費用をかけず解決できる?交通事故の弁護士費用について徹底解説
交通事故問題に遭遇した際、あなたの強い味方になってくれるのが弁護士です。
あなたの代理人となって相手方と交渉するだけでなく、状況に応じて必要な手続きをすべて代わりに行ってくれ、適切な賠償金を受け取れるようサポートしてくれます。
ただ、弁護士に交通事故問題を相談・依頼するとなれば、どうしても費用が心配になりませんか?弁護士と聞いただけで、なんだか高額請求されそうなイメージを持ってしまうものです。
しかし、交通事故問題であれば、弁護士費用をかけずに解決できるケースがあります。
交通事故の弁護士費用について徹底解説していきます。
交通事故の弁護士費用の内訳と相場
交通事故の弁護士費用は、主に以下の5つの費用の合計になります。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 日当
- 実費
それぞれどういった費用なのか、そして相場についても詳しく見ていきましょう。
相談料とは、弁護士に相談する際にかかる費用です。
最近では、初回相談料を無料とする法律事務所が増えてきてはいますが、一般的には30分~1時間で5,000円ほどが相場となります。
弁護士への依頼を検討する際は、まず無料相談を利用してみるのが良いでしょう。
相談したからといって依頼しなければならないわけではないため、複数の事務所で無料相談を受けても問題はありません。
着手金とは、弁護士が手続きに着手する際にかかる初期費用です。
着手に際してかかるということは、後になって依頼を取り下げても返ってくることはないお金になるため、支払いをする際は注意しましょう。
着手金の般的な相場としては、10~50万円程度となっています。
また、最近では「着手金0円」を掲げている法律事務所もあります。依頼時は慰謝料増額の余地があるなどの条件があることと、着手金がかからない分、以下で解説する成功報酬に上乗せされることがあるため、一概に「お得」であるとは言えない点に注意です。
弁護士費用を見積る際は、トータルでかかる費用を念頭に置くのが良いでしょう。
成功報酬とは、弁護士が介入したことによる増額分に対してかかる費用です。
成功報酬については法律事務所によって大きく異なりますが、基本的には過去に弁護士会が作成していた「日本弁護士連合会報酬等基準」に則っていることがほとんどです。
以下では、交通事故問題(一般的な訴訟)にかかる費用についてまとめてみました。
事件の経済的利益の額が300万円以下の場合 | 経済的利益の16% |
事件の経済的利益の額が300万円を超え3000万円以下の場合 | 経済的利益の10%+18万円 |
事件の経済的利益の額が3000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の6%+138万円 |
事件の経済的利益額が3億円を超える場合 | 経済的利益の4%+738万円 |
経済的利益とは、簡単にいえば弁護士が介入したことで増えた金額です。
たとえば、もともとの保険会社の提示額が200万円だったところ、弁護士の介入によって500万円に増額されたのであれば、300万円が依頼者の経済的利益になります。
これを上記の表に当てはめると、30万円(経済的利益300万円の10%)+18万円=48万円」が弁護士に支払う成功報酬です。
日当とは、弁護士が事務所外に遠征した際に発生する費用です。
日当の金額については、日数や移動距離、移動時間などによって決められています。半日あたりの相場は1~3万円程度、丸一日かかる場合は3~5万円程度です。
実費とは、交通事故問題を解決するために実際にかかった費用です。
たとえば、弁護士が現地まで足を運ぶ際にかかった交通費や、相手方や保険会社とのやり取りにかかった切手代金などが、実費として請求されることがあります。
交通事故は弁護士費用特約で費用がかからない?
みなさんは「弁護士費用特約」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
弁護士費用特約とは、任意保険会社が提供している自動車保険契約に付随する特約です。交通事故時の損害賠償請求などを弁護士に依頼する際、費用補償を受けられるというサービスになります。
弁護士費用特約に加入していれば、費用を気にせず弁護士に依頼できます。
以下では、弁護士費用特約のメリットとデメリットについてご紹介します。
弁護士費用特約に加入していると、主に以下の5つのメリットがあります。
- 弁護士費用が補償される
- 交渉や手続きを弁護士に任せられる
- 慰謝料は増額される可能性が高い
- 保険等級に影響はない
- 家族や同乗者の特約も利用できる
①弁護士費用が補償される
前述したとおり、弁護士費用特約に加入していると弁護士費用が補償されます。
補償額については契約している保険会社によっても異なりますが、一般的には300万円程度を上限に、相談料や着手金といった費用を支払うことなく弁護士に依頼できます。
どうしても気になってしまう弁護士費用ですが、弁護士費用特約に加入さえしていれば、費用をかけずに交通事故問題を解決できるメリットがあります。交通事故問題に巻き込まれた際は、まずご自身が加入している保険契約の内容を確認しましょう。
②交渉や手続きを弁護士に任せられる
交通事故問題を弁護士に依頼すれば、相手方や保険会社側との交渉、後遺障害等級認定の申請、裁判といった手続きをすべて弁護士に任せることができます。
交渉や手続きを弁護士に任せられるということは、余計なストレスをかかえることなく、治療に専念できるという点も大きなメリットです。
また、弁護士への依頼後は、基本的に報告を待っているだけで手続きは進んでいきます。相手との交渉や手続きの進め方に意見があれば、弁護士に相談しながら解決を目指せます。
③慰謝料は増額される可能性が高い
交通事故の慰謝料請求には、自賠責基準と任意保険基準、そして弁護士基準という3つの基準があります。各基準についての簡単なご説明は、以下をご参考ください。
自賠責基準:最低限保証される慰謝料基準
任意保険基準:任意保険会社独自の慰謝料基準
弁護士基準:過去の裁判例などを参考にした弁護士が請求する際の慰謝料基準
この3つの基準の中で、もっとも高額になるのが弁護士基準です。弁護士が慰謝料請求する際は、弁護士基準を用いるため、慰謝料は増額されるケースがほとんどとなっています。
任意保険会社は、弁護士が介入してこない限り、弁護士基準による慰謝料を支払うことはまずありません。しかし、弁護士が介入した以上、弁護士基準による金額、もしくは近い金額で和解できる可能性がぐっと高くなります。
つまり、弁護士が介入したという事実だけで、慰謝料は増額される可能性が高くなるということです。
④保険等級に影響はない
弁護士費用特約は、言ってしまえば保険会社側の負担になってしまいます。
しかし、保険会社側の負担になったからといって保険等級に影響はありません。弁護士費用特約を利用しても、従前どおりの保険等級なのでご安心ください。
⑤家族や同乗者の特約も利用できる
弁護士費用特約は、ご自身の自動車保険契約だけでなく、ご家族や事故当時の同乗者、そのご家族が加入している場合でも利用できる点がメリットです。
補償対象の範囲については保険会社ごとに若干異なるため、ご自身が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付随していなくても諦めることはありません。
ご家族や同乗者の自動車保険契約についても、しっかり確認してみましょう。
弁護士費用特約に大きなデメリットはありません。
前述したとおり、特約を使ったからといって保険等級に影響はなく、次年度の保険料が上がる心配もありません。強いてデメリットを挙げるとしたら、弁護士費用特約に加入した分、年間の保険料の支払いが増えてしまう点です。
弁護士費用特約に加入していない場合
弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用を気にせず依頼できるメリットがあります。
しかし、弁護士費用特約に加入していなかったとしても、以下の方法であれば弁護士に無料で相談、依頼費用の負担を軽減させることができるため、ぜひ参考にしてください。
弁護士に相談する際は、無料法律相談を実施している法律事務所を利用しましょう。
交通事故問題は、一般の方にとって大変難しい手続きです。保険会社との交渉も思い通りに進まないケースがほとんどです。しかし、無料法律相談を利用して弁護士からアドバイスをしてもらえば、容易に今後の行動指針を決めることができます。
その後は、どうしても弁護士が必要と感じた段階であらためて依頼するかを検討すれば良いため、まずは積極的に無料法律相談を利用してみましょう。
法テラスは正式名称を「日本司法支援センター」といい、経済的に余裕のない方に対して、様々な法律問題についての無料法律相談や費用の一時立て替えをサポートしている公的機関です。
日本各地に支部があるため、利用を検討する方は、以下の「地方事務所一覧」を参考に、ご自身の住所地に一番近い法テラスを利用するのが良いでしょう。
お近くの法テラス:https://www.houterasu.or.jp/chihoujimusho/
法テラスには資力要件があり、一定上の収入や資産がある方は利用できませんが、要件さえみたせば弁護士費用を一時的に立て替えてもらうことができます。立て替えてもらった費用は、1ヶ月あたり5,000円~1万円程度で支払っていけるため費用負担が軽減されます。
交通事故の弁護士費用は、裁判手続きを経ることで相手に請求できる場合があります。
もし、裁判で交通事故問題を解決した場合、判決にて認められた金額のおおよそ1割を、弁護士費用として相手に請求することが認められています。
ただし、ここでいう弁護士費用とは、実際にかかる弁護士費用ではないため、すべての費用を裁判で請求できるわけではありません。また、示談交渉で手続きが済んだ場合は、弁護士費用という名目では相手に金銭を請求できない点にも注意が必要です。
弁護士に依頼すると費用倒れになりやすい3つのケース
弁護士費用特約がない方にとって、弁護士に依頼するかは悩ましい問題になります。
しかし、以下のようなケースの場合は費用倒れになりやすいため、弁護士への依頼は慎重に検討しなければなりません。
被害に遭った交通事故が、人身事故ではなく物損事故であった場合、相手に対して慰謝料請求をすることができません。
前述したとおり、慰謝料請求には3つの基準があり、弁護士介入による増額の肝となる部分です。
しかし、物損事故で慰謝料請求ができないケースでは、相手から回収できる金額も少額になることが多く、費用倒れになる恐れがあります。
人身事故であっても、軽傷であった場合は慰謝料請求には期待できず、費用倒れになる恐れがあります。
弁護士に依頼するとなれば、数十万以上はかかってしまうことからも、軽傷な人身事故の場合は、弁護士に依頼するのではなく無料相談をうまく利用し、少しでも有利な状況で和解できるようアドバイスをもらうのが良いでしょう。
加害者が任意保険に未加入のケースでは、自賠責保険で補償される以上の金額は、加害者本人に対して請求し、回収するしかありません。
しかし、任意保険に未加入である方の多くは、金銭的余裕のない方がほとんどであるため、適正な慰謝料請求を行うのは容易ではありません。仮に弁護士に依頼し、慰謝料請求を行ったとしても、相手に相応の資産がなければ費用倒れになってしまう恐れがあります。
費用倒れを気にするより弁護士に相談すべき理由3選
上記のケースに該当している方は、費用倒れになる恐れがあり、弁護士に依頼するのは慎重になったほうが良いです。しかし、弁護士に相談するだけであれば、費用倒れを心配することなく利用できるため、積極的に活用していきましょう。
以下では、費用倒れを気にするより弁護士に相談すべき理由を3つご紹介します。
弁護士に相談することで、今後の指針が明確になります。
一般の方にとって、交通事故問題を解決するのは簡単ではありません。ほとんどの方は、相手保険会社の言う通りに行動し、和解してしまった方も多いのではないでしょうか?
しかし、相手保険会社はあなたの味方ではありません。あなたにとって有利になる助言はしてくれませんし、少しでも低い金額で和解しようと考えています。
一方で、弁護士に相談すれば、現在の状況や相手保険会社からの提案がどれだけ自身にとって不利な条件かを明確に理解できるメリットがあります。
費用倒れは気になりますが、まずは弁護士への無料相談を積極的に活用しましょう。
弁護士に相談することで、事故状況などに応じた慰謝料の見込額がわかります。
前述したとおり慰謝料には3つの基準があります。その中で、相手保険会社が提案してくる金額は任意保険基準という、保険会社独自の基準に則った金額です。
しかし、任意保険基準は、あなたが本来受け取るべき適正な金額とは言えません。適正な金額とは、弁護士基準に他ならないのです。弁護士に相談をすれば、相手保険会社の提案を弁護士基準の差額を確認できるため、不利な条件にて和解させられる心配がなくなります。
交通事故によって請求できるのは、慰謝料だけではありません。
たとえば、物損事故であれば修理費や買い替え差額、代車使用料などが請求できます。また、人身事故であれば、入通院慰謝料だけでなく、実際にかかった治療費や付添看護費、休業損害、後遺障害逸失利益など、様々な名目で請求することが可能です。
しかし、こうした請求名目は黙っていると保険会社側は支払ってはくれません。なぜなら、保険会社側は少しでも低い金額で和解したいと考えています。
弁護士に相談すれば、どういった名目で請求可能かをアドバイスしてもらえます。こうした請求漏れを防げるため、費用倒れを気にするよりもまずは弁護士に相談すべきです。
交通事故に強い弁護士を見つけるには?
交通事故問題を相談する弁護士は、資格さえあれば誰でも良いというわけではありません。
弁護士にもそれぞれ得意分野があり、借金を整理する債務整理問題が得意な弁護士、離婚や相続といった家事問題が得意な弁護士など様々です。
交通事故問題を弁護士に依頼することを検討する場合、交通事故分野に精通している弁護士に依頼しなければ納得のいく結果にならない可能性があるため注意が必要です。
以下では、交通事故に強い弁護士を見つける4つの方法についてご紹介します。
市区町村役場では、定期的に交通事故相談を実施している場合があります。
実施しているかどうかは自治体によって異なるため、お住いの市区町村役場に問い合わせてみましょう。基本的には無料で交通事故相談を受け付けてくれるため、弁護士探しをするきっかけになってくれます。
ただし、自治体によっては弁護士による営業活動の禁止(名刺などを渡せないなど)しているため、相談時には弁護士の名前をメモしておきましょう。
インターネットで検索をかければ、担当してくれた弁護士がどこの法律事務所に所属しているかを簡単に調べることができます。
すべての弁護士が所属している日本弁護士連合会では、独自の相談組織として「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」を設置しています。
日弁連交通事故相談センター:https://n-tacc.or.jp/
同センターでは、交通事故による電話相談、面談相談、示談あっ旋や審査を行っています。
交通事故問題に力を入れている弁護士に、30分の無料相談を原則5回まで受けられるため、どこに相談したら良いかわからない方は積極的に利用すると良いでしょう。
先ほど少し触れた法テラスでも、無料法律相談を実施しています。
交通事故問題の相談をしたい方は、以下のURLを参考にしてください。
法テラス:https://www.houterasu.or.jp/service/jiko_songaibaishou/index.html
まずはサポートダイヤル(0570-078374)に連絡し、弁護士による法律相談が必要な状況下どうかを確認してみるのが良いでしょう。専門のスタッフが解決策の提案をしてくれるため、いきなり弁護士への相談が不安という方も安心して利用できます。
交通事故に関する問題で困った時、自分に合う弁護士を見つけることはとても大切です。
しかし、上述したような相談窓口を通じて弁護士を選ぶと、ご自身で選ぶ自由はないと感じてしまうものです。もし、ご自身で信頼できる弁護士を探したいのであれば、インターネット上で調べてみるのが一番です。
ただし、弁護士をインターネット上で探すときは、ただ交通事故を扱っているだけでなく、得意としている、力を入れていることがわかる法律事務所を見つけましょう。
たとえば、積極的に交通事故問題に関するコラム記事を投稿している、交通事故に関する特設サイトを用意しているなど、法律事務所のホームページを見ることで、どれだけ交通事故問題を積極的に取り扱っているかを把握できます。
ご自身で弁護士を探す際は、上記を意識すると交通事故に強い弁護士と出会える可能性を上げることができるのでおすすめです。
まとめ
交通事故問題は、専門知識を要する複雑な問題です。
弁護士への相談が費用的な不安をもたらすことはありますが、弁護士費用特約の存在や無料法律相談の利用、法テラスの支援といった選択肢を利用すれば、不安は大きく軽減されます。
また、弁護士に依頼することで、適切な慰謝料を得ることが可能になるケースがほとんどです。弁護士に依頼したことがきっかけとなり、最終的に納得のいく解決へとつながります。
交通事故問題に遭遇したら、まずは弁護士に相談することから始めましょう。