交通事故時は弁護士費用特約を使うべき?適用範囲や注意点について解説
交通事故の被害に遭ってしまった場合、ご自身で加害者側の保険会社と示談交渉をするのは簡単なことではありません。なぜなら、加害者側の保険会社は被害者の味方ではなく、極端な話をすれば1円でも低い金額で示談しようと交渉を進めてきます。
交通事故問題について詳しくない一般の方であれば、保険会社側の主張が妥当なのだと誤解してしまい、不利な条件で示談してしまうケースが後を立ちません。
有利な条件で示談するためには、弁護士の介入が必須といっても過言ではないのです。しかし、弁護士に依頼するとなれば、どうしても気になってしまうのが費用です。
そこで今回は、弁護士費用を補償してくれる、「弁護士費用特約」について詳しく解説していきます。弁護士費用特約を活用し、費用負担なく弁護士へ相談・依頼をしましょう。
弁護士費用特約とは?
交通事故における弁護士費用特約とは、弁護士への相談料や、依頼時の着手金や成功報酬といった費用を、ご自身が契約している保険会社に補償してもらえる特約です。
弁護士費用特約に加入している方であれば、相談料は10万円まで、着手金や成功報酬などの費用は300万円まで補償されるため、自己負担なく弁護士にサポートしてもらえます。
一般的に弁護士費用特約は、ご自身やご家族、同乗者などが契約している自動車保険、医療保険や火災保険などに付帯している場合があります。
契約内容によっては利用制限が設けられているため、弁護士費用特約の利用を検討する際は、保険証書の確認や契約している保険会社に問い合わせるのが良いでしょう。
弁護士費用特約のメリット・デメリット
以下では、弁護士費用特約のメリット・デメリットについてご紹介します。
弁護士費用特約のメリット
弁護士費用特約のメリットは、主に以下の4点です。
- 弁護士への費用が気にならなくなる
- 慰謝料金額がアップする
- 治療に専念できる
- 損をする心配がなくなる
①弁護士への費用が気にならなくなる
交通事故問題に限らず、弁護士へ依頼する際は費用が気になるものです。
「もしかしたら高額請求されてしまうかも…」
「弁護士に払うお金がないから相談できない…」
このように感じてしまうのも無理はありません。しかし、弁護士費用特約を利用するのであれば、弁護士への費用を気にすることなく相談・依頼できるメリットがあります。
一般的に、弁護士に示談交渉をまとめてもらうだけであれば、弁護士費用が300万円を超えるケースは稀で、弁護士費用特約の上限を気にする心配はありません。
②慰謝料金額がアップする
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、高確率で慰謝料金額がアップします。なぜなら、弁護士が示談交渉に介入した場合、「弁護士基準」による請求が可能となります。
交通事故の慰謝料請求には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つの請求基準があり、この中で一番高額になるのが弁護士基準です。
しかし、弁護士が介入していない場合、相手保険会社は弁護士基準に近い金額の支払いを認めることはまずありません。
弁護士費用特約によって弁護士への費用負担が軽減されるばかりか、慰謝料金額までアップするという大きなメリットがあります。
弁護士費用特約を使い、弁護士に依頼することで治療に専念できるようになります。
というのも、示談交渉を自ら行うとなれば、保険会社側とのやり取りが必要となり、非常にストレスが貯まるばかりか、治療に支障が出るおそれすらあります。
しかし、弁護士が示談交渉に介入していれば、基本的にすべての手続きを任せられるため、ご自身に負担がかかる心配はほとんどありません。
弁護士からの連絡を待っていれば、示談交渉はどんどん進んでいきます。その間にしっかり治療に専念し、1日でも早い完治を目指せるメリットがあります。
弁護士費用特約により弁護士が介入すれば、損をする心配がなくなります。
交通事故後の対応にはいくつも注意すべきポイントがあります。
たとえば、事故直後はたとえ軽症であっても、必ず病院へ行く必要がありますし、治療が終了するまでは通院を続けなければなりません。
また、交通事故によって後遺症が残りそうなケースでは、等級認定のための資料集めや、医師に作成してもらう後遺障害診断書の内容に細心の注意を払う必要があります。
これらをすべてご自身で対応しているとミスをする危険があり、それをきっかけに慰謝料や賠償額が少なくなってしまうおそれがあるのです。
しかし、弁護士が介入していればすべてを代わりにチェックしてくれるため、不注意をきっかけに損をする心配がなくなります。
弁護士費用特約のデメリット
では、弁護士費用特約にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?
結論から言えば、弁護士費用特約にデメリットはありません。強いて挙げるのであれば、年間の保険料が少し上がってしまう程度です。具体的な金額でいえば、年間の保険料が1,000~2,000円程度上がることになります。
また、弁護士費用特約を利用したとしても、保険の等級が下がる心配ありません。
一般的に自動車保険には等級があり、無事故の期間が長ければ長いほど、自動車保険の金額が下がる仕組みになっています。
一方で、人身事故を起こしてしまった場合などは、等級が下がってしまい、保険料が上がることになります。
しかし、弁護士費用特約は利用したからといって保険の等級に影響はありません。このように大きなデメリットなく利用できるのが、弁護士費用特約の特徴です。
弁護士費用特約の使い方
弁護士費用特約を使いたい場合は、ご自身が加入している自動車保険に弁護士費用特約がついているかを確認することからはじめましょう。
その後は、保険会社に弁護士費用特約が使いたいと伝え、依頼したい弁護士事務所、もしくは弁護士を選定してください。
弁護士への依頼後は、すべての窓口が弁護士になるため、相手保険会社から連絡がくることは基本的にありません。弁護士の指示に従い、手続きを進めていきましょう。
利用対象者
弁護士費用特約の利用対象者は、主に以下となっています。
- 被保険者(保険契約者がほとんど)
- 被保険者の配偶者
- 被保険者(配偶者)同居の家族
- 被保険者(配偶者)の別居中の子ども
- 契約車両に搭乗していた方
- 契約車両の所有者(契約車両が事故対象だった場合のみ)
適用範囲
弁護士費用特約が適用される範囲は、主に以下の場面となっています。
- 車を運転中の事故
- 歩行中の事故
- 自転車を運転中の事故
- タクシーやバスに乗車中の事故
- 家族や知人が運転する車に搭乗中の事故
限度額
弁護士費用特約の限度額は、ほとんどの保険会社で以下の金額が採用されています。
- 弁護士への相談料10万円
- 司法書士や行政書士への書類作成費用10万円
- 弁護士への報酬などの費用(※)300万円
※着手金・成功報酬・訴訟や調停などの法的手続きの費用など
弁護士費用特約の注意点
弁護士費用特約を使用する際は、以下4つの点に注意してください。
- 注意点1 事故後の契約は補償外
- 注意点2 弁護士費用特約利用時は保険会社の承認が必要
- 注意点3 弁護士費用特約の重複
- 注意点4 すべてのケースで利用できるわけではない
注意点1 事故後の契約は補償外
弁護士費用特約は、事故後の契約については補償外となっています。
弁護士費用特約を利用したいのであれば、事故時点で弁護士費用特約を付帯した自動車保険を契約していることが必須条件です。
たとえば、交通事故に遭ってしまったからといって、あわてて弁護士費用特約の付帯した自動車保険に加入しても、まるで意味がないので注意してください。
注意点2 弁護士費用特約利用時は保険会社の承認が必要
弁護士費用特約を利用する際は、必ず保険会社からの承認を得る必要があります。
たとえば、保険会社からの承認を得ずに弁護士に相談し、依頼してしまったとなれば、補償対象外とされてしまうおそれがあるため注意してください。
その他、各保険会社が独自に定めている弁護士費用特約の規定に則っていない場合、自己負担金が発生する可能性もあります。
必ず保険会社からの確認・承認を得てから弁護士に相談・依頼をしてください。
注意点3 弁護士費用特約の重複
ご家族内で車を複数台所有している場合は、弁護士費用特約の重複に注意しましょう。
というのも、保険会社の契約内容によっては、1台分の契約をするだけで他の車も対象になるケースがあります。もし、複数台所有していて、そのすべての自動車保険で弁護士費用特約を付帯してしまうと、余計な支払いをすることになるため注意しましょう。
注意点4 すべてのケースで利用できるわけではない
弁護士費用特約は、交通事故であればすべてのケースで利用できるわけではありません。
たとえば、被保険者の故意や重大な過失によって発生した交通事故の場合や、台風や洪水などの自然災害が理由で発生した交通事故の場合は、弁護士費用特約の対象外になります。
また、日常で起きた自動車以外の事故についても利用できないとされています。
詳細については、保険会社によっても若干異なることから、各自が保険会社に確認することを推奨します。
弁護士費用特約で弁護士に依頼するメリット
弁護士費用特約を使って弁護士に依頼した場合、以下のようなメリットが発生します。
- 早期解決へとつながる
- 交渉難航時は裁判利用も可
- 弁護士は自由に選べる
①早期解決へとつながる
弁護士が介入するということは、交渉そのものがスムーズに進むケースがほとんどです。
ご自身で示談交渉をしていると、保険会社側からの提示額が妥当かどうかの判断ができません。しかし、弁護士であれば妥当性の判断は容易です。
となれば、示談交渉もスムーズに進むことになり、手元に示談金が入ってくるタイミングが早くなるため、交通事故問題の早期解決へとつながります。
②交渉難航時は裁判利用も可
もし、相手保険会社からの提示額が妥当でないのであれば、弁護士であればさらなる交渉によって金額アップさせることが十分可能です。
しかし、保険会社によっては「これ以上譲れない金額」があり、状況によっては十分と言えるだけの示談金を提示してもらえないケースもあります。
そういった場合であっても、弁護士であれば裁判や調停といった法的手続きによって、最終的に支払われる金額を妥当なものに上げられる強みがあります。
個人が保険会社相手に裁判を起こすとなれば、想像を超える手間と時間を費やすことになります。
一方で、弁護士費用特約によって弁護士に依頼すれば、ご自身の手間や時間を費やすことなく、妥当といえるだけの金額を手にできるメリットがあります。
③弁護士は自由に選べる
弁護士費用特約を利用するからといって、保険会社側から弁護士を指定されるわけではありません。基本的には、どの弁護士に相談・依頼するかについて自由に選択できます。
もし、ご自身で交通事故に強い弁護士を見つけることができれば、示談交渉はさらに有利なものとなりますし、手にできる慰謝料も大幅にアップするでしょう。
交通事故に強い弁護士を見つける方法
では、交通事故に強い弁護士は、どのようにして見つけたら良いのでしょうか?
具体的な方法として、以下の3つをご紹介します。
- 市区町村役場の交通事故相談を利用する
- 日弁連交通事故相談センターを利用する
- 交通事故に特化した法律事務所に相談する
①市区町村役場の交通事故相談を利用する
基本的にほとんどの市区町村役場では、定期的に法律相談を実施しています。
実施されている法律相談はジャンル別に分かれていて、借金問題や相続、離婚などの家事問題に加え、交通事故問題も実施されているケースがほとんどです。
各地域で実際に活躍している弁護士を招いての法律相談になるため、交通事故問題に精通した弁護士からアドバイスを受けられるので積極的に利用しましょう。
ただし、市区町村役場の規定で、弁護士による営業活動を禁止する意味で、名刺交換などを認めていない場合があります。そういった場合は、弁護士の名前を確認しておき、後ほどご自身でインターネット検索をかけるのが良いでしょう。
市区町村役場で相談した弁護士に、再度相談することが可能になります。その際は、弁護士費用特約を使い、あらためて相談・依頼をするのが良いでしょう。
②日弁連交通事故相談センターを利用する
日本弁護士連合会では、交通事故問題の解決策の1つとして、「公益財団法人 日弁連交通事故相談センター」を設立し、被害者救済を目的としています。
相談所は全国各地にあり、相談費用は無料となっているため誰でも気軽に利用できます。
相談には、電話相談と面接相談が設けられていて、希望に合わせて選択可能です。まずは電話相談から利用してみて、もっと詳しい内容が知りたいと感じたら、面談相談を利用し、実際に相談センターへ足を運んでみるのが良いでしょう。
日弁連交通事故相談センター:https://n-tacc.or.jp/
無料相談の電話番号:0120-078-325
③交通事故に特化した法律事務所に相談する
交通事故に強い弁護士を見つけたいのであれば、交通事故に特化した法律事務所に相談するのも良い選択肢の1つです。
交通事故に特化した法律事務所に特徴は、以下のとおりです。
- 交通事故の相談数・実績数が豊富である
- 交通事故問題の具体的な解決例を掲載している
- 交通事故に特化したホームページを運営している
- 交通事故に関するコラム記事を投稿している
上記に該当する場合、交通事故問題に力を入れて取り組んでいる法律事務所だということがわかります。それだけ交通事故に関する相談・依頼が集まってくるため、在籍している弁護士も交通事故問題に精通しているといえるでしょう。
ただし、ご自身で法律事務所を検討される場合は、いくつかの事務所に実際に足を運んでみることをおすすめします。文面だけでは本当に依頼したいと思えるかを判断することはできません。
実際に足を運び、いくつかの事務所、何人かの弁護士に相談してみた上で、依頼するかどうか判断することをおすすめします。弁護士も人である以上、相性というものはあります。
「この弁護士にお願いしたい!」と心から思える弁護士に依頼をしましょう。
まとめ
弁護士費用特約を使うとこで費用を心配する必要がなくなり、慰謝料は増額されるばかりか、保険の等級が下がる心配をする必要もありません。
これといったデメリットはなく、大きなメリットが生じることになるため、弁護士費用特約を利用できるのであれば、まず間違いなく利用すべきと断言できます。
また、もし弁護士費用特約にご自身が加入していなかったとしても焦る必要はありません。配偶者やご家族が契約していれば、弁護士費用特約を利用できるのでご安心ください。