債務整理をするとクレジットカードは解約される?代替手段や新規作成の注意点を解説!
近年、スマートフォンの普及とともにEC市場が拡大しており、クレジットカードが必要な場面が増えてきました。債務整理後のクレジットカードへの影響を心配している方も多いのではないでしょうか。
残念ながら、多くの場合にはクレジットカードは使えなくなります。一時的に使い続けられるケースもありますが、カード更新時には解約されてしまうことがほとんどです。
クレジットカードを使いたい場合は、家族カードやQRコード決済などの代替手段を検討しましょう。
また、債務整理後に新たにクレジットカードを作る場合には、審査を通りやすくするための工夫も必要です。
この記事では、債務整理とクレジットカードの関係に着目し、クレジットカードへの影響や代替手段、新規作成の注意点を解説します。
債務整理をするとクレジットカードはどうなる?デメリットは4つ
クレジットカードは月毎の利用料金がまとめて引き落とされる決済手段です。支払い時にはカード会社が料金を立て替え、カード保有者が後から支払う仕組みとなっています。
しかし、クレジットカードでは全体の利用額が見えにくく、つい使いすぎてしまうことが起こり得ます。キャッシングやリボ払い、分割払いなどの機能を利用している場合には、さらに借金が膨らんでしまうことになりかねません。
中には、毎月の生活費をクレジットカードで支払い、翌月の収入のほとんどがその引き落としでなくなってしまうという負のスパイラルに陥っている方もいらっしゃいます。
クレジットカードの支払いに悩んでいる方にとって、債務整理は月々の返済負担を減らすための有効な手段です。
債務整理をすると、クレジットカードの返済を軽減できます。具体的には、未払い分の減額、利息のカット、返済期間の延長などが可能です。債務整理の中でも自己破産を選択した場合、クレジットカードの返済をゼロにできます。
ただし、債務整理にはデメリットもあります。クレジットカードに関するデメリットは以下の4つです。
- 原則としてクレジットカードは使えなくなる
- クレジットカード固有のポイントは失効する
- 家族カードは使えなくなる
- しばらくはクレジットカードの新規作成ができない
原則としてクレジットカードは使えなくなる
債務整理をすると、原則としてクレジットカードは使用できません。一定期間使い続けられる場合もありますが、カードの更新のタイミングで解約されることになります。結果として、債務整理時に保有しているクレジットカードは使えなくなります。
なお、クレジットカードが使えなくなるタイミングは、クレジットカードを債務整理の対象としているか否かによって異なります。
クレジットカードが債務整理の対象である場合
クレジットカードの支払いを滞納している場合、この未払い分についても債務整理の対象にできます。債務整理の対象となったクレジットカードは、強制的に解約されるため、即時使えなくなります。
クレジットカードが使えなくなるのは、クレジットカード会社が債務整理をする旨の通知を受けてからです。通知の方法は債務整理の種類によって異なりますが、裁判上の手続を開始したことを示す通知を送る場合と弁護士が依頼を受けたことを示す受任通知を送る場合の2通りがあります。
上記通知を受けたクレジットカード会社はすぐにカードを解約します。このため、クレジットカードで家賃や光熱費を支払っている場合には、債務整理前に支払方法を変更する必要があります。
なお、銀行が発行するクレジットカードを利用している場合、同時に銀行口座も凍結されてしまいます。口座凍結後は預金の引き出しができなくなります。
あらかじめ銀行口座への給与振り込みや固定費の引き落としがされないよう、振込先・引き落とし先を変更するようにしましょう。
クレジットカードが債務整理の対象でない場合
クレジットカードが債務整理の対象でない場合で、一定期間は使い続けられますが、最終的には解約されることがほとんどです。
債務整理の中でも、任意整理や特定調停であれば、対象とするクレジットカードを選ぶことができます。また、個人再生では、借り入れをしていないクレジットカードは債務整理の対象となりません。
債務整理の対象から外れたクレジットカードは、しばらく使い続けられる可能性があります。これはクレジットカード会社に債務整理をした旨の通知がされないためです。
ただし、クレジットカード会社では更新などのタイミングで定期的に信用情報をチェックしています。債務整理をすると信用情報に登録されるため、クレジットカードが調査した際には必ずバレることになります。
クレジットカード会社では通常、信用情報の悪化により会員資格を取り消せるとする規約が設定されています。
このため、債務整理の対象としなかったクレジットカードについても、カード会社の信用情報調査があった時点で解約されることになります。
クレジットカード固有のポイントは失効する
債務整理をすると、クレジットカードが解約されるため、クレジットカード会社固有のポイントは失効します。ポイントとは、クレジットカードの使用額に応じて付与されるもので、現金として使用したり、商品に交換したりできます。航空系カードのマイルもポイントの一種です。ポイントを貯めている場合、債務整理前に使用するか、商品に交換しておくことをおすすめします。
家族カードは使えなくなる
債務整理をすると、クレジットカードに付随する家族カードは利用できなくなります。家族カードとは、カード会員(本会員)の家族が利用できるクレジットカードです。
一般的に、家族カードの支払いは本会員が行うため、本会員のクレジットカードが債務整理の対象となると、自動的に家族カードも解約されます。家族カードの利用者は、別途クレジットカードを作り直す必要があります。債務整理の影響は家族には及ばないため、家族は自分のクレジットカードを新規作成できます。
しばらくはクレジットカードの新規作成ができない
債務整理後、しばらくはクレジットカードの新規作成ができなくなります。これは、債務整理をした事実が信用情報機関に登録されるためです。いわゆる「ブラックリスト入り」の状態となります。
クレジットカード会社は利用者を信用して利用料金を立て替えています。しかし、債務整理の履歴があるなど信用性が低い者に利用させてしまうと、立て替えたお金が返済されないリスクがあります。このため、ブラックリスト入りしてしまうと、クレジットカードの審査が通りにくくなってしまいます。
とはいえ、一生クレジットカードが作れなくなるわけではありません。信用情報機関と債務整理の種類にもよりますが、おおむね5〜10年が経過すると事故情報の登録が削除されます。
新たにクレジットカードを作りたい場合には、事故情報の削除を待って登録すると良いでしょう。
債務整理の種類ごとのクレジットカードへの影響
債務整理とは、債務者の返済負担を減らし、生活を立て直すための手続きの総称です。債務整理には、大きく分けて4つの種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
どの種類の債務整理を選ぶかによって、クレジットカードに及ぼす影響が異なります。
任意整理とクレジットカード
任意整理とは、クレジットカードを発行している会社と債務者が直接交渉し、債務者が支払可能な範囲で返済額を抑える手続きです。具体的には、未払い分の減額や利息のカット、返済期間の延長などを話し合うことになります。
任意整理は債権者ごとに行うことができるため、対象からクレジットカード会社を外すことも可能です。ただし、対象から外したとしても、定期与信のタイミングでクレジットカードが使えなくなる可能性があります。
個人再生とクレジットカード
個人再生とは、借金残額を大きく減額してもらう代わりに、その後3〜5年間で借金を返済する計画を立てていく裁判上の手続きです。債務者が抱えている債務すべてが整理の対象となるため、クレジットカードを対象から外すことはできません。
ただし、個人再生はあくまでも債務を整理するものであるため、借入を行っていないクレジットカードや日頃使用していないクレジットカードは対象になりません。
これらのクレジットカードはしばらく使い続けられますが、クレジットカード会社が信用情報をチェックしたタイミングで解約されます。
自己破産とクレジットカード
自己破産とは、すべての債務の整理と一定額以上の財産の処分をする裁判上の手続きです。財産を処分して得た利益は債権者に分配されます。裁判所の許可が降りると、自己破産後の借金はゼロになります。
自己破産では原則、すべての債務の整理をしなければなりません。借入をしているクレジットカードがあれば、もれなく自己破産の対象になります。
なお、借入をしていないクレジットカードであっても、自己破産手続きにおいては利用が制限されます。クレジットカード会社のみに返済をしたり、返すことができないのにクレジットカードを利用したりすると、「免責不許可事由」に該当するおそれがあるためです。最終的に免責を受けられない(=借金が免除されない)可能性があることに注意が必要です。
特定調停とクレジットカード
特定調停とは、裁判所を介してクレジットカード会社(債権者)と債務者が話し合うことにより、借金の返済負担を軽減する手続きのことです。任意の債権者を選べるため、クレジットカード会社を対象にすることも外すこともできます。
クレジットカードを対象にすると即時解約、対象にしなくても一定期間後に解約されることになります。
債務整理後のクレジットカードの代替手段
債務整理後はクレジットカードを利用することが難しくなります。しかし、幸いにもクレジットカードのように利用できる決済手段が複数存在します。
- 家族カード
- デビットカード
- 後払い決済
- QRコード決済
- 電子マネー
これらの決済手段では信用情報の照会を必要としないため、債務整理をした事実があっても利用可能です。
家族カード
家族カードとは、本人会員に付随して作成できるクレジットカードのことです。家族のひとりが本会員となることで、配偶者や家族が与信なしでクレジットカードを作成できます。
債務整理時には、債務整理を行った方を本人会員とする家族カードは使えなくなりますが、それ以外の方を本人会員とする家族カードには影響がありません。このため、配偶者やほかの家族に本会員となってもらうことで、家族カードを保持することが可能となります。
ただし、家族カードの利用料は本人会員の口座から引き落とされることになります。本人会員の負担が多くなってしまうため、あらかじめ利用料などをよく検討するようにしましょう。
デビットカード
デビットカードは支払額が口座から即時引き落とされるカードのことです。クレジットカードとは異なり、口座に残っている金額分しか使うことができません。
一般的に銀行口座を持っていれば、信用情報の照会なしで作成できます。JCBやVISAなどのブランドが提供しているデビットカードであれば、オンラインショッピングでも利用可能です
後払い決済
後払い決済はスマートフォンがあれば誰でも、支払いを1カ月後に延期できる決済方法です。特に有名なブランドに「ペイディ」があります。コンビニや銀行支払での一括払いを選択することで、与信なく後払いを利用できます。
後払い現金化のトラブルについてはコチラから
⇒後払い・ツケ払い現金化は貸金業者と同じ!弁護士や司法書士が債務整理できるケースを解説
QRコード決済
QRコード決済は、専用アプリと銀行口座を紐づけることで、店舗やオンラインショッピングの支払いができるサービスのことです。「PayPay(ペイペイ)」や「LINE Pay」などがあります。
近年、QRコード決済は急速に展開しており、利用できる店舗は拡大しています。クレジットカードの利用制限があっても利用できるため、現金以外の決済手段として検討しましょう。
電子マネー
電子マネーはICカードやスマートフォンなどを利用し、あらかじめチャージした金額を支払うことができる決済方法です。クレジットカードやデビットカードとは異なり、事前に入金した分しか利用できないことに注意しましょう。
SuicaやPasmoなどの交通系電子マネーが有名です。最近は交通機関以外でも利用できる店舗が増えており、クレジットカードがなくても決済手段として利用できます。
債務整理後、いつからクレジットカードは使える?
債務整理後には一時的にクレジットカードが使えなくなります。ただし、信用情報が削除された後であれば、クレジットカードを新たに作成できます。
原則として5〜10年は使えない
原則として、債務整理後5〜10年はクレジットカードが使えません。クレジットカードが作れない期間は信用情報機関と債務整理の種類によって異なります。
以下、主な信用情報機関ごとに事故情報が削除されるまでの期間をまとめました。
主な信用情報機構 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 特定調停 |
シー・アイ・シー(CIC) | 5年以内 | |||
日本信用情報機構(JICC) | 5年以内 | |||
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 5年以内 | 7年以内(※) |
債務整理をしたクレジットカード会社では作れないこともある
債務整理後、5〜10年が経過してもすべてのクレジットカードが作れるわけではありません。債務整理を実施したクレジットカード会社には、事故情報履歴が残っていることがあります。この場合、新たなクレジットカードの作成を拒否される可能性が高いでしょう。
債務整理後にクレジットカードを作るときの注意点
ここでは、債務整理後にクレジットカードを作るときの注意点を解説します。
事故情報の登録を確認する
クレジットカードの申し込みをする前に、事故情報が削除されたかどうか確認しておくと安心です。5〜10年が経過していても、その後、借り入れや滞納を行ってしまうと事故情報が更新されている可能性があります。信用情報機関に信用情報の開示を請求し、事故情報の削除を確認した上で申し込みましょう。
前述したように、債務整理の対象となったクレジットカード会社には事故情報が残っている可能性があります。クレジットカードの新規作成時には、債務整理をしていないクレジットカード会社を選ぶようにしましょう。
複数のクレジットカードを一度に作らない
クレジットカードの新規申し込みは一社ずつ行うようにしましょう。複数のクレジットカードを同時に申し込むと、経済状況が悪いのではないかと思われる可能性があります。また、万が一審査に落ちた場合に、ほかのクレジットカード会社でも審査が通りにくくなるリスクがあります。
限度額を低く設定する
最初にクレジットカードを申し込む時は、なるべく限度額を低く設定しましょう。利用限度額が低いクレジットカードほど審査が通りやすくなります。作成したクレジットカードの滞納を避け、適切な利用履歴を積み立てていくことで、ほかのクレジットカードを作成する際に役立つでしょう。
新たな借入・滞納を避ける
債務整理後、クレジットカードを作る前に新たな借り入れや滞納をしないように気をつけましょう。特に、一定期間以上の滞納をしてしまうと、事故情報が更新されてしまいます。適切な取引記録を残し、信用情報を回復することで、クレジットカードの審査が通りやすくなります。
債務整理とクレジットカードに関するよくある質問
債務整理とクレジットカードにまつあるQ&Aをご紹介します。
クレジットカードを債務整理すると銀行口座が凍結される?
銀行系のクレジットカードを債務整理した場合、その銀行で開設している銀行口座は凍結されます。
これは、クレジットカードの借り入れ分を口座残高で相殺しようとするためです。口座凍結後は振り込みや引き出しができなくなるため、あらかじめ登録口座を移行するようにしましょう。
債務整理をしてもクレジットカードを残す方法は?
原則として、債務整理後にクレジットカードを残すことはできません。
任意整理や特定調停などでクレジットカードを債務整理の対象から外したとしても、定期与信のタイミングで解約されることになります。デビットカードや家族カードなどの代替手段を検討するようにしましょう。
債務整理をしても楽天カードは作れたと聞いたが、本当なのか?
クレジットカード会社の審査を通すことができれば、理論上はクレジットカードを作ることは可能です。
楽天カードであれば、必ず作れるというわけではありませんが、信用情報以外にも収入や職業、ほかの楽天サービスの利用状況などを踏まえて審査している可能性があります。
債務整理後、何年経ってもクレジットカードの審査に通らない理由は?
債務整理後、5〜10年が経過したにも関わらず、クレジットカードの審査に通らない場合には、以下の理由が考えられます。
- 債務整理後に支払いを滞納している
- 収入が安定していない
- 一度審査に落ちてから期間を空けず再申請している
- 債務整理を実施したクレジットカード会社に申し込んでいる
債務整理を検討するなら弁護士に相談!
債務整理をするとクレジットカードを使い続けることは難しくなりますが、借金返済の負担を軽減でき、経済状況の安定化を図ることができます。多額の借金を抱えている債務者にとっては、メリットの大きい手段だと言えます。
一方、債務整理には選択肢が多く、個別の事情によって最適な方法が異なります。
債務整理を検討するなら、まずは弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。