不動産相続はどこに相談する?悩み別の相談先や違い、費用をわかりやすく解説
身近な人が亡くなると、葬儀や法事に加えて、相続手続きを進めていく必要があります。家や土地などの不動産は簡単に分割ができないため、相続時に揉めることも少なくありません。
不動産相続では、期限内に相続人や相続方法を決め、多数の書類を作成する必要があります。こうした手続きには法的知識が不可欠なため、なるべく専門家の手を借りることをおすすめします。
しかし、一口に専門家といっても多岐に渡るため、どこに相談すべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産相続に関する悩み別に最適な相談先をご紹介します。それぞれの業務範囲や費用、相談タイミングについても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
不動産を相続したらどこに相談する?悩み別に7つの相談先を紹介
不動産の相続には、相続財産の調査や遺産分割、書類作成、登記、税計算など複雑な手続きを伴います。時には相続人同士でトラブルに発生することもあるため、慎重な対応が求められます。
では、不動産を相続したらどこに相談すれば良いのでしょうか。弁護士、司法書士、税理士、行政書士などを想像する方が多いかもしれませんが、実は専門家によって対応できる業務が異なります。
相談先を選ぶ際は、どのような悩みを解決したいかを基準にすると良いでしょう。
よくある悩み別の相談先は次の通りです。
- 相続トラブルに対処したいなら「弁護士」
- 不動産登記なら「司法書士」
- 不動産の税関係なら「税理士」
- 簡易的なサポートなら「行政書士」
- 不動産の査定・売却なら「不動産管理会社」
- すべきことがわからないなら「最寄りの役所」
- 手続きの相談なら「金融機関」
以下、それぞれ詳しく解説します。
相続トラブルに対処したいなら「弁護士」
建物や土地などの不動産は高額な資産でありながら、預貯金のように簡単に分割できないため、相続時にトラブルが発生してしまいがちです。相続人が疎遠な場合や相続対象の不動産が遠方にある場合などは特に揉めやすく、ともすれば裁判に発展してしまう恐れもあります。
そんなときに頼りになるのが「弁護士」です。弁護士の業務範囲は多岐に渡り、遺産分割協議や書類作成に加えて、相続トラブルの対処ができます。相続人同士の揉め事に介入し、裁判上の手続きを代理可能です。揉めることが想定される場合には、あらかじめ弁護士に相談しておくとより安心です。
不動産登記なら「司法書士」
不動産登記に関する悩みを抱えている場合、司法書士に相談することが一般的です。司法書士は、不動産を含む相続手続き全般を依頼できます。
不動産の相続登記は自分でも可能ですが、法的知識や複雑な手続きが必要となるため、相続人の負担が大きくなってしまいがちです。司法書士のアドバイスを受けながら相続手続きを進め、書類作成を代行してもらうことで、不動産登記の問題をスムーズに解決できます。
不動産の税関係なら「税理士」
税理士は文字通り税の専門家です。不動産を相続する際には、相続税の申告を任せることができます。特に不動産相続では複雑な税計算を要するため、相続人だけで行うにはかなりハードルが高い手続きだと言えます。
相続税の申告は、相続開始を知った日(通常は被相続人が死亡した日)から10ヶ月以内にしなければなりません。相続税申告にはあらかじめ相続人・相続財産の調査や遺産分割協議をする必要があり、その結果に応じて提出する書類が異なります。正確な申告をするためにも税理士に相談しておくと安心です。
簡易的なサポートなら「行政書士」
行政書士の得意分野は役所への提出書類の作成です。相続手続きは迅速かつ正確に進める必要がありますが、焦って書類を集めたり、資料を作成したりすると書き間違いが起こる確率が高まります。万が一、書類に間違いがあると再提出を求められ、相続手続き自体が遅れてしまう可能性があります。
行政書士は、弁護士や司法書士よりも業務範囲は狭いものの、戸籍入手や自動車の名義変更などの書類作成に長けています。相続人や相続財産が少なく、相続手続きの簡易的なサポートを求めている方に最適な相談先です。不動産登記については行政書士が代理できないため注意しましょう。
不動産の査定・売却なら「不動産管理会社」
相続した不動産の査定・売却を検討している場合、不動産管理会社に相談することが一般的です。不動産管理会社は不動産相続の専門家ではありませんが、どの相続方法を選べば良いか悩んでいる方にとっては頼りになる存在です。
相続する不動産は資産価値のあるものとは限りません。空き家や古屋を相続する可能性もあるため、あらかじめ不動産の査定や解体・リフォームの必要性などについて不動産管理会社に相談しておくと安心です。
すべきことがわからないなら「最寄りの役所」
初めて不動産を相続する場合、そもそも何をすべきかわからないこともあるでしょう。一般的な相続手続きについては、最寄りの役所に相談することをおすすめします。不動産相続に関する大まかな手続きの流れや必要書類を把握することができます。
役所での相談時間は限られており、個別の事情について詳細なアドバイスをもらうのには向いていません。役所はあくまで初歩的なサポートを受ける場所として考え、具体的な手続きの相談・依頼については弁護士や司法書士に相談するとスムーズです。
手続きの相談なら「金融機関」
弁護士や司法書士などの士業のほか、金融機関の相続代行サービスを利用する手もあります。金融機関は専門家と提携していることが多いため、相続手続きの包括的なサポートを受けることが可能です。
不動産相続であっても、相続手続きには預貯金や投資信託などの金融資産が含まれていることがほとんどです。金融資産がある金融機関に直接依頼し、不動産相続についても相談すれば、より迅速に手続きを行うことができます。
ただし、直接士業に相談・依頼するよりも費用が高額になる恐れがあります。
不動産相続において弁護士、司法書士、税理士、行政書士ができる業務の違い
不動産の相続手続きにおいて相談先の選択は重要です。解説したように、弁護士・司法書士・税理士・行政書士が対応できる業務範囲はそれぞれ異なり、悩みにあわせて選択する必要があります。
それぞれの業務の違いを一覧表にまとめました。
業務範囲 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 |
---|---|---|---|---|
相続人調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続財産調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議 | 〇 | △(※1) | △(※1) | △(※1) |
紛争解決 | 〇 | △(※2) | × | × |
相続税申告 | △ | × | 〇 | × |
不動産登記 | 〇 | 〇 | × | × |
(※1)遺産分割協議に介入できるのは弁護士に限られます。ただし、司法書士・税理士・行政書士にも遺産分割協議書の作成を依頼できます。
(※2)相続に関連する紛争解決(=トラブル解決)に対応できるのは弁護士のみ。ただし、訴額が140万円以下の事案については一部の司法書士でも対応できます。
上記からわかるように、不動産相続手続き全体を依頼できるのは弁護士のみです。相続手続きの負担を減らしたい方や相続時のトラブルが予想される場合には、弁護士への依頼がおすすめです。
不動産の相続を専門家に依頼する費用
不動産の相続手続きは複雑なため、専門家のサポートを得る方がスムーズな場合があります。ただし、自分で手続きするよりも費用がかかるため、あらかじめ費用相場を把握しておくと安心です。
費用相場
相続手続きの費用相場は、相談先や依頼内容によって異なります。相続人や相続財産が多く、遺産分割や書類作成が複雑になる場合にはより高額になるケースがあります。
- 弁護士:10万〜30万円程度(相続調査や遺産分割協議など)
- 司法書士:5〜20万円程度(相続調査や不動産相続登記など)
- 税理士:相続額の0.5%〜1%程度(相続税申告)
- 行政書士:3〜5万円程度(相続調査や書類作成など)
上記はあくまで目安です。依頼する事務所によっては固定報酬ではなく、相続額の数%を報酬として設定していることがあるため、事前に料金体系についてよく確認するようにしましょう。
まずは無料相談がおすすめ
実際に不動産の相続手続きを依頼する前に、まずは無料相談をしておくと安心です。初回に限り30分〜1時間の無料相談を設けている事務所が多いため、積極的に利用しましょう。
無料相談をするメリットは次の通りです。
- 専門家に直接相談ができる
- 相続の悩みに応じた解決策がわかる
- 専門家との相性を確認できる
- 費用見積もりを出してもらえる
- 手続きのスケジュールを確認できる
依頼時には着手金を支払う必要があり、基本的に返金を求めることはできません。
「想定よりも費用がかさんだ」「専門家と相性が合わなかった」などのトラブルを防ぐためにも、無料相談をうまく利用するようにしましょう。
弁護士に相談するベストタイミングは?
不動産相続の相談なら、相続手続き全般の依頼が可能な弁護士がおすすめです。しかし、弁護士に相談するタイミングには注意が必要です。
依頼が遅すぎると、相続人間のトラブルが深刻化したり、役所の書類提出期限に間に合わなかったりする可能性があります。
弁護士に相談するベストタイミングについて解説します。
相続発生前がベスト
弁護士に相談するタイミングとしては、相続発生前がベストです。被相続人が亡くなる前に相談することをおすすめします。被相続人本人または相続人のご両親が65歳を超えたタイミングが目安です。
相続発生後の相談では「相続をするかしないか」「どのように分割するか」の2つが手続きの焦点となります。一方、相続発生前の相談であれば、遺言書の作成による相続割合の指定や生前贈与、節税対策など、相続方法の選択肢が大きく広がります。
遺産相続は家族の問題だからこそ感情的な言い争いになってしまい、最悪の場合は関係性が悪化してしまうリスクがあります。
被相続人本人があらかじめ弁護士に相談しておくと、将来の相続人同士のトラブルを防止できます。
相続発生後トラブルが起こる前に相談を!
理想の相談タイミングは相続発生前ですが、身近な人が亡くなってから弁護士への相談を検討するケースがほとんどです。相続発生後は手続きに期限があるため、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。少なくとも相続トラブルが起こる前には相談しておくと安心です。
なお、相続するかしないかを迷っている場合には、相続発生後3ヶ月以内が相談タイミングになります。相続の承認・放棄の決定には、不動産の査定を済ませ、相続人を確定しておく必要があるためです。
不動産相続の相談前に確認しておくこと
不動産を相続した場合、ただ漠然と相談するよりもある程度の準備を済ませておくとスムーズです。不動産相続の相談前に確認しておくこととしては、次の3つが挙げられます。
- 遺言書があるか
- どのくらいの財産・負債があるか
- 誰が相続人になるか
遺言書があるか
相続が発生したらまず、遺言書の有無を確認しておきましょう。遺言書とは、被相続人が死後の遺産分割について定めた文書のことです。相続では被相続人の希望が優先されるため、遺言書に基づいて不動産の相続人や相続方法を決定することになります。
遺言書がある場合、法的な有効性や内容を弁護士に相談していくことになります。一方、遺言書がない場合、民法の定めにしたがって相続人や相続割合を決めていきます。遺言書の有無でその後の相続手続きが大きく変わるため、初回相談時までに揃えておくことをおすすめします。
どのくらいの財産・負債があるか
相続相談時には不動産に限らず、財産全体を把握しておくことをおすすめします。
遺産には不動産を含むプラスの財産だけでなく、借金やローン、滞納家賃などのマイナスの財産も存在します。マイナスの財産がプラスの財産を超過してしまうと、相続人はその超過分を支払う義務を負うことになります。相続の承認・放棄を判断する基準ともなり得るため、財産目録を作成しておくと便利です。
なお、被相続人と疎遠である場合や被相続人が遠方に住んでいる場合には、財産の把握が難しいこともあるでしょう。この場合、財産調査自体を弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。
誰が相続人になるか
相続財産の調査とともに、相続人の調査も実施しておきましょう。そもそも誰が相続するのかを知らないと、その後の相続手続き自体が難しいためです。相続人は法律または遺言者によって確定します。
法定相続人は原則として配偶者、子ども、親、兄弟姉妹の優先順位で決まります。遺言書があればその指示に従うことになりますが、法定相続人以外を相続人として指定している場合には、法律上認められた遺留分の検討も必要です。
相続人は被相続人が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本を取り寄せることで確認できます。自分で相続人の確定ができない場合は、相談時に資料を持参するようにしましょう。
不動産の相続の流れ
不動産を相続する際の基本的な流れは次の通りです。
- 遺言書の確認
- 相続財産の調査
- 相続人の確定
- 遺産分割協議
- 不動産の相続登記
- そのほかの相続手続き
- 相続税の申告・納税
①遺言書の確認
まずは被相続人が遺言を残しているかどうかを確認します。遺言書は自宅のほか、法務局管轄の遺言書保管所や弁護士に預けられていることもあるため、慎重に探すようにしましょう。遺言書があればその内容に従い、遺言書がなければ次の手続きに進みます。
②相続財産の調査
次に被相続人がどのくらいの財産を残しているかを調査します。プラス・マイナス両方の財産を調査し、必要に応じて資産価値の査定・評価をするようにしましょう。
③相続人の確定
相続手続きを進める前に、そもそも誰が遺産を相続する権利を持っているのかを確認します。相続人は遺言書または法律の定めによって確定できます。相続人がすでに亡くなっている場合や相続の欠格・廃除が発生している場合には、相続人の確定が複雑になるため、あらかじめ弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
④遺産分割協議
相続財産と相続人が判明したら、遺産分割協議をします。遺産分割協議とは、被相続人の財産の分け方を決める話し合いのことで、相続人全員の同意によって成立します。協議の結果は遺産分割協議書にまとめ、その内容に従って不動産の登記や相続税申告をすることになります。
⑤不動産の相続登記
遺産分割協議によって不動産の相続人や相続方法が確定したら、相続登記を行います。登記は不動産の法的な所有者を変更するために必要な手続きです。
一般的には不動産がある地域を管轄している法務局で行います。相続登記には多くの書類を揃える必要があるため、弁護士や司法書士に依頼するとスムーズです。
⑥そのほかの相続手続き
相続できる財産は不動産のほかにも、預貯金や有価証券、自動車、貴金属など多岐に渡ります。これらの財産についてもそれぞれ相続手続きが必要です。
⑦相続税の申告・納税
相続する財産がわかったら、財産にかかる税金を計算して申告する必要があります。相続時には一定の控除がありますが、基礎控除額を上回る場合には相続税が課税されます。
相続税の申告は基本的に10ヶ月以内に行わなければなりません。時には複雑な計算が必要になることもあるため、申告ミスを防ぐためにも税理士などの専門家に依頼すると安心です。
不動産相続のトラブルに対応できるのは弁護士のみ!まずは無料相談
不動産は容易に分割ができないため、相続人同士のトラブルが起こる可能性が高くなります。相続の相談先はたくさんありますが、不動産相続時のトラブルに対応できるのは弁護士に限られます。
弁護士に相談すれば、不動産相続に伴う複雑な書類作成や遺産分割の介入を依頼できます。協議が整わずに裁判に発展してしまった場合でも、弁護士であれば一括して対応を任せられます。
まずは無料相談を利用して、相続手続きに関する不安や悩みを相談してみてはいかがでしょうか。