましょう。
銀行への連絡が済んだら警察に詐欺に遭ったことを知らせてください。
詐欺に遭っても警察は動いてくれないと言われることもありますが、キャッシュカード詐欺盗は詐欺罪の構成要件を全て満たしますし、社会問題となっているため警察も耳を傾けてくれます。
キャッシュカード詐欺盗なのか確信を持てない場合は相談用の電話窓口(9110)で話を聞いてもらいしましょう。
被害届を出すべきか教えてくれます。
これから気をつけるべきことについても助言をもらえます。
キャッシュカード詐欺盗の予防法
キャッシュカード詐欺盗の加害者はだまし取ったお金をすぐに使ってしまうことも珍しくありません。
被害金が戻ってこないことが珍しくないため、詐欺に遭わないように対策を練ることが大切です。
これから効果的が期待できる予防法を解説するので参考にしてください。
キャッシュカード詐欺盗を防ぐには知らない電場を全てブロックすることが有効です。
加害者からの電話に出るところから詐欺が始まるため、電話でのやり取りを回避できればパニックに陥りやすい人でも問題なく対策できます。
ブロックのやり方は電話の機能を利用する方法がおすすめです。登録した電話番号以外は呼び出し音が鳴らないように設定できるものが販売されています。
電話に詳しくない方でも電気店のスタッフやお子さんに一度設定してもらえば、後は難しい操作をすることなく怪しい電話を防いでくれます。
キャッシュカードをだまし取られることが問題の根っこにあるため、キャッシュカードや通帳をお子さんなど信頼できる人に管理してもらいましょう。
キャッシュカードを受け取れないと分かれば、掛け子は電話を切って次の標的を探します。
強引に受け子が自宅にやって来ても、どこにカードがあるか分からなければ奪われる心配はありません。
スマートロックボックスを活用するのもおすすめです。
息子さんがスマホで操作するとロックが外れて中の物を取り出せるボックスにキャッシュカードを入れておきましょう。
開けるために息子さんに電話することになるため詐欺が発覚します。
一人暮らしでキャッシュカードを預けられる相手がいない場合、キャッシュカードを廃棄するのも選択肢のひとつです。
キャッシュカードがなければ詐欺グループのプランが狂い、犯行をあきらめざるをえません。
問題はキャッシュカード無しでATMから引き出せる金融機関は少ないことです。ゆうちょなど対応しているところがいくつかあるので相談してみましょう。
ゆうちょであればアプリを使って預金を引き出せるので、キャッシュカードは不要になります。
キャッシュカード詐欺盗で逮捕されたらどうなるのか?
ここからはキャッシュカード詐欺盗で逮捕された場合について解説していきます。
前述した事例でも取り上げましたが、一般の方がキャッシュカード詐欺盗で逮捕されるケースが以前よりも目立つようになっています。
「知人の誘いで小遣い稼ぎを仕様と思ったら、受け子をさせられていた」といったことが起こる可能性が否定できません。
逮捕された後のことについても確認しておきましょう。
キャッシュカード詐欺盗を行って逮捕されると窃盗罪か詐欺罪の疑いで身柄を拘束されます。拘束される場所は警察の関連施設内にある留置場です。多くの場合、警察署に設置された留置場になるでしょう。
留置場に入れられたら行動の自由は制限されます。外に出ることができないだけでなく、家族に連絡をとることすらできません。私物は没収され、スマートフォンに触れることもできないでしょう。
この状態は最大48時間続きます。この間、警察は犯行の事実について調査を行います。調査の一環として取り調べを受けることになるでしょう。この調査の後、検察官へ送致されます。
検察に捜査が引き継がれると、検察官との取り調べが始まります。
検察官はこの他に様々な捜査を行い、24時間以内に勾留するか釈放するかを決めます。
検察官が勾留を裁判所に請求して裁判所がこれを認めると勾留が決定します。
勾留とは期間の定められた拘束のことで、最初は最大10日間の拘束ですが、検察官が請求すると最大20日間まで期間を伸ばすことが可能です。
勾留中はそれまでと同じく自由を制限されますが、家族との面会は認められます。勾留中は警察署内の留置場で過ごします。
この間、検察官は警察を指揮しながら捜査を行い、勾留中の者を起訴できるかどうか判断します。
起訴するには犯罪要件を満たすことを証明する証拠が必要になり、これが見つかれば起訴される可能性が高くなるでしょう。
逆に見つからなければ釈放されます。
調査が短期間で終了すれば10日が経過するのを待たずに結果が分かりますが、キャッシュカード詐欺盗はグループで行われることが多いため調査に時間を要します。多くの場合、勾留期間の延長が申請されるでしょう。
起訴されて1ヶ月ほどで最初の出廷を求められます。公判と呼ばれるもので、約1ヶ月ごとに1度開かれて事実関係の確認が行われます。裁判官は公判をとおして得られた証言や証拠をもとに判決を下します。
起訴された場合、通常は3回ほど公判をすれば判決が出るため、裁判にかかる期間は3ヶ月ほどですが、キャッシュカード詐欺のような複雑な事件では公判を繰り返すことがあり、半年近くかかることもあります。
とくに余罪が確認されたケースでは長期化しやすいです。
キャッシュカード詐欺罪の刑罰を軽くする方法
キャッシュカード詐欺罪は厳罰が下されるケースも少なくありません。詐欺だと知らなかった場合など不本意なかたちで逮捕されたケースでは、なんとかして刑罰を軽くしたいところです。
減刑の可能性は高くありませんが、それでもできることがあります。
刑罰を軽くするために何をすべきか解説しましょう。
不起訴処分にできないか検討する
特殊詐欺で捕まり起訴されると厳しい判決が出ることが少なくありません。初犯でも実刑判決が下ることもあるほどです。そのため起訴されないことを目指しましょう。
刑事裁判を提起する必要が無いと判断されることを不起訴処分と呼びます。刑事裁判が行われなければ刑罰を受けることはありません。
不起訴処分には複数の種類がありますが、詐欺盗で起訴されそうなケースでは起訴猶予となることを目標とするのが賢明です。
詐欺罪の成立要件を満たす証拠が十分にあっても、個別の事情を考慮して起訴されずに済みます。
起訴猶予になる条件は明確でありませんが、次のようなことが検察官の判断に影響するとされています。
- 被疑者が深く反省し、後悔している
- 釈放後、再犯を防止するための手立てが用意されている
- 被疑者の家族が再犯防止のために監督すると誓いを立てている
- 被害を受けた相手に謝罪の意を示し、被害回復のための賠償金や慰謝料を支払っている
これら全てを行い、不起訴処分が妥当だと判断してもらいましょう。家族の協力が欠かせないため、普段から良好な関係を維持してください。
不起訴処分を得るには謝罪や悔恨の意を示すだけでは足りません。被害者との示談交渉や、家族から協力を得るためのやり取りも欠かせません。とても勾留中の個人だけでできるものではないでしょう。
不起訴処分に必要な様々なやり取りを適切に行うために弁護士の力を借りることを検討してください。
弁護士は被害者の心情を配慮した謝罪文を送れますし、適切な額の慰謝料を提示してくれるので交渉が上手くいきやすいです。
刑事裁判となった場合は、意図的ではなかったことや、更生の可能性が十分に期待できることを判決に影響するかたちで主張してくれるでしょう。
まとめ:キャッシュカードの管理を任せることで効果的に詐欺を予防できる
キャッシュカード詐欺盗はオレオレ詐欺に比べると件数は少ないですが、発覚を遅らせることができるため犯罪グループに都合が良く、今後も被害が続くと予想されます。
加害者は様々な手口で被害者を脅かすためパニックになりやすいところが、この詐欺の怖いところです。高齢者は対策を知っていても被害に遭うと上手く対応できません。
効果的な対策はキャッシュカードを持たないことです。家族に管理を任せるか、カードを無くして代わりにアプリを使えばキャッシュカードを奪われなくなります。
キャッシュカード詐欺盗で逮捕された場合は不起訴処分を目指しましょう。
不起訴処分を得るには逮捕のリスクを認識した時点で弁護士に依頼することが大切です。逮捕直後からサポートしてくれ、執行猶予になる条件が満たされるよう動いてくれます。
特殊詐欺に関する弁護活動の実績がある先生にお願いしましょう。
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