自己破産のデメリットと家族への影響|その後の人生や何を失うのか?
自己破産は借金を帳消しにできる代わりに大きなデメリットが伴うことで知られています。
そこで今回は自己破産のデメリットについて解説します。自己破産後の生活の変化について詳しく取り上げるので、家族への影響や、その後の人生がどうなるか確認したい人は参考にしてください。
さらにデメリットの悪影響を最小限に抑えるためにできることも紹介します。
この記事だけで自己破産のリスクをまとめて確認できます。
自己破産のデメリット8つ
早速、自己破産のデメリットについて見ていきましょう。
自己破産のデメリットには特定の期間にだけ影響するものと、継続して影響するものがあります。ここではどちらのデメリットも取り上げます。
生活を左右する可能性のあるデメリットが多いので、全て確認することをおすすめします。
価値ある財産を多く失う
自己破産では借金の返済を全額免除できる代わりに、高価な財産が管財人によって回収されます。
管財人は裁判所が指名した人物で、債権者が返済を受けられるように債務者が提出した財産目録と自身の調査から換金性の高い品物を選び換金し、債権者の配分します。
回収対象になる主な財産は次のとおりです。
- 99万円以上の現金
- 不動産
- 車、バイク、貴金属など高額で売却できる品物
- 保険の解約返戻金
- 貯蓄型年金や学資保険
- 金融商品
- 知的財産権や特許
- 事業用資産
物品については資産価値が20万円以上と見積もられる物が対象になります。高かったバイクでも評価額が低ければ回収されません。
ただし有価証券は資産価値が20万円に満たなくても債権者への返済に充てられるので注意しましょう。この他にも生活に必要が無いと管財人が判断すると価値が低いものでも処分されることがあります。
資格の必要な一部の仕事ができなくなる
自己破産の手続きをしている間は財産の管理能力が必要される仕事や、信頼性が求められる仕事ができなくなります。
自己破産の申し立てをすると就けなくなる仕事の一部を紹介しましょう。
- 弁護士
- 司法修習生
- 検察審査員
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 公認会計士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 中小企業診断士
- 通関士
- 宅地建物取引士
- 旅行業務取扱管理者
- 公証人
- 簡易郵便局長
- 警備員
- 建築士事務所開設者
- 調教師
- 卸売業者
- 旅行業者
この職業制限は裁判が終了して、免責許可の判決が下ると解除されます。一時的な措置ですが裁判期間は半年以上になることもあるので、職業によっては裁判中は仕事ができなくなる可能性があるでしょう。
郵便物の内容を第三者に見られる
自己破産の手続きが始まると債権者宛の郵便物は全て管財人に送られるようになります。郵便物の転送をする目的は、債務者が裁判所に申告していない債権者や、隠し財産がないか確認することです。こうすることで、より公平な返済が可能になります。
管財人に転送された郵便物は管財人が預かることになっており、債権者が郵便物を受け取るには管財人を訪れるか、転送するよう請求する必要があります。ただし、破産手続きに必要な郵便物は管財人が確保できるため、すぐに受け取れない場合もあるので注意してください。
なお、財産がほとんど無い場合は管財人が選出されないため、郵便物の転送はありません。
自己破産したことが知られる
官報には自己破産者の一覧が記載されるので、普段から官報を見ている知り合いがいれば、自己破産をしたことが知られます。
官報は政府が発行している広報で、法令や公示事項などの情報が載っており、インターネットでも公開されています。
氏名だけでなく住所まで記載されるため、同姓同名の人物だと誤魔化すことはできないでしょう。
しかし、一般の方で官報を毎号欠かさず見ている人は滅多にいません。官報に名前が載ったことが原因で自己破産のことがバレる可能性は極めて低いです。
問題はヤミ金業者などの悪徳業者に知られることです。自己破産をすると、しばらく自己破産の手続きができないため悪質な貸金業者の勧誘を受ける危険性があります。
お金を借りられなくなる
自己破産をすると個人信用情報が傷つくため、お金は借りられなくなります。
個人信用情報とは個人の借金の履歴が記載されるもので、金融機関や消費者金融は融資や貸付を行う際に必ず目を通すと言われているものです。
個人信用情報に自己破産の記録が記載されると最短でも5年間は新規の借入ができません。救済措置は無く、ただ時間が過ぎるのを待つことになるでしょう。
制限を受けるのはカードローンや消費者金融といったサービスだけでなく、クレジットカードも含まれます。自己破産をする人の多くは借金が生活の一部になっている可能性が高いです。お金に困った時に頼っていたカードローンやクレジットカードのキャッシング機能が使えなくなるのは大きなデメリットでしょう。
銀行口座の利用が制限される
職業の制限と同様に、破産手続きの最中は一時的に銀行口座が凍結される場合があります。
銀行口座が凍結される理由は管財人による財産調査が行われるためです。債務者の財産を確保したうえで、借金の返済に充てられる財産を評価します。場合によっては差し押さえを受けることもあるでしょう。
自己破産の手続きが完了するまで5ヵ月~1年ほどかかるのが一般的です。この間、銀行口座を使えないのは大変不便です。携帯電話や各種料金の支払いに利用しているなら、支払い方法の変更手続きも必要になります。
いくつかの決済方法が使えなくなる
自己破産の手続きを始めると、じきにショッピングローンが使えなくなります。
ショッピングローンは知名度の高いクレジットカードを発行している信販会社が提供しています。個人信用情報に触れる機会の多い業種ですから、自己破産の情報を簡単に得ることができます。審査で支払い能力が無いと判断されるため、ショッピングローンは利用できません。
一括購入するのには抵抗がある高価な家財道具やブランド品を購入しにくくなるでしょう。
自由に引越できなくなる
引越しや長期の旅行ができなくなります。申告している住所で連絡が取れないと手続きが円滑に進まなくなるため、引越や旅行の際は裁判所に許可を取る必要があります。
裁判中は財産の調査が行われ、その際に債務者は管財人から様々な質問を受けます。住所が変わると債務者への問い合わせができなくなります。
自己破産後の生活を考慮して引越を早めたくなることもあるでしょう。その場合は引越理由が重要です。収入が減少して家賃を払えないといった生活上避けられない理由がある場合は、引越が認められる傾向があります。
自己破産が家族に与える生活の変化|家族が受けるデメリット
自己破産は個人で行う手続きですが、その影響が家族に及ぶことがあります。
特に注意すべきは住環境の変化で、自宅が回収されると引越を余儀なくされます。突然の引越となれば満足できる物件が見つかることは稀で、これまでとは生活圏が大きく変化する場合もあるでしょう。子供の転校、通勤ルートの変更、転職が必要になることもあります。家族それぞれの交友関係がリセットされたら、精神的ストレスは避けられません。
債務者の車とクレジットカードで日用品や食品を購入をしていた場合は、一時的に買い物に混乱が生じることも考えられます。パートナーに大きな負担がかかるでしょう。
また、自分名義で配偶者と一緒の保険に入っていた場合は強制的に解約させられる可能性があります。
自己破産のデメリットと間違われやすいもの
自己破産は「破産」という言葉からネガティブな印象を与えやすく、事実とは異なる認識を持つ人が少なくありません。
そこでここでは自己破産のデメリットだと勘違いされているものを取り上げます。自己破産を過剰に怖がらないよう、正しい認識を身につけてください。
配偶者が所有する財産も差し押さえの対象になる
自己破産の手続きは申立人に対して行われるため、配偶者の財産が差し押さえ対象になることはありません。
結婚後に得た財産は夫婦の共有財産として扱われるため、夫婦になってから購入した自宅は配偶者の名義でも処分対象になると思われがちですが、配偶者の単独名義であれば住み続けられます。
ただし、共有名義の場合は差し押さえの対象になります。自宅の回収を防ぐには配偶者が債務者の分を買い取る必要があります。
結婚後に自宅を購入する場合、税控除を考慮して共有名義にすることが多いので注意しましょう。
年金をもらえなくなる
自己破産が年金の支給に影響を及ぼすことはありません。
自己破産の申立人が高齢の場合、定期的に入ってくる年金も差し押さえの対象になるように思えますが、給与とは扱いが異なるので、それまでどおり受け取れます。
国民年金法や厚生年金保険法において、年金を差し押さえることを禁止しています。減額措置なども無いため、年金に関する制限はありません。
しかし、受け取った年金については差し押さえの対象になります。年金を貯金しているなら借金返済のために没収される可能性があります。
子供の入試の障害になる
親の自己破産が子供の入試の結果に直接影響する可能性はありません。
入試に際して親のプライベートな情報が学校に伝わることは基本的に無く、試験の結果で評価されます。そのため親が自己破産をして間もない入試でも、そのことが直接学校側の評価に影響を及ぼすことはないでしょう。
ただし、自己破産をしたことで入試にかかる費用を十分に用意できず、せっかく試験に合格したのに入学金や授業料を用意できない可能性があります。また、住居を変えたために学習環境が悪化することもあるでしょう。こういった間接的な影響は十分に考えられます。
旅行に行けなくなる
自己破産の手続きをしている間は、自宅から長期間離れることが禁止されるため、海外旅行など離れた場所に旅することが難しくなります。
しかし旅行に行けなくなるわけではありません。空港で出国を止められることはないので、行こうと思えばいつでも旅に出られます。
しかし、裁判所の許可なしに長期旅行をすれば免責が認められなくなる可能性があるため、長期旅行を考えている場合は事前に裁判所の許可を取る必要があります。許可されていれば問題無く旅行に行けます。
過払い金は全て回収される
自己破産では99万円以上の現金は回収されてしまうため、高額になることが多い過払い金は全て差し押さえを受けるように思えます。しかし、99万円未満であれば確保することができます。
過払い金を請求するタイミングによっても回収額は異なります。破産手続きの最中に請求すれば管財人の目にとまるため回収されるリスクが高まりますが、免責許可が出た後であれば管財が終わっているため回収される可能性は低いです。
回収を回避するためには、自己破産の申し立てをする前に過払い金を請求することが大切です。事前に過払い金の有無を確認して手続きを終わらせておきましょう。
賃貸契約を更新できない
自己破産をすると信用情報が傷つき、家賃の保証会社を利用している賃貸物件を契約できなくなります。
しかし、自己破産の申し出を行った時点で契約している賃貸物件については契約を更新できる場合もあります。
契約を更新できるのは契約時に保証会社を利用していなかったケースです。更新手続きにおいて保証会社が関与することが無いため、それまでの家賃の支払い実績が大きな判断材料になります。
遅延なく家賃を支払ってきたなら問題無く契約を更新できるでしょう。
自己破産した人の末路やその後の人生
自己破産後の生活は一変すると言われることもありますが、実際はどうなのか不安に感じている人もいるでしょう。
「やらなければ良かった…」と後悔する事態に陥るのか、それともやったもん勝ちと言えるほど何の変化もないのか気になるところです。
不安を払拭するために破産手続き後の暮らしについて、より詳しく解説しましょう。
深刻な状況にはなりにくい
自己破産後に生活が困窮する可能性は決して高くありません。99万円以上の現金は回収され、高価な財産は失いますが、仕事を失う危険性は低いため収入は確保できます。また、破産手続きが終了した後の収入が管財人に回収されることはありません。そのため生活が傾くことはないでしょう。
借入ができなくなることは人によっては不安に感じるでしょう。しかし、国内で借入サービスを普段から利用しているのは10%未満と言われています。多くの人は借入の無い生活を行っているため、自己破産後に生活スタイルを変更することで十分対応できます。
自己破産は借金に苦しむ人の生活を立て直すために作られた制度です。差し押さえも生活を維持できる範囲で行われるため、全てを失うことはありません。
生活が苦しいと感じている人が、自己破産でさらに厳しい状況に陥るケースは滅多にないと言えるでしょう。
借金の不安が解消され前向きに生活できる
それまで苦しんできた借金返済のストレスが解消されるため、前向きな気持ちで過ごせるようになります。
返済を繰り返しても元本がなかなか減らない借金を抱えて生きていくことは精神的に厳しいことです。毎月、返済日が近づくと憂鬱になるだけでなく、自尊心や自分に対する自信を失う人もいます。借金の悩みを周囲の人に相談できずに孤立する例も少なくありません。
自己破産で返済の負担から解放された人の多くが「もっと早く手続きをすればよかった」と率直な感想を口にするのも当然と言えるでしょう。
経済面に加えて精神面の問題も解決されることによって、人生の再スタートが切れるようになります。
自己破産によって生活が一時的に苦しくなることはある
長期的に考えれば自己破産は家計を立て直すきっかけになりますが、一時的に生活が苦しくなることがあります。
車や自宅を差し押さえられた場合は影響が大きいです。新しい移動手段と住居を用意する必要がありますが、破産手続きが完了した直後は財産の多くを回収されているため余裕がありません。配偶者が財産を持っていれば対応できますが、そうでなければ苦労するでしょう。
クレジットカードや借入サービスが使えないことも重荷になります。手元にお金がないと品物やサービスが購入できないため、生活にゆとりがないと感じることが増えるでしょう。
しかし、収入は以前と変わらないので、時間の経過とともに貯蓄が増えれば生活に余裕ができて、経済的な苦しさはやわらぎます。
デメリットがあっても自己破産をすべき人の特徴
自宅や大事な財産を失うことを考えると自己破産をためらいます。しかし、状況によってはデメリットがあっても自己破産をすべき時があります。
どういった条件に当てはまる人が自己破産をすべきなのか解説しましょう。
借金が原因で生活が苦しい
多額の借金があるために衣食住に回せるお金が不足している人は本気で自己破産を検討すべきです。
自己破産をする人の約60%は深刻な借金トラブルを抱えており、なかには借金をして借金を返す状況に陥っているケースもあります。
生活費を削って借金の返済に回している、もしくは自転車操業をしているようなら家計が崩壊するのは時間の問題です。
「数百万円で自己破産するのはもったいない」という意見が散見されますが、金額ではなく完済までの見通しが立っているか否かで自己破産の判断をしましょう。
体調を崩して仕事ができず収入が減った
病気や怪我が原因で仕事ができず、期待していた収入が得られないために借金が返せなくなったり、借金を繰り返すことがあります。また、高額な医療費がかかるために預金が尽き、借金に依存することも考えられます。
こういったケースでは早い段階で自己破産を考えましょう。体調が回復して、以前の収入に戻る時期が分からない状況では正確な借金返済計画は立てられません。
症状が重く、入院期間が伸びれば医療費はさらに重くなり、ズルズルと借金を増やしていくことになるでしょう。会社を解雇されて収入が途絶えれば、より状況は悪化します。
周囲に頼る人がいない場合は、借金問題を解決できる手段は実質的に自己破産だけとなります。
放置すればメンタルヘルスにも影響が及ぶため、早期に対策しましょう。
病気以外にも介護など家庭の事情で仕事を辞めざる得ない場合にも同様の対応が必要です。
自己破産のデメリットの影響を最小限に抑える方法
自己破産のデメリットは生活を左右する可能性があります。破産手続きを進める必要がある場合は、これらデメリットの影響を少しでも抑えることが望ましいです。そうすることで手続き後の生活にかかる負担を軽減できます。
具体的に何をすれば影響を最小限にできるのか見ていきましょう。
早い段階で処分する財産を選定する
どの財産を借金返済のために処分するかは管財人に完全に一任されているわけではありません。生活に欠かせないものや、どうしても手放したくない品については債務者の意見が参考にされます。
管財の手続きをスムーズに進めるためにも処分対象の財産を決めておきましょう。自己破産の手続きにおいて、財産の処分は最初に行われます。価値ある財産を事前にリストアップし、処分する財産が明らかになっていれば管財手続きが迅速に進むでしょう。
早期に免責が決まれば資格業務をそれだけ早く再開できますし、長期の外泊も可能になります。
思い入れのある品を処分するのは辛いことですが、積極的に取り組みましょう。
住宅ローンだけ一括返済できないか検討する
住宅ローンが残っている状況で自己破産をすると自宅が競売などにかけられ処分されます。自宅の価値が極めて低く、処分できない場合を除いて、自宅の回収を避けることは難しいです。
しかし、配偶者がいる場合、配偶者が住宅ローンを一括返済することで自宅を確保できます。数千万になることもある住宅ローンを一括で返すことは現実的ではありませんが、検討してみる価値はあるでしょう。住宅ローンの残債が残り少ない場合などは自宅を守れる可能性があります。
自己破産後の生活設計をする
自己破産後は生活スタイルが大きく変わる可能性があります。住居が変わるだけでも、人間関係や生活スタイルに大きな影響が及ぶ場合があるので、事前に生活設計を済ませておきましょう。
新しい生活を考えるうえで大切なのは生活基盤の確保です。まずは住居と仕事について決めてください。どこに住むのか、仕事は続けられるのか確認してください。そのうえで1ヶ月の収支を試算します。収入が不足しているようなら自治体の補助を受けられないか相談しましょう。
簡単なことではありませんが、余裕を持った家計を心がけてください。
法律家の支援を受ける
自己破産の経験がなければ、自分が受けるデメリットを正確に把握することはできません。破産手続きによって何を失うのか、ブラックリストを脱するのはいつかなど、具体的なデメリットを確認するために弁護士や司法書士に相談しましょう。対処法を教えてくれたり、他の解決策についても聞けます。
また、司法書士と弁護士は法律知識に詳しいため書類の作成もしてくれます。弁護士はさらに手続きの代行までできるため幅広いサポートが期待できます。
まとめ:多額の借金を抱えたらデメリットを気にせず自己破産の検討を
自己破産は借金に苦しむ人を救済し、生活を再建するのを助ける制度です。財産の放棄やクレジットカードが使えなくなるなどのデメリットは気になりますが、返済できない借金を放置することのほうが大きな問題です。
返済を続けられそうにない、もしくは利息の支払いで精一杯になったら、デメリットについて心配せずに破産手続きについて法律家に相談しましょう。
早く手続きを始めれば、それだけ自己破産で受けるダメージが軽くなり、生活再建が早まります。