法テラスを「トラブルがあったときに、無料で専門家に相談できる場所」と認識している方は少なくありません。

ですが実際のところ、法テラスで費用を掛けずに相談や依頼が可能なのは、一定の条件を満たした方に限られます。

今回は法テラスを使って無料法律相談ができる条件やその内容、実際に依頼を行う場合の費用や流れについてまで、詳しくまとめました。

この記事を読むと分かること

・そもそも法テラスとはどんな場所なのか
・法テラスで無料相談を行う条件
・法テラスで依頼を行う場合の費用
・法テラスを利用するデメリット

法テラスとは?何を無料で相談できるの?

法テラスとは?何を無料で相談できるの?

法テラスとは国が設立した、法的トラブルの相談窓口です。

  • 借金や離婚、相続、詐欺などの法的トラブルが発生したが、誰にどう相談すればいいのか分からない
  • 弁護士や司法書士に支払う報酬を用意できない

といった場合でも市民が必要な情報や専門家に辿り着けるよう、平成18年に開設されました。

参考元:法テラス公式サイト

無料相談ができるのは「経済的に余裕のない方」のみ

無料相談ができるのは「経済的に余裕のない方」のみ

「無料で法律相談ができる場所」というイメージを抱かれることも多い法テラスですが、すべての市民が無料で何度も専門家に会えるわけではありません

ここからは、法テラスを無料で利用するための条件について解説します。

法テラスを無料で利用する条件

前提として、法テラスを利用できるのは以下の条件を満たす方に限られます。

■法テラスを無料で利用する条件

収入(月)資産
単身者182,000円以下または200,200円以下※180万円以下
2人家族251,000円以下または276,100円以下※250万円以下
3人家族272,000円以下または299,200円以下※270万円以下
生活保護の基準に定める一級地にお住まいの場合に適用

例えば単身で月収が18万円以下であっても、180万円を超える資産を有する場合には「法テラス」を利用できません。このように法テラスの無料相談は、「経済的に余裕がない方」にのみ解放されています。

参考元:法テラス公式サイト「初めての方へ」

無料相談は1回につき30分程度、同一問題につき3回まで

法テラスでの無料相談は「1回につき30分程度」、かつ多くても3回までです。

3度相談しても「裁判を行うかどうか」といった方針が定まらなかった場合、それ以上の手続きを法テラスで取ることはできません。

法テラスで無料なのは原則として「相談」まで

法テラスで無料なのは原則として「相談」まで

残念ながら法テラスであっても、すべての手続きを無料で済ませることはできません。

ここからは法テラスで発生しうる、料金について解説します。

弁護士や司法書士への依頼には実費や着手金、報酬金が発生する

法テラスを利用する場合であっても、下記の発生は避けられません。

  • 裁判などの手続きに必要な実費
  • 弁護士や司法書士へ支払う着手金・報酬金

ただし弁護士や司法書士へ支払う金額は、私設の法律事務所や司法書士事務所に比べると安価な傾向にあります。

弁護士・司法書士の費用等の目安

弁護士・司法書士の費用等の目安

法テラス公式サイトに記載されている、必要費用の目安は以下の通りです。

■着手金や実費の目安

着手金実費
自己破産(借入先10社)132,000円23,000円
離婚(調停)88,000~132,000円20,000円
強制執行55,000~77,000円20,000円
参考元:法テラス公式サイト

また上の費用とは別に、問題の解決状況に応じた「報酬金」が発生します。

例えば離婚の過程で慰謝料などを受け取った場合には、その中の一部を報酬金として支払う形となります。

法テラスと法律事務所の費用について

法テラスにおける離婚事件に必要な着手金が88,000円~であるのに対し、大手の私設法律事務所で同様の事件を依頼する場合の着手金は20万円~(訴訟を伴うのであれば30万円~)が目安となります。このように法テラスを利用する場合、私設の法律事務所よりも必要経費を抑えやすい傾向にあります。

経済的に余裕のない方は立替制度(分割払い)を利用できる

着手金や実費は原則として「口座引き落とし」で支払う方位となりますが、どうしても支払いが難しい場合には、法テラスの立替制度(分割払い)を利用できます。

立替制度に申し込めるのは、以下の条件をすべて満たす方に限られます。

■法テラスの立替制度へ申し込む条件

  • 収入が一定以下であること(下表参照)
  • 勝訴または免責の見込みがあること
  • 民事法律扶助の趣旨に適すること
    (相談や訴えに正当な理由などがあること)

■立替制度の収入要件

基準額家賃または住宅ローンを負担している場合に加算できる限度額資産要件
家計に貢献している家族の人数
※1 が1人である場合
18万2,000円以下
(20万200円以下※2)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下※2)
180万円以下
(同)2人である場合25万1,000円以下
(27万6,100円以下※2)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下※2)
250万円以下
(同)3人である場合27万2,000円以下
(29万9,200円以下※2)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下※2)
270万円以下
(同)4人である場合29万9,000円以下
(32万8,900円以下※2)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下※2)
300万円以下
※1 離婚事件の場合は配偶者を数えない
※2 生活保護の基準に定める一級地にお住まいの場合に適用

また立替制度を利用するためには、その審査に通過する必要があります。

参考元:法テラス公式サイト「費用を立て替えてもらいたい」

立替制度の審査に必要な書類

立替制度の審査に必要な書類

立替制度に審査を受けるために必要な書類は以下の通りです。

■立替制度の審査に必要な書類

  • 収入証明書類
    (2ヶ月分の給与明細書、源泉徴収票など1点)
  • 資力申告書
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 分割払いに使う口座の資料
    (キャッシュカードの写しなど)
  • 事件に関する書類
    (離婚事件であれば戸籍謄本)

「事件に関する書類」のために何を用意すればいいか?収入証明書類を提出できないといった疑問や懸念がある場合には、法テラスの窓口にてご相談ください。

参考元:法テラス公式サイト「費用を立て替えてもらいたい」

生活保護を受けている場合の返済猶予について

生活保護を受けている場合の返済猶予について

生活保護を受けている方の場合、例外的に生活保護が終了するまで、立替制度の返済が猶予されます。

ただし事件の相手方から慰謝料や過払い金などの金銭を得た場合、受領した金銭から着手金などを支払う必要があります。

★その他資産や収入の状況によっては、生活保護を受けていない方でも「返済免除」「返済猶予」が適用される場合があります。

参考:法テラス公式サイト

法テラスを通して無料相談や手続き・裁判を行う流れ

法テラスを通して無料相談や手続き・裁判を行う流れ

法テラスを通して無料相談~各種手続きや裁判を行う流れは、一般に以下の通りです。

■法テラスの利用の流れ

お近くの法テラスの窓口に電話で相談収入要件などを満たしていることを確認の上、予約を取る電話で指示された必要書類を持って相談窓口へ(最大3回)※必要であれば立替制度への申し込みケースに応じて調停、裁判などの手続き各種料金の支払い

このように法テラスを利用するためには、事前予約が必要ですのでご注意ください。

法テラスの場合、予約が込み合っておりすぐに専門家との時間が取れないことも珍しくありません。

例えば2023年8月現在、東京都内の法テラスの場合は予約から相談までに2週間以上を要する場合があります。

参考元:法テラス公式サイト「法律相談をご希望の方へ」

★お近くの法テラスの電話番号は、以下の公式サイトにて確認できます。

参考:法テラス公式サイト「お近くの法テラス(地方事務所一覧)」

★インターネットを使った予約も可能です(メールアドレスが必要です)。

希望する場合には、以下の公式サイトよりお手続きください。

参考:法テラス公式サイト「法テラス法律相談予約サービス

法テラスを利用する上でのデメリットと注意点

法テラスを利用する上でのデメリットと注意点

私設の法律事務所などよりもコストを抑えやすい「法テラス」。ですがコスト以外の面においては、デメリットが多いことも事実です。

ここからは、法テラスへ相談する前に知っておきたい注意点について解説します。

予約が立て込んでいる場合は相談や手続きに時間が掛かる

法テラスで相談や手続きを行うには、その都度予約を取る必要があります。

そして予約が立て込んでいる場合、なかなか専門家との相談の時間を取れないことは珍しくありません。

実際に「法テラス東京」では、相談内容によっては2週間以上、予約を取れない状況となっています(参考元:法テラス公式サイト)。

地域や相談内容による部分はありますが、「問題を一刻も早く解決したい」という場合、法テラスでの相談は避けた方が良いでしょう。

特に相談に回数を要するような、複雑な状況であればなおさら注意する必要があります。

一定以上の収入や資産があると相談ができない

一定以上の収入または資産を有している方は、そもそも「法テラス」を利用することができません。

この場合、電話予約を取ろうとした時点で相談を断られてしまいます。

■法テラスを無料で利用する条件

収入(月)資産
単身者182,000円以下または200,200円以下※180万円以下
2人家族251,000円以下または276,100円以下※250万円以下
3人家族272,000円以下または299,200円以下※270万円以下
生活保護の基準に定める一級地にお住まいの場合に適用

自分に合った弁護士や司法書士を選べない

法テラスで相談する際には自動的に「法テラスと契約している弁護士や司法書士」があてがわれます。

選定された専門家と相性が良ければ問題はないものの、仮にそうでなくても、別の専門家に依頼・相談しなおすことはできません。このように法テラスでの相談は、費用が安い代わりに自由が利きづらい傾向にあります。

法テラスを利用できない場合にはどうすればいい?

法テラスを利用できない場合にはどうすればいい?
  • 年収や資産の制限のため、法テラスを利用できない
  • できる限り早く相談したい、急いで問題を解決したい
  • 複数人と話し合って、自分に合った専門家を選びたい

という場合には、国が設立した法テラスよりも私設の法律事務所(弁護士事務所)や司法書士事務所を利用した方が良いでしょう。

司法書士は主に登記や債務整理の手続きを行うのに対し、法律事務所は離婚や刑事トラブルを含む、幅広い相談に対応しています。

また同じ「司法書士事務所」「法律事務所」の中でも得意分野にはそれぞれ違いがあるため、現在抱えているトラブルに合った専門家を選択したいところです。

例えば「詐欺に遭って損失したお金を取り戻したい」という場合には、消費者トラブルに強い「法律事務所」への相談が推奨されます。

※私設の法律事務所や司法書士事務所であっても、「初回の相談は無料」といったサービスを行っている場合は多いです。
※報酬体系は事務所によって異なるため、複数の事務所に見積もりを出してもらうのも良いでしょう。

法テラスの無料相談や利用条件ついてのまとめ

法テラスの無料相談や利用条件ついてのまとめ

■法テラスの無料相談についてのまとめ

一定の収入・資産基準を下回っていれば、法テラスにて無料で専門家(弁護士や司法書士)に相談ができる実際に専門家に依頼して手続きを進める場合、着手金などのコストが発生する。
ただし私設の法律事務所などに依頼するよりは、低負担となることが多い一方で「なかなか予約が取れない」「自分に合った専門家を選べない」といったデメリットも

法テラスはやや自由が利きづらい一方で、私設の法律事務所などに依頼するよりもコストを抑えやすいという利点があります。

「できる限り費用を掛けずに、法的トラブルを解決したい」という場合、法テラスの利用はとても有用と言えるでしょう。一方、収入要件を満たしていない場合や急いで問題を解決したい場合などには、「初回相談無料」の法律事務所などの利用をおすすめします。

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