SNSで急増中!仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺に騙されないためには?
SNSやマッチングアプリなどで出会った相手から仮想通貨を勧められ、多額のお金を騙し取られるケースが増えています。詐欺師は魅力的な外国人を装って近づいて来ることから、「国際ロマンス詐欺」と呼ばれています。
仮想通貨は手続きがオンライン上で完結してしまうため、詐欺だと気づきにくい特徴があります。さらに、詐欺師に恋心を抱いていると、「相手を信頼したい」という心理から泣き寝入りしてしまう被害者も少なくありません。
この記事では、近年急増する仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺について、仮想通貨が使われる理由や事例、騙されないためのポイントをわかりやすく解説します。
オンライン上で恋活している方は参考にしてみてください。
仮想通貨を利用した国際ロマンス詐欺が急増中
X(旧Twitter)やインスタグラムなどのSNS上で、相手に恋心を抱かせて仮想通貨の投資に誘い、多額の現金を騙しとる国際ロマンス詐欺が急増しています。詐欺件数、被害額ともに拡大傾向にあり、警察は注意喚起を呼びかけています。
警察庁によると、2023年における国際ロマンス詐欺全体の認知件数は1575件、被害額は総額約177億円に上りました。1件あたりの平均被害額は1千万円を超え、詐欺被害は深刻化しつつあります。
国際ロマンス詐欺の中でも、仮想通貨を用いて金銭を詐取するケースが多くなっています。被害者層は男女ともに40代〜60代がメインですが、20代から80代まで幅広く分布しています。
SNSやマッチングアプリを利用する際は、国際ロマンス詐欺に注意しつつ、見知らぬ人からの投資の誘いには乗らないようにしましょう。
かねてより国際ロマンス詐欺では、銀行口座への振り込みがよく使われてきました。銀行振込は、大多数の人にとって現金を送金する最も一般的な方法であるためです。
一方、銀行口座の開設や引き出しには本人確認が必要であり、詐欺師にとっては身元を特定されるリスクの高い方法でもありました。
そこで注目されているのが仮想通貨です。近年、ネットバンキングが普及してきたこともあり、ターゲットから金銭を詐取する手段として、仮想通貨が使われることが増えています。
ここでは、国際ロマンス詐欺で仮想通貨が使われる理由について解説します。
日本では2017年に仮想通貨ラッシュを迎えましたが、翌年の仮想通貨流出事件を機に相場は冷え込み、足元でも盛り上がりに欠ける状態が続いています。インド、中国、米国など各国と比べても、日本の仮想通貨保有者数は少ないとされています。
仮想通貨の市場は国際情勢を大きく反映しており、予測が難しいことから、特に中高年や女性から敬遠されがちです。そもそも仮想通貨のシステムに馴染みがない方も多いでしょう。
そこをつけ狙ってくるのが詐欺師です。ターゲットに知識がないのを良いことに、偽の仮想通貨サイトに誘導してきます。被害者は詐欺師を信頼してしまっているため、よく確かめもせず、お金を振り込んでしまうのです。
仮想通貨の取引を行うプラットフォームは「ブロックチェーン」というシステムを組み込んでおり、匿名性が高い特徴があります。このため、詐欺に気付いたとしても、詐欺師を特定することが非常に困難です。
従来のような口座振込を利用した国際ロマンス詐欺であれば、口座を凍結させて被害額を取り戻す措置が可能でした。しかし、仮想通貨ではそもそもデータを抽出することが難しく、詐欺被害の回復措置を取ることができません。
仮想通貨は社会情勢を反映して変動するため、うまく投資すれば稼ぎが膨らむ可能性があります。オンライン上で完結する取引のため、現金を持ち歩く必要がなく、いつでも換金ができます。
取引口座に寝かせたまま放っておいても、セキュリティが取引情報を守ってくれるため、都合の良いタイミングで引き出すことが可能です。
詐欺師にとってはメリットが多く、リスクが少ないシステムだと言えます。
仮想通貨を利用した詐欺師の手口
仮想通貨を利用した詐欺師の手口は、大まかに次のような流れになっています。
詐欺師はすぐに仮想通貨の投資を持ちかけてくる訳ではありません。SNSやマッチングアプリ上でやりとりを重ね、じっくりと信頼関係を築くことから始めます。
相手の信頼を勝ち取った上で、「二人の将来のために」「あなたに幸せになってほしい」などの理由をつけて仮想通貨に誘導してきます。最初は少額の投資に誘い、利益が出たところで、より多額の投資を要求するようになります。
詐欺師は儲けが出ているように見せかけてくるため、詐欺だと気付かないままに多額の投資をしてしまいます。口座から現金を引き出そうとして初めて、詐欺に気づくことが多いようです。
なお、口座引き出しの手数料や保証料と称して、さらに金銭を請求されることがあります。もちろん、手数料や保証料を支払っても利益を引き出すことはできません。
こうして十分な金銭を詐取した詐欺師は、被害者の前から姿を消します。
仮想通貨を利用した国際ロマンス詐欺の事例
ここでは、実際に仮想通貨を利用した国際ロマンス詐欺の事例をご紹介します。
被害額は500万円以下が多数を占めますが、中には1億円を超える高額被害の事例もあります。特に女性は被害額が高くなる傾向があるようです。
被害者 | 40代女性 |
被害額 | 総額1千万円以上 |
被害概要 | SNSで知り合った自称外国人の男性に仮想通貨の取引を誘われる。「毎晩抱きしめて寝ます」などの甘い言葉をささやかれ、3週間ほどで約1千万円を投資した。投資費用を捻出するために生命保険の解約までした。 |
被害者 | 不明 |
被害額 | 450万円 |
被害概要 | マッチングアプリで親しくなった異性から結婚をほのめかされ、「将来のために」と暗号資産を購入した。海外の暗号資産交換所に送金するよう言われ、送金するとチャート上では資産が増えているように見えた。すっかり信用して指示されるがままに売買を繰り返した。全財産300万円を投資すると、チャート上では2000万円以上になっていた。突然、「税金を支払わないと口座を凍結する」と案内が届き、150万円を送金したが、口座は凍結されたままで相手とも連絡が取れなくなった。 |
被害者 | 30代男性 |
被害額 | 20万円以上 |
被害概要 | 自称シンガポール人の女性とマッチングアプリで知り合い、暗号資産アプリで投資するよう誘われた。20万円取引し、利益を出金できた。その後も投資を重ね、国内の暗号資産交換業者に送金しようとしたところ、「マネーロンダリングの嫌疑がある」として保証金・所得税・手数料などを次々に請求された。合計約4000万円の請求のうち、一部を支払ったが出金できなかった。相手とは音信不通になり、アプリにも入れなくなった。 |
被害者 | 男性 |
被害額 | 約75万円 |
被害概要 | マッチングアプリで親しくなった女性から仮想通貨の取引に誘われた。海外の取引サイトで口座を開設したところ、女性から仮想通貨を預かって欲しいと頼まれた。口座から引き出すには約75万円を支払う必要があると言われて立て替えた。その後、取引サイトから72時間以内に返金するとの通知が届いたが、返金されなかった。 |
被害者 | 30代男性 |
被害額 | 100万円 |
被害概要 | アプリで知り合った相手とやりとりをする中で親しくなり、「大好きです」と言われて好意を持つようになった。相手から投資を強く勧められ、とある投資サイトに100万円分の仮想通貨を入金するよう指示された。複数回にわたり合計100万円を入金したところ、相手と連絡が取れなくなった。 |
被害者 | 30代女性 |
被害額 | 約550万円 |
被害概要 | マッチングアプリで自称韓国人経営者と出会い、次第に親しくなった。将来のために投資するよう説得され、断りきれず少額を投資した。利益が出て出金できたため、銀行や消費者金融から借り入れて投資を重ねた。約500万円を投資したところで、出金しようとしたら、総資産の15%にあたる180万円を保証金として支払うよう言われた。さらに50万円を借り入れたが足りず、マッチング相手に相談しようとしたところで連絡が途絶えた。 |
国際ロマンス詐欺の事例を詳しく解説しています。
⇒国際ロマンス詐欺の最新事例を解説!詐欺師の特徴を見抜くには?
仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺に騙されないためには?
仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺では、個人のスマホやパソコンで手続きが完結するため、周りの人の目に触れにくく、詐欺だとわかるのが遅れてしまう特徴があります。
気づいた時には多額の被害を受けていた…ということにならないよう、自分の身は自分で守る必要があります。
詐欺師はあの手この手を使って仮想通貨に投資するよう誘ってきます。最も大切なのは、「見知らぬ人の誘いに乗らない」ことです。
リアルタイムで誰かと繋がることができ、顔の見えない相手でも身近に感じられる時代になりました。しかし、やはり現実とインターネットは異なります。オンライン上ではどんな人物にもなりすませることを忘れないようにしましょう。
インターネット上で知り合った人物から仮想通貨に投資するよう誘われても、安易に誘いに乗ってはいけません。相手はターゲットの懐に入り込むプロです。
疑ってかかるくらいでちょうどよいでしょう。周りの人に相談してみるのも詐欺被害を防ぐのに有効です。
日本では、仮想通貨の取引を行う業者は、内閣総理大臣の登録を受けなければならないとされています。インターネットで知り合った相手から仮想通貨の投資を誘われた際は、登録を受けているかどうかを事前に確認する必要があります。
登録業者は金融庁のホームページ(https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html)からチェックできます。公式サイトやSNS上で、危険な類似サイトの注意喚起を行っている取引所もあります。登録されていない業者や海外サイト・アプリ経由での投資は避け、信頼できる取引所でのみ仮想通貨を扱うようにしましょう。
登録業者として金融庁ホームページに名前が乗っていたとしても、相手から案内されたサイト・アプリが偽物である可能性は捨てきれません。詐欺師がターゲットの信頼を得るため、実在する取引所によく似たサイトやアプリを構築していることも考えられます。
偽のサイトやアプリでの取引を防止するには、共有されたURLではなく、検索エンジンから公式サイトにアクセスします。公式サイトと案内されたURLが違っていれば、詐欺の可能性が高いと言えるでしょう。
取引を始める前に相談窓口に問い合わせるのも効果的な手です。取引所の公式サイトの相談窓口、もしくは、金融庁ホームページ記載の電話番号などから問い合わせることができます。
そのほか、「消費者ホットライン」や「越境消費者センター」などの公的な相談窓口でも仮想通貨の相談を受け付けています。「これって詐欺かも?」というようなカジュアルな相談ができるため、対応に迷ったら相談してみると良いでしょう。
仮想通貨の国際ロマンス詐欺に遭ったら?
すでに仮想通貨の国際ロマンス詐欺に遭ってしまった場合、早急な対処が必要です。
口座から引き出すには保証金や手数料が必要だと言われても、さらにお金を振り込んでしまわないようにしましょう。
まずは仮想通貨の取引を行った投資サイトに返金請求をしてみます。
実在するサイトやアプリを利用していた場合、取引の証拠を示すことで返金されるかもしれません。ただし、返金に至る可能性はかなり低いでしょう。
国際ロマンス詐欺を疑った時点で、証拠集めを始めてください。取引額や取引内容、送金履歴に加えて、詐欺師とのやりとりや相手の身元がわかる情報なども証拠になります。
詐欺師が音信不通になる前に、より多くの証拠を引き出しておくことをおすすめします。
証拠が揃ったら専門機関に相談します。詐欺師は行方をくらませるのに慣れているため、早急な対応が解決の鍵です。
相談窓口としては国が運営するもの、警察、弁護士などがあります。
仮想通貨を用いた国際ロマンス詐欺の被害者に対し、国は相談窓口を開いています。金融庁、消費者庁管轄の相談窓口に相談すれば、とるべき対応を教えてもらうことが可能です。
金融庁・金融サービス利用者相談室 | 電話:0570-016811 (IP電話からは03-5251-6811) |
消費者庁・消費者ホットライン | 電話:局番なしの188 |
各都道府県の県警本部にはサイバー犯罪相談窓口(https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/soudan.html)を設けています。仮想通貨を含むサイバー犯罪に特化しているため、状況に応じた対処法を紹介してくれます。
ただし、相談窓口はあくまで相談のみ。警察に動いてもらうには、被害届を提出する必要があります。詐欺被害の事実がわかる証拠を持って、最寄りの警察署に相談しましょう。
警察に動いてもらえたとしても、振り込んだお金は自動的に戻ってくる訳ではありません。被害回復を目指す場合、弁護士に依頼するのがスムーズです。
弁護士に相談することで、相手との示談交渉から法的措置まで、一括して任せることができます。
国際ロマンス詐欺を疑ったら周りに相談
インターネット上の出会いは慎重になるべきです。詐欺師は「恋活」に浮かれるあなたの心の隙を巧妙に突いてきます。相手を信頼してしまったが故に、1億円以上の高額な投資をしてしまうケースもあります。
お金が絡む勧誘には毅然とした態度で対応し、投資をする前に相談窓口に問い合わせるようにしましょう。