任意整理は借金を減らせるメリットがありますが、デメリットも少なくありません。

そのひとつがクレジットカードが使えなくなることです。

しかし、任意整理をしてもクレジットカードが使えている事例も耳にします。

そこで今回は任意整理をしたクレジットカードがどうなるのか詳しく解説していきます。

任意整理後もカードを更新できたケースや、クレジットカードの任意整理によって生じるトラブルについて確認しましょう。

任意整理をしたクレジットカードはどうなるのか

クレジットカードで作った借金を任意整理する場合に、任意整理後のカードの扱いについて気にする人は少なくありません。普段の支払いにカードを利用している人なら、なおさらです。

任意整理をした利用者に対するカード会社の対応は厳しく注意が必要なので、トラブルを避けるために詳しく見ていきましょう。

任意整理対象のクレジットカードは強制解約

クレジットカードを任意整理すると、カード会社によって強制解約させられます。強制解約されるとカードは利用できなくなります。

任意整理したい場合は弁護士などの法律家に手続きを依頼するのが一般的です。依頼を受けた弁護士はクレジットカードを発行した会社に受任通知を送ります。

受任通知とは、これから任意整理を始めることを債権者に知らせるためのもので、これを受け取ったカード会社は利用者に対して支払いの請求ができなくなります。そのためカード会社は利用者がカードを使えないように強制的に解約処理を行うのが一般的です。

最終的には所有する全てのクレジットカードが使えなくなる

任意整理をすると対象にしたクレジットカード以外のカードも全て利用できなくなります。

使えなくなるタイミングはカード会社によって違います。クレジットカードは3年~5年ほどの間隔でカード契約の更新を行うのですが、この際に利用者の信用情報を確認します。信用情報に問題があれば契約は更新されません。更新が上手くいかなければクレジットカードは使えなくなります。

債務整理をすると信用情報に債務整理をしたことが記録されるので、更新の調査中に借金を整理したことが必ずカード会社に知られます。支払い能力に問題があると判断されるので更新は難しく、いずれのカードも実質的に強制解約となるでしょう。

任意整理後もクレジットカードが使えるケース

先ほども少し触れましたが、任意整理の対象にしなかったクレジットカードはただちに強制解約にはなりません。受任通知が届けられるのは対象にしたカードを発行した会社だけなので、他のカードに関しては契約更新の時期まで利用できる可能性があります。

任意整理をしたカードを支払いに使っていなかったなら、しばらく普段の生活に大きな影響は出ないでしょう。

しかし、契約更新の時期を知る術はありません。半年先かもしれませんが、来週の可能性もあります。

いつ利用できなくなるか分からないクレジットカードに頼るのは危険です。

任意整理をしたクレジットカードを更新できたケース

非常に稀なケースですが、条件次第では任意整理をしたクレジットカードを更新できる場合があります。

債務整理をして多額の過払い金が発覚したケースで、過払い金が残債よりも高額な場合に借金を即座に完済できます。

この場合、個人信用情報には債務整理をしたことが記録されますが、迅速に借金の返済が行われるためか、その情報はすぐに消されます。

弁護士に債務整理を依頼すると過払い金の調査から始めてくれるので、カードの更新を望む場合は弁護士に相談することをおすすめします。

クレジットカードを任意整理すると起こるトラブル

クレジットカードの任意整理ではカードが利用できなくなる以外にも様々なトラブルが起きる可能性があります。

なかには購入した商品の没収といった思いがけない問題が生じることもあるので、起こりうるトラブルをここで確認して事前に対策できるようにしておきましょう。

携帯料金の支払いができず延滞してしまう

クレジットカードを普段の買い物だけでなく携帯電話やサブスクリプションの支払いに利用している人は少なくありません。突然クレジットカードが強制解約されたら、毎月自動的に行われた支払いがストップするでしょう。

クレジットカードで定期的に支払われている代表的なものといえば携帯料金です。カードを債務整理すれば携帯料金が適切に支払われないため延滞扱いになります。本人に支払いの意志があり、銀行口座に十分な預金があるにもかかわらず料金未払いとなるのは不本意でしょう。なにより気付かずに放っておけば携帯電話が使えなくなります。

クレジットカードを任意整理をするなら、カードで支払われているものを再確認するのを忘れないでください。

カードに結びついたサービスが利用できなくなる

クレジットカードは便利性を高めるために様々なサービスが付帯されています。旅行を頻繁にする人であればETCカードが作成できて、海外旅行保険のあるクレジットカードのことをよく知っているでしょう。

任意整理をすると、クレジットカードを契約することで利用できたこれらの付帯サービスは全て利用できなくなります。

ETCカードのように利用者の命に関わる場合もあるサービスの場合、即座に停止されることはありませんが、契約が無効になっている以上、カードに付帯したサービスを利用するのは契約違反に該当する可能性があります。無断で利用すれば損害賠償請求を申し立てられる危険性もあるでしょう。

カード独自のポイントが無効になる

クレジットカードには支払いをすると金額に応じて独自のポイントが貯まるものがあります。これらのポイントは支払いに利用できたり、品物に換えられるため残しておきたいところですが、任意整理でカードが強制解約になると、これらのポイントは全て無効になります。

任意整理後はクレジットカードの会員ページにログインできなくなるため、ポイントを他のポイントに変えることもできません。

ポイントがある場合は任意整理の手続きをする前に利用しましょう。他のポイントに変換した場合、そのポイントが没収されることはありません。

債務整理をした情報が公式に記録される

任意整理をした情報は個人信用情報機関と呼ばれる企業に一定期間記録されます。

金融機関やカード会社は審査の際に個人信用情報機関から個人の借金に関する情報を取得するため、この機関に金融事故が記録されると新規の借入が難しくなります。

金融事故の中でも審査に大きな悪影響を及ぼすのが債務整理に関するものです。任意整理は借金を減らすだけで支払いそのものを無効にしないことも少なくありませんが、それでも債務整理のひとつとして個人信用情報に記録されるため影響力は大きいです。俗に言う「ブラックリスト入りした状態」になります。

ブラックリストに入ると原則的に借入や新規のクレジットカード作成はできません。住宅ローンや自動車ローンはもちろん、子供のための学資ローンも審査に落ちるでしょう。今後の人生で小さくないハンディキャップを負うことになります。

購入した商品を回収されることがある

商品をクレジットカードの分割払いを使って購入した後に、支払いを終える前に任意整理をすると購入した物をカード会社に回収される場合があります。

購入した商品の回収が行われるか否かはカード会社の判断に任されます。カード会社が回収を行う理由は支払われなかった代金を補填するためです。そのため換金性の高い商品は回収されやすいと言われています。

例えば車は中古市場が確立されており換金性が高いため回収される危険性が高く、必ず引き揚げられると判断しても問題ありません。

一般的に換金性の低い日用品は回収対象になりにくいと言われていますが、リユース市場で売れるブランド物の着物や、人気モデルの家電や家具は回収されることもあるでしょう。

手元に置いておきたい商品がある場合、その品物を購入する時に利用したクレジットカードは任意整理の対象から外してください。

任意整理をした後も口座から引き落とされることがある

クレジットカードの支払いに銀行口座からの引き落としを利用している場合、任意整理をしても引き落としが続くことがあります。

カード会社は受任通知を受けると引き落としを停止する手続きを進めてくれますが、申請を受けた銀行が迅速に事務処理をしてくれるとは限りません。カードの支払い日に間に合わなければ自動的に引き落としが行われます。

カード会社の対応が遅れる可能性もあるため、事前に引き落としを止めるよう銀行に申請することが大切です。

銀行口座が利用できなくなる

銀行が発行しているクレジットカードを任意整理した場合、その銀行の口座が凍結されることがあります。

任意整理の通知を受けた企業は自社の関連サービスも含めて相手のアカウントを停止することが珍しくなく、銀行の場合は提供している融資サービスと共に口座が使えなくなります。

銀行が口座を凍結させる目的は未払金の回収です。口座に残っているお金で未回収分を解消しようとするため、口座の凍結は受任通知後に時間を置かず行われます。回収できないと、そのまま負債として計上することになるため銀行も必死です。

銀行が保証会社を利用している場合、保証会社が代わりに借金を支払うことで凍結が解除されることもあります。しかし、借金自体は無くなりません。支払い先が銀行から保証会社に代わるだけです。

銀行口座の凍結は生活に大きな影響を及ぼすため、銀行や銀行を手掛ける企業が発行したクレジットカードを任意整理する場合は入念に検討してください。支払いの変更に多大な手間がかかるなら、任意整理の対象から外したほうがいいでしょう。

カードが使えなくなっても任意整理をしたほうがいい場合

お伝えしたとおり、クレジットカードの任意整理には様々なデメリットがあります。任意整理をしたことが無ければ本当にすべきなのか判断が難しいでしょう。

この項目では判断の助けになるようにクレジットカードを任意整理すべき場合について紹介します。

ショッピングリボやキャッシングを多用している

ショッピングリボなどの分割払いを頻繁に利用していて、借金の総額が膨らんでいるなら任意整理を検討すべきです。

クレジットカードには分割払いをはじめ様々な与信取引を提供しており、その内容をきちんと把握していないと意図せず支払えないほどの借金を抱えることになります。

従来はキャッシング機能とショッピングローンだけでしたが、最近はショッピングリボも利用できることが一般的です。

ショッピングリボは毎月の支払いが極めて少ない決済方式なため危険性が低いように思えますが、利息が膨らみやすく残債が減りにくいため、頻繁に利用していると借金の総額がとんでもない額になっていることがあります。支払いに困ってキャッシングすると問題はさらに深刻化するでしょう。

任意整理をするとショッピングリボやキャッシングで生まれた利息分を大幅にカットできる場合があります。さらに新たな利息が発生しなくなるため、ショッピングリボを多用していたなら任意整理をするメリットは大きいです。

なんとかして借金を完済したい

クレジットカードで多額の借金を抱えたものの、自宅を失う危険性があるため自己破産を利用できない場合は任意整理を活用できます。

任意整理は整理する借金を細かく指定できるため、クレジットカードだけを対象にすれば住宅ローンやオートローンに債務整理の影響が及ぶことはありません。

元本を減らせることは滅多にありませんが、分割払いで生じた利息分を削減できるため合計返済額を30%以上減らせるケースもあるでしょう。

交渉で返済期限の延長に同意してもらえれば月々の支払いが安くなるので、より完済の可能性が高まります。

クレジットカードはいつ作れるようになるのか

任意整理をした後しばらくの間は新規のクレジットカードが作れなくなります。

再びクレジットカードを作成できるようになるまでに何年かかるのか確認しておきましょう。

カード無しの生活を長くは続けられない場合は、この項目の内容をよく確認することをおすすめします。

一般的には5年かかる

クレジットカードを任意整理すると、新しくカードを作れるようになるまで約5年かかると言われています。

任意整理の記録は個人信用情報に記載されるのですが、記録は5年間保存されます。カードの再申請まで5年かかるのはこのためです。記録が残っている間は、どれだけ支払い能力を向上させても審査をパスできません。

注意したいのは任意整理の手続き開始から5年ではなく、借金を完済してから5年かかることです。任意整理でカード会社と借金の返済について合意できても、完済しないと再発行までの残り時間は短くなりません。

また、カード会社のブラックリストに名前が載っている場合は、5年以上経っても新たなカードは作れないでしょう。

クレジットカードを申し込むタイミングについて

任意整理後、借金の返済が終わって5年が経過すれば、いつでもクレジットカードを作れるわけではありません。信用情報から債務整理の情報が取り除かれていなければ、カード作成の申し込みは謝絶されるでしょう。

無駄な申し込みをしないために信用情報を取り寄せて、金融事故情報が消えたのを確認してからカードの申請を行ってください。

信用情報を取得するには信用情報機関に開示請求を提出する必要があります。情報の確認方法や料金は依頼する信用情報機関によって異なります。次の表で確認してください。

信用情報機関確認方法料金(手数料)
CICWEBサイト・郵送500円~1,500円
JICC専用アプリ1,000円
LSCWEBサイト・郵送1,124円~1,500円

任意整理後にクレジットカードの審査をパスするコツ

借金を完済し、信用情報から事故情報が削除されるとクレジットカードを再び取得できるようになります。しかし、任意整理をする以前よりも審査の難易度が上がるため、何度申請しても審査に落ちるケースもあります。

どういった点に注意すれば審査をパスしやすくなるのか解説しましょう。

利用限度額を最低にして申請する

キャッシング枠の利用限度額を最低にして申請すると審査を通過できる可能性が高まります。

利用限度額を上げると与信リスクが上昇するため、カード会社としては冷静な判断が必要です。利用限度額が高いほど審査は入念になり、長期間ローンを利用してこなかった人にとっては厳しい状況になるでしょう。

カード会社のリスクが低くなるように利用限度額を最低にしてクレジットカードを申請してください。

思い切ってキャッシング枠なしで申請するのも賢明な判断です。

任意整理をしたクレジットカードと関連性の無いカードに申し込む

任意整理をしたクレジットカードを再び取得しようとするのは無謀な選択です。

カード会社の多くは任意整理された相手をブラックリストに入れるため、申請してもカード取得の望みはほとんどありません。個人信用情報とは違い、このブラックリストから名前が削除される可能性は低いです。

ブラックリスト入りした場合、そのカード会社やグループ企業が発行している他のカードも取得できなくなります。ブラックリストを共有しているため、申請しても審査に落ちます。

任意整理をクレジットカードと関連性の無いカードに申し込みましょう。

ローンや分割払いの実績を作る

任意整理をすると長期間クレジットカードを持てなくなるためクレジットヒストリーが真っ白になります。

クレジットヒストリーとは個人信用情報に記載されるローンの利用履歴のことで、銀行やカード会社はこの情報を参考にカード申込者の審査を行っていると言われています。

審査ではクレジットヒストリーが重要視されるため、長期間ローン履歴が無いと支払い能力を疑われるでしょう。

カードを申請するなら携帯電話キャリアから携帯本体を分割払いで購入するなどして、クレジットヒストリーの実績を積み上げることが大切です。

何度も続けて申し込まない

効率的にクレジットカードを取得するために、一度に複数のカードに申し込むと審査に落ちしやすくなります。

カード会社は個人信用情報から申込者がいつクレジットカードに申し込んだのか簡単に確認できます。短期間に何度も申し込んでいると、お金に困っていると疑われるため支払い能力が無いと判断されかねません。

また、新規入会者限定の特典を提供しているカード会社は、特典を入手したらすぐに解約するかもしれないと疑うでしょう。

クレジットカードの申し込み履歴は個人信用情報に6ヶ月ほど残ると言われています。カード会社に疑いをかけられないように、カードの申し込みは6ヶ月で2回までに抑えましょう。

クレジットカードが作れない期間でも使える決済方法

任意整理をして借金を完済してから5年はクレジットカードが作れません。その期間の支払いを全て現金や銀行振込で行うのは現実的ではないでしょう。

クレジットカードの代わりに利用できるおすすめの決済方法を紹介するので、キャッシュレスを続けたい場合は参考にしてください。

デビットカード

クレジットカードのように利用でき、手軽に入手できるものを探しているならデビットカードを試してみてください。店舗やインターネットのショッピングサイトでクレジットカードと同じ感覚で決済できます。

デビットカードとクレジットカードの違いは銀行口座から代金が引き落とされるタイミングです。デビットカードは決済時にすぐ引き落とされますが、クレジットカードは翌月以降になります。

デメリットは分割払いに対応していないところです。全て一括払いとなるため、口座に十分な残高がないと決済が行われません。

デポジット型のクレジットカード

デポジット型のクレジットカードとは、事前に所定の金額をカード会社に預けることで利用できる特殊な決済サービスです。

支払いを延滞した場合は預け金から不足分が自動的に支払われるため、本来なら審査に落ちるような人でも利用できることがあります。

メリットは分割払いやリボ払いができるタイプもあることです。クレジットカードと全く同じように使えます。

審査が緩いようなイメージがありますが、年齢や年収によっては審査に落ちることもあります。また、債務整理の対象にした会社が運営しているデポジット型クレジットカードに申し込むのは止めておきましょう。ブラックリスト入りしているので審査を通過できません。

QRコード決済

クレジットカードと特徴が大きく違っても問題ない場合はQRコード決済をおすすめします。

専用のアプリをインストールして、レジでQRコードを提示したり、レジに貼られているQRコードをスキャンする必要はありますが、日本の主要スーパーやコンビニで利用できるので便利です。

ポイントが付与されるものもあるので、お得感もクレジットカードに負けていません。貯まったポイントは次回以降の決済で現金の代わりに利用できます。

種類が豊富にありますが、その多くは審査が無く、アプリをインストールしてチャージすればすぐに使えます。

まとめ:クレジットカードを任意整理したらお金の使い方を変える必要がある

クレジットカードを任意整理すると、そのカードは原則的に強制解約になり、他のカードも更新できず最終的には全て利用できなくなります。例外は任意整理中に多額の過払い金が見つかったケースだけで、一時的に使えなくなるものの、しばらくすると支払い機能が復活します。

強制解約となった場合、再びクレジットカードを作成できるようになるのは早くても5年後です。デポジット型のクレジットカードを作成できる人は上手く対処できますが、そうでない場合はクレジットカード前提の支払い習慣を改めることが大切です。買い物は預金額以下に抑えて、無理な支出を控えましょう。

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