債務整理をすると住宅ローンへの影響は?手続き別に徹底解説
「債務整理をすると数年間は借り入れができなくなる?」
このような話を耳にした方は多いのではないでしょうか。将来的にマイホームを購入したいと考えている方にとって、大変気になる話題です。
住宅ローンを支払っている方が債務整理をすると、一体どのような影響があるのでしょうか?
マイホームが差し押さえられてしまうのでは?このような不安を抱えている方も多いでしょう。
債務整理をすると住宅ローンにどのような影響があるのか、債務整理の手続別に徹底解説していきます。
債務整理3つの手続き
債務整理には以下3つの手続きがあります。
まずはそれぞれの手続きについて、簡単な概要をご紹介します。
- 任意整理
- 自己破産
- 個人再生
任意整理
任意整理は、裁判所を介さず債権者との交渉のみで返済負担を軽減させる手続きです。
毎月のように発生する利息や手数料をカットしてもらい、3~5年程度で完済を目指していきます。毎月の収支状況に合わせた、無理のない返済を実現させるのが目的です。
自己破産
自己破産は、裁判所に返済が難しい状況であることを認めてもらい、すべての借金を免除してもらう手続きです。
時価で20万円以上の資産は保持できないなど、いくつもの制限があるものの、手続きを終えることができれば返済に悩まない生活が手に入ります。
個人再生
個人再生は、裁判所に提出した再生計画という返済案を認めてもらい、借金総額を大幅に減額できる手続きです。
減額された借金は、原則3年(最長5年)で返済していくことになり、再生計画どおりの返済が履行できれば、残った借金は免除してもらえます。
住宅ローンへの影響を手続き別に解説
住宅ローンを支払っている方が債務整理をすると、どのような影響があるのかについて、手続き別に詳しく解説していきます。
任意整理による住宅ローンへの影響
任意整理は手続きの対象を自由に選択できます。住宅ローン以外の借金を手続き対象にすることで、マイホームに一切の影響を与えることなく、毎月の返済負担を軽減させられます。
マイホームを維持しながら毎月の返済負担を軽減させられるため、住宅ローンの返済が苦しい方は、任意整理を検討してみるのも良い選択肢の1つです。
任意整理は、他の2つの手続きに比較するとデメリットが少ないのも良い点です。
自己破産による住宅ローンへの影響
自己破産は、任意整理とは異なり手続きの対象を選択できません。住宅ローンも手続き対象となり、返済継続、マイホームの維持はできなくなります。
一般的には、住宅ローン債権者がマイホームを競売などにかけ、売却代金は住宅ローンへと充当、それでも残った借金が自己破産手続きの対象になります。
このように、自己破産をするとマイホームの維持はできなくなります。どうしてもマイホームを手放したくない方は、自己破産を選択すべきではありません。
毎月の収支状況などによっては自己破産しか選択肢がないケースもあります。どの債務整理手続きが適正かは、弁護士からアドバイスをもらうのがおすすめです。
個人再生による住宅ローンへの影響
個人再生は、マイホームを維持したい方にとって大変有効な手続きです。個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」といって、住宅ローンは現状どおり支払いながら、その他の債務を圧縮できる制度があるのです。
住宅資金特別条項を利用すれば、マイホームを維持しながら毎月の返済負担を大幅に軽減させられるため、住宅ローンを支払い中の方にもっとも適した選択といえるでしょう。
ただし、個人再生は自己破産とは異なり返済自体は継続する手続きです。一定以上の収入がないと、裁判所に手続きを認めてもらえません。
自身に個人再生が適しているかを知りたい方は、弁護士に確認するのがもっとも確実です。
債務整理後に住宅ローンは組めるのか?
まだ住宅ローンは組んでいないものの、将来的にマイホームを購入したいと考えている方向けに、「債務整理後に住宅ローンは組めるのか?」について解説します。
期間経過で住宅ローンを組むことは可能
結論から言えば、債務整理後であっても住宅ローンを組むことは可能です。
債務整理は手続きによって異なるものの、一般的には5~10年程度は新たな借入が困難になります。債務整理をした情報は「個人信用情報機関」に「事故情報」として登録され、抹消されるまでに5~10年程度の期間を要してしまいます。
ほとんどの金融機関や貸金業者は、融資の審査時に個人信用情報機関に照会をかけます。
その結果、融資するかどうかを判断しているため、事故情報が登録されているという事実は、審査結果に大きな悪影響を与えてしまうのです。
事故情報は永年保管されるわけではなくいずれは抹消されます。事故情報さえ抹消されてしまえば、住宅ローンを組むことは十分可能です。
住宅ローン審査は厳しい
過去に債務整理を経験していたとしても、住宅ローンを組むことは可能です。住宅ローン審査は、一般的な借り入れと比較すると厳しいのが実情です。
事故情報の抹消後、また借り入れできるからといって債務整理前と同じような生活を送っていると、住宅ローン審査にとおるのは厳しいと言わざるを得ません。
将来的にマイホームを購入したいのであれば、債務整理後の生活について見直す必要があるでしょう。
住宅ローン審査でチェックされる主な項目
住宅ローン審査でチェックされる主な項目についても見ていきましょう。
国土交通省が行っている「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」を参考に、上位のチェック項目についてご紹介します。
画像引用元:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001733623.pdf
年齢(完済時・借入時)
住宅ローン審査時は、完済時年齢と借入時年齢がチェックされる項目の上位です。これを債務整理の兼ね合いから検討すると、年齢が若いうちに債務整理を終えていたほうが、住宅ローン審査時に有利になる可能性が高いといえます。
現在借金問題に悩んでいて、将来的にマイホームを購入したいと考えているのであれば、1日でも早く債務整理に着手し、若いうちに借金問題から開放されることを推奨します。
健康状態
住宅ローンは、3~5年程度で完済を想定しているわけではなく、長いと30年以上という期間返済を続けなければなりません。健康状態も重要なチェック項目の1つです。
特に、住宅ローン契約時には、団体信用生命保険(契約者に不幸があった場合に住宅ローン残高が0円になる保険)への加入が条件になることがあります。
健康状態に問題があると団信への加入が難しくなり、住宅ローン審査に通りにくくなります。
年収・勤続年数・雇用形態
住宅ローン審査時は、現在の年収や勤続年数、雇用形態といった項目が重要視されます。
短いスパンで転職を繰り返していたり、フリーランスや契約社員、派遣社員といった雇用形態だったりする場合、住宅ローン審査に通りにくくなる傾向にあります。これらの項目は債務整理の有無についてまったく関係がありません。
たとえ過去に債務整理をしていても、十分な年収や勤続年数があり、正社員といった雇用形態であれば、住宅ローン審査時に不利になる心配はほとんどないと言えるでしょう。
担保評価
住宅ローン審査時には、金融機関が融資を提供する建物や土地に対して抵当権を設けます。
もし、住宅ローンの借り手が返済不能になった場合、金融機関は抵当権が設定された土地や建物を市場で売却し、未払いのローンを清算するのが一般的です。
担保物件の市場評価が重要となります。「この物件はどれくらいの価格で売れるか」という評価が、融資の審査に影響を及ぼします。
返済負担率
返済負担率とは、簡単に言うと「収入に対する返済額の比率」のことです。
この比率は、年収に対する年間の返済額との関係から算出され、返済が過大な負担にならないか、返済不能に陥る可能性があるか、などを考慮するために使用されます。
こちらも担保評価と同様、債務整理の事実とはほとんど関係がありません。
税金の滞納状況
税金の滞納がある方は、住宅ローン審査にとおるのが難しくなります。住宅ローン審査に臨む際は、しっかりと税金の滞納を解消しておきましょう。
債務整理で税金の負担減や圧縮といったことはできません。現在、債務整理を検討中の方は、税金を滞納しないためにも優先して支払いをしましょう。
言い換えれば、債務整理をすることでその他の借金の負担が減れば、その分だけ今まで滞納していた税金を優先して支払えるようになります。
将来的にマイホームの購入を検討しているのであれば、税金を優先して支払える資金を確保する意味でも、債務整理への着手は早いに越したことはありません。
その他の借金の返済状況
住宅ローン審査時には、その他の借金の返済状況もチェック項目に含まれます。
債務整理によってその他の借金をすでに完済、もしくは免除されている状態であれば、返済状況の項目が審査時に問題になる心配はほとんどありません。
また、事故情報の抹消後であっても、無理な借り入れを繰り返していないのであれば、住宅ローン審査時に不利に働く心配はありません。
債務整理後であっても住宅ローン審査にとおるポイント5選
債務整理後であっても住宅ローン審査にとおるためのポイントを5つご紹介します。
以下のポイントにさえ注意していれば、住宅ローン審査にとおる可能性がぐっと上がるため、ぜひ参考にしてください。
- ポイント1:個人信用情報機関の事故情報を確認する
- ポイント2:過去に借り入れのない金融機関を利用する
- ポイント3:返済中の借金はなるべく返済しておく
- ポイント4:夫婦でペアローンを利用する
- ポイント5:十分な自己資金を用意する
個人信用情報機関の事故情報を確認する
債務整理後に住宅ローン審査へ臨む場合は、あらかじめ自身の個人信用情報を確認しておきましょう。一般的には、5~10年程度で事故情報は抹消されるとされていますが、万全を期すのであれば、自身で信用情報の内容を確認することを推奨します。
なお、日本の主な個人信用情報機関は3社あります。過去の借入先などによって登録されている情報機関が異なるため注意してください。
どうしても心配な方は、3社すべてに照会をかけるのが良いでしょう。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):https://www.cic.co.jp/
主に消費者金融や信販会社が加盟 - 株式会社日本信用情報機構(JICC):https://www.jicc.co.jp/
主に銀行だけでなく幅広い金融機関が加盟 - 一般社団法人全国銀行協会(KSC):https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/
主に地方銀行やネット銀行などが加盟
過去に借り入れのない金融機関を利用する
債務整理後の住宅ローン審査は、過去に借り入れのない金融機関を利用しましょう。
確かに債務整理をした個人信用情報は期間経過によって抹消されます。しかし、金融機関によっては過去の借り入れ者や滞納者の状況を、独自のデータベースで管理している可能性が高いです。
「自社ブラック」と呼ばれるもので、過去に債務整理の対象だった金融機関からは、たとえ事故情報抹消後であっても、新たな借り入れが非常に困難になっています。
以上の理由から、債務整理後に住宅ローン審査に臨みたい方は、過去の債務整理の対象になっていなかった金融機関を利用するのがおすすめです。
返済中の借金はなるべく返済しておく
住宅ローン審査に臨む際は、返済中の借金はなるべく返済しておきましょう。
上記のチェック項目にもあったように、その他の借金の返済状況は審査結果に影響を及ぼします。そのため、債務整理後に住宅ローンを組みたいと考えている方は、新たな借金をしてしまう前に審査へと臨むのが良い方法の1つです。
債務整理後、新たな借り入れをせずに生活してきた実績は、今後も借金に頼らず生活していく術を身に着けたことと同義です。マイホーム購入のためにも、むやみに消費者金融などから借金はせずに、住宅ローン審査に臨むのが理想的といえるでしょう。
夫婦でペアローンを利用する
住宅ローンの審査時は、夫婦で「ペアローン」を活用するのも有効です。
ペアローンは、夫婦それぞれが借り手となり、2人の収入を合算することで信用度や借入限度額を高めることができます。さらに、2人で団信に加入するのであれば、不幸な事態が発生したとしても、残ったローンの返済は保険でカバーされます。
過去の債務整理が直接的に不利な要因になるケースはほとんどありませんが、どうしても審査にとおるのが難しい場合は、ペアローンの利用を検討するのも良いでしょう。
十分な自己資金を用意する
自己資金が多いほど、住宅ローンの審査は有利になります。
債務整理をしないままだと、大きな自己資金を用意するのは大変困難です。余剰資金の多くは返済へと消えていってしまい、とても貯金などできません。
債務整理によって返済負担が軽減されているのであれば、その分を貯金へと回すことが十分可能です。債務整理が終了し、事故情報が抹消される5~10年後には、十分な自己資金を用意することも可能といえるでしょう。
債務整理後にマイホームの購入を検討しているのであれば、住宅ローン時の自己資金用に貯金計画を立てておくことで、審査を有利に進められるためおすすめです。
債務整理すべきか悩んでいるなら
債務整理をした事実が将来のマイホーム購入の妨げになる心配はほとんどありません。債務整理への着手が早ければ早いほど、住宅ローン審査を有利に進められます。
債務整理するとなれば、数年間は新たな借入ができないなど、様々なデメリットも発生するため、中には慎重になっている方も多いでしょう。
そういった方は、一度弁護士に相談してみるのがおすすめです。弁護士であれば、現在の状況を鑑みたうえで、もっとも適した解決策をアドバイスしてくれます。
昨今は無料で弁護士に相談する方法が数多くあります。以下では債務整理を弁護士に無料で相談する3つの方法をご紹介します。
市区町村役場の借金相談を利用する
あなたがお住まいの市区町村役場では、地域で活躍している弁護士を招いて、定期的に無料法律相談が実施されている場合があります。
無料法律相談は、予約制であることがほとんどであるため、まずは借金相談が実施されていないか確認することからはじめてみましょう。弁護士による無料相談を取り扱っているのは、市(区・町)民課や、生活課といった窓口が多いです。
法テラスを利用する
弁護士への無料相談は、法テラスを利用してみるのもおすすめです。
法テラスとは、正式名称を「日本司法支援センター」といい、弁護士に依頼する際の費用の立替や、無料法律相談などを実施しています。
同一の相談内容であれば、3回までは無料相談できるためぜひ活用してみましょう。
実際の相談は地域ごとに登録している弁護士事務所で実施されるため、遠出することなく無料相談を受けられる点も大きなメリットの1つです。
法テラス:https://www.houterasu.or.jp/index.html
弁護士に直接相談する
借金問題に悩まされている方にとって、弁護士への費用は大変な負担です。費用負担が心配で弁護士への相談・依頼ができない方は多いのではないでしょうか。
特に、相談するだけで、依頼するだけでお金がかかってしまうとなると、ハードルが一気に上がってしまうのも無理はありません。
昨今の法律事務所では、相談無料、着手金0円といった、相談者の負担を軽減する対策を掲げるところが増えてきています。
無料法律相談を実施している事務所は数多くあるため、ぜひ探してみてください。
まとめ
債務整理した事実が、将来の住宅ローン審査に悪影響を及ぼす心配はほとんどありません。
それどころか、住宅ローン審査では年齢が重要視されることから、債務整理への着手が早ければ早いほど、未来を明るく照らす結果をもたらしてくれるでしょう。
また、現在住宅ローンを支払い中という方も、自己破産以外であればマイホームに影響なく返済負担を軽減することが可能です。どうしても返済が苦しい、でもマイホームは維持し続けたいという方は、任意整理・個人再生による解決を図りましょう。
まずはご自身の状況を把握することがなによりも大切です。債務整理を検討すべき状況なのか、検討すべきであればどの手続きが適正なのかについて知るためにも、弁護士への無料法律相談を積極的に活用していきましょう。