債務整理したらどうなる?メリットやデメリット、費用相場をわかりやすく解説!
収入や財産を大きく超える借金を抱えている場合、その負担を軽減する方法として債務整理があります。債務整理の種類はひとつだけではないため、債務者の支払い能力や債務状況、残したい資産の有無によって最適な方法を選ぶことができます。
しかし、債務整理という言葉にはネガティブな響きがあるため、自分や家族へのデメリットを心配される方も多いのではないでしょうか。
この記事では、債務整理のメリットやデメリット、費用相場についてわかりやすく解説します。個別の状況に合わせた適切な選択をするためにも、この機会に債務整理の内容について理解しておきましょう。
債務整理とは?
債務整理とは、借金返済に困難を抱えている個人や法人が、その返済の負担を軽減するために行う手続きを指します。一般的に債務整理は、法律に基づき、裁判所や専門家の関与のもとで実施されます。
債務整理は債権者の利益を尊重しつつ、債務者の生活を立て直す目的で行われます。債務整理によって、債務者は借金の総額や月々の返済額を減らしたり、返済期間を延長したり、将来の利息をカットしたりすることが可能です。
現在の財産や収入では支払いきれないほどの債務を背負っている方、債権者が多岐に渡り取り立てに悩まされている方などに利用されています。
債務整理の対象は多岐にわたり、ほぼすべての借金が減額あるいは免除されます。ただし、一部の借金は債務整理の対象とならず、そのまま残ることになります。
債務整理の対象となる債務、対象とならない債務は次の通りです。
債務整理の対象となる債務 | 債務整理の対象とならない債務 |
---|---|
・住宅ローンやカードローン ・金融機関や消費者金融からの借入 ・クレジットカードのキャッシング ・奨学金 ・個人間の借金 | ・税金や社会保険料 ・公共料金の滞納分(一部対象あり) ・生活費、固定費 ・養育費 ・慰謝料 |
一般的に、債務整理の対象となる債務はいわゆる「借金」全般です。一方、対象とならない債務には、租税や公共料金などの社会に不可欠なもの、養育費や慰謝料など相手の生活に大きな影響を与えるものが含まれます。
借金返済に悩んでいる方であれば、誰でも債務整理を検討できます。個人だけでなく、法人が行うことも可能です。年齢制限もありません。ただし、個別の状況によっては、選択できる債務整理の種類が変わることがあります。
選択する債務整理の種類によっては、借金の額や内容、収入状況、資産状況に制限がかかることがあります。最適な債務整理を選択するには法的な知識が不可欠となるため、迷ったらまず弁護士などの専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
債務整理は4種類|それぞれの違いを一覧表で解説!
債務整理には、一般的に次の4種類に分けられます。
- 任意整理:債権者との交渉により借金の負担を減らす手続き
- 個人再生:借金を大幅に減額し、残った債務を一定期間内で払い切る手続き
- 自己破産:資産を処分して債権者に返済し、残った債務を免除する手続き
- 特定調停:裁判所が当事者の間に入り、適切な返済計画の合意を目指す手続き
ここでは、それぞれの違いを一覧表でまとめています。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 特定調停 | |
---|---|---|---|---|
借金への効果 | 減額 | 大幅な減額 | 免除 | 減額 |
裁判所の関与 | なし | あり | あり | あり |
期間 | 3カ月〜半年 | 6カ月〜1年 | 3カ月〜1年 | 3カ月〜半年 |
裁判所費用 | なし | 22万円〜 | 30万円〜(※) | 1人700円ほど |
手続きの柔軟性 | ◎ | ⚪︎ | × | ⚪︎ |
住宅や車を残せるか | 可能性あり | 可能性あり | × | 可能性あり |
任意整理とは、債務者が債権者と交渉し、その合意に基づいて債務負担の軽減を図る手続きです。具体的には、借金の減額、返済期間の延長、利息のカット、支払い猶予などを求めることができます。
任意整理は裁判所を介さずに交渉を行うため、比較的簡単な手続きで済みます。債権者と債務者の間で合意ができれば、余裕を持った柔軟な返済プランを設定できる可能性があります。
ただし、交渉がうまくいかず、合意に至らないケースも少なくありません。債権者の数や借金額が多い場合、交渉がうまくいかないことが多いようです。最終的には裁判所が介入する債務整理を選択せざるを得ないこともあります。
任意整理を成功させる鍵はやはり「交渉力」です。相手に丸めこまれてしまわないよう条件を明確に設定し、債権者の気持ちに寄り添いながら交渉を進める必要があります。任意整理の成功率を高めたい場合は、実績の豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。
- 継続的な収入はあるが、月々の支払いが苦しい
- 債権者の数が比較的少ない
- 借金の額が比較的少ない
任意整理について詳しく解説はコチラから
⇒任意整理とは何か?特徴・メリット・失敗しないコツ・いくら減額できるかを解説
個人再生とは、裁判所に申し立てをして、借金を大幅に減額してもらう手続きです。原則として、減額後の借金は3〜5年程度で返済することを求められます。ほかの債務整理と比べると、減額幅が大きいことがポイントです。全体の借金額の5分の1ほどに抑えられるケースが多いようです。
ギャンブルや浪費を原因とした借入であっても、個人再生を利用できます。住宅ローン特別条項を用いれば、持ち家に住み続けることも可能です。
ただし、個人再生は裁判所を介して行うため、手続きが煩雑になってしまいがちです。個別の事情に合わせた適切な「再生計画案」を作成する必要があるなど、専門家の手を借りないと難しい場面もあるでしょう。
個人再生は大幅な減額があるとは言え、減額後の返済計画は比較的タイトです。このため、利用できるのは継続的な収入がある債務者に限られます。また、債務の総額は5,000万円以下に制限されています。
- 継続的な収入がある
- 債務総額が5,000万円以下
- 持ち家を失いたくない
- 債権者の数が多い
個人再生について詳しい解説はコチラ
⇒個人再生すると借金が減額される?減額の仕組みと4つの注意点
自己破産とは、一定の財産を処分して債権者に返済する代わりに、残った債務を免除してもらう手続きです。裁判所に申し立てることによって実施します。
自己破産は借金をゼロにする手続きであり、ほかの債務整理に比べて影響力が大きいと言えます。継続的な収入(支払い能力)がなく、債務をゼロにする以外に立て直す方法がない場合に、最終手段として利用されます。
持ち家や車など20万円を超える財産は原則手放さなければなりませんが、生活に必要な最低限の資産は保有できます。税金や社会保険料、養育費などを除き、ほとんどの借金から解放されるため、自己破産後の収入は手元に残すことができます。
なお、自己破産では、ギャンブルや浪費による借金や悪質な財産隠しなどの「免責不許可事由」に該当すると、借金の免除が認められない可能性があることに注意しましょう。
- 収入がなく返済の見込みがない
- 無職や生活保護を受給している
- 債務総額が大きく膨れ上がっている
- ギャンブルや浪費による借金ではない
自己破産について詳しい解説はコチラ
⇒自己破産後の生活はどうなる?よくある誤解や手続きの条件をわかりやすく解説
特定調停とは、債権者と債務者の間に裁判所が入り、支払可能な返済計画で合意することを目的とした手続きです。任意整理は当事者が直接交渉しますが、特定調停では原則として裁判所が交渉を進めていきます。
経済的に困窮した債務者であれば、誰でも利用できます。ほかの債務整理に比べると、費用が安く済むのもポイントです。特定調停では借金自体の減額や月々の返済負担の軽減が期待できますが、希望通りの結果にならないこともあります。
合意が成立すれば、取り決めた返済計画には強制力が生まれます。返済計画に従わない場合には資産や給与が取り押さえられてしまうため、注意が必要です。なお、特定調停で合意に至らない場合は、別の債務整理を検討することになります。
- 返済計画を守って返済ができる
- 債権者の数が比較的少ない
- 書類の準備や出頭の都合がつく
- とにかく債務整理の費用を抑えたい
特定調停について詳しい解説はコチラ
⇒特定調停の制度を簡単に解説!自分でやる方法や手続きの流れまとめ
債務整理したらどうなる?メリット・デメリットを解説
債務整理を検討する場合、実際に債務整理をしたらどうなるのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、4種類の債務整理に共通したメリット・デメリットを解説します。
債務整理のメリットは、返済の負担と精神的な負担から解放されることにあります。
債権者の数や債務額が多ければ多いほど、毎月の返済額も膨れ上がってしまいます。債務整理を通して、借金の減額や免除をすれば、月々の借金返済に当てる割合を減らすことができます。
金銭的な余裕が生まれると、生活が楽になるだけでなく、精神的な負担も軽減されます。
債務者の中には、債権者から毎日のように取り立ての連絡を受け、精神的に疲弊してしまっている人もいるのではないでしょうか。
弁護士などの専門家に債務整理を依頼すれば、弁護士から債権者に「受任通知」を送付し、その後の連絡の窓口となってくれます。督促や取り立ての連絡から解放されるのは大きなメリットです。
債務整理はもともとある借金を減額・免除してもらう手続きであるため、やはりデメリットが存在します。
最大のデメリットは信用情報機関に事故情報が登録されてしまうことです。いわゆるブラックリストと呼ばれるもので、一度登録されると一定期間残り続けます。
事故情報が登録されると、少なくとも5年間は新たな借入やローンを組むことができません。クレジットカードを新しく作ることも難しく、経済的な面での制限が大きいと言えます。
ただし、事故情報が登録されるのは、債務整理の手続きを実施した本人のみです。家族には影響がないため、家族名義でローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることは可能です。
個人再生や自己破産などの裁判上の手続きを利用する場合、必ず「官報公告」が掲載されます。官報公告とは国の広報誌のことで、一般人に向けて「住所、氏名、事件番号」などの情報を公開することになります。
とはいえ、一般人がこの情報を閲覧することはほぼないでしょう。どうしても気になる場合は、任意整理を検討することをおすすめします。
債務整理を通して、一部の保有資産を手放す必要に迫られることもあります。特に自己破産では、資産を処分して債権者の返済に当てるため、一定以上の価値を持つ保有資産は取り上げられてしまいます。
債務整理の種類によっては、持ち家や車などの資産を残したまま手続きできるものもあります。ただし、債務整理後にも返済が滞ってしまう場合には、やはり資産を売却して返済に当てなければならない可能性があります。
債務整理は債務者本人の手続きとなるため、少なからず保証人や連帯保証人に影響があります。たとえ債務者の借金が減額・免除となっても、保証人・連帯保証人の支払責任は残るためです。
もちろん、債務者本人が返済した分は減額されますが、残額分については債権者から取り立てを受ける可能性があります。結果として、保証人・連帯保証人も債務整理をしなければならなくなるケースも考えられます。
債務整理を検討する際は、周りの人への影響にも気を配り、よく話し合った上で結論を出すようにしましょう。
債務整理にかかる費用は?
債務整理にかかる費用は、大きく「裁判所費用」と「弁護士費用」に分けられます。また、費用相場は、債務整理の種類や債務の状況などによって変動します。
債務整理の種類によって、裁判所に支払う費用は変動します。下記の費用に加えて、必要書類の発行料金や郵送費、交通費などの実費がかかります。
裁判所費用 | |
---|---|
任意整理 | 0円(裁判所を通さないため) |
個人再生 | 22万円〜(申立費用+個人再生委員への報酬など) |
自己破産 | 30万円〜(破産手続廃止となった場合は3万円程度) |
特定調停 | 1,000円〜(債権者の数に応じて変動する) |
債務整理を弁護士に依頼する場合には、相談料や着手金、報酬金に加えて、債務の減額幅に応じた報酬金がかかることがあります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 特定調停 | |
---|---|---|---|---|
相談料 | 30分5000円〜(初回無料の場合もある) | |||
着手金+報酬 | 2万〜5万/1社 | 20万〜50万 | 最低30万〜 | 10万〜30万 |
その他報酬金 | 減額分の1割 | ー | ー | ー |
弁護士費用は法律事務所によって異なるため、まずは見積もりを作成してもらいましょう。なお、分割払いができる場合もあります。
債務整理についてよくあるQ&A
ここでは債務整理についてよく寄せられるQ&Aをご紹介します。
- 債務整理をするとクレジットカードは使えなくなる?
- 原則としてクレジットカードは解約され、使えなくなります。
キャッシングやカードローンなどの返済が滞っている場合、クレジットカードも債務整理の対象となるためです。また、債務整理後も一定期間は新たにクレジットカードを作ることができません。
しかし、クレジットカードが使えなくなると、日常生活で困る場面もあるでしょう。任意整理であれば、クレジットカード以外の債務を指定して整理することは可能です。ただし、ほかの債務の返済のために、残ったクレジットカードを使いすぎないよう注意が必要です。
- 債務整理後、何年ローンが組めない?
- 債務整理後、最低5年はローンが組めなくなります。
これは債務整理をした事実が事故情報として信用情報機関に残るためです。ローンを組む際には金融機関が信用情報の照会をかけるため、ブラックリストに載っていると組ませてもらえません。
主な信用情報機関には、CIC・JICC・KSCがあります。任意整理であれば5年、個人再生や自己破産であれば5〜10年は事故情報が残ります。ローンを組む前に信用情報機関に照会をかけ、事故情報が残っているかどうか調べておくことをおすすめします。
- 債務整理と任意整理の違いは?
- 債務整理は借金を減額・免除する手続きの総称です。
債務整理の中のひとつに任意整理があります。任意整理は裁判所を介さずに直接交渉する手続きを指します。
- 債務整理は家族や会社にバレる?
- 家族や会社にバレずに債務整理を進めることはできます。ただし、下記のような場合には隠し通すことは難しいでしょう。
【家族にバレるケース】
・家族が保証人(連帯保証人)になっている
・持ち家や車などの保有資産に影響が出ている
・督促や請求が家に届く
・子供の奨学金の保証人になれなくなる
【会社にバレるケース】
・会社関係者が保証人(連帯保証人)になっている
・債務整理の関連書類を見られてしまう
なるべくバレないように債務整理を進めたい場合、裁判所を介さない「任意整理」の手続きをおすすめします。弁護士に依頼すれば、一時的に債権者からの督促や通知が止まるため、家族にバレるリスクが少なくなります。
ただし、債務整理はどれだけ気をつけても「絶対にバレない」とは言い切れません。無理に隠すよりも、しっかりと事情を説明して理解を得る努力をすることをおすすめします。
- 持ち家や車を残したまま債務整理はできる?
- 債務整理の種類によっては、持ち家や車を残すことができます。
自己破産では、20万円以上の価値がある資産は原則手放すことになるため、持ち家や車を手元に残し続けることは難しいでしょう。
他方、その他の債務整理であれば、持ち家や車を残せる可能性があります。具体的には以下のような方法を検討できます。
・任意整理:任意整理の対象から住宅ローン(自動車ローン)を外す
・個人再生:住宅資金特別条項を利用する
・特定調停:住宅ローン(自動車ローン)を債務整理の対象から外す
ただし、債務の中で住宅ローン(自動車ローン)が大きな割合を占めている場合、債務整理をしてもさほど減額されない可能性があります。事前に弁護士に相談し、債務整理後の返済計画を慎重に検討するようにしましょう。
自分に合った債務整理を探すなら弁護士に相談!
返済できないほどの借金を背負ってしまった場合、債務整理を検討することになります。債務整理には4つの種類があり、個別の事情に合わせて選ぶことが大切です。
どの債務整理が適切かどうかを判断するには専門的な知識が必要になるため、弁護士に相談することをおすすめします。