X(旧Twitter)誹謗中傷の対処法|侮辱罪が成立する条件と訴えられた場合の対応策が分かる
X(旧Twitter)の誹謗中傷は侮辱罪が成立するほど激しい場合があり、標的にされた場合は適切な対処が欠かせません。
そこで今回はX(旧Twitter)における誹謗中傷の対処法について解説します。
X(旧Twitter)の誹謗中傷の特徴や目的といった基本的なことから、侮辱罪と認めらえる条件、訴える手順など実践的な話まで取り上げます。
ポストやリプライが原因で侮辱罪で訴えられた場合の対処法についても解説するので、X(旧Twitter)の訴訟リスクに備えたい人は参考にしてください。
X(旧Twitter)における誹謗中傷の注意すべき特徴
まずはX(旧Twitter)で行われる誹謗中傷の気をつけたい特徴について解説します。
以前はインターネットで誹謗中傷されても無視すればいいと言われましたが、X(旧Twitter)などのSNSにおいては事情が異なり、適切に対処しないと問題が悪化する危険性があります。
X(旧Twitter)の誹謗中傷トラブルがどれだけ恐ろしいか確認してください。
X(旧Twitter)における誹謗中傷トラブルで1番注意したいことは毎日の生活に悪影響が及ぶことです。
今やX(旧Twitter)の会員数は8000万人を超えて、国民の7割近くが利用しています。X(旧Twitter)を目にしない日が無いほど多くの人に浸透している状況です。
そのため、X(旧Twitter)は実生活と強く結びついています。匿名で利用していても実生活の友人知人と互いフォローする関係であることも多いので、誹謗中傷に遭うとそのことが即座に学校や仕事で付き合いのある人にも知られてしまうでしょう。
根拠のない悪口が実生活に悪影響を及ぼすリスクを否定できません。
X(旧Twitter)では眉をひそめるような激しい中傷ポストが飛び交うことがあります。誹謗中傷を何のためらいもなく行えるのは匿名性が高いためです。
アプリからならメールアドレスだけでX(旧Twitter)に登録できるため、個人を特定されるリスクが低いと利用者に思わせます。
バレなければ好き勝手言っていいと考える人も少なくないでしょう。
本名が表示されるSNSと比べると利用者の誹謗中傷に対するハードルは低いです。複数のアカウントが取得できることも安易な悪口を助長しています。
いつでも捨てられるアカウントを作り、誹謗中傷をするケースが後を絶ちません。
X(旧Twitter)の特徴のひとつであるリポスト機能が誹謗中傷に拍車をかける場合もあります。
加工した画像を使い巧みに相手を中傷したポストは人の関心を引きやすく、リポストを誘発します。
リポストしたアカウントに大勢のフォロワーが付いていれば誹謗中傷が一気に広まり、第二第三の暴言を生み出します。
リポストされた誹謗中傷を改変したポストが投稿され、それを面白がるケースもあり、こうなると火消は簡単ではありません。
ユーザーが多いことに加えて、拡散を容易にするリポスト機能があるため誹謗中傷のポストがあちこちにばら撒かれます。
場合によっては他のSNSにまで拡散することがあり、そこまでの規模で広がると問題の誹謗中傷投稿を全て削除するのは事実上不可能です。
また、X(旧Twitter)の運営会社がポストの削除に消極的なために、誹謗中傷の消去が進まないこともあります。
他にも、問い合わせの返信を受け取るまでに1週間ほどかかる場合があるなど、運営の対応は必ずしも迅速とは言えません。
X(旧Twitter)での誹謗中傷が侮辱罪と判断される条件
X(旧Twitter)の誹謗中傷に対処するなら侮辱罪について詳しく知っておきましょう。
誹謗中傷が侮辱罪の要件を満たせば、目的に合わせて民事訴訟か刑事告訴を選べます。
侮辱罪の成立要件が2つだけなので、要件を把握して侮辱罪を利用できるか自分である程度判断できるようになりましょう。
誹謗中傷が侮辱罪だと裁判で認められるには次の要件を満たす必要があります。
- 公然と人を侮辱する
- (侮辱の内容が)具体的な事実を伴わない
「公然」とは大勢の人に知られる可能性がある状況のことです。駅前のような人目に触れる場所だけでなく、インターネットのような多くの人が目にする環境も公然に該当します。
「侮辱の内容が具体的な事実を伴わない」とは事実ではない中傷のことです。「バカ」や「恥知らず」といった具体性に欠ける悪口や、真実とは異なる暴言が該当します。
通常のポストはX(旧Twitter)に登録していない一般の人でも閲覧できるため、「公然」の条件は必然的に満たしています。問題は具体的な事実を伴うか否かです。
「留年したくせに」「1年で3回も転職している」といった相手に関係した事実で中傷するケースは侮辱罪には当たりません。誰にでも言える悪口か事実無根の誹謗中傷である必要があります。
侮辱罪については下記の記事で詳しく解説しています。
⇒侮辱罪にあたる言葉とあたらない言葉|侮辱罪で訴える方法や対処法も解説
X(旧Twitter)で誹謗中傷が侮辱罪と認められにくい条件
ポストが侮辱罪に当たるのか、より正確に判断するために侮辱罪に認められにくい条件についても確認しましょう。
一見すると侮辱罪の要件を満たすように思えるポストでも、発言内容や誹謗中傷が行われた場所によっては侮辱罪と認められないケースもあります。
誰に対する発言なのか判別が難しい誹謗中傷は侮辱罪に当たらないことがあります。
侮辱罪は特定の人物に対して公然と悪口を言う行為であるため、相手がハッキリしない誹謗中傷では要件を満たせません。
「匿名さん」のような、ありきたりなアカウントネームを付けている人は複数いるので、個人の特定が難しいです。
このようなネームで誹謗中傷されても自分のことを言っていると断定できないケースもあるでしょう。
自分に対する侮辱であることが明らかでなければ侮辱罪で訴えるのは困難です。
発言内容に公益性が認められる場合、侮辱罪にはなりません。たとえば企業が収賄をしていることをポストで暴露したなら、誹謗中傷を伴う内容であっても公共性を考慮して罪に問われない可能性があります。
またポストの内容が真実である場合、一部に罵詈雑言が含まれていても侮辱には当たらないと判断されることもあります。
とくに政治家や経済に大きな影響を与える大企業の不正に関連する発言は公益性が高いので、真実ならば侮辱罪には当たらないことが多いでしょう。
侮辱罪は多くの人が問題のポストを目にする可能性がある状況でのみ成立します。
送った相手だけが内容を確認できるダイレクトメッセージでは、侮辱罪の要件を満たすことはできません。
執拗にダイレクトメッセージで誹謗中傷を繰り返されても侮辱には該当しないので、ブロック機能などを使って加害者のアカウントの発言が表示されないようにしましょう。
また、X(旧Twitter)はフォローしているアカウントとだけダイレクトメッセージのやり取りができるように設定できます。
「おもしろくない」「写真を撮るの下手だな」などのよくある悪口を数回言われた程度では侮辱罪には当たりません。
侮辱罪の要件に回数に関する内容はありませんが、実際のところ執拗に暴言を繰り返される必要があります。一般的な感覚で判断して、異常なほどしつこく悪口を言われない限り侮辱罪で訴えるのは難しいでしょう。
また、全ての罵詈雑言が侮辱に当たるわけではありません。ポストに対する批評と悪口の判別は難しくことも多く、誹謗中傷だと思っていたポストが批評と判断されることもあります。
侮辱罪で訴えるつもりなら第三者の意見も聞いてから決めましょう。
X(旧Twitter)などのSNSにおける誹謗中傷が侮辱罪になった事例
X(旧Twitter)において、どのような誹謗中傷が侮辱罪として訴えられたのか実際の事例を見ていきましょう。
芸能人の事例が多くなりますが、インフルエンサーなど知名度が上がってくると一般の方でも誹謗中傷の標的になりやすいため、対策の参考になるでしょう。
人気アイドルグループに所属していたAさんは芸能活動を続けながらアパレル会社の運営に携わっていました。
しかし、妊娠を発表した頃からインターネットの掲示板において数人から連日のように「流産しろ」などと激しい誹謗中傷を受けます。
その後も暴言がやむことはなく、むしろエスカレートしていくようでした。
自宅に火をつけるような投稿もされ、恐怖を感じたAさんは弁護士に相談。
後日、誹謗中傷を繰り返した女性2人が侮辱罪で警察に書類送検されました。
女性芸能人のBさんはYoutubeチャンネルで動画を投稿するなど、ファンと積極的に交流をしていました。
しかし、定期的に投げられる心無いコメントに大きな精神的ストレスを感じていたそうです。
誹謗中傷は何ヶ月経っても止まることはなく、それでどころか殺害予告ともとれるメッセージまで受け取るようになります。
以前にストーカー行為を受けた経験があったBさんは所属する事務所に相談し、脅迫を受けていることを発表。
警察に事件を通報して、後日30代の男が書類送検されたそうです。
誹謗中傷を行った加害者を侮辱罪で訴える手順
ここからはX(旧Twitter)で誹謗中傷を受けた場合に、相手を侮辱罪で刑事告訴するまでの手順についてお伝えします。
手順は大きく分けて3つあり、いずれの手順でも法律や裁判に関連した知識が必要になります。
また、全体の流れを把握することで、弁護士に相談する時に話の内容を理解しやすくなるでしょう。
訴えるためには最初に誹謗中傷が侮辱罪となる証拠を集めてください。何が侮辱罪の証拠になるのか分からない場合は法テラスや弁護士事務所に相談するといいでしょう。
集めるのは誹謗中傷が書かれた投稿のページです。裁判所に提出するまではデジタルデータで保存しておきましょう。
保存方法は次のやり方がおすすめです。
- ブラウザでWEBページを丸ごと保存する
- ページ全体のスクリーンショットを撮影する
- ページをPDFに変換して保存する
- ページを用紙に印刷して保存する
スクリーンショットや紙に印刷して保存する場合は、誹謗中傷が投稿されたWEBページのURLも一緒に記録しておきましょう。
どのページに暴言が載っていたのか示せます。
証拠が揃ったら加害者の情報を集めます。侮辱罪で訴訟を提起するために加害者の氏名と住所を取得しましょう。
加害者の氏名と住所を得る手順は次のとおりです。
- X(旧Twitter)社に対する発信者情報開示命令を裁判所に申し立てる
- X(旧Twitter)社に誹謗中傷を投稿した利用者のIPアドレスを提供するよう請求する
- IPアドレスから加害者が利用したプロバイダを特定する
- プロバイダに加害者の氏名と住所を提供するよう請求する
刑事告訴をするには告訴状を作成し警察などの捜査機関に提出します。告訴は口頭と紙面のどちらでもできますが、紙面で行うのが一般的です。
告訴状の書き方に関しては警察署や裁判所で入手できるサンプル、またはインターネットの作成例を参考にしてください。正確な書類にするためには弁護士などのフォローが必要になるでしょう。
告訴状に書く内容のうち代表的なものは次の3つです。
- 告訴事実(誹謗中傷の経緯や背景について詳しく述べる)
- 告訴に至った経緯
- 告訴の趣旨(誹謗中傷がどの罪名・罰条に該当するのか明示する)
侮辱罪で訴える場合に注意すべきこと
侮辱罪を根拠に訴訟や告訴をする際に気をつけたいことをお伝えします。
知らないと手続きに支障が出ることもあるので、初めて侮辱罪で法的手段に訴える方はこれから取り上げる内容を確認することをおすすめします。
最新事情についても触れるので、侮辱罪で訴訟を起こした経験がある方も認識を改めるのに役立つでしょう。
侮辱罪は2022年7月7日より厳罰化されています。これまでの侮辱罪は最大30日間身柄を勾留されるか、1,000円以上10,000円未満の金銭を納付するだけで済みました。
現在は1年以下の懲役または禁固か、30万円以下の罰金もしくは科料となっています。
従来の侮辱罪は刑罰が軽く、侮辱罪で訴えても加害者にとって心理的プレッシャーをかけられませんでした。
しかし、厳罰化でいきなり実刑判決が下る可能性が出てきたため、今後事情は変わっていくと予想されます。
名誉棄損とともに誹謗中傷を罰する際の選択肢に入るでしょう。
フォロワーの数は侮辱罪の要件に含まれていません。フォロワー数が少なくても侮辱罪が成立する場合があります。
侮辱罪は大勢の人が知る環境でないと成立しないと聞いて、フォロワー数が少ないと侮辱罪で訴えるのは無理と判断してしまった人もいますが、大切なのは多くの人の知る可能性があるかどうかです。
リポスト機能があり、いつどこで投稿が拡散されるか分からないX(旧Twitter)は、多くの人の耳目に触れる可能性がある環境です。
自身のフォロワーが少なくても、フォロワーに多くのフォロワーを持つアカウントがいる場合などは侮辱罪が成立することもあるでしょう。
侮辱罪には次の告訴期間と公訴時効の2つの時間制限が設けられています。
告訴期間は告訴ができる期間のことで、誹謗中傷が行われた事実を確認してから一定期間内に告訴しないと起訴できなくなる仕組みになっています。
侮辱罪は告訴期間がわずか半年しかないため、誹謗中傷を確認したら時間をかけずに告訴の準備を進める必要があるでしょう。
公訴時効とは犯罪行為を処罰できる期間のことで、犯行が行われた日から数えます。侮辱罪の公訴時効は1年です。
被害者が犯行を認識していなくても、誹謗中傷の投稿がされた日から1年が経過すると起訴できなくなります。
X(旧Twitter)において侮辱罪で訴えられた場合の対応策
X(旧Twitter)を利用する以上、何気なく投稿したポストのために侮辱罪で訴えられる可能性があります。
誤って誹謗中傷をしてしまった時に備えて、侮辱罪で訴えられた場合の対応策を確認しておきましょう。
対応方法を知っていれば落ち着いた行動がしやすくなります。
侮辱罪で訴えられると訴状が送られてきます。刑事裁判の場合、公訴事実が記載されているので、訴訟に至った経緯などを読んで、自分の行為が本当に侮辱罪に当たるのか確認してください。
その結果によって今後の方針が決まります。
公訴事実には告訴の根拠となる侮辱罪の成立要件が記載されるので、それが本当に要件を満たすのか調べましょう。
もし侮辱罪の要件を満たすようなら裁判で争っても勝ち目はありません。減刑を図るべきでしょう。
公訴事実の内容が自分の認識している事実と異なり、侮辱罪の要件を満たさないと判断した場合は勝訴を目指して裁判で争うことになります。
裁判で争う場合は、検察など捜査機関が主張する犯罪事実に自分の行為が該当しないことを示す必要があります。
X(旧Twitter)における侮辱罪の場合、犯罪事実に反論するポイントは次の3つです。
- 相手しかメッセージを確認できなかった
- 自分の発言によって相手の社会的評価は下がらない
- 誹謗中傷ではなく正しい批判・論評であった
侮辱罪の成立要件は「公然性」と「事実を伴っていない」ことなので、この2つのうちどちらの要件を崩すのか狙いを決めて反論しましょう。
訴訟事実を読んで、自分の行為が侮辱罪に間違いなく該当すると判断したなら減刑してもらえるよう行動しましょう。
厳罰化されたため、以前よりも情状酌量されにくくなっていると考えられますが、それでも悪質なケースでなければ十分に反省しているとアピールすることで不起訴になる可能性があります。
反省文で自らの過ちを認めて謝罪し、賠償など相手の被害回復に積極的な姿勢を見せましょう。
誹謗中傷が初めてなら、常習性が無いことを印象づけられる可能性があるので、忘れずに主張してください。
X(旧Twitter)の誹謗中傷トラブルの解決を弁護士に依頼すべき理由
X(旧Twitter)で誹謗中傷トラブルに遭ったら弁護士が頼りになります。
削除機能や運営に対応を求めるよりも弁護士に依頼したほうが根本的な解決につながりやすいです。
他にも訴訟の手続きに関するメリットもあるので、弁護士に依頼すべき理由を確認しておきましょう。
悪質なケースでは刑事告訴を前提に動いてくれます。侮辱罪はもちろん、3年以下の懲役が科せられることもある名誉棄損で訴えることも可能です。
嫌がらせ目的で誹謗中傷を行っている加害者は投稿が削除されたぐらいでは迷惑行為を止めないため、懲役刑を伴う刑事告訴が必要になるでしょう。
また、刑事告訴では告訴状を正確に書かないと警察が受け取ってくれない場合があります。
弁護士が目を通した告訴状であれば受理される可能性が高まるでしょう。
誹謗中傷が行われてるようになった経緯や被害状況を弁護士に伝えれば、侮辱罪で訴えられるのか判断してくれます。
侮辱罪の成立要件は名誉棄損などと比べると判断しやすいですが、それでも素人の判断には曖昧さが残るため正確さが伴いません。
法律知識を用いて、筋道を立てて成立要件の説明ができる弁護士なら、より説得力を持った成立要件の立証ができるでしょう。
弁護士に自分のケースで侮辱罪が成立する理由を詳しく説明してもらえば、告訴事実の質が向上して告訴状が受理されやすくなります。
告訴をされることで初めて誹謗中傷のリスクを認識し、交渉に応じる相手もいます。弁護士に一任していれば、こういった加害者との直接交渉も最後まで肩代わりしてくれるでしょう。
交渉では誹謗中傷を止めるよう要求できます。侮辱罪で告訴された場合、懲役刑になる危険性があるため、相手の態度が180度変わることもあるでしょう。
経験豊かな弁護士なら相手の出方を見るだけで意図を読み取れるので、交渉を有利に進めて、こちらの要望を全て相手に飲ませることも期待できます。
まとめ:執拗なX(旧Twitter)の誹謗中傷には侮辱罪で訴えるのが効果的
根拠のない誹謗中傷ポストが長期間にわたり続く場合は侮辱罪に該当する可能性があります。
以前は刑罰の内容が軽いために、成立要件が厳しいものの厳罰が期待できる名誉棄損が選ばれましたが、厳罰化により侮辱罪で訴えることが今後は増えると考えられます。
成立要件が比較的シンプルな侮辱罪ですが、証拠集めや告訴状の作成には専門知識が必要なため、弁護士に頼ることになるでしょう。
侮辱を根拠に法的手段に訴える場合は刑事告訴と民事訴訟のどちらにも対応できるため、弁護士に力を借りて柔軟に対応しましょう。