任意整理の費用はいくらかかる?月々の支払い額の相場や払えない場合の対処法も解説
任意整理は5万円程度の費用で借金が減らせる場合があるため、借金に苦しむ人にとっては気になる債務整理手段です。利息だけで毎月数万円支払っている人なら試してみたいでしょう。
そこで今回は任意整理の費用について解説します。費用の内訳はもちろん、費用が決まる仕組みや総費用の相場、さらには月々の支払い額の目安まで確認できます。
自分だけで任意整理をした場合の費用とデメリットに関しても取り上げるので、費用を最小限に抑えたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
任意整理の費用の内訳と目安額
まずは任意整理にかかる代表的な費用の内訳について見ていきましょう。任意整理の代表的な費用は次の7つに分類されます。
- 相談料
- 着手金
- 基本報酬
- 減額報酬
- 過払い金報酬
- 返済代行手数料
- 実費
借金の内容によっては請求されない費用もありますが、減額報酬以外は任意整理との関連性があるので確認しておきましょう。
なお、各費用の金額は法律事務所が自由に決められるため、相場はあくまで目安としてください。
相談料
相談料は弁護士や司法書士などに法律相談をする際に請求される料金です。相場は30分あたり5,000円ほどで、相談するたびに請求されます。
法律相談では様々な悩みを相談できますが、法律事務所によっては特定のジャンルに関しては無料で相談できる場合もあります。たとえば債務整理に関する悩み事については、30分話してもお金がかからないことが珍しくありません。また、期間限定でジャンルを問わず相談無料となっている場合もあります。
任意整理は債務整理のひとつですから、無料で話を聞いてくれる法律事務所を比較的簡単に見つけられるでしょう。
着手金
着手金は法律家に任意整理を依頼した時に支払う手付金のような費用です。弁護士は着手金を受け取ってからでないと任意整理の手続きを進めてくれません。そのため着手金は必ず支払う必要があります。
着手金は任意整理をする会社ごとに支払い、1社あたり2万円~5万円ほどが相場です。
また、着手金は最低額が設定されている場合があります。最低額が5万円なら、1社あたり2万円で受けてくれるところでも着手金は5万円になるので注意してください。
着手金は原則的に返金されないことも覚えておいてください。
基本報酬
基本報酬とは成功報酬のことで、借金の減額や利息のカット、支払い期日の延長といった要求を債権者が受け入れてくれた場合に支払う費用です。
債務整理をする会社が複数ある場合は1社ごとに支払うことになります。
相場は1社あたり2万円~5万円ほどですが、弁護士や司法書士によっては相場を大きく上回る金額が設定されているケースもあるので気をつけましょう。
着手金が相場よりも高いケースでは基本報酬が抑えられていることもあります。
法律家に任意整理を依頼するなら着手金と基本報酬は忘れずに確認してください。
減額報酬
減額報酬は債権者との交渉の結果、借金の元本を減らせた場合に支払います。
減額分の10%ほどが減額報酬として請求されるのが相場です。日本司法書士連合会が11%以下に抑えるよう指導をしているため、11%以上が提示している法律事務所には注意しましょう。
任意整理では元本の減額は滅多にないため、減額報酬が支払われることは少ないです。以前はグレーゾーン金利を提示する貸金業者が後を絶たなかったため、減額報酬が発生していました。しかし、最近は貸金業者も含めて法定金利を守っているため減額報酬を支払う機会は多くありません。
2010年以降は法律で金利が20%以下に抑えられており、グレーゾーン金利で営業する貸金業は闇金だけです。現在は違法な金利で発生した利息分で残債を相殺できないため、任意整理で元本を削減するのは難しいでしょう。
任意整理に限れば、減額報酬に対して神経質になる必要はありません。
過払い金報酬
過払い金報酬は過払い金を回収した際に発生する費用です。
法律の上限金利を超える金利で借金をした場合、本来の利息よりも多く支払うことになります。この支払い過ぎたお金が過払い金です。
任意整理の場合、過払い金報酬は回収額の10%~15%になります。任意整理の交渉が上手くいかずに、過払い金返還請求を行って回収した場合の過払い金報酬は最大25%まで上がります。
減額報酬との違いは交渉の有無です。債権者と交渉して過払い金の分を減額した場合は減額報酬が該当し、裁判で過払い金を勝ち取った場合は交渉が無いため過払い金報酬が発生します。
返済代行手数料
返済代行手数料とは弁護士や司法書士に債権者への返済を代行してもらった場合に発生する費用のことです。
債権者への返済は期日内に指定の方法で行う必要があり、債権者が希望する支払い方法によっては手数料がかかるため、返済代行手数料は1社あたり1,000円ほどかかります。
支払い方法は銀行振込になることが多く、返済代行をお願いすると弁護士または事務所のスタッフが依頼者に代わって振込手続きを確実にしてくれます。
なお、この代行サービスを利用するには事前に返済額を法律事務所の口座に振込む必要があります。
任意整理において返済代行サービスは必須ではありません。費用を少しでも減らしたい場合は利用を控える選択肢もありますが、返済を確実に行え、完済時は連絡を受けられるメリットは無視できないでしょう。
実費
実費とは任意整理の依頼をこなすのにかかった費用のことです。会計では諸経費に該当するものです。
代表的な実費には次のようなものが含まれます。
- 受任通知を債権者に郵送する代金
- 電話料金
- コピー代金
実費の額は法律事務所ごとに大きく異なることに注意してください。相場は5,000円未満ですが、数万円請求してくるケースもあります。任意整理の対象が数社しかないのに、実費が5,000円を超える場合は他の法律事務所を検討すべきです。
任意整理は全部でいくらかかるのか
任意整理の内訳を確認したところで、次は総額でいくらになるのか解説します。
結論から言うと、総額は5万円~15万円が相場です。料金に大きな幅があるのは借金の内容が人それぞれ異なるためです。
どういった要素が総費用に影響するのか具体的に見ていきましょう。
総費用は任意整理する会社の数に左右される
任意整理の総費用は、整理対象とする債権者の数によって違いがあります。
債権者数と総費用の関係を表で確認してください。
債権者数 | 総費用の目安 |
---|---|
1 | 53,000円 |
2 | 64,500円 |
3 | 86,000円 |
4 | 108,000円 |
5 | 135,000円 |
6~10 | 179,000円 |
11~20 | 206,000円 |
21社以上 | 233,000円 |
債権者の数が増えるほど総費用は高くなりますが、単純な掛け算にはなっていません。債権者が6社以上になると所定の債権者数を超えない限り費用は据え置かれます。
一方、債権者数が1社から5社までは1社増えるだけで顕著に費用が増えます。
債権者が増えても大きく費用が増大しない理由は、任意整理の費用に一定の上限が設けられているためです。手続きをまとめて行うことで効率化ができる点も費用を抑えられる理由と言われています。
任意整理は債権者の数が増えるほど1件あたりの費用が安くなります。
任意整理の総費用が30万円を超えるケースは滅多にない
任意整理の総費用は30万円を超えると言われることがありますが、そこまで高額になるケースは多くありません。
先ほども解説したとおり、任意整理の費用には上限があるため、20件まとめて依頼しても相場は23万円ほどです。30万円を超えるケースは珍しいでしょう。
ただし、任意整理をして債権者と合意できず、裁判になった場合は総費用が30万円を超える可能性があります。また、過払い金報酬が高く設定されていたなら、多額の過払い金があるケースで費用が高額になる場合も考えられます。
任意整理の費用を払えない場合の対処法
任意整理は比較的費用のかからない債務整理ですが、債権者数が増えると1度に支払えないほどの金額になることがあります。
費用の支払いが難しい場合に使える対処法について紹介しましょう。支払いの負担を抑えることで迅速に借金問題にアプローチできるようになります。
法テラスの立替制度を活用する
法テラスとは法務省が管轄する公的機関で、法律トラブルを抱えた人が気軽に相談できる窓口です。この法テラスには弁護士費用の立替制度があり、条件を満たすと任意整理の費用を立て替えてくれます。
立て替えてもらった際の月々の支払いは5,000円~10,000円ほどと低く抑えられているため、借金を返済しながらでも十分に払っていけます。それでも支払いが難しい場合は、最長で3年まで支払い期間を伸ばせるので安心です。
立替制度の利用には、月収が表に示す金額以下である必要があります。
同居する家族の人数 | 月収(手取り額) |
---|---|
1人 | 182,000円 |
2人 | 251,000円 |
3人 | 272,000円 |
4人 | 299,000円 |
加えて家族の人数によって上限資産額も設定されています。
同居する家族の人数 | 資産額 |
---|---|
1人 | 180万円 |
2人 | 250万円 |
3人 | 270万円 |
4人 | 300万円 |
分割払いが利用できる弁護士を探す
法律家に任意整理を依頼すると契約時に着手金を支払うことになります、着手金は一括払いが基本ですが、債権者が多いと支払いに困ります。そんな時は分割払いに応じてくれるところを探しましょう。
一般的な分割払いに比べて分割回数が3回~6回ほどと少ないですが、利用できる法律事務所は珍しくありません。
着手金だけでなく成功報酬にも使えるので、弁護士費用を用意できずに二の足を踏んでいる方は分割払いを利用してみましょう。
相見積もりをして安い事務所を選ぶ
法律事務所によっては相場よりも2割以上高い価格設定をしているところがあります。運悪く強気の弁護士に相談してしまった場合、高額な費用を前に尻込みしてしまうでしょう。
少しでも安い法律事務所に依頼できるよう相見積もりを試してください。3件以上の見積を取り寄せれば、おおよその相場も分かります。
無料相談を受けるのもおすすめです。見積も作成してくれるので、その場で内訳について詳しく聞けます。
相場より2割以上安いところには注意してください。経験の浅い新米弁護士に担当させる場合もあるので、交渉が上手くいかないリスクがあります。
司法書士に依頼できないか検討する
任意整理は弁護士か司法書士に依頼するのが一般的です。しかし、弁護士は法律上の手続きを代行してくれるなどサービスが充実しているため費用が高くなる傾向があります。
一方、司法書士は法律関連の書類作成や登記手続きの代行などサポートが限定されますが、弁護士よりも費用が安いです。任意整理であれば債権者1社あたり税込55,000円までと費用の上限が決められています。
債権者が任意整理に前向きなら、司法書士に依頼できないか検討してください。
国の補助金を利用する
分割払いが利用できない、もしくは分割しても支払いに困るようなら国の補助金を試してみてください。
生活困窮者を対象とした総合支援金制度が利用できる場合があります。生活再建を目的としたものに幅広く適用される支援制度なので、任意整理の弁護士費用にも活用できます。
注意したいのは貸付である点です。1年は返済を免除してもらえますが、最終的には全額返済する必要があります。しかし返済期限が最大10年と長く、利子も無いので安心です。
費用を抑えるために自分で任意整理をするデメリット
任意整理の手続きは全て個人でも行えるため、必要最小限の費用で借金を減らすために任意整理を自分だけでやる人もいます。
自分で任意整理をした場合、かかる費用は印紙代や切手代といった申請に関連したものに限定されるため、弁護士に依頼するケースと比較して大幅に費用を節約できます。
しかし、それ以外の面におけるデメリットが無視できないため、任意整理を自力でやるのはおすすめできません。
深刻なデメリットは複数あるのですが、なかでも任意整理中も返済が止まらないことは大きな負担になります。月々の返済額が高額な場合、綱渡りの状況が続く可能性があります。
また、弁護士が担当しない任意整理に応じない債権者もいます。交渉できないまま任意整理を諦めることになるでしょう。
法律関連の手続きを正確にできないことも問題です。過払い金を請求するには過払い金に関する適切な計算が必要になります。この計算は素人には難しく、本来よりも少ない金額で申請してしまうことも十分考えられます。
費用を抑える目的で任意整理に挑戦すると、途中で挫折して時間を無駄にする危険性があるので、法律関連の手続きに詳しくない場合は素直に弁護士に依頼することをおすすめします。
任意整理の費用の支払い方法|毎月の支払額はいくらか?
任意整理で和解した後は借金を返済していくことになります。返済と弁護士費用の支払いが重なったら、やっていけないと不安に感じる人も少なくないでしょう。
弁護士に任意整理を依頼した場合、費用と借金の返済を区別せずに支払う方法と、別々に支払う方法があります。
費用と借金の支払い時期に大きな違いはありませんが、支払先や返済を滞納する危険性に違いがあるので、2つの支払い方法の詳細を把握しておきましょう。
弁護士費用を自分で支払う
任意整理の弁護士費用と借金の返済をそれぞれ自分で支払います。弁護士事務所に指定された金額を一括または分割で支払い、その後に借金の返済を始めます。
通常は借金の返済が始まる前に弁護士費用を払い終えることになるため、任意整理を依頼した5ヵ月後に返済を始める場合は、総費用が16万円だとすると月々4万円を支払うことになります。
依頼から1ヶ月後の弁護士費用 | 依頼から2ヶ月後の弁護士費用 | 依頼から3ヶ月後の弁護士費用 | 依頼から4ヶ月後の弁護士費用 | 依頼から5ヶ月後の弁護士費用 |
40,000円 | 40,000円 | 40,000円 | 40,000円 | 0円 |
自分で支払う場合、借金の返済は全て自分で管理する必要があります。毎月の支払い期限を確認し、期日までに正確な金額を入金することになるため手間がかかるでしょう。返済を忘れたり、何度も金額を間違うようだと信頼を失い、損害賠償請求を申し立てられる危険性もあります。
返済を延滞するリスクはありますが、弁護士費用を少しでも抑えたい人には都合がいい支払い方法です。
法律事務所に支払ってもらう
法律事務所に借金の返済を代行してもらうと弁護士費用と借金の返済を区別することなく支払えます。
利用者は任意整理が始まると毎月決まった額を法律事務所に振り込みます。任意整理にかかった費用はそこから差し引かれ、費用の支払いが終わると残った預り金は返済に使われます。
和解後の月々の返済額が45,000円、弁護士事務所への入金額が月々50,000円、任意整理にかかった費用が50,000円として、月々の支払い額と預り金の動きを表にまとめたので確認してください。なお、任意整理開始から3ヶ月後に和解したとします。
時間経過 | 振込額 | 預け金の使途 | 支払額 | 預り金の残高 |
---|---|---|---|---|
依頼から1ヶ月後 | 50,000円 | 弁護士費用 | 50,000円 | 0円 |
依頼から2ヶ月後 | 50,000円 | ー | 0円 | 100,000円 |
依頼から3ヶ月後 | 50,000円 | ー | 0円 | 150,000円 |
依頼から4ヶ月後 | 50,000円 | 借金の返済 | 45,000円 | 145,000円 |
依頼から5ヶ月後 | 50,000円 | 借金の返済 | 45,000円 | 150,000円 |
毎月の入金額は月々の返済額に返済代行手数料を加えたものになります。この手数料は依頼する弁護士によって異なりますが、債権者の数が多くなるほど高くなるのが一般的です。
確実に借金を返済したい人と相性がいい支払い方法といえます。
知恵袋などで見つけた任意整理の費用に関するよくある質問
任意整理の費用や支払いについて見落としがないか確認したい人のために、知恵袋などで見つけた閲覧数の多い質問を紹介します。
多くの人が気にする費用に関するポイントを確認して、円滑に支払いできるようになりましょう。
追加費用を請求されることはありますか?
予定通り任意整理が進んで和解できれば追加費用が発生することは滅多にありません。しかし、和解できなかった場合は個人再生や自己破産を申し立てることになるため、追加費用がかかります。
自己破産は裁判になるため任意整理よりも費用が高額です。追加費用は大きなものになるでしょう。
債権者から裁判を起こされることもあるので、それに対応するために追加の支払いを請求されるケースもあります。
実費が想定よりもかかった場合なども追加費用が発生することがあるので注意です。念のために契約書の内容は隅々まで確認しましょう。
利息の減額分も減額報酬の対象になりますか?
減額報酬は元本が減った場合に発生する費用であり、利息は対象としません。任意整理で利息分の支払いが大幅に減っても減額報酬を請求されないでしょう。
ただし、法定上限金利を超える金利で借りていた場合は過払い金が生じる可能性があるため、元本から過払い金が差し引かれるケースもあります。その場合は元本が減るので減額報酬が請求されるでしょう。
グレーゾーン金利が撤廃されてからは任意整理で元本が減るケースは少なくなっています。利息の減額によって減額報酬が発生することはないと考えて問題ありません。
見積を比較する時は何を確認すればいいですか?
見積を見ながらどこの法律事務所が安いか比較する場合は、次の2つのポイントを確認しましょう。
- 着手金
- 基本報酬
着手金は法律事務所ごとに価格設定に違いがあるため、費用を抑えたいなら必ず調べてください。相場は税込22,000円ほどですが、負債額によって増減します。
着手金が相場よりも高い場合は他の費用が抑えられている可能性があります。逆に相場よりも低い場合は基本報酬が相場以上になっていないか確認しましょう。
任意整理では発生しにくい減額報酬については神経質になる必要はありません。過払い金報酬についても、グレーゾーン金利が廃止されて過払い金が減っていることから、大きな出費にはつながらないでしょう。
任意整理を途中解約するとキャンセル料がかかりますか?
弁護士などに依頼した任意整理を途中で解約すると違約金が発生することがあります。
違約金が発生するか否かは契約書の内容を確認してください。金額については契約内容によって異なるため、最初の相談で確認しておきましょう。解約までにかかった実費があれば、その分は全額請求されます。
途中解約するタイミングによっては申し出が認められないこともあるので注意してください。一般的に和解が成立した後の解約は難しいです。
なお、任意整理について相談しただけで正式な契約をしていないなら、解約してもキャンセル料は発生しません。
まとめ:任意整理の相場を知るためには相見積もりが効果的
任意整理の費用は内訳が複雑なため、依頼内容を明確にしたうえで相見積もりをして適切な相場を確認しましょう。
見積書を見比べる際は着手金と基本報酬の金額に注目してください。法律事務所ごとに金額に差が生じやすい項目なので、安いところがどこか判断する際に役立ちます。
借金は放置しても増えるだけです。今回紹介した費用を支払えない場合の対処法を参考にして任意整理の資金を工面して、早い段階で借金返済に道筋を立ててください。