任意整理中の借入はできる?借入すると債権者にバレる理由についても解説
任意整理中の借入ができれば生活にゆとりを持てるので、試したいと考えている人は少なくないでしょう。
しかし、ネットを見ると借入できた人と審査に落ちた人の両方がいます。
そこで今回は任意整理中の借入はできるのか解説します。
借入できる資金調達方法と、任意整理中に借入するとどうなるか確認できます。リスクを確かめて、本当に借入すべきなのか冷静に考えてみてください。
借入の危険性を感じた人のために、安全な資金調達方法も紹介します。
任意整理中の借入が難しい理由
結論から言うと、任意整理中の借入は原則的にできません。
任意整理を行う場合、弁護士に依頼するのが一般的です。依頼を受けた弁護士は債権者全員に受任通知を送ります。受任通知は債権者に債務整理を始めることを知らせるためのもので、債権者は受任通知を受けると登録している信用情報機関に債務整理の事実を伝えます。
信用情報機関は個人のローン履歴を保存している組織で、この組織のデータベースに債務整理の情報が記録されると新規の借入が極めて難しくなります。信用情報機関に債務整理の記録が載ることをブラックリスト入りと呼ぶこともあります。
金融機関は借入の申し込みがあった場合、信用情報機関の情報も参考にしながら審査するのですが、ブラックリストに入っていると返済できないと判断されるため審査に必ず落ちます。
迅速に対応してくれる弁護士の場合、契約したその日に受任通知を発送することもあるので、任意整理を始めたら早ければ1ヶ月以内に新規の借入ができなくなるでしょう。
任意整理中でも借入可能なサービス
任意整理中は借入が難しくなりますが不可能ではありません。いくつかの貸金業者は任意整理中であることを知ったうえでも融資してくれます。
任意整理中の借入はおすすめできませんが、あくまで選択肢のひとつとして、どういったところで借りれるのか紹介しましょう。
危険なケースもあるので、それも併せてお伝えします。
頻繁に利用している金融機関
普段から頻繁に利用している金融機関の中には、これまでの借入や返済の実績を評価してお金を貸してくれるところもあります。
任意整理をする前に融資の契約をしていて、継続的に返済を行ってきた場合は追加融資が認められることもあるでしょう。この場合は信用調査が終了しているので、信用情報を確認されないことがあります。追加融資の際の信用調査については金融機関ごとに対応が異なるため絶対とは言えませんが、借りられる可能性があるので試してみる価値はあります。
地域密着型の中小貸金業者
地域に根付いた小規模貸金業者は大手が貸さない相手にも融資してくれることがあります。
支払い能力の評価方法については一般的な金融機関と大きな違いはありませんが、信用情報を大手ほど重要視しません。どの金融機関に相談しても断られた人でも最後の頼みの綱として利用できるでしょう。
中小の貸金業者を利用する場合は次の条件を覚えておいてください。これらの条件を満たしていると審査をパスしやすくなります。
- 勤続年数が長い
- 今後も安定した収入が期待できる
- 収入が増える可能性がある
- 多重債務をしていない
- 残債が少ない
規模の小さい貸金業者は短期融資を想定していることが多いので、これから1年以内の支払い能力を重視します。半年以内に収入アップが確実に見込める状況なら融資の可能性は高くなるでしょう。
闇金には注意
どの金融機関にも融資を断られた場合に注意したいのが闇金からの融資の申し出です。
闇金は任意整理をしてブラックリスト入りした人を狙って、融資の提案をしてきますが、年利20%を超える違法な金利がかけられています。安易に受けると、かえって家計が苦しくなります。
返済だけでなく厳しい取り立てに悩まされることになるでしょう。自宅に加えて仕事場にまで押しかけてきたり、親族に返済を催促するよう言ってくるので精神的な負担は計り知れません。
どんな事情があろうと、闇金からはお金を借りないでください。
なぜ任意整理の債権者にも借入がバレるのか
任意整理中に借入をすると、そのことが交渉中の債権者に伝わることがあります。決して稀なことではないため、なぜ債権者に借入したことがバレるのか、その仕組みを把握しておきましょう。
債権者に知られることなく借入することが、いかに難しいことか理解して、安易な借入をしないよう注意してください。
信用情報からバレる
金融機関は規模の大小にかかわらず指定信用情報機関に登録しています。審査の際に信用情報機関から申込者の信用情報を取り寄せて確認しますが、問題が無いと確かめた後も信用情報の調査は続くので気をつけてください。利用者の最新ローン状況を確認するために、定期的に信用情報を取得して目を通しています。
信用情報の定期確認は任意整理の交渉中も継続して行われるため、任意整理後に借入をするとタイミングによっては即座に債権者の知るところになるでしょう。
また、金融機関は他の企業と信用情報を共有をすることもあるため、他社から送られてきた最新の信用情報をチェックした際にバレることもあります。
返済能力の再確認で発覚する
受任通知を受けた後、債権者は債務者の支払い能力を調べるために最新の信用情報を調査します。もし任意整理後に借入をした場合、信用情報にそのことが記載されますから債権者に借入を知られる危険性があります。
債権者の再確認を回避するために新たな借入を遅らせても、信用情報の定期チェックで発覚するため、任意整理が完了するまで隠しとおすことは難しいです。
しかし、信用情報の再確認で借入がバレず、定期チェックでも発覚しない可能性はゼロではありません。定期チェックの間隔は半年~1年で、任意整理は3ヶ月~6ヶ月ほどかかるため、タイミングが良ければバレずにすむ可能性もあるでしょう。
申告義務を守るとどうしてもバレる
任意整理中の借入は可能性はわずかですが債権者にバレない場合があります。しかし、任意整理には申告義務があるため、借入を知らせないとペナルティを受けます。
申告義務とは債務者が債権者や依頼した弁護士に対して、正確かつ詳細な情報を伝える義務を負うことです。任意整理が公正に行われることを目的としているため、申告義務に違反することは極めて不誠実な行為に該当します。
申告義務に従うと、債務者は新規の借入をしたらすぐに債務者と弁護士に報告しなくてはいけません。もし知らせなければ任意整理が無効にされたり、法的措置を取られる可能性があります。適切に任意整理を進めるなら、借入を隠しとおすことはできないでしょう。
任意整理中に借入した場合に生じるトラブルやリスク
任意整理中でも借入できる場合があります。借入によって経済状況は一時的に改善しますが、それ以上に深刻な問題が発生する可能性があるため注意が必要です。
本来なら控えるべき任意整理中の借入をすると、どういったトラブルが起きるのか見ていきましょう。
闇金の被害に遭いやすくなる
信用情報に任意整理の記録が記載されると融資が受けられなくなり、クレジットカードも使えなくなります。
緊急用の資金調達方法を2つも失うことになるため、普段なら利用しない怪しい貸金業者からの借入を考えてしまうでしょう。
10日で50%の金利が設定されているものは例外なく闇金ですが、背に腹は代えられない状況では借りる人もいます。
闇金からお金を借りると利息が短時間で積み重なるだけでなく、違法な取り立てに悩むことになります。
どこも貸してくれないからといって、得体の知れない貸金サービスを利用するのはやめておきましょう。
一括返済を求められる
債権者は債務者が支払いを延滞した場合などに一括返済を求めることができます。
この権利は受任通知を受けた後でも有効で、債務者への直接的な取り立ては認められませんが、弁護士に宛てて督促の通知を送ることは可能です。
債権者が任意整理中に債務者の借入の事実を知ったら不誠実なことをされたと憤り、一括返済を請求する可能性は十分考えられます。債権者からの借入に対して減額を請求しながら、一方で新規の借入をしていますから債権者の怒りは当然です。
一括返済を請求してくる債権者は本気で取り立てにきます。一括返済を断っても裁判を提起されるでしょう。裁判には長い時間がかかるため、心身ともに大きな負担を受けます。
裁判の結果、一括返済が認められれば財産の差し押さえなどの強制執行が行われる可能性もあるでしょう。
任意整理の交渉が頓挫する
任意整理の借入は債権者への裏切り行為であるため、発覚すると債権者は債務者のことを信用できなくなります。任意整理の交渉を早期に切り上げ、裁判などの強制力を伴う対応策を講じて来るでしょう。
交渉を継続してくれる場合でも債権者に大きく譲歩した条件になる場合もあります。利息が免除される予定だったものが、50%の減額に留まるなど本来より不利な条件で返済していくことになります。
債権者が複数いるケースでは、1人の債権者が交渉を打ち切ることで、事情を知った他の債権者がそれに続くことがあります。最悪の場合、全ての交渉が頓挫します。
依頼した弁護士が突然辞任する
任意整理の借入が背信行為になるのは依頼した弁護士も同じです。
弁護士は債権者との交渉において、債務者が返済計画を立てて、それを誠実に遂行するつもりであることをアピールします。その最中に新たな借入をされては説得力を失います。「この依頼者との契約は続けられない」と思われても仕方ありません。
また、借入をされると債務に関する資料を修正しなくてはいけません。こういった新たな作業は費用に計上されていないため、依頼を続けても採算が取れなくなる場合があります。
円滑な任意整理のために必要な協力が得られないと弁護士が判断すれば、信頼関係は崩壊して契約は破棄されるでしょう。
再び返済の督促に悩まされる
借入によって信頼関係が崩れて弁護士が辞任した場合、受任通知の効力が切れるため債権者による借金返済の督促が再開されます。
任意整理が頓挫した後の取り立てはより厳しいものになる可能性があります。回収不能になるリスクを債権者が強く感じた場合、一括返済を請求されることも考えられます。裁判になる可能性が高い状況で頼れる弁護士がいないことは大きなストレスになるでしょう。
弁護士から辞任の連絡を受けたら、督促が始まる前に新たな弁護士を専任してください。
詐欺罪で訴えられることも
返済する意志が無いにもかかわらずお金を借りると詐欺罪になる可能性があります。
任意整理では新たな借入をしないことを前提に返済計画を組み立てます。もし借入をしてしまったら債権者に支払い能力を偽って伝えたことになるでしょう。偽りの前提で任意整理を成立させて返済額を減らしたら詐欺罪の要件を満たすことになります。
新たに借入をした企業から訴えられることもあります。
返済能力が無いにもかかわらず借入をすれば、融資してくれる企業をだまして金銭を得たと判断されてもおかしくありません。相手を欺く意図があり、不正に利益を得ているため、このケースでも詐欺罪に該当する可能性があるでしょう。
借金返済の免責を受けられないどころか、刑事罰を科されるリスクがあります。
債務整理中に借入の代わりに使える資金調達方法や制度
任意整理中の借入にはデメリットが多いため、他の方法でお金を用意することが望ましいです。
これから債務整理を進めながら安全に利用できる資金調達方法を紹介していくので、借入以外の選択肢がないか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は所得の少ない世帯や高齢者を救済する目的で作られた貸付制度です。都道府県社会福祉協議会と市区町村社会福祉協議会が中心になって運用されているため安全性が高く信頼できます。
4つの種類があり、それぞれ目的が異なるので、申請する際は適したものを選ぶことが大切です。
総合支援資金: 生活に欠かせない費用を工面するのに利用します。生活費や住居費に使えます。
福祉資金:医療や介護など福祉に関連した出費に使えます。
教育支援資金:子供の教育費に利用できます。
緊急小口資金:突然大きな出費が必要になった場合に利用できる資金です。
任意整理中の生活苦は総合支援資金として申請できます。金利は非常に低く、返済を猶予してもらう制度もあるので将来的に返済が難しくなった場合にも対応しやすいです。条件次第では連帯保証人が不要なのもありがたいです。
社会福祉協議会で詳しい話が聞けるので、まずは相談してみましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度
母子家庭や父子家庭の場合は母子父子寡婦福祉資金貸付制度を利用できないか検討してください。経済的な理由で生活が不安定になるのを防ぐための制度であるため、任意整理でお金に困っている人でも利用可能です。
この制度は子供の生活や教育にかかる費用を支援することを目的とする側面が強いため、子供の養育費が足りない場合などに活用するといいでしょう。
子供の養育費以外にも利用でき、家計を安定させるために親が新たな技術を学ぶ場合の資金を支援してくれる場合があります。
こちらも福祉事務所や社会福祉協議会によって運営されており、低金利でゆとりのある返済ができます。
ただし、利用に際しては実行可能な返済計画を立てて認めてもらう必要があるため無理な借入はできません。経済状況によっては想定した借入額に届かないこともあるでしょう。
資金の使い道に関する制限が緩いため、条件を満たすなら是非とも申し込みたい制度です。
善意銀行
善意銀行は一般の方から受け取った寄付金を生活困窮者などに貸し付ける活動のことです。
名称に銀行とありますが、地域の福祉協議会によって寄付金の受付と貸付が行われているため金融機関ではありません。
以前は全国各地にありましたが、現在はボランティアセンターがその役割を担っているケースもあります。そのため地域によっては貸付サービスを受けられない場合もあるので注意してください。
支援対象は寄付者の意向を反映することもありますが、経済的に困窮しているなら概ね対象者になるでしょう。任意整理をしても家計が苦しいなら可能性は十分にあります。
保険料や医療費の減免制度
医療費の支払いが大きな負担になっている場合は医療費減免制度を検討するのもおすすめです。医療機関に支払う医療費を20%~100%減額できます。
免除される慰謝料の割合は利用者の経済状況によって異なり、生活保護受給者や被災者といった困窮者は全額免除されます。
住民税非課税世帯などの所得の少ない人でも最大90%までの減額が認められます。
国民健康保険に入っている場合は保険料の減額か免除を申請しましょう。収入が大きく減少しているなら審査を通過できる場合があります。お近くの保健センターで相談してみてください。
生命保険の契約者貸付
生命保険に加入しているなら解約返戻金を使って生活費を確保することもできますが、契約内容によっては解約を避けたいこともあるでしょう。そんな時は契約者貸付を活用してください。
契約者貸付とは解約返戻金が利用できる生命保険に設けられている貸付制度で、解約返戻金の70%~90%ほどの金額を借りられます。
これまで長期間保険料を支払ってきた実績があれば即日で融資を受けられるため、任意整理中に突然のお金が必要になった場合でも対処できます。
自己破産の場合、貸付制度で受け取ったお金は借金返済のために回収されますが、任意整理では問題無く受け取れます。自己破産のケースと混同しないよう気をつけましょう。
生活保護
任意整理だけでは生活の改善が見込めない場合や、自己破産や個人再生といったより効果的な債務整理が利用できない場合は生活保護を検討してみましょう。
生活保護は扶助費の支給だけでなく、医療費の免除などの生活再建のための支援を受けられます。さらに再就職に役立つ技能の取得を支援してくれる場合もあります。
一方、収入があった際に報告を求められたり、受け取った扶助費の使用に制限があるため、借入と比べると使いにくさを感じるでしょう。
任意整理中の借り入れに関するよくある質問
任意整理中の借金について幅広く取り上げて来ましたが、それでもカバーできなかった内容があります。
ここからは任意整理中の借入に関する実践的で具体的な話を取り上げます。知っていれば任意整理の借入をスムーズかつ意図通りにできるようになるでしょう。
任意整理中でも即日入金できますか?
任意整理中の申込者に即日で融資してくれる金融機関や貸金業者は滅多にいません。
弁護士に依頼した場合、すぐに受任通知が発送されるため、早ければ2週間ほどでブラックリストに登録されます。ブラックリストに入ったら借入自体が難しく、即日入金は非現実的です。
規模の小さい貸金業者なら可能性はありますが、闇金に申し込んでしまう危険性があります。インターネットやSNSを調べても口コミが出てこないようなら注意しましょう。安全のために貸金業登録番号が登録されているか確認するのも忘れないで下さい。
債務整理中の借入も総量規制の対象になりますか?
任意整理などの債務整理中の借入は全て総量規制の対象になります。
総量規制は多額の借金で苦しまないように貸金業者からの借入額を制限する法律であるため、債務整理中か否かは問題になりません。
債務整理中でも通常の場合と同様に年収の3分の1が借入の上限額になります。
ただし、いくつかの融資は総量規制の対象外です。上限額に達していても次のローンサービスは利用できる可能性があります。
- 銀行が提供している融資サービス
- 住宅ローンと自動車ローン
- 緊急医療費や教育費など一部のサービス
借り入れの代わりにキャッシングはできますか?
任意整理で借り入れができなくなると、カードローンやクレジットカードのキャッシングを利用したくなりますが、ブラックリスト入りしているため、こちらも使えません。
貸金業者およびカード会社は定期的に利用者の信用情報を確認しているため、ブラックリストに登録されていることを確認しだい利用者のキャッシング機能を停止します。
任意整理の対象としていないクレジットカードでも状況は同じです。定期チェックで債務整理をしたことが知られればキャッシングは使えなくなるでしょう。
すぐに入金してくれる支援制度はありますか?
支援制度の多くは国や地方自治体によって管理されており、支援金が振り込まれるまでには時間がかかります。
大事な税金もしくは寄付金を原資としているため、審査は慎重に行われます。そのため即日で入金されることはありません。
審査に時間がかかる以外にも、手続きの複雑さも入金を遅らせる要因のひとつです。いくつもの機関が関与するため情報の共有がスムーズにできずに手続きが停滞することがよくあります。
支援制度を利用する場合は、なるべく早い段階で申請しましょう。たとえば生活福祉資金貸付制度は申請から入金まで1ヶ月~2ヶ月ほどかかります。
まとめ:任意整理中の借入はデメリットが多い!代わりに支援制度を検討しよう
任意整理をすると2週間~1ヶ月ほどでブラックリスト入りするため、借入はできなくなります。借入にこだわると、うっかり闇金に手を出してしまうこともあり危険です。
運よく真っ当な借入ができても債権者の反感を買って任意整理が頓挫したり、一括返済を求められるリスクがあります。
デメリットが多い借入をするよりも国や地方自治体の支援制度を活用しましょう。数多くの支援制度があるため、任意整理を依頼した弁護士などに、どの支援制度を利用すべきか相談することをおすすめします。弁護士が申請書の作成を依頼すれば、支援金がスムーズに支給されるでしょう。