経済的な苦境に立たされている方の中には、自己破産後の生活を心配するあまり、手続きに踏み切れない方も多いのではないでしょうか。確かに自己破産にはデメリットがありますが、借金をゼロにできるなどの大きなメリットもあります。

この記事では、自己破産に関するよくある誤解やメリット・デメリット、手続きの条件などをわかりやすく解説します。

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将来にわたって生活を立て直すためにも、自己破産の手続きを正しく理解するようにしましょう。

自己破産とは?

自己破産とは、債務者が抱えている債務を整理する手続きのひとつです。債務整理の中でも最も効果の大きな手続きであり、持っている財産を没収される代わりに、借金の支払いから逃れることができます。

自己破産の手続きは破産法に基づき、裁判所の管理の下で進められます。

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破産者や債権者への影響が大きいため、かなり厳格な手続きが必要とされています。

自己破産の基本的な流れ

自己破産の手続きは、大きく「破産手続き」と「免責手続き」の2つに分けられます。

手続き流れ

破産手続き:破産者の財産をお金に換え、債権者に配当する手続き
免責手続き:破産手続き後、残った債務を免除する手続き

自己破産手続きはおおむね次のような流れで行います。

  • 1Step 裁判所への申立て
  • 2Step 裁判所での面談
  • 3Step 破産手続開始決定
  • 4Step 破産手続き
  • 5Step 破産管財人の選定
  • 6Step 破産管財人による調査・面談
  • 7Step 債権者集会
  • 8Step 免責手続き
  • 9Step 裁判所での面談
  • 10Step 免責許可決定
  • 12Step 免責許可確定

裁判所への申立て時点で破産者が処分できる財産を有しない場合、破産手続きを省略することがあります。これを「同時廃止」と呼びます。同時廃止では、かかる時間や手間を軽減できます。

破産手続きを終えても、免責手続きができなければ、借金はゼロにはなりません。

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自己破産をする際には、免責許可を得るところまでを見据えて、手続きを進めていく必要があります。

破産手続き

破産手続きでは、自己破産を申し立てた本人が所有する財産を洗い出し、任意売却などの方法によってお金に換えます。売却利益は債権者に平等に分配されます。

財産の管理・処分・分配はすべて裁判所が選任した破産管財人が行います。破産者が持つすべての財産が処分の対象となるわけではありませんが、資産価値を持つ財産はほぼ取り上げられてしまいます。

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なお、一定の価値を下回る財産や生活に必要な財産は手元に残ります。

多くの裁判所では、資産価値が「20万円」を超えるかどうかを基準に運用しています。主な処分される財産と処分されない財産は次の通りです。

処分される財産

  • 土地や持ち家などの不動産
  • 自動車や貴金属などの動産
  • 99万円を超える現金
  • 20万円を超える財産、預貯金

処分されない財産

  • 家財道具や衣類
  • 99万円以下の現金
  • 20万円以下の財産、預貯金
  • その他裁判所に認められた財産

免責手続き

免責手続きでは、破産者の借金を免除するかどうかを裁判所が決定します。破産手続きを終えてもなお残っている債務について適用されます。

ただし、すべての破産者が免責を得られるわけでなく、「免責不許可事由」に該当した場合には裁判所から免責を許可されないことがあります。主な免責不許可事由としては、ギャンブルや浪費による借金、財産隠し、特定の債権者に偏った返済(偏頗弁済)などが挙げられます。

自己破産の対象となる債務

自己破産においては、すべての債務がなくなるわけではありません。免責許可されたとしても、一部の支払い義務は残ります。

金融機関や個人間の借り入れのようないわゆる「借金」は免除されますが、税金や養育費など国や他人に支払うべき税金や養育費などは残ります。免責される債務とされない債務は次の通りです。

免責される債務

  • 金融機関からの借り入れ
  • 知人や家族など個人間の借金

免責されない債務

  • 税金、社会保険料
  • 養育費
  • 不法行為による損害賠償、慰謝料等

自己破産するとどうなる?よくある誤解やメリット・デメリットを解説

自己破産はその言葉の響きからネガティブなイメージを持っている方も多いでしょう。

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確かにデメリットはありますが、その後の生活が立ち行かなくなるほどのダメージを受けることはありません。

自己破産にまつわるよくある誤解を解き、改めてメリットとデメリットについて整理していきましょう。

自己破産にまつわるよくある誤解

ここでは、自己破産で誤解されがちな内容についてまとめています。

  • 戸籍や住民票に登録されることはない
  • 年金は受け取れる
  • 会社は解雇されない(職業制限はある)
  • 家族の財産に影響を与えない
  • 子どもの進学・就職に影響はない
  • 賃貸住宅には住み続けられる
    (家賃の滞納がない場合)
  • 自己破産後であれば自由に旅行できる
    (手続き中は裁判所の許可が必要)
  • 戸籍や住民票に登録される
  • 年金が受け取れない
  • 会社を解雇される
  • 家族の財産が没収される
  • 子どもの進学・就職に影響がある
  • 賃貸住宅から追い出される
  • 海外旅行に行けなくなる

自己破産手続き中にはいくつかの制限を受けるものの、将来にわたって拘束され続けるようなことはありません。自己破産を進める際は、正しい知識に基づいて検討するようにしましょう。

自己破産のメリット

自己破産には次のようなメリットがあります。

返済負担がなくなる

自己破産の最大のメリットは、借金の返済負担がなくなることです。財産を処分しても支払いきれない債務については、裁判所が免責許可を出すことでゼロになります。自己破産後に支払う必要はありません。

自己破産をすると、債務のないまっさらな状態で再スタートを切ることができます。この点で、ほかの債務整理と大きく異なります。ほかの債務整理は返済負担は軽減されるものの、支払い義務自体は残ってしまうからです。

借金の取り立てが来なくなる

自己破産をするほどの借金を抱えている場合、日々の督促に悩まされている方も多いでしょう。自己破産によって、借金の取り立てから解放されます。裁判所が破産手続開始決定をすると、その通知をもって、債権者の取り立てが禁止されるためです。

資産の一部を残せる

自己破産では、資産の一部を残すことができます。自己破産は債務者の生活を立て直すために行う手続きであるため、生活に必要な財産は手元に残すよう定められています。例えば、家財道具(家具・家電・寝具)、衣類、20万円以下の財産などです。

無職や生活保護受給中でも利用できる

自己破産で免責許可を得ると、手続き後の借金がゼロになります。このため、継続した収入がない無職の方、生活保護受給中の方でも申し立てることができます。

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ほかの債務整理では安定収入が要求されるため、自己破産は収入のない方にとって、事実上唯一の手段だと言えます。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットとしては次のようなものがあります。

ブラックリストに登録される

自己破産をすると、その後一定期間が経過するまでブラックリストに載ってしまいます。ブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が登録されることを指します。

ブラックリストに登録される期間は、原則5〜10年ほどとされています。破産者はブラックリストから削除されるまで、クレジットカード作成やローン借り入れが制限されます。

家族や保証人が影響を受ける

自己破産は強力な手続きであるため、家族や保証人に一定の影響を及ぼすことがあります。

破産者が保有する財産を失うことで、家族は引っ越しを余儀なくされたり、家族カードや学資保険の解約が必要になったりします。特に、破産者と家族が同居している場合に、自己破産の影響を受ける可能性が高まります。

借り入れやローンに保証人を設定している場合、保証人の支払い義務は残ってしまいます。保証人が返済できなければ、破産者と同様に債務整理を検討する必要が出てきます。

自己破産では周囲の人にも影響を及ぼすことがあるため、考えうる影響を事前に洗い出し、関係者とよく話し合った上で手続きをするようにしましょう。

時価20万円以上の資産を失う

破産手続きによって、20万円以上の資産価値を持つ財産は取り上げられます。持ち家や車、貴金属、預金、有価証券などが当てはまります。なお、現金については99万円までの保有が認められています。

特に、持ち家や車がなくなってしまうと、これまでと同じような生活は難しくなります。自己破産以外の債務整理では、持ち家や車を残したまま手続きができることがあるため、併せて検討するようにしましょう。

一部債務の支払い義務は残る

免責手続きが完了しても、一部の支払い義務は残ります。例えば、税金や社会保険料などの国に支払うお金、養育費や慰謝料など他人に支払うお金があります。これらは借金ではないため、自己破産によっても免責されません。

職業の制限を受ける

自己破産をすると、手続き中から手続き後復権するまで、職業の制限を受けます。弁護士や司法書士、宅地建物取引士、警備員、建築士などがその例です。自己破産前からこれらの仕事をしている場合、一度登録を取り消す必要があります。

再度資格登録ができるようになるまで収入源を失うおそれがあるため、自己破産をする前に慎重に検討するようにしましょう。

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復権までの仕事について、会社との話し合いが必要になることもあります。

自己破産の条件とは?できる人とできない人を紹介

自己破産は破産法に基づいて行う厳格な手続きであるため、借金に悩んでいる人すべてが利用できるわけではありません。

自己破産の条件や自己破産ができないケースについて解説します。

自己破産ができる人|3つの条件

裁判所が破産手続開始、あるいは、免責許可の決定を出すには一定の条件を満たす必要があります。条件は「支払不能であること」「債務が免責の対象となっていること」「免責不許可事由に当てはまらないこと」の3つです。

支払不能である

支払不能とは、読んで字のごとく、債務者が借金を返済できない状態のことです。一般的に、すべての借金を3年以内に返済できないことがひとつの基準になります。ほかにも債務者の収入や財産、借金額などから総合的に判断されます。

債務者が無職で借金が膨れ上がっていても、預貯金がたくさんあれば、自己破産は認められません。また、一時的に借金の返済が苦しくても、継続的に支払いが難しいと判断されなければ、自己破産をすることはできません。

債務が免責の対象となっている

これまで説明したように、税金や社会保険料、養育費、慰謝料など一部の支払いは免除されません。自己破産をするためには、抱えている債務が免責の対象となっている必要があります。つまり、金融機関からの借り入れや個人間の借金に悩んでいる人が対象です。

免責不許可事由に当てはまらない

借金の免除を受けるには、裁判所から免責許可を受ける必要があります。このとき、免責不許可事由に当てはまっていると、借金が免除されない可能性があります。

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破産法に列挙されている免責不許可事由には次のようなものがあります。

  • 名義変更や贈与などの財産隠し
  • 特定の債権者への返済(偏頗弁済)
  • 浪費やギャンブルによる借金
  • 裁判所や破産管財人への妨害、非協力的な態度
  • 過去7年以内の免責

こうした免責不許可事由に該当する場合には、自己破産の恩恵を十分に受けられないおそれがあるため、別の債務整理を検討することになります。

自己破産ができない人|5つのケース

自己破産ができない人はどのような人でしょうか。よくある5つのケースをご紹介します。

安定した収入や資産がある

借金の返済をするのに十分な収入・資産がある場合には、自己破産ができません。自己破産は借金で首が回らない人を救う手続きです。基本的に借金は返さなければなりませんが、それがどうしても難しい場合に債務者を救う目的があります。

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このため、安定した収入や資産があるのであれば、自力で返せというのが裁判所の立場です。

債務が少ない

抱えている債務が少ない場合にも、支払能力があると見なされ、自己破産ができなくなります。最終的には総合的な判断となりますが、生活保護を受けているなどの特別な事情がある場合を除き、自己破産は認められにくいでしょう。

過去に自己破産をしている

過去7年以内に自己破産をしていると、破産法上の免責不許可事由に該当します。一度免責を受けたのにも関わらず、自己破産を繰り返しているような債務者を救うのは妥当でないと判断されるためです。

手続き費用を支払えない

自己破産をするにも費用がかかります。裁判所に納める費用を捻出できない場合には、自己破産手続きそのものができない可能性があります。どうしても支払いが難しければ、事前に弁護士や法テラスに相談するようにしましょう。

免責不許可事由に該当する行為をした

自己破産前から手続き中にかけて、免責不許可事由に該当する行為をした場合、借金が免除されないおそれがあります。家族や知人からの借金だけ先に返す、持ち家を取られる前に配偶者名義に移すなど、軽率な行動は自分自身の首を絞めることにも繋がります。

自己破産にかかる費用相場

自己破産にかかる費用には、裁判所に支払うものと弁護士に支払うものがあります。

裁判所に支払う費用

裁判所に支払う費用相場は2〜50万円程度と幅があります。これは手続きにかかる手間や期間によって、費用が変動するためです。

  • 同時廃止事件:2、3万円ほど
  • 少額管財事件:約20万円
  • 管財事件:約50万円

同時廃止事件とは、債務者が処分の対象となる財産を持っていない場合に、財産の調査や債権者への配分を省略することです。破産管財人を選定しないため、少ない費用で実施できます。

少額管財事件は、自己破産の対象となる債務や財産が比較的少額である場合に利用できます。

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ただし、自己破産手続きをスムーズに進めることを目的としているため、弁護士を代理として立てる必要があります。

管財事件は上記2つに該当しない事件です。破産管財人は債務や財産をひとつずつ調べるため、少なくとも50万円程度の費用がかかります。

弁護士に支払う費用

弁護士に依頼する場合、着手金や報酬金を支払う必要があります。費用相場は手続きの内容によって異なりますが、20万〜80万円ほどです。

【一覧】自己破産以外に検討できる債務整理とは?

自己破産以外に検討できる債務整理は「任意整理」「個人再生」「特定調停」の3つがあります。

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任意整理以外は裁判上の手続きとなります。

以下、自己破産と比較した一覧表にまとめました。

債務整理
  • 任意整理:債権者との交渉により借金の負担を減らす手続き
  • 個人再生:借金を大幅に減額し、残った債務を一定期間内で払い切る手続き
  • 特定調停:裁判所が当事者の間に入り、適切な返済計画の合意を目指す手続き
  自己破産 任意整理 個人再生 特定調停
借金の扱い 免除 減額 大幅な減額 減額
裁判所 関与あり 関与なし 関与あり 関与あり
裁判所費用 2〜50万円 なし 22万円〜 700円/人
手続きの柔軟性 × ⚪︎ ⚪︎
住宅や車を残す ×
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自己破産は最終手段!借金問題に困ったら弁護士に相談しよう

自己破産は一定額以上の財産を失う一方、将来にわたって借金の返済義務から解放されることができます。債務者や債権者への影響が大きいため、破産法に基づいた厳格な手続きが求められます。

こうした手続きを債務者本人が進めていくのはかなりの負担が伴うでしょう。また、収入や財産の状況によっては、自己破産以外の債務整理を選択した方が良い場合もあります。あらかじめ法律のスペシャリストである弁護士に相談すれば、あなたにぴったりの方法を教えてもらうことができます。

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借金問題を適切に解決するためには、自己判断で闇雲に進めるのではなく、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

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