仮想通貨(暗号資産)詐欺を見抜くには?ビットコイン詐欺を回避する方法
近年、インターネットを通じた取引が活発化する仮想通貨を狙った犯罪が増加しています。詐欺師はお金が集まるところを嗅ぎつける性質があり、残念ながら仮想通貨市場も例外ではありません。
詐欺師は偽の情報や誇大広告を利用して、あの手この手で騙そうとしてきます。仮想通貨はスマホやパソコンがあれば誰でも簡単に取引ができてしまうため、幅広い年代に被害が広がっています。中には、マッチングアプリや SNSを通じてやりとりを重ね、信頼関係を築いた上で罠にはめる詐欺師もいます。
仮想通貨詐欺の手口は多様化しており、見抜くことが困難な場合もあります。それでも、事前に正しい知識を学んでおけば、「何かがおかしい」と詐欺に気づける可能性が高まります。
そこで本記事では仮想通貨詐欺の手口や具体的な事例、対処法などを解説します。
仮想通貨詐欺とは
仮想通貨詐欺とは、インターネット上で電子的に取引される仮想通貨を狙った詐欺です。仮想通貨を用いた取引をしたにも関わらず、「出金できない」「業者と連絡が取れない」などのトラブルが相次いでいます。2017年には消費者庁、金融庁、警察庁が共同で注意喚起を行いました。
2022年4月からは民法が改正され、18歳以上であれば親の同意を得ずに取引が可能となったため、さらなる被害の拡大が懸念されています。
仮想通貨は知識の少ない初心者でも比較的簡単に取引ができることから、詐欺師の格好のターゲット市場になっており、特に注意が必要です。
仮想通貨とはお金と似たような価値を持つインターネット上の財産です。「暗号資産」とも呼ばれ、代金の支払いなどの取引や投資に利用できます。代表的な仮想通貨にはビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)などがあります。
仮想通貨は銀行等の第三者を介することなく、インターネットを通じて個人間取引や国際的な取引が可能です。資産形成の手段としても注目を集めています。
ただし、仮想通貨は日本円や USドルなど国が認めた法定通貨とは異なり、管理が不十分という指摘もあります。利用者の需給関係などの要因で価格が大きく変動するため、投資には注意が必要です。
ブロックチェーン調査会社のChainalies※によると、2023年の仮想通貨の違法取引は過去最高の201億ドルに達しました。2017年の50億ドルから約4倍に増えたことになります。
ではなぜ、これほどまでに仮想通貨をめぐる犯罪が横行しているのでしょうか。それには主に3つの理由があります。
- 取引を保護する法規制がほとんどない
- 情報が混乱している
- 知識のない初心者が参入しやすい環境にある
最近は仮想通貨を狙った特殊詐欺グループも存在感を増しています。こうしたグループでは複数の詐欺師が結託して、偽の情報などを信じさせるように仕向けています。
仮想通貨詐欺の手口
一般的に、詐欺師は以下のような流れでお金を騙し取ります。
- セミナー、SNS、マッチングアプリを通して知り合う
- 成功例や有名人の推薦など偽の情報を流してその気にさせる
- 偽アプリ・サイト、偽の業者などに誘い込む
- 出金しようとすると追加の送金を求められ、出金できない
- 連絡が取れなくなる
仮想通貨詐欺の手口は多様化していますが、代表的なものには「ポンジ・スキーム」「クラウドマイニング詐欺」などのように名前がついています。よくある3つの手口をご紹介します。
ポンジ・スキームとは新しい参加者からの投資金を用いて、他の参加者に利益と称して分配する手法のことです。アメリカの詐欺師、チャールズ・ポンジが名前の由来となっています。仮想通貨による投資詐欺のほとんどが「ポンジ・スキーム」です。
魅力的な利益を謳って投資を呼び込むものの、実際には投資をせず、詐欺師が投資金を手にします。最終的には新しい参加者が減っていき、スキーム自体が破綻してしまうという仕組みです。
詐欺師は信頼できる公的な機関になりすまし、偽のサイトやアプリへ誘導します。指示に従ってリンクを踏むと、マルウェアに感染することがあります。
存在しない支払いを求められたり、仮想通貨の情報を盗まれたりするケースもあります。
クラウドマイニングとは、取引データをブロックチェーンに登録し、その報酬として仮想通貨を得るという作業(マイニング)を専門的に行っている業者のことです。
詐欺師はこうした専門業者を装って入金させ、資金を騙し取ります。実際にはマイニングを行っていないため、リターンは戻ってきません。
実際の仮想通貨詐欺の事例
実際に仮想通貨詐欺の被害に遭った人の事例をご紹介します。
セミナーや友人・知人などの勧誘のほか、出会いを求める男女の恋愛感情を利用する「ロマンス詐欺」の手法を取る詐欺師もいます。
セミナーに参加し、スマホにアプリを入れて暗号資産を運用したら報酬が得られ、人を紹介すると紹介料がもらえると聞いて加入したが、出金が止められてお金が引き出せない。(20 代 男性)
引用元:暗号資産に関するトラブルにご注意ください!|金融庁・消費者庁・警察庁
久しぶりに会った友人に、「海外の事業者が運営する暗号資産のマイニングを行うスーパーコンピューターに出資すれば3カ月で元がとれる」、「人を紹介すると暗号資産でマージンが入る」等の話を聞いた。友人の勧めなので100万円預けることにし、指示されたサイトの登録番号を友人に伝え手続きをしてもらった。支払いは1カ月以内に行う話だったが、2週間後に突然友人から振り込むようにと連絡があり友人の銀行口座に半額振り込んだ後「残りは手渡しで」と言われたが、まだ払ってない。
毎日作られる暗号資産が私にも分配されているのはマイページで確認できるが、とても3カ月で元がとれるとは思えず話が違う。スーパーコンピューターは北欧の方にあるそうだ。組織のトップとはスマートフォンで連絡はできるが契約書はない。
引用元:暗号資産(仮想通貨)に関する様々なトラブル/京都府ホームページ
マッチングアプリで知り合った異性Xと親しくなり結婚をほのめかされた。「将来のために一緒に資産を増やそう」と言われ、教えられるまま暗号資産交換所Aに口座を作り10万円で暗号資産を購入した。次に海外の交換所Bに口座を作り、Aの暗号資産を送金するよう案内された。Bでチャートを見ると私の資産が増えたため信用し、送金を繰り返した。Bサイト内でXに指示されるまま売買を繰り返したが、やっていることは理解できなかった。全財産の300万円を投資するとBのチャートでは2000万円以上にもなった。すると突然「税金を支払っていないため、あなたの口座が凍結された。すぐに税金150万円を送金するように」と言われた。借金して送金したが凍結は解消されず、相手とも連絡不能になった。詐欺に遭ったように思う。
引用元:川崎市:マッチングアプリで知り合った異性に暗号資産(仮想通貨)投資を誘われて
仮想通貨詐欺を見抜くには?
手口がより巧妙になり、多様化する仮想通貨詐欺。信頼関係や恋愛感情につけ込む詐欺師もいるため、自分では詐欺だと気づきにくいケースもあります。
仮想通貨詐欺に遭わないためのポイントをご紹介します。
マッチングアプリやSNSでお金に関連する勧誘を受けても、乗らないようにしましょう。顔の見えないやりとりだけで相手を信頼してしまうのは非常に危険です。マッチングアプリやSNS上では相手を特定することが難しく、騙されたと気づいた時には退会され、連絡が取れなくなっていることがほとんどです。
特にマッチングアプリでは、詐欺師は利用者の恋愛感情や同情に付け込んできます。外国人の異性との出会いを求める利用者をターゲットにした「国際ロマンス詐欺」が多いことも特徴です。
マッチングアプリやSNSで仮想通貨の勧誘を受けたら、まず近くにいる友人や知人、家族に相談しましょう。冷静に判断できない場合には、専門機関に相談を持ちかけるのも有効です。いくら親密になったとしても、お金のやりとりに関しては慎重に考えるようにしてください。
国際ロマンス詐欺でも仮想通貨が使われることが多いです。
⇒SNSで急増中!仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺に騙されないためには?
詐欺師は「必ず値上がりする」「3ヶ月で資産が10倍になる」などといった魅力的なキャッチコピーで誘い込みます。できすぎた話には注意が必要です。
また、SNSや広告で有名人を騙って近づいてくることもあります。過去には世界的な資産家イーロン・マスク氏になりすまして仮想通貨の購入を進めた例もありました。有名な人が推薦しているからと言って、全て良いものとは限りません。自分自身が理解したか、納得しているかを基準に考えましょう。
「上手い話には必ず裏がある」と常に疑う姿勢を持ちましょう。
詐欺師は偽のアプリやサイトを通して、仮想通貨や個人情報を盗もうとしてきます。特に非公式のものは危険です。アプリの中にマルウェアを仕込み、インストールしたデバイスがマルウェアに感染することがあります。
公的な機関のアプリやサイトを装うなど、一見して見抜きにくいことも考えられます。この場合、実際に公的機関に問い合わせたり、URLの危険性チェックツールを使用したりして、事前に安全性を確認すると良いでしょう。
資産を守るために、保持しているデバイスそのもののセキュリティを高めることも重要です。
例えば、セキュリティソフトをインストールすることや2段階認証を取り入れることが効果的です。事前に対策をしていれば、アカウント情報を抜き取られてしまったとしても、それでは資産を抜き取ることができなくなります。
仮想通貨詐欺に遭ってしまった場合の対処法
すでに仮想通貨詐欺に遭い、出金できなくなってしまった方、業者と連絡が取れなくってしまった方は素早い対応が肝心です。
仮想通貨詐欺に遭った時は、2点を同時に進めていく必要があります。
- これ以上の被害に遭わないように自分の財産を守ること
- これからの方針を決めるため専門機関に相談すること
クレジットカードの番号や銀行口座など、資産に直結する個人情報が盗まれた可能性がある場合には、まずカード会社や金融機関に連絡を取ります。
詐欺に遭った旨を伝え、被害の拡大を抑えるために一時停止するよう求めましょう。
ネットバンクやネット証券、オンラインショッピングなど、関連するアカウントのパスワードも変更しておくとより安心です。
仮想通貨詐欺に遭った場合、個人でなんとかしようと考えず、専門機関に助けを求めましょう。
詐欺師はお金を騙しとるプロなので、素人が返金を請求しても返してもらえる見込みは低いです。まずは専門機関に相談して、今後の対処法を考えることをおすすめします。
何をしたら良いか全く検討がつかない方、詐欺かどうかの判断がつかない方は、国の相談窓口に相談すると良いでしょう。
こうしたトラブルに詳しい専門の相談員が対応してくれ、相談先や今後の対処法などを教えてもらえます。
相談窓口 | 相談方法 |
---|---|
金融サービス利用者相談室 | 電話:0570-016811(03-5251-6811) WEBサイト:https://www.fsa.go.jp/opinion/ ※FAX、郵便相談も可 |
消費者ホットライン | 電話:188(局番なし) |
仮想通貨詐欺については警察への相談も可能です。各都道府県の警察本部には仮想通貨詐欺を取り扱う「サイバー犯罪相談窓口」を設置しています。最寄りの警察署に足を運ぶか、「#9110」に電話をして相談しましょう。
警察に相談をする際には、なるべく情報を整理しておくことをおすすめします。相手とのやりとりや取引履歴、被害額、WebサイトのURLなどの情報は、被害届を提出する上でも重要です。
ただし、オンラインのみの関係で、相手がすでに行方をくらましていると特定が難しいこともあります。騙し取られた仮想通貨の返金が望めないことも考えられます。
仮想通貨詐欺に遭った被害者が求めるのは返金のはず。しかし、国の相談窓口や警察では返金に至らないケースもあります。例え、相手が詐欺の容疑で逮捕されたとしても、自動的にお金が戻ってくる訳ではありません。
確実な返金を望むのであれば、弁護士に相談することをおすすめします。詐欺師は簡単には返金に応じてくれないことが多く、最終的には民事訴訟を起こして争うことになります。訴訟は個人でも提起できますが、かなりの時間と労力を必要とします。
あらかじめ弁護士に依頼することで、被害者の負担を大きく減らすことができます。
金融商品詐欺について解説しています。
⇒金融商品詐欺の手口から対策まで|知っておくべき情報まとめ
仮想通貨詐欺を弁護士に相談するメリット
仮想通貨詐欺に遭った場合、最終的な返金を求めるのであれば、法的措置を視野に入れる必要があります。この時、頼りになるのが弁護士です。
弁護士は法律のスペシャリストであり、個々の事情に合わせた的確なアドバイスをしてくれます。弁護士を通して相手との交渉に臨むことで、法的措置を恐れて返金対応をしてくれるケースもあります。
交渉がうまくいかなかった場合でも、民事訴訟まで一括して任せることができるので安心です。
仮想通貨詐欺に遭ったらすぐに相談しよう
仮想通貨市場の拡大とともに、知識の乏しい初心者を狙った詐欺が増えています。詐欺師は高いリターンがあると謳い、巧妙な手口で取引を薦めてきます。マッチングアプリやSNSなどを通じたカジュアルな接触から、仮想通貨への取引に繋げる手口にも注意が必要です。
見知らぬ人とのお金のやりとりは極力しないようにし、詐欺を疑うことがあれば、すぐに専門機関に相談しましょう。弁護士に相談すれば、個別の事情に合わせた回収手段を選ぶことができ、最終的な法的措置にも対応が可能です。
仮想通貨詐欺に遭った場合には一人で解決しようとせず、詐欺に詳しい専門家に頼ることをおすすめします。