国が認めた借金救済制度は怪しい?からくり・安全性・デメリットを解説
「国が認めた借金救済制度」と書かれた広告をネットでよく見かけますが、どうやって借金を減らすのか詳細が書かれていないため不安に感じている人もいるでしょう。
そこで今回は国が認めた借金救済制度について解説します。借金減額のからくりから、メリットとデメリット、費用相場まで重要なポイントをまとめてお伝えします。
安全性や詐欺の可能性に関しても触れるので、広告を見て「怪しい…」と感じた人は参考にしてください。
国が認めた借金救済制度とは何か?
普段の生活で借金問題や法律に関して触れる機会は少ないため、国が関わっている借金救済制度が本当に存在するのか知っている人は多くありません。
国が認めた借金救済制度について曖昧な認識では詐欺に騙されるリスクがあるので、基本的なことをこれから解説しましょう。
「国が認めた」の本当の意味
国が認めた借金救済制度は存在しません。国が施行する法律および制度は国会の審議を経て施行されるもので、一企業が提案した制度を国が認めることはありません。
しかし、借金で立ち行かなくなった生活を立て直す目的も兼ねて作られた法律は存在します。
1990年代後半から2010年頃まで、多重債務者が激増して大きな社会問題になることがありました。これを受けて国は多重債務問題の解決に取り組みます。
この時期に破産法が改正され、民事再生法が制定されます。その際、自己破産と個人再生の手続きが整備されました。この2つは債務者救済の側面がある制度で、とくに自己破産は債務者の生活再建も考慮されています。
法律事務所などが「国が認めた借金救済制度」と宣伝している場合、自己破産や個人再生などの法律手続きを指していることが多いです。国が社会問題に対処するために制定したものですから、「国が認めた」と言っても間違いではありません。
しかし、法律事務所が国の認可を受けて行っている特別なサービスではないため注意しましょう。あくまで一般的な法律手続きであり、確実に借金を減らせるわけでも、国が借金の肩代わりをしてくれるものでもありません。
国が認めた借金救済制度というのは、あくまで宣伝手法であり、相手を安心させるための言い回しであると解釈してください。実際は法律が関係する手続きにすぎません。
救済制度は何万件も利用されている
法律事務所が宣伝している国が認めた救済制度は、これまでに何十万件と利用されています。
法務庁が公開している資料の司法統計年報概要版によると、令和3年の自己破産の申し立て件数は73,457件で、個人再生は10,509件です。令和3年における離婚調停の件数が64,885件であることを考えると、いかに自己破産が広く申し立てられているかが分かるでしょう。
自己破産の件数は翌年の令和4年についても70,602件と同じ水準で推移しています。
申し立て件数から考えると、これらの制度は信頼性が高く一般的なものと判断できます。
救済制度の対象になる借金の種類
国が認めた借金救済制度のうち、個人再生、自己破産などの債務整理は対象にできる借金が決まっています。全ての借金を帳消しにできるわけではないことを覚えておいてください。全ての借金が消えると宣伝している広告は信用できません。
債務整理の対象になる借金と、対象外の借金を表に示します。
借金救済制度の対象となる借金 | 借金救済制度の対象外の借金 |
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対象外住宅ローンカードローンオートローンクレジットカードのショッピング枠奨学金個人から借りたお金 | 税金公共料金養育費教育費慰謝料極めて低金利な借金 |
表を見れば一目瞭然ですが、第三者からの借入は幅広く債務整理の対象に含まれます。営利目的の企業や個人からの借金は全て減額対象になると考えて問題ありません。
対象外になるのは公的な支払いです。税金や公共料金など支払いが法律で決められているものに関しては、債務整理の対象にできません。
国が認めた借金救済制度の種類と借金を減らせるからくり
国が認めた借金救済制度と呼ばれるものには5つの種類があります。それぞれ借金を減らす仕組みが異なるため、からくりを見ていきましょう。借金救済制度の中身をしっかり確認すれば、効果が期待できない手続きを避けられるだけでなく、詐欺を回避するのに役立ちます。
借金をまとめて減らせる個人再生
個人再生は裁判所が許可すれば借金を大幅に減らせる制度です。裁判所に借金の減額を認めてもらうには次の条件を満たす必要があります。
- 収入に対して巨額の借金をしている
- そのままだと破産するリスクがある
- 完済の可能性がある
借入先が複数ある場合でもまとめて手続きできるため、多重債務に苦しんでいるケースで効果的です。ただし、対象となる借金は金額が100万円以上5000万円未満のものに限られます。
平成13年4月1日に施行された制度で、今回紹介する借金救済制度のなかでは比較的新しいです。利用者は年間1万人ほどで、その内訳の多くは会社員や個人事業主になっており、事業者も少数ですが含まれています。
書類の作成や裁判所における手続きが必要で、法律知識が欠かせないため弁護士のサポートが欠かせないでしょう。
また実行可能な返済計画を立てて、それに従って返済を続けることが求められます。もし途中で返済を中断すれば一括返済を請求される危険性があります。
借金を帳消しにできる自己破産
国が認めた借金救済制度の中で唯一借金を解消できるものが自己破産です。対象となる借金に金額の制限が無いため様々な状況で利用できます。
自己破産をするには裁判所に申し立てを行い、借金の支払いができないことを証明する必要があります。破産法で定められた制度ですから、裁判所が許可の審判を下せば結果は強制力を伴います。借金の返済から完全に解放されるでしょう。
以前の自己破産は債権者が未回収金を取り戻すことに重点が置かれていましたが、平成16年に行われた法改正により債務者の生活再建も重視されるようになりました。しかし、財産の多くを回収されてしまう点は変わりません。メリット・デメリットともに大きな制度であるため、利用の際は自己破産後の生活について計画を立てることが大切です。
2010年以前の借金に効果的な過払い金請求
過払い金請求は法律で明文化されている制度ではないものの、法律を根拠に行われる借金救済の手続きです。
借金で生活が破綻する人が増えたため、2010年に利息制限法が改正され、いわゆるグレーゾーン金利が見直されました。これに伴い、それまでグレーゾーン金利で借りていた人が過剰に支払った利息を取り戻すことができるようになります。これが過払い金請求です。
過払い金請求も国が認めた借金救済制度のひとつとして頻繁に宣伝されていますが、自己破産や個人再生のように法律で詳細に内容が定められたものではありません。利息制限法に違反する金利によって生じた利息分を債務者に請求する裁判を申し立てるだけです。過払い金請求という独立した制度があるわけではないので注意してください。
最も利用されている任意整理
任意整理は債権者と交渉して借金を減らす手続きのことです。裁判所の関係者が交渉に立ち会うことは無く、債権者と債務者もしくは代理人の間で話し合いが行われます。
返済を前提とした手続きであり、多くのケースで元本の減額について同意を得られることはありません。利息の減額や免除、もしくは遅延損害金の免除などについて話し合われます。そのため任意整理によって借金が大幅に減ることは滅多にありません。
交渉が成立したら内容を和解書に書き記してお互いにサインを交わします。これにより和解案が法的拘束力を持ちます。
交渉が成立するまでの手続きに裁判所が介入しないため、国が認めた制度ではないと判断することもできます。しかし、ネットの広告では任意整理も国が認めた救済制度のひとつとして扱われることがあるので気をつけてください。
自力解決を目指せる特定調停
特定調停は裁判所が介入する任意整理とも言える手続きです。裁判所が債務者と債権者から話しを聞き、提出された資料をもとに借金返済に関する調整を行います。
調停が始まると調停委員が債権者と債務者の話し合いを仲介します。その際、利息制限法の定めに従い新たな残債務額が調停委員によって計算されます。この金額をベースに返済条件の交渉が進みます。
調停は1回では終わらず何度も行われ、早ければ3ヶ月、長引けば半年以上かかることもあります。特定調停は債務者が単独で手続きを行うため、調停期間が長くなれば無視できない負担になるでしょう。
国が認めた借金救済制度のメリットと効果
国が認めた借金救済制度の正体は自己破産などの債務整理です。ここでは債務整理のメリットと、その効果について解説していきます。
広告で宣伝されている効果が債務整理にあるのか確認してください。
できることと、できないことが分かれば借金返済計画の参考になります。
新たな返済計画を立てられる
過払い金請求を除く借金救済制度では、いずれも新たな返済計画を立てます。この計画は完済することを目標に立てられるため、いつ借金の返済が終わるのか明確になります。
債務者が返済が困難な状況に陥ることは債権者にとっても大きなデメリットです。もし自己破産されてしまったら貸し付けた分が不良債権になり、会社の損失につながります。
救済制度を利用することで借金返済の見通しが立つでしょう。落ち込んでいた気持ちが晴れて、仕事に集中できるようになります。
返済の負担を軽くできる
救済制度を活用すれば借金の元本や利息、遅延損害金を減らせるため、毎月の返済の負担が軽くなります。
どれだけ負担を軽くできるかは利用する救済制度によって異なります。任意整理は利息の減額や免除に留まることが多いため、金利が低いと負担はそれほど軽くなりません。
個人再生では最大で元本が10分の1まで減額できるので、大幅な負担軽減を実感できるでしょう。
過払い金請求の減額効果は確認できた過払い金の額によって決まります。グレーゾーン金利のまま返済していた期間が長い場合は、お金を受け取れる場合もあります。
借金をリセットして生活再建を目指せる
自己破産を利用した場合は借金の支払いを全額免除できます。これまで借金の返済のために自転車操業をしていた人でも生活再建を目指せるでしょう。
個人再生でも月々の返済額が大きく減るので、これまでよりも生活に余裕ができ、貯蓄を増やせます。
また、自己破産と過払い金請求を除く借金救済制度は実行可能な返済計画を立てます。特定調停や個人再生では裁判所による返済計画の確認も行われるため、より生活を再建できる可能性は高まるでしょう。
国が認めた借金救済制度のデメリット
借金救済制度には借金を減らせるメリットがありますが、その代わりに生活に影響が及ぶ可能性のあるデメリットを被ることになります。
生活習慣を変える必要に迫られるケースもあるので、制度の利用を考えているならデメリットについて把握しておきましょう。
長期間にわたって借入ができなくなる
過払い金請求以外の借金救済制度を利用すると5年以上もの間、新規の借り入れができなくなります。
任意整理などの債務整理は当初の契約どおりに借金を返済できないことを債権者に申し出る手続きでもあるため、借入をする際の信頼性を大きく損ないます。個人のローン履歴が記録される個人信用情報には債務整理をしたことが記載され、それを見た金融機関や消費者金融業者は融資や貸付を断るようになるでしょう。
住宅ローンはもちろんショッピングローンも利用できず、保証人になることもできません。そのため借金をしない生活を強制させられます。
高価な財産を失う
個人再生や自己破産を行った場合は、所有する高価な財産を裁判所に回収される可能性があります。
債務整理の多くは借金による生活破綻を防ぐだけでなく、債権者が貸し付けた資金を回収することも目的としています。そのため換金性の高い品物は回収、換金の後、債権者に分配される場合があります。
財産が回収されるのは自己破産と個人再生を利用したケースで、とくに自己破産は自宅をはじめ数多くの家財道具が回収対象になります。個人再生では自宅の回収を回避できますが、それでも車などの高価な財産を失うことになるでしょう。
一部の業務や職業ができなくなる
救済制度に自己破産を選んだ場合、手続きが完了するまで一部の業務や職業ができなくなります。
自己破産を行うと債務者の財産は裁判所によって管理され制限を受けます。財産管理における信用が大きく損なわれるため、資産運用を行う金融業務や、財産との関係性が強い警備業務を含む業務はできません。
就職活動には制限が及びませんが、職に就いても業務ができないため仕事に支障が出るでしょう。
この職業制限は破産手続きが完了するまで続きます。
ブラックリストに登録される
個人信用情報に債務整理をしたことが記録されるため、いわゆる金融ブラックリストに登録された状態になります。
金融ブラックリストに登録されると、次のようなサービスが使えなくなり生活に影響が及びます。
- クレジットカード
- ショッピングローン
- ETCカード
- キャリアが提供している携帯電話の分割払い
- 家賃保証会社を利用している賃貸契約
ブラックリストから抜けるまでにかかる時間は利用する救済制度によって異なります。任意整理や個人再生は5年ほどですが、自己破産の場合は7年以上になることもあるので、制度を利用した後、生活がどう変わるのか考えておくことが大切です。
国が認めた借金救済制度に関連した詐欺
国が認めた借金救済制度 と聞くと安全な印象を受けますが、中には悪質な詐欺もあります。
借金救済制度のなかには一度利用すると再度利用できるようになるまで年月がかかるものもあるため、その期間に作った借金を減らすことは難しくなります。
国が認めた借金救済制度に絡んだ詐欺にだまされないように典型的な手口を確認しましょう。
着手金詐欺
債務整理などの借金救済制度の手続きを代行すると言いながら、着手金を受け取ると姿を消してしまう詐欺です。
法律事務所に救済制度を依頼する場合、契約時に着手金を支払います。商習慣のひとつになっているものであるため、警戒心なく着手金を支払う人は少なくありません。その慣習につけ込んだのが着手金詐欺です。
酷いケースでは成功報酬に該当する費用まで一部前払い金として請求することもあると言われています。
最近は着手金を受け取らず、その分を成功報酬に含める法律事務所も少なくないので、安全を考慮するなら、そういった法律事務所を活用しましょう。
多額の過払い金があると偽る
「多額の過払い金が見込まれます」と嘘の見立てをして高額な契約金や手数料を請求する詐欺です。
お金を受け取れると期待して契約したものの、想定していた過払い金は確認できず、逆に高額な弁護士費用に苦しむことになります。
自社サイトに過払い金シミュレーターを設置している法律事務所は多いですが、これはあくまで目安です。シミュレーターが多額の見積もりがあると言っても、最終的な判断は対面による法律相談を受けた後にしましょう。
示談交渉が成立したと偽る
法律事務所の実態が無く、偽りの契約で成功報酬をだまし取る詐欺です。
任意整理の手続きを格安で請け負うと宣伝し、契約してしばらくすると示談交渉が成立したからと成功報酬を請求してきます。しかし、実際は何一つ手続きを行っておらず、成功報酬を支払った後も返済は続きます。
債務整理は一度契約すると全ての手続きを法律事務所に一任する場合もあるため、進展状況をきちんと確認しないと、この手の詐欺にだまされる危険性が高くなります。
誇大広告
「自宅を確保しながら借金を全額免除できる」「必ず過払い金が戻ってきます」など過度な期待を抱かせる広告で、借金に苦しむ人の注意を引く手法です。
弁護士事務所が、このような誇大広告を出していた場合、懲戒処分にあたることもあります。
宣伝文句だけでなく消費者庁や金融庁のロゴマークをサイトに掲載して安心させる手口もあるため、信頼性の高い公的機関が公認しているような印象を抱かせるサイトには注意が必要です。
2020年から2023年の3年間で、法律事務所が関連した誇大広告に関する苦情は300件以上におよんでおり、今後も引き続き警戒が必要な詐欺と言えます。
国が認めた借金救済制度の費用相場
借金救済制度の手続きを自分だけで行うのは難しいです。自己破産では破産法に関する知識が必要ですし、免責を受けられる借金の選定にも知識と経験が欠かせません。専門家に頼ることになるため、費用相場を確認しておくことが重要です。
費用は利用する救済制度により異なります。大まかな目安の金額を紹介しましょう。
借金救済制度 | 弁護士費用の相場 |
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任意整理 | 1社あたり5万円 |
個人再生 | 50万円~80万円 |
自己破産 | 50万円~130万円 |
過払い金請求 | 1社あたり4万円 |
任意整理と過払い金請求に関しては成功報酬も発生します。成功報酬の相場は任意整理が減額金の10%、過払い金請求では20%ほどです。また、両者とも債務整理する債権者が増えるほど費用の総額が増大します。債権者が多い場合は個人再生や自己破産を検討すべきでしょう。
個人再生と自己破産の費用に幅があるのは、事案によって申し立てまでにかかる手続きの作業量が異なるためです。加えて事案の難易度や債権者の人数によっても費用が変動する場合があります。
個人が正確に費用を見積もるのは難しいため、詳しい費用は法律事務所の無料相談で教えてもらいましょう。
国が認めた借金救済制度に関するよくある質問
広告で見かける借金救済制度について、多くの人が気になっているポイントについて確認しましょう。
分かりやすいように、よくある質問の形式で解説します。
広告を見た人がどんなことに不安を感じているのかを知ることは、詐欺予防にもつながります。
借金救済制度の広告は嘘ですか?
SNSや大手メディアには、国が認めた借金救済制度に関する公告が数多く掲載されています。多くは任意整理や個人再生、自己破産、過払い金請求といった広く使われている債務整理の広告であるため、大手弁護士事務所のものであれば内容は信頼できます。
しかし、なかには悪質な業者の広告も含まれているため安易に信用するのは危険です。借金救済制度に関する広告だと思いクリックするとヤミ金だったり、弁護士事務を装った詐欺である可能性もあります。
信頼できるサイトに掲載されている広告であっても、慎重に内容を見極めましょう。公式サイトの会社概要ページに詳しい所在地や、問い合わせ先の電話番号が記載されていない場合は申し込まないでください。
広告の借金救済制度を使うとどうなる?
実績確かな法律事務所による広告であれば、法律相談の予約申し込みフォームに誘導されるのが一般的です。いきなり債務整理の契約が結ばれることはありません。法律家と無料相談をして適切な債務整理手法を検討し、期待できる結果に納得すれば契約という流れになります。
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また、入力した個人情報はどこに流出するか分かりません。悪質な勧誘を数多く受けるようになる危険性があります。
まとめ:国が認めた借金救済制度は効果的だが詐欺には注意
国が認めた借金救済制度には個人再生や自己破産といった法律で定められたものがある一方、巧妙な詐欺も含まれています。
詐欺の場合は個人情報を盗まれたり、詐欺に遭う危険性があるため、広告をクリックした後に表示されるページでメールアドレスや電話番号を入力するのは控えましょう。広告を出している業者や法律事務所の公式サイトを探して、実績や会社情報を詳しく調べてください。
詐欺業者は対面相談を嫌う傾向があるので、直接会って話をしてから契約するのもリスク回避に効果的です。
国が認めた借金救済制度の実態は債務整理です。
特別な手続きではないため、借金で悩んでいる場合はネット広告に頼るより信頼できる法律事務所に相談しましょう。