国際ロマンス詐欺の被害金を取り戻す方法|成功返金率が低くなるケースも分かる
国際ロマンス詐欺は特殊詐欺の中でも被害額が大きく、さらに返金率が低いため詐欺に詳しくない人には対処が難しいです。
そこで今回はロマンス詐欺でだまし取られたお金を取り戻す方法を解説します。
様々な手口を使うロマンス詐欺に対応できるように5つの返金方法を紹介し、さらに返金に成功した事例も取り上げます。
取り戻すまでの流れをイメージできるでしょう。
また、返金率が低くなるケースについても触れるので、危険なロマンス詐欺を判別できるようになります。
安全にお金を取り戻すために覚えておきたいこと
ロマンス詐欺で被害金を取り戻したい場合、いくつか覚えておくべき注意点があります。安易な行動を取ると二次被害のリスクを高めます。
まず最初にロマンス詐欺の返金率は極めて低いことを心に留めておいてください。
詐欺師は巧妙な手口を使い、捜査の手が伸びないようにするため場合によっては裁判を起こすことすらままなりません。詐欺に気づいた頃には手遅れになっているケースも多いです。
返金が難しいことを知っていれば被害者を狙う二次被害に遭いにくくなります。
「被害金が全額戻ってくる!」などの誇大広告が検索エンジンなどに表示されますが、こういった内容は嘘だと判断できるでしょう。
ロマンス詐欺に対する警戒心を高めることにもつながるので、返金が簡単ではないことを忘れないでください。
国際ロマンス詐欺の二次被害について詳しく解説しています。
⇒国際ロマンス詐欺における二次被害の手口と対策法
ロマンス詐欺で被害金を取り戻すのに成功した事例
ロマンス詐欺で詐取されたお金を取り戻すことは難しいですが不可能ではありません。数は限られますが返金に成功したケースもあります。
被害金を取り戻すのに成功した事例を読んで、何が上手くいった要因なのか確認しましょう。
Kさん(男性)はSNSを情報集めに使っていましたが、ある日アジア系の女性からダイレクトメッセージが届きます。
女性からメッセージを初めて受け取ったKさんは戸惑いながらも彼女とやり取りを始めました。
すぐに女性と親しくなったKさん。プライベートに関することも少し話すほどに彼女のことを信頼します。そんな時、彼女から投資をしませんかと誘われます。
絶対に儲かるからと勧められたのはFXでした。FX取引が一般的な株取引以上に用心が必要な投資だと漠然と知っていたKさんでしたが、彼女のおすすめなら大丈夫だろうと取引を始めます。
最初は少額から始めたいと伝えたところ快く受け入れてくれたので、彼女に送金して投資手続きをしてもらうと、1ヶ月もしないうちに利益が出たと彼女から伝えられます。彼女を信頼してよかったと感じたKさんは投資額を増やしていきます。
しかし、時間が経つごとに彼女から連絡が減り、最終的には預けたお金を取り出せなくなります。
お金を取り出すには手数料が必要だと女性から伝えられたKさんは詐欺だと思い弁護士に相談しました。
弁護士は彼女の口座が残っていることを確認すると素早く銀行に連絡して返金に必要な手続きを勧めます。その結果、被害金の一部を取り戻せました。
Yさん(女性)はマッチングアプリで情熱的な言葉でアプローチしてきた外国人男性とメッセージのやり取りを始めました。
すぐに結婚の話をされて、その気になったYさん。
男性は今すぐにでも日本に行って一緒に暮らしたいと言いますが、残っている仕事があるのですぐには行けそうもないと言います。
さらに、そっちへ行ったらすぐ結婚できるように、結婚資金を投資で稼ごうと誘います。
結婚に前向きだったYさんは二つ返事で応え、約300万円を海外のサイトで投資しました。最終的に手数料も含めて400万円以上を支払ったそうです。
Yさんが支払ったことをメッセージで男性に伝えますが、いつまで待っても返信が来ません。
不安になったYさんは最寄りの警察署で相談しますが、相手が分からないと対処できないと言われます。
泣き寝入りはしたくないと感じたYさんは弁護士に相談。弁護士はマッチングアプリのメッセージや送金履歴などから男性を特定し、見事だまし取られたお金の回収に成功しました。
昔から海外の美女に憧れがあったFさん(男性)は、魅力的な外国人女性と出会えると評判のマッチングアプリを試します。すると3日ほどで外国人美女からメッセージが届き仲良くなります。
彼女は投資に興味を持っており、メッセージでは必ず投資の成果をFさんに伝えてきました。
彼女の話によると、1日で数十万円を稼ぐこともあり、本業よりも収入の柱になっていると言います。するとある日、彼女から「Fさんもやってみる?」と投資に誘われます。
正直言えば羨ましいと感じていたFさんでしたが、お金を損する可能性がある投資をするつもりはありません。しかし、彼女の気を少しでも引きたいと感じたFさんは投資話を受けます。
彼女の案内に従って英語だらけのWEBサイトで投資の手続きを済ませたFさん。数日後にWEBサイトを見ると投資した通貨の価格が上がったのか利益が出ていることを確認しました。
すぐに出金して利益を確保したいと思いましたが手数料が必要だと言われ、それならそのお金で投資をしたほうがお得だと思い追加投資をします。
その後も女性から投資の誘いを受け続けたFさんは違和感を感じます。その後、弁護士に相談して詐欺が発覚。
利用していたマッチングアプリから相手の情報を取得し、さらに口座を凍結してお金を取り戻すことに成功しました。
ロマンス詐欺の被害金を取り戻す方法
ロマンス詐欺は加害者が使った手口によって取るべき対処方法が異なります。
適切なやり方を選べるように、被害金を取り戻す方法を5つ紹介しましょう。
条件次第では簡単にお金を取り戻せる場合もあります。
詐欺師に金銭を要求されて、クレジットカードで購入した電子マネーを送った場合、クレジットカードを停止することで支払いを止められる可能性があります。
クレジットカード会社は詐欺対策に力を入れているため、ロマンス詐欺に遭ったことを説明して支払いを止めるようお願いしてみましょう。
事前に電子マネーを購入した会社に連絡して、購入したコード番号の電子マネーを無効にするよう伝えておけば、よりスムーズに手続きできます。
詐欺被害の賠償を求めて裁判を起こします。故意または過失によって相手に損害を生じさせた場合は損害賠償請求が認められます。
そのため結婚の意志が無い詐欺師が結婚を前提とした関係を悪用して被害者からお金を受け取った場合は損害賠償の対象になる可能性が高いです。
損害賠償請求をする上で問題になるのは証拠と詐欺師の個人情報です。詐欺だと気づくのが遅れた場合、証拠が消されることがあります。
また、詐欺師の本名と住所が分からなければ裁判を起こせません。
損害賠償請求を起こすなら情報集めが重要になるため、職権で企業や団体に情報開示を求められる弁護士の力を借りましょう。
詐欺師が利用している金融機関の口座を凍結して、被害金の回収をします。振り込め詐欺救済法により、特殊詐欺に使われている口座は凍結対象となります。
被害を確認したら振り込みに利用した金融機関にロマンス詐欺に遭ったことを報告してください。その際に詐欺師の口座に関する情報を伝えましょう。
被害金が戻ってくるまでには少々時間がかかります。口座を凍結し、他の被害申告を受ける期間を設け、その後に返金処理を行います。
被害者が複数いる場合は口座の残金を分配するため返金額が減ることもあるでしょう。
弁護士の調査などで詐欺師の氏名や住所が判明している場合は、示談交渉で返金するよう求められます。
裁判となると費用と時間がかかるため、示談交渉を持ちかけて相手が応じれば短時間で問題が解決するでしょう。
示談交渉をする場合は弁護士に依頼します。自分で行うこともできますが、詐欺師に与える精神的圧力を考えると弁護士に一任したほうが返金につながりやすいです。
弁護士に依頼すれば警察への告訴状が受理されやすく、詐欺師に刑事裁判や実刑判決のプレッシャーをかけて譲歩を引き出してくれるでしょう。
被害回復給付金支給制度とは詐欺罪などの財産犯罪において、犯人が詐取した財産を没収して被害者に返金する制度です。
刑事裁判において有罪判決が下された犯人の財産から換金できるものを剥奪し、適切な方法で売却して得たお金を被害額などに応じて分配します。
この制度を利用するためには次の2つの条件が満たされる必要があります。
- 詐欺師が逮捕され刑事裁判で有罪の判決が下される
- 詐欺師が換金できる財産を保有している
なお、被害者が給付金を受けるには事前に申請を済ませておく必要があります。
被害を受けた事件の加害者に有罪判決が下り、支給手続きが開始されると申請が可能になるため期限内に手続きをします。
申請には詐欺を受けた証拠が求められるので用意しておきましょう。
ロマンス詐欺の返金率が低くなるケース
ロマンス詐欺は返金率が低く、泣き寝入りする被害者が少なくありません。
とくにこれから紹介する条件を満たす場合、返金率がより低くなる傾向があるので注意してください。
条件を満たす場合は返金できなかったケースのことも考えながら行動することも重要です。
ロマンス詐欺を行っている犯罪グループの拠点が海外にある場合は返金が難しくなりやすいです。
被害金を取り戻すには詐欺師を特定する必要がありますが、弁護士に与えられている調査権は国内に限られているため、スムーズに情報収集ができません。
さらに拠点が置かれた国によっては警察の捜査が及びにくいことがあります。海外での調査となれば被害者が多く、マスメディアで話題にならない限り動いてくれない場合もあるでしょう。
稚拙な詐欺グループの場合、詐欺用のサイトを運用している海外のホスティングサービスから個人を特定できることも考えられます。しかし、弁護士に依頼しても煩雑な手続きが伴うため時間がかかります。
交渉は全て現地の言葉で行う必要があり、さらに情報開示に応じるか否かは相手任せになることも少なくありません。
交渉している間に被害金が犯人によって手の届かないところに移されるか使われてしまいます。
ただし、相手が片言の日本語を使っていたことを理由にあきらめる必要はありません。
日本人の詐欺師が外国人を装っている場合もあります。
ロマンス詐欺の被害に遭ってから時間が経つほど、被害金を取り戻すことが難しくなります。
だまされていたと分かれば、被害者がすぐに口座凍結などの対策を取ることを詐欺師は知っているため、お金が振り込まれるとすぐに口座から引き落とします。
クレジットカードで支払った場合でも時間が経過すれば決済処理が完了して、失ったお金を取り戻せなくなります。
一般的に被害金の回収は金融機関の口座に残されたお金を頼りとするため、口座にお金が無い時点で打つ手が無くなるケースも少なくありません。
追跡できない方法で詐欺師に送金した場合、相手に関する情報をつかめる機会をひとつ失うことになります。数少ない犯人特定のチャンスを逃すことになるため、被害金の回収が遠のくでしょう。
返金が難しくなる送金方法は暗号通貨です。誕生した頃に比べて利用されるケースが増え信頼度が高まっていますが、使い方次第ではマネーロンダリングなどにも使われるほど匿名性が高く、犯罪者にも用いられています。
ロマンス詐欺では海外の暗号通貨取引所に口座を作らせ、暗号通貨で送金させることがあります。
相手の口座を特定するのに時間がかかり、特定できても海外の口座を利用しているため回収が上手くいきません。
少しでも返金率を上げるためにすべきこと
返金率を少しでも上げることが被害金の回収につながることがあります。
基本は詐欺師に関連する情報を集めることです。
どういった情報が犯人を追い詰め、被害金を取り戻すのに役立つのか解説していきます。
まずは詐欺師に関する情報を集めましょう。マッチングアプリやSNSで出会った場合は相手のプロフィールを表示してスクリーンショットを撮影してください。詐欺師のアカウント情報をまとめて取得できます。
アカウント情報を記録しておけば弁護士がSNSの運営会社に情報開示請求をする際に役立ちます。
アカウント情報はしばらく運営会社のサーバーに残るため、詐欺師がアカウントを削除した場合でもアカウントIDなどの記録があれば、そこから詐欺師の情報を引き出せるケースもあるでしょう。
また、相手の名前やIDをネットで検索することで詐欺だと分かることもあります。
ロマンス詐欺の加害者は示談交渉しても返金に応じないことが珍しくありません。
民事裁判や刑事告訴といった強制力が必要になるため、自身の主張を認めてもらうためにロマンス詐欺の証拠を集めましょう。
証拠として集めるべき物は次の2つです。
- 詐欺師とのやり取りのログ
- 送金履歴
これらは詐欺罪の成立要件を満たすことを証明するために欠かせません。
2つの証拠の役割や重要性、具体的に何が証拠になるのかを解説します。
詐欺だと気づいた後、一番最初に確保すべき証拠は詐欺師とのやり取りのログです。詐欺罪を成立させるには犯人が人を欺いて事実を誤認させたことを示す必要があります。
ロマンス詐欺では言葉巧みに好意や結婚の意志があるように思わせて金銭を要求するため、やり取りの記録がそのまま証拠になります。
メッセージの記録を読むことで、被害者が詐欺師の言葉で事実を誤認する様子を確認できるでしょう。
やり取りのログを集める場合は、メッセージを受け取った時にすぐ記録するようにしてください。SNSやマッチングアプリによっては送ったメッセージを利用者が自由に削除できるものがあります。用心深い詐欺師は相手が確認するとメッセージをすぐに消します。
また、インスタのストーリーズのように決められた時間が経過すると自動的に消えるものもあるので、知らない相手からメッセージが来たらスクリーンショットを撮るように習慣づけましょう。
誤って詐欺師にお金を渡してしまった場合は送金の記録を保存してください。金銭などの財物が犯人に渡ることは詐欺罪の成立要件のひとつです。
詐欺師にお金をだまし取られたことの証拠になります。送金履歴が無ければ詐欺に遭ったことを証明できないため、告訴状を警察が受理してもらえないこともあります。
具体的な証拠は振込の履歴が記載された通帳、クレジットカードの利用明細、仮想通貨の送金履歴などが該当します。
裁判所や弁護士に提出しやすいように、WEBサイトの記録はプリントアウトしておきましょう。
国際ロマンス詐欺の仮想通貨について詳しく解説しています。
⇒SNSで急増中!仮想通貨を使った国際ロマンス詐欺に騙されないためには?
様々な手口があるロマンス詐欺は適切な対応をしないと被害金を取り戻せません。被害を確認したら弁護士に相談して、どう対処すべきか意見を聞きましょう。聞きかじった知識で対応すると時間ばかり経過して、返金の機会を失います。
弁護士に相談する場合は焦らないように注意しましょう。着手金をだまし取るような悪徳弁護士や、弁護士から名義を借りただけの悪質な業者も存在します。
検索エンジンの期間指定などを利用して、5年以上続いている弁護士事務所を選んでください。
被害金を取り戻せる弁護士を選ぶコツ
弁護士を探している人のために、ロマンス詐欺の被害金を回収する場合に頼りになる弁護士を選ぶコツを解説します。
二次被害を避けることにも役立つため、ぜひ内容を確認してください。
- 法テラスが勧める弁護士を検討する
- お金を取り戻す方法を質問する
- ロマンス詐欺でお金を取り戻した実績があるか確かめる
最初のカウンセリングで弁護士に聞くべきことも分かります。
弁護士の見極めが難しい初心者の人は法テラスが提供している無料相談を活用してください。
ロマンス詐欺に強い弁護士を紹介してもらえますし、返金の可能性についても教えてもらえます。
法テラスに弁護士を紹介してもらうメリットは、着手金をだまし取るような悪質弁護士を選ぶ危険性がないところです。
多くの人に弁護士を活用してもらうために設立された国の機関なので信頼できます。
経済上の都合で弁護士に依頼できない場合には援助を受けられる制度もあるので、お金に余裕が無い方は一度相談してみるといいでしょう。
インターネットや友だちの紹介で気になる弁護士を見つけた場合は相談の予約を取りましょう。
相談では被害に遭ったロマンス詐欺の詳細や、だまし取られた金額、送金方法など様々なことを聞かれるので、事前に詐欺師とのやり取りや被害内容をまとめておきましょう。
質問する時間も設けられるので、そこで被害金を取り戻す方法を聞いて、明確な方法を提示してくれるか確かめてください。
「これから検討します。」「証拠の精査から始めたいと思います。」といった言いまわしで明言を避けるようなら他の弁護士を検討しましょう。
弁護士に依頼するなら実績は重視すべき要素のひとつです。
ロマンス詐欺もしくは特殊詐欺の被害金を回収した経験が豊富な弁護士を見つけてください。
実績を確かめるには本人に直接聞くのが一番です。
WEBサイトに記載されている実績はロマンス詐欺以外のものが含まれている可能性があります。
担当したロマンス詐欺の内容や回収までの流れを質問して、具体的かつ、よどみなく説明できるようなら実績があると判断していいでしょう。
国際ロマンス詐欺の弁護士について詳しく解説しています。
⇒国際ロマンス詐欺の対応に弁護士は必要?メリットや費用について徹底解説
まとめ:被害金を取り戻すには迅速に証拠を集めて弁護士に相談する
被害金を取り戻すのが難しいロマンス詐欺では冷静かつ迅速な対応を心がけてください。対処が遅れれば被害金は追跡が難しいところに移されるか使われます。
被害を確認したら詐欺師とのやり取りなどの証拠を可能な限り集めて弁護士に回収を依頼しましょう。
返金の可能性や具体的な返金方法について詳しい話が聞けます。
ただし、弁護士選びは慎重に行ってください。安易な選択は二次被害につながるので、実績を確認することが重要です。
ロマンス詐欺の返金率が低いことを十分に留意して、信頼できる弁護士が依頼を断るようなら切り替えて二次被害の予防に力をいれましょう。