給料ファクタリングは債務整理ができる!違法性や借金を無効にできる条件を解説
給料ファクタリングは給料の60%~80%ほどを即日受け取れる資金調達サービスですが、事業内容が貸金業に近いため債務整理できないか気になります。
そこで今回は給料ファクタリングの借金を債務整理できないか解説します。
結論から言うと、給料ファクタリングは債務整理が可能です。
しかし、条件次第では損害賠償請求のほうが望ましい場合もあるので、適切な対処法を選ぶポイントもお伝えします。
給料ファクタリングは受取額が大きく、多重債務に陥ることもあるため、借金を無効にする方法を確認しておきましょう。
給料ファクタリングは債務整理できるのか?
給料ファクタリングは給料を受け取る権利を給料債権として業者に売ることで、買取額を渡してもらうサービスです。
これだけ聞くと借金とは無縁のように思えますが、後日に給料の全額を業者に支払う必要があり、仕組みは貸金業と本質的に同じです。
買取額は元金から手数料が差し引かれるため、金利がかけられた融資とみなすことができます。
実際、金融庁も給料ファクタリングについては貸金業ではないものの、業者と利用者間で貸金業と同じお金の流れがあり、経済的に貸付と同様であると認識しています。
さらに次の項目で解説しますが、裁判でも給料ファクタリングが貸金業であると判決が下されています。
現在営業している給料ファクタリングの多くは給料を全額支払うことを前提にお金を渡し、支払いをしない場合は会社にファクタリングしたことを知らせると脅します。
貸金業に該当する可能性が高いため、債務整理の対象になるでしょう。
給料ファクタリングの債務が無効になった事例
給料ファクタリングが貸金業に該当すると判断された裁判について紹介します。
被告の男性(51歳)は2020年3月から7月にかけて、504人を相手に給料債権の売買を行いました。
被告は利用者の給料の約60%で給料債権を購入し、給料を受け取ったら債権を買い戻すよう契約したとされています。
利用者は債券を買い戻さないとファクタリングを利用したことを会社にバラすと言われており、支払わざるを得なかったそうです。
被告の男性は買戻しを強制したことはないと主張しました。
しかし、裁判官は実質的に返済を前提とした金銭のやり取りだったとして、貸金業法違反で懲役3年執行猶予5年、罰金900万円の支払いを命じました。
債務を無効にできる給料ファクタリング業者の特徴
給料ファクタリングを行っている業者の中には貸金業法に違反しているところがあります。
そういった業者を相手にする場合は通常よりもスムーズに債務整理ができる場合があります。
どういった業者が貸金業法に違反しているのか特徴を解説します。
ファクタリング業者が貸金業として登録していない
事業実態が貸金業である給料ファクタリングは、貸金業法に従って適切な登録を行う必要があります。
もし登録を行わずに営業していれば無登録営業となり、法律で罰せられます。
利用した給料ファクタリングが自治体もしくは財務局長に貸金業者として登録していなければ、違法営業となるので債務整理の裁判を有利に進められるでしょう。
取引自体が無効となることもあり、その場合は返済の必要がなくなります。
ファクタリング業者が貸金業として登録されているか確認するためには、業者のサイトに登録番号が記載されているか調べましょう。
その番号を金融庁の「登録貸金業者情報検索入力ページ」で検索して登録済みと表示されなければ無登録営業です。
手数料が20%以上の金利に該当する
給料ファクタリングの手数料が金利20%以上に該当する場合、出資法違反に該当するので法律家に返金を依頼すれば借金を無効にできるのはもちろん、支払ったお金が全額戻ってくる可能性があります。
被害者が多く警察に何件も被害が届けられている場合は捜査対象となり、事業者は貸金業法違反で10年以下の懲役か300万円以下の罰金が課せられます。
刑事告訴されたくない事業者がこちらの言い分を飲む可能性は十分になります。
裁判をしなくても示談交渉で借金を全額免除できる場合もあるでしょう。
給料ファクタリングの債務整理をすべきタイミング
債務整理の手続きは手間がかかることもあり、必要性を感じながらも始められないケースが少なくありません。
この項目では給料ファクタリングの債務整理を始めるのに最適なタイミングを3つ紹介するので、決心がつかない場合は参考にしてください。
給料ファクタリングの代金を返済できない時
給料ファクタリングの債務整理は可能な限り早い段階で行うのが効果的です。
遅れれば支払額が増え、延滞すれば遅延損害金まで請求される可能性があります。
会社にファクタリングをばらすと脅かされる危険性も考えられるので、債務整理をためらえば様々なリスクを抱えることになるでしょう。
給料ファクタリングの支払いは次の給料日に設定されることが多いため、給料日に返済が難しいと感じたら、その日に債務整理を法律家に相談してください。
お金を受け取ってから1ヶ月以内に返済を催促された時
業者によっては返済期限が次の給料日よりも前に設定されている場合もあります。
経済的に余力が無いタイミングで返済を催促されると延滞する危険性が高まり、より完済が難しくなるでしょう。
返済期日がサービス利用から1か月以内に設定されている場合は、お金を受け取った直後から債務整理を検討しましょう。
期日が短い業者は手数料や遅延損害金が高く設定される傾向があり悪質です。
借金が雪だるま式に増える危険性があるので、次の給料日前に支払いを要求されたら迅速に債務整理の手続きを始めてください。
いつ完済できるか分からなくなった時
借金トラブルで怖いのは、どれだけ返済しても借金が減らない状態に陥ることです。
利息分の支払いで精一杯になり、元本がいつまでたっても減りません。
給料ファクタリングでは利息が無いため利用額を把握していれば、返済が終わる時期を予測しやすいですが、カードローンなどの借入もあると完済時期を正確に試算するのは難しくなります。
複数の借金が複雑に絡み合い、返済が終わる時期が見通せなくなったら債務整理を考えてください。
他の借金を返済するためにファクタリングの支払いが何度も遅れると、業者は一括返済を求めてきます。
一括返済に応じられないと裁判所を介して差し押さえを受けることもあるので危険です。
支払いがいつ終わるか分からなくなったら、債務整理などの法的手段に頼りましょう。
給料ファクタリングを債務整理するメリット
債務整理をすれば給料ファクタリングの借金を減らせるだけでなく、様々なメリットを受けられる可能性があります。
貸金業者を相手に債務整理する場合とは全く異なる利点があるので、債務整理に慣れている方も是非確認してください。
受け取ったお金を返さなくていい
債務整理を行う場合、利用者に返済義務が生じるのが一般的です。
借金の返済が全額免除される自己破産でも、実際は手続きの序盤で管財人による資産の調査が行われ、資産の一部は没収されて返済に使われます。
しかし給料ファクタリングでは業者が法律に違反する資金提供を行っている場合があるため、借金があっても返済の義務は生じません。
受け取ったお金はそのまま自分のものになります。
本来、商業契約において契約を無効にする場合は、契約する前の状態に戻す必要があるため、物品や金銭のやり取りは全てリセットされます。
しかし違法営業である給料ファクタリングから受け取ったお金は「不法原因給付」として扱われるので、業者に戻さなくても構いません。
一度の債務整理で借金をまとめて一掃できる
債務整理をすると給料ファクタリング以外の借金もまとめて対処できる場合があります。
給料ファクタリングを利用する人は、融資を受けすぎて新規の借り入れができない人も少なくありません。
全ての借金を一掃できれば、借金地獄から一気に解放されるでしょう。
また、債務整理に自己破産を選んだ場合は債務の一覧を裁判所に提出する必要があり、意図的に特定の債務を整理対象から外すそうとすると免責が認められません。
効率的に借金を解消できる反面、融通が利かないところもあるので注意してください。
過払い金が戻ってくる
利息のない給料ファクタリングでは過払い金が存在しないと思われるかもしれません。
しかし、手数料を金利に換算すると法定金利20%を大きく超える600%になる場合があるため、過払い金が見つかることがあります。
任意整理をすれば過払い金で元金を減らせるため、残債がほとんど無くなってしまうこともあるでしょう。
これまでの判例で給料ファクタリングの実態が貸金業であると判断されているため、過払い金返還請求が認められる可能性は十分にあります。
過払い金が発生するか否かの目安は手数料です。
15%を超える手数料を請求されたなら法律が定める上限金利を超える可能性があるため、過払い金の額を法律家に試算してもらいましょう。
給料ファクタリングを債務整理するデメリット
悪質なファクタリング業者に対して債務整理を行うのは当然のことですが、注意しないと予想外の落とし穴にハマることがあります。
債務整理のデメリットもしっかり把握して、適切に利用できるようにしましょう。
いずれのデメリットも知っていれば対処できます。
給料ファクタリングが使えなくなる
債務整理して借金の返済を免責したり過払い金を請求すると、それ以降そのファクタリング業者を利用できなくなる可能性があります。
ファクタリング業者は利用の際に個人信用情報を確認しないため、金融ブラックで影響はありませんが、業者や関連企業独自のブラックリストを持っていることがあります。
自社に対して債務整理を行った人物はブラックリスト入りする可能性が高いため、いつでも使えるファクタリング業者が1つ減るでしょう。
キャッシングができなくなる
債務整理をすると与信取引ができなくなります。
与信取引というと金融機関からのローンやキャッシングが有名ですが、債務整理後は申し込んでも契約できません。
給料ファクタリングを利用する人の多くは金銭的余裕がないため、これまで普段から利用していたキャッシングが使えなくなると生活に支障が出る場合もあるでしょう。
しばらくは新たな借金ができなくなるため、借入が当たり前になった生活スタイルを改めるなどの努力が必要になります。
自己破産中は仕事ができなくなる可能性がある
給料ファクタリングの債務整理をすると特定の職業に就けない、もしくは業務ができなくなることがあります。
多くは弁護士などの特別な職業であるため、一般の方に大きな影響が及ぶ可能性は低いですが、なかには保険業務などの身近なものもあります。
制限を受ける職業を次の表にまとめましたので確認してください。
士業 | 公務員 | お金に関する職業 | その他 |
弁護士 行政書士 建築士 公認会計士 司法書士 社会保険労務士 宅地建物取引士 土地家屋調査士 不動産鑑定士弁理士 |
国家公安委員会の委員 | 銀行の取締役・執行役質屋信用金庫等の役員生命保険募集人貸金業 | 警備員旅行業の登録 |
上記の職業に就くことはできませんが、士業などの資格の取得は問題ありません。
給料ファクタリングの債務整理はどの手法を選ぶべきか
給料ファクチャリングは利息が発生せず、金利に該当する手数料が高いといった違いがあるため、カードローンと同じように債務整理の方法を選ぶことはできません。
任意整理と個人再生、自己破産、どの手法を選べばいいのか判断できるように、給料ファクタリングにおけるそれぞれの強みを解説します。
高額な手数料や遅延損害金を手軽に免除できる「任意整理」
任意整理は利息分の返済免除が主な目的であるため、利息が無い給料ファクタリングでは使いにくいように思えます。
しかし、手数料が実質的に利息分に該当するため、この分の返済を減らせる可能性があります。
給料ファクタリングの手数料はカードローンの金利などと比べても非常に高いケースがあり、その場合は総返済額を大幅に削ることができるでしょう。
手数料が15%を超えている場合は過払い金も期待できるので、元金を減らすことも可能です。
知名度の高い資金調達サービスを利用してから最後にファクタリングにたどり着くケースが多いため、様々なところからお金を借りている人もいるでしょう。
なかには債務整理の対象から外したい借金もあるはずです。そんな時、任意整理なら特定の借金だけ返済を続けられる可能性があります。
保証人のついてる借金を継続して返済することで人間関係を壊さずに債務整理できます。
複数の給料ファクタリングを利用している時に最適な「個人再生」
給料ファクタリングをいくつも利用している場合は個人再生を検討してみてください。
複数の給料ファクタリングを利用しているということは、今ある借金をなんとかして返したいと考えているはずです。経済的に追い込まれても借金返済の意志が固い場合は、残債を大幅に減らして返済していける個人再生が効果的です。
借金を5分の1に減らせるので、元金が500万円でも返済額を100万円まで下げられます。
しかも返済期間を最大5年まで延長できるので、延滞を繰り返している人でも1度の支払い額を抑えて返済していけるでしょう。
また、借金の担保になっていなければ自宅や車を残せるところも魅力です。
給料ファクタリングの借金が返せない時は「自己破産」
貸金業法を守って営業している給料ファクタリングからお金を受け取っていた場合、違法性が無いため損害賠償請求をして借金を帳消しにすることができません。
給料ファクタリングなどを繰り返して借金が膨らみ返済が難しい場合は、自己破産を裁判所に申し出ましょう。自己破産なら全ての債務が免除されるため、どれだけ借金があっても問題ありません。
また、カードローンや後払い現金化、身近な人からの借金など数多くの債務を抱えているなら、整理対象が多すぎて1件ずつ対応する任意整理では対処できません。
実質的に自己破産しか選択肢が無いでしょう。
強力な自己破産ですが、資産をほとんど全て失うデメリットがあります。
自宅はもちろん車や高価な家電など、返済に利用できる物は管財人に没収されると思ってください。
給料ファクタリングの債務整理を依頼できる法律家
給料ファクタリングの債務整理は専門知識を持った法律家にお願いするのが一般的です。
個人でやることも制度上は可能ですが、法律知識が必要な手続きが多く、裁判官との面接や債権者への説明もあるため素人には難しいです。
依頼先は弁護士か司法書士になります。
それぞれどういった特徴や強みがあるのか確認して、自身の債務整理に合った専門家を選べるようにしましょう。
裁判も視野に入れて本格的にやるなら弁護士
弁護士は全ての法律手続きが可能なため、様々なケースに対応できるところが魅力です。
全ての債務整理で代理人を勤めることができ、専門的な相談にも対応できます。
自己破産や個人再生では裁判官の面接と債権者への説明を代わりにしてくれるので、複数のファクタリング業者を相手に債務整理をする際の負担を軽くできます。
給料ファクタリングでは業者が貸金業法に違反する行為をしている場合、債務整理の代わりに損害賠償請求を選ぶケースもあります。この際も弁護士なら法律家を変えることなく、そのまま依頼できます。
借金の内容によって対処法が大きく変わる給料ファクタリングの債務整理では、対応力のある弁護士が強みを発揮するでしょう。
借金額が少ないなら司法書士
給料ファクタリング業者1社あたりの借金が少ない場合は司法書士に依頼できないか検討してみてください。
司法書士は1社あたり140万円未満の借金については任意整理の手続きで代理人ができます。
給料ファクタリングの債務額は自身の月給程度になるため、司法書士が活躍してくれます。
任意整理を利用するため元金を減らせないこともありますが、給料ファクタリングは手数料が高額なため、手数料分の支払いが免除されるだけでも返済は楽になります。
また、給料ファクタリングの実態は闇金であることが多いため、元金は必死で取り戻しに来ることが予想されます。
法律の知識よりもタフさが必要とされるので、闇金対応の実績がある司法書士であればより頼りになるでしょう。
給料ファクタリングの債務整理に関するよくある質問
ここまで給料ファクタリングの債務整理について幅広く取り扱ってきましたが、それでもいくつかお伝えできなかった内容があります。
債務整理に際して多くの人が気にするポイントをFAQ形式で解説するので、見落としている点がないか確認しましょう。
ファクタリングは違法ですが、利用者まで罪に問われることはありません。
しかし、給与は労働者に直接払うことが法律で決められているため、給与を債権化して無断で売買したら会社の印象は悪くなるでしょう。
給料ファクタリングの債務整理が会社に通知されることはありません。
自己破産や個人再生をすると国が発行している官報に名前が記載されますが、会社が官報の自己破産者名簿を調査することは考えにくいです。
また債務整理を理由に社員を辞めさせることはできません。
さらに自己破産をして一時的に仕事ができなくなっても、裁判の結果、免責が認められれば再び仕事ができるようになります。
給料ファクタリングの債務整理をしても、これまでどおりに会社で働けるでしょう。
支払いを無視すると違法な取り立てに合うリスクがあるので、専門家に相談して適切に対処することをおすすめします。
手数料を20%以上に設定している給料ファクタリングは闇金の可能性があるため、期日までに支払いを済ませないと会社に催促の電話をすることもあるでしょう。
支払い義務が無くても、一度お金を渡せば闇金は必死に回収しようとします。
最低でも元金を確保しようとするので、支払いを完全に無視するのは難しいです。
悪質な給料ファクタリングを利用してしまったら、闇金に強い法律家に相談してください。
ただし、なかには闇金とつながっている法律家もいるため、信頼できる人におすすめの専門家を紹介してもらいましょう。
債務整理は専門家に頼ることになりますが、費用を工面できないケースもあるでしょう。
そんな時は法テラスに相談してみてください。
法テラスは全国各地に支部があるため手軽に利用でき、しかも相談だけなら無料です。また、収入が法テラスの基準以下であれば、相場よりも安く弁護士に依頼できる仕組みもあります。
法テラスでも費用面で厳しいと感じたら、利用した給料ファクタリングで集団訴訟が行われていないか調べてみましょう。
集団訴訟の参加者が多いほど1人あたりのコストが安くなります。
まとめ:給料ファクタリングの債務整理は柔軟な対応が重要
給料ファクタリングは実質的に貸金業であるため、債務整理を利用して借金を減らす、または無くすことができます。
給料ファクタリングを利用する頃には金融機関から借入ができない状態になっているケースも少なくないため、債務整理の決断は迅速に行いましょう。
返済に困り、給料ファクタリングの利用を検討した時点で債務整理を始めるべきです。
債務整理の依頼先は弁護士と司法書士がありますが、より柔軟な対応ができるのは弁護士です。
給料ファクタリングは未登録で営業している業者が多いため、債務整理よりも損害賠償請求のほうがリターンを期待できます。
損害賠償請求も選択肢に入れるなら、法律手続きに強い弁護士がおすすめです。
手数料さえ免除できれば問題なく支払える場合は、任意整理ができる司法書士が安くて使いやすいでしょう。
給料ファクタリングの債務整理は借金の内容によって適切な対処法が変わるので、まずは法律家に対処法を相談してみてください。