任意整理とは何か?具体的にどれくらい減るかを解説
任意整理は個人再生や自己破産に比べて手軽にできる債務整理です。
しかし、メリットや借金を減らす仕組みについて詳しく知っている人は多くありません。
そこで今回は任意整理の特徴や利点について解説いたします。どういったケースで任意整理を利用すべきなのか、借金をどれだけ減額できるのかが分かります。
任意整理の流れや、失敗しないためのコツについても取り上げるので、自己破産よりも短時間で借金を減らしたい人は参考にしてください。
任意整理とは何か?仕組みと特徴
任意整理は貸金業者などを相手に利息の支払いを減らす、または無くす手続きのことです。
裁判所は関与せず、債務者(または依頼を受けた弁護士)と債権者が話し合って金利を含めた今後の返済方法を決めるため、任意整理の合意内容に法的拘束力はありません。
法律が定める上限金利以上で返済をしていた場合は過払い金が発生するため、その分は元金(残債)から差し引かれます。
任意整理で元金が減る場合があるのはこのためです。
基本的には利息を減らすか無くすための手続きであるため、過払い金が無ければ任意整理で元金が減ることはありません。
任意整理を行うことで金利を減らして残債を返済していけます。
利息の支払いを減らし、返済の負担を軽くすることが任意整理の主な目的と言えるでしょう。
法的拘束力の無い任意整理に貸金業者が従う理由は元金を取り戻したいからです。
任意整理を法律事務所に依頼する場合、債務者は自己破産や個人再生を考えている可能性が高いため、融資した分だけでも確保しようとします。
任意整理で借金はいくら減らせるのか?
任意整理の減額分は借金の内容によって異なるため、具体的に示すことは難しいです。
いくら借金を減らせるかは金利に大きく左右されます。
任意整理が減らせるのは借金の金利であり、残債を直接減額してもらうことはできません。
しかし、法律で定めた上限を超える金利を長期間支払っていた場合は、過払い分を元金から差し引くことができます。
金利が高いほど残債を大きく減らせるでしょう。
法律を遵守した金利の場合は残債を減らせませんが、金利を下げてもらえる可能性があります。
下がった金利分だけ利息の支払いが少なくなるので、借金の総支払額を減らせます。
支払いの延滞を何度も繰り返した場合は遅延損害金の支払いを業者に求められますが、任意整理をすることで遅延損害金を免除してもらえることもあります。
遅延損害金の利率は20%と高いため、任意整理で免除してもらえば大きな減額につながるでしょう。
任意整理をするために満たすべき3つの条件
任意整理は個人でもできるほど手軽ですが、いくつかの条件を満たさないと債権者の合意を得られずに物別れに終わるでしょう。
これから任意整理をする際に満たすべき3つの条件を解説するので、ご自身が条件を満たしていることを確認してください。
返済できるだけの定期収入がある
任意整理は過払い金がない限り元金が減ることがないので、業者との合意を得た後でも残債を返済していく必要があります。
そのため返済に必要な支払い能力が求められます。
十分な定期収入がなければ借り入れ相手を説得することができないでしょう。
重要なのは月々の収入です。
任意整理は毎月返済を行う必要があるため、月収が返済額に達しているか確認しましょう。
残債と月々の支払額の目安は次のとおりです。
残債額 | 月々の支払い(支払期間3年) | 月々の支払い(支払期間5年) |
---|---|---|
100万 | 27,500円 | 16,500円 |
200万 | 56,000円 | 34,000円 |
300万 | 89,000円 | 50,000円 |
滞りなく返済していけるよう、月々の支払額を調整することが重要です。
支払い期間を伸ばすほど、月々の支払い額が減るので、十分な収入がない場合は支払い期間を伸ばすなどの工夫が必要になります。
返済する確かな意志がある
任意整理は他の債務整理とは異なり、元金を返済していくことを前提として交渉を行います。
そのため途中で自己破産などをすることなく、最後まで返済を続ける意志を示すことができないと相手を説得することはできません。
返済の意思が硬いことを示すには自己破産や個人再生を利用しない理由を説明することが大切です。
自宅や車など手放せない資産がある、または事業を続けるために自己破産は避けたいといった返済を続ける動機を明確に示しましょう。
3年から5年で返済できる支払い能力がある
任意整理では債権者の合意のもと、期間を定めて借金の返済をしていきます。
返済期間はある程度自由に決められますが、おおむね3年~5年となっており、この期間以内に完済することが求められます。
債権者から見て将来的に債務者の支払いが滞ることが予想される場合、任意整理を実現するのは難しいです。
最悪の場合、債権者から今すぐ一括で返済するよう求められる危険性もあります。
不安定な雇用形態で働いていたり、将来が見通せない業界で事業を行っている場合は、任意整理を債権者に断られる場合もあるでしょう。
任意整理で受けられる7つのメリット
毎月の支払額が減る以外にも任意整理には様々なメリットがあります。
借金で苦しんでいる人は様々な悩み事を抱えており、1日でも早く問題が解決することを望みます。
これから任意整理のメリットを8つ解説するので、自分の悩みが解消されるか見ていきましょう。
借金の督促を止められる
任意整理の依頼を受けた弁護士や司法書士は債権者に受任通知を送ります。
受任通知を受け取った債権者が債務者に連絡を取ることは法律で禁止されているため、借金の督促ができなくなります。
返済の延滞を繰り返すと督促状が頻繁に届くこともあるため大きな精神的負担になりますが、任意整理をすれば早ければ即日、遅くとも通知から1週間以内に督促が止まります。
さらに任意整理の交渉中は返済も停止するので、久しぶりにゆとりを感じられるでしょう。
完済のめどが立つ
任意整理は返済期間と月々の支払額を現実的なものに修正して残債を返していくため、いつ返済が終わるのか明確になります。
多額の借入をすると利息が膨らむため、支払いを続けても元金が減らない場合があります。
こうなると返済が終わる時期が見通せません。
クレジットカードのキャッシングでも、リボ払いを利用している場合は月々の支払額が少なすぎて元金が減らない場合があります。
任意整理なら返済計画が立てられるため、終わりの見えない返済トラブルの解決につながるでしょう。
残りの支払い回数が分かるので返済に対するモチベーションがアップし、延滞が起きにくくなります。
加えて、利息のために元金が減らない問題も解消できます。
整理する債務を自由に決められる
複数の借入をしている場合は債務を選んで任意整理ができます。
自動車ローンなどは債務整理で契約を解消すると資産を手放すことになる場合もあるので、これまでの生活が一変する可能性があります。
任意整理なら、そういった重大な債務はそのままにして、法外に高い金利が設定されている借金だけに狙いを絞れます。
他にも会社や友人から借金をしている場合など、強引なやり方で残債を減らすと人間関係や会社における立場を危うくすることがあります。
任意整理を活用すれば、身近な債権者を対象から外すことで良好な関係を維持したまま借金を清算できるでしょう。
保証人に迷惑をかけたくない場合にも任意整理は役立ちます。
保証人が設定されている債務を債務整理すると、保証人が残債を返済する義務が生じますが、任意整理を使い対象から外すことで知人に迷惑が及ばないようにできます。
自己破産や個人再生よりも柔軟な債務整理が可能です。
周囲に知られることなく返済できる
個人再生や自己破産をすると名前が官報に載ります。
官報はインターネットで公開されていますが、幸いなことに破産者の名前が記載された名簿が一般の官報のように公開されることはありません。
それでも破産者の1人として記録に残るのは気分がいいものとは言えません。情報が漏洩するリスクもゼロではないでしょう。
任意整理なら氏名が官報に記録されることはありません。
借金に苦慮していることを知られるリスクは自己破産に比べて低いです。
また、任意整理は家計の詳細を記録した書類を提出する必要がないので、家族に内緒で債務整理をすることもできます。
利息の支払いが軽くなる
任意整理の強みは利息の支払いを減らせるところです。
100万円以上の借入をすると利息だけでも月々の支払いが10,000円を超えることがあります。
任意整理で利息を無効にできれば月々の支払いを7%から10%ほど削減できるでしょう。
1年の削減額はさらに無視できないものになります。
利息制限法によって金利は次のように決まっています。
元本の額 | 利息制限法に定める上限金利(年利) |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円~100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
利息は金利によって決まるため、10万円未満の借入は利息分を無くすことで効果的に月々の返済額を減らせるでしょう。
ただし、任意整理する前の利息の支払いは免除されないケースが多いので注意してください。
債務整理後も自宅を確保できる
任意整理は対象とする債務を選択できるため、住宅ローンを除外して自宅を確保したまま総返済額を減らせます。
住宅には抵当権が設けられていることが多いため、住宅ローンを債務整理に加えると自宅を失うことになりかねません。
住宅ローンを扱う会社は返済にシビアで、経済的に困った時に金利の低下や返済期間の延長をお願いすると、逆に金利を上げられてしまうこともあります。
住宅ローンに関しては安易に債務整理するよりも、任意整理を選んで対象外とする方が賢明です。
比較的に短期間で手続きが完了する
任意整理は裁判所を利用することなく、債権者と債務者の2者間で交渉するため他の債務整理よりも短期間で手続きが完了します。
一般的に、任意整理にかかる期間は長くとも6ヶ月ほどです。
繰り上げ返済などで支払いの意思をアピールすれば最短で3ヶ月ほどで手続きが完了することもあります。
管財事件による自己破産の場合、財産の評価が詳細に行われるため完了まで最短でも6ヶ月、長ければ1年ほどかかります。
任意整理なら時間をかけずに債務整理を行い、生活再建を目指せるでしょう。
任意整理で失敗しないために心がけること
初めて任意整理をする人のために、注意点と失敗しないために心がけることをお伝えします。
弁護士に相談する前に任意整理がうまくいくかどうか判断する際にも役立つ知識なので、他の債務整理も含めて検討している場合に参考にしてください。
どれだけ借金を減額できるか試算しておく
多くの人は借金を減らすために任意整理を行いますが、実際にやってみると思っていたよりも借金を削減できないことが少なくありません。
借金の減額を期待して任意整理をする場合は、手続き後の総支払額がいくらになるのか必ず試算してください。
減額分の試算方法は借入の内容によって異なりますが、残債と金利および返済期間が分かれば概算できます。試しに残債が200万円で年利15%の借金を任意整理後に3年かけて返済する場合を考えてみましょう。
任意整理で将来の利息を削除できたとすると、利息分の495,888円が減額されます。
借金の減額分が費用を上回っていることを確認する
任意整理の費用相場は3万円~15万円と幅広いです。
せっかく借金を減らせても、費用がそれ以上にかかってしまっては意味がありません。
任意整理は比較的費用が安く抑えられる傾向があるため、減額分が帳消しになってしまう危険性は少ないですが、多額の過払い金があった場合は注意が必要です。
成功報酬が高く設定されている法律事務所に依頼した際に、過払い金があると成功報酬が高額になる場合があります。
依頼する前に見積もりを依頼して、試算した減額分と比較しましょう。
費用が上回るようなら他の債務整理を検討すべきです。
債権者の同意が得られそうか慎重に検証する
任意整理で借金を減らすためには債権者の同意を得る必要があります。
法的拘束力のない任意整理は債権者に拒絶されてしまうと借金減額の望みが断たれます。
事前に債権者が任意整理に応じてくれるか冷静に検証しましょう。
次のようなケースでは任意整理をお願いしても債権者に相手にされません。
合意の望みの無い場合は他の手法で債務問題に対処しましょう。
- 債務者が1人で任意整理を行う
- 同じ債権者に2度目の任意整理を申し出る
- 返済期間が極端に短い
- 借入後すぐに任意整理をする
毎月の返済額がいくから試算する
任意整理で軽視しがちなのが月々の返済額です。
借金の総額を減らすことを重視しがちですが、残債が減っても毎月決まった金額を返済していけないと結局は延滞を繰り返すことになります。
滞りなく返済できるように月々の支払い額がいくらになるのか確認しておきましょう。
注意すべきポイントは返済期間です。
期間が短くなると1ヶ月あたりの返済額が増えるので、返済総額を減らしたのに返済の負担が重くなったように感じます。
月々の支払い負担が大きいと感じた場合は返済期間を伸ばしてもらうように交渉しましょう。
例えば残債300万円を3年で全て返済する場合、月々の返済額は84,000円ですが、5年に伸ばすと月50,000円まで下がります。
任意整理の進め方・手順の流れ
ここまでの記事を読んで任意整理に興味を持った方に手順の流れを解説します。
任意整理で法律事務所が具体的に何をするのか、依頼者は何をすればいいのかが分かります。
一連の流れを確認することで任意整理の全体像を理解するのにも役立つでしょう。
専門家に相談する
最初にすべきことは弁護士や司法書士といった専門家に任意整理について相談することです。
借入の内容によっては任意整理よりも他の方法を利用したほうがいい場合もあるため、専門家の意見を聞いてから対処法を検討してください。
任意整理が効果的か否かがはっきりします。
法律事務所は実績を重視して選びましょう。
債務整理の受任実績や解決実績を必ず確認してください。任意整理の受任件数が多いほど柔軟な対応が期待できます。
任意整理の契約をする
専門家と相談して任意整理が妥当だと分かったら契約を結びましょう。
任意整理の場合、依頼先は司法書士か弁護士になります。
都道府県によっては弁護士との契約書に書式が存在し、適切な書式で作成された契約書にはスタンプが押されている場合があります。
その場合は契約書にスタンプがあるか確認しましょう。
この他にも契約書に書かれた料金に誤りがないか確かめてください。
任意整理を始めるタイミングは依頼した専門家により異なります。
早ければ依頼をした当日に受任通知を送付してくれます。
借金の調査をして引き直し計算をする
法律事務所の担当者が債権者から取引履歴を取り寄せて借金の詳細を調査します。
取引履歴には借入額や返済の記録が全て記載されているため、残債や利息について正確な情報が得られます。
弁護士や司法書士から取引履歴の開示を求められた場合、債権者はその要求に応じるよう法律で定められています。任意整理によって正確な借り入れの状況が把握できるでしょう。
適切な金利で返済が行われたか確認するために得られた情報から引き直し計算が行われます。
引き直し計算は利息制限法に基づいた正しい金利で利息を再計算することです。
算出した利息以上の金額を支払っていた場合、正しい金利を用いた返済計画を作成し、それを和解案として債権者に提案します。
貸金業者と和解交渉をする
和解案をもとに今後の返済計画について債権者と交渉をします。
交渉は依頼した法律事務所の専門家が最初から最後まで行うため、依頼者は専ら進行状況を聞くだけです。
しかし、状況によっては依頼した専門家から情報提供を求められるので、借入に関する契約書などがあれば常に手元に置いて返答できるようにしておきましょう。
債権者との話し合いは電話で行われるのが一般的です。
結論が出るまで1週間ほどかかりますが、交渉が難航すると長期化する場合もあります。
話し合いを積み重ねて債権者と和解すれば、合意書を作成して交渉は終了です。
条件に従って返済をする
合意書の内容に従って残債を返済していきます。
返済開始日は合意書に記載されているため、これに従ってください。
返済期間は3年~5年になるのが一般的です。
返済方法は債権者が指定した方法で債務者が直接支払うやり方と、弁護士や司法書士に代行してもらう方法があります。
支払いを代行してもらうと毎月1,000円ほどの手数料がかかりますが、銀行振込が1回で済んだり、周囲に知られることなく任意整理ができるメリットがあります。
複数の業者から借入している場合は正確に返済するために代行を検討するのもいいでしょう。
任意整理のよくある質問
任意整理を考えてる人がよくする質問を紹介していきます。
任意整理について何か見落としている点がないか不安に感じる方は参考にしてください。
任意整理に関する不安を解消するのにも役立つので、任意整理を利用するか迷っている方も目を通すことをおすすめします。
自己破産や個人再生には所有できる財産に制限がありますが、任意整理の場合はどの財産を残すかある程度自分で選択することができます。
債務整理で問題になる代表的な資産は自宅や車です。
自己破産の場合、住宅ローンやオートローンが残っていると自宅や車を手放すことになりかねません。
任意整理なら住宅ローンやオートローンを整理対象から除外することで資産を残せます。
他のローンが残っている資産も同様に整理対象から外すことで継続して所有できます。
友人知人など近しい関係者が債権者になっている債務を、任意整理の対象から外せば知られることはありません。
しかし、依頼する法律事務所によっては整理対象を選べない場合があります。
自己破産と同様に原則全ての債務を対象に任意整理を行うので、債権者に知人を含む場合は債務整理をしたことが知られます。
対象を選べる場合でも条件を満たさないと対象外にできないケースもあります。
保証人付きの債務や所有権留保付きの自動車ローンなど特別な事情がある場合に限られるため、知人の債務を対象から外せない可能性も考えられます。
周囲に知られないように任意整理したい場合は、整理対象を選べる法律事務所を探しましょう。
債務整理をすると個人信用情報に記録が残り、その後の融資に影響が及ぶため、社会的信用にも傷がつく印象がありますが、就職や転職活動に悪影響が出ることはありません。
確かに借金を繰り返して多重債務になった過去があることはネガティブな印象を相手に抱かせます。
しかし、就職面接においてその事実が知られることは考えにくいです。
面接ではこれまで受けた賞罰について質問されたら正直に答える必要がありますが、債務整理は賞罰に該当しません。
任意整理を利用したことを面接で伝える必要がないため、就職に影響するリスクは考えにくいです。
任意整理の返済期間は3から5年が一般的で、5年以上になると受け入れてくれる債権者は少数派です。
しかし、可能性が無いわけではありません。
任意整理が合意に至らなかった場合は自己破産するしかなく、なんとかして返済したいと債務者に伝えた結果、返済期間を7年まで延長できたケースもあります。
自己破産をされると残債分が全て損失になるため、それを嫌って返済期間の延長に応じる債権者はいます。粘り強く交渉すれば返済期間を伸ばせることもあるでしょう。
また、債権者から何度もお金を借りており、返済実績が豊富にある場合も返済期限の延長に応じてくれる可能性があります。
まとめ:任意整理は重い利息に苦しむ人におすすめ
任意整理は裁判をすることなく返済の負担を減らせます。
利息分の支払いを削減できる可能性があるため、15%を超える高い金利が設定されている場合は月々の支払いが10%近く減額されます。
重い利息のために残債がなかなか減らない人が任意整理を利用すれば、効果的に残債を減らせることもあるのでおすすめです。
自己破産とは異なり整理対象の借金を選べるため、車や自宅を手放さずに返済額を減らしたい場合は任意整理が利用できないか法律事務所で相談してみましょう。
無料で話を聞いてくれる法律事務所があります。