結婚を前提に交際を重ね、金銭の援助をしてあげた相手と急に連絡が取れなくなったような場合、結婚詐欺の可能性があります。詐欺師のターゲットになってしまうと、お金だけでなく精神的にも大きな苦痛を受けることになります。

詐欺罪として立証が難しいと言われる結婚詐欺。

この記事では結婚詐欺にあたる行為の要件についてご紹介するとともに、結婚詐欺師の手口や詐欺に遭った場合の対処法を解説します。

ネット問題に強い弁護士探しはこちら

結婚詐欺とは?

結婚詐欺とは、結婚を望む男女に結婚の意思があると見せかけて近づき、金銭を騙し取る詐欺のことを指します。詐欺師は相手の恋愛感情を利用するため、騙されていることに気が付きにくいという特徴があります。

詐欺に気づいたとしても、その事実を恥ずかしく思い、泣き寝入りしてしまう人も多いです。

内閣府が平成26年度に実施した結婚に関する調査によると、結婚は「できればした方が良い」と答えた人が54.1%と半数を超えました。「絶対にした方が良い」と答えた人を加えると、その割合はなんと約7割。世間では「おひとりさま」ブームが巻き起こりつつあるとは言え、「結婚したい」と考える人が一定数いることが分かります。

結婚詐欺はこうした結婚を望む男女の気持ちにつけ込んだ悪質な詐欺です。コロナ禍でマッチングアプリやSNSを通した出会いが一般的になり、顔の見えない人と関係を築くことにためらいがなくなっていることも、こうした結婚詐欺を助長していると言えるでしょう。

結婚詐欺のよくある流れ

結婚詐欺は結婚をエサにして、相手からお金を騙し取るのが特徴です。つまり、結婚願望のある男女が恰好のターゲット。特に、周りの結婚ラッシュや親戚から急かされるなど、結婚に焦りを感じている人が狙われやすいと言えるでしょう。

詐欺師にとって、最も手っ取り早いのは婚活市場に紛れ込むことです。

結婚詐欺をいち早く見抜くためにも、よくある流れを把握しておきましょう。

結婚を望む男女に近寄る

的確に結婚を望む男女に近寄るため、詐欺師は婚活市場に紛れ込むことが多いです。例えば、婚活サイトや婚活パーティーなどが挙げられます。確実に結婚を望んでいる男女が集まっているため、ターゲットの品定めをしやすいからです。

特に身元確認が甘く、ハイスペックなプロフィールを偽装しやすいところが狙われます。逆に、結婚相談所など身元確認がしっかりしているところは、詐欺師が行方をくらませるのに向いていないため、狙われにくいでしょう。

詐欺師は職業や貯蓄を聞き出し、「どのくらいお金を騙し取れるか」探りを入れてきます。「実家が太い」「貯蓄額が多い」「安定した職に就いている」など、一定以上のお金を騙し取れそうな人がターゲットになります。

ターゲットが決まれば、結婚を前提に交際を持ちかけます。

様々な理由でお金を借りる

交際が始まったら、急速に距離を詰めてきます。結婚を意識した会話が多くなり、メッセージ上でも頻繁に愛情表現をするようになります。中には、両親を装った詐欺グループの仲間に会わせ、相手の信頼を得る詐欺師もいます。このように相手との関係を十分に築いた上で、お金の話をしてくるのが結婚詐欺の特徴です。

「家族が交通事故に遭った」「事業が失敗した」「結婚の資金を貯めたい」など、様々な理由をつけてお金の無心をしてきます。詐欺師のことを信頼していると、「自分がなんとかしなければ」と思ってしまい、言われるがままにお金を貸してしまうことも少なくありません。

最初は少額のやりとりから始め、最終的には大金を騙し取ろうとします。相手からの要求額や頻度が多くなってくると要注意です。

突然連絡が取れなくなる

詐欺師は十分な額を騙し取ったら、ある日突然姿を消します。これまでの連絡手段だったLINEはブロックされ、SNSやマッチングアプリのアカウントもなくなっていることがほとんどです。

電話番号や住所を教えてもらっていた場合、架空のもの、あるいは、他人のものであることが発覚することがあります。大手企業に勤めていると偽っていることも多く、職場に問い合わせて初めて、所属していなかったと判明することもよくあります。

架空の会社の社長を名乗っていることも少なくありません。

結婚詐欺の巧妙な手口

結婚詐欺師は相手に好意を抱かせ、疑問を持たせずにお金を騙し取ることに慣れています。少しでも不審に思われたり、周りに相談されたりしてしまうと、計画自体が台無しになってしまうからです。相手との信頼関係を築き、自分に依存させることで、すぐに詐欺だと気づかないよう巧妙にお金を引き出します。

そして、手練れの結婚詐欺師であればあるほど、自分を特定できる情報を残しません。いくら結婚を匂わせていても、曖昧な情報だけで繋がっている相手は信頼しないようにしましょう。

詐欺師に騙されないためにも、あらかじめ結婚詐欺の手口を把握しておくことが大切です。

結婚詐欺師が使う巧妙な手口について解説します。

お金の貸し借りの証拠を残さない

詐欺師はお金の貸し借りの証拠を残さないようにします。例えば、金融機関を通して送金を行うと、相手の側にも口座名義などの情報を渡してしまうことになります。

警察が調べるとすぐに名義人に辿り着けることから、詐欺師はネット銀行を含む金融機関を利用しません。したがって、現金手渡しでのお金のやりとりを要求するようであれば、結婚詐欺を疑いましょう。

詐欺師は借用書などの契約書も残しません。ただし、最初の数回、少額を要求する際には契約書を作成する詐欺師もいるため注意が必要です。借りるお金が少額であるうちは書面を作成し、しっかり返済することで相手の信頼を得るという手口です。

最終的には数十万〜数百万ものお金を貸すように仕向けてきます。

金融商品の詐欺については下記の記事で解説しています。
金融商品詐欺の手口から対策まで|知っておくべき情報まとめ

少額ずつ多数の人からお金を引き出す

結婚詐欺師は詐欺のプロです。どの程度のお金であれば、疑いなく貸してもらえるかをよく知っています。

数百万という大きなお金が動くと、通報されるリスクが高まることから、被害者が泣き寝入りするような額を狙う詐欺師も存在します。

マッチングアプリやSNSを活用する

コロナ禍を経て、婚活パーティーなどの対面での出会いから、SNSやマッチングアプリなどのインターネット上の出会いが増えています。インターネット上では自分のプロフィールを偽ることが容易く、相手と出会うハードルが低いため、詐欺師の狙い目となっています。

顔の見えない相手とのやりとりには特に注意が必要です。SNSやアプリだけでの繋がりは、アカウントを消しただけで途絶えてしまうことを意識するようにしましょう。

また、運営元によっては身元確認が大雑把なこともあります。そのようなSNSやアプリには詐欺師が潜んでいる可能性が高いです。

インターネット上で婚活をする際には、身元確認をしっかり行っているかどうかをしっかり見ておきましょう。

どこからが結婚詐欺?

結婚を約束した相手に貸したお金が戻ってこない場合、結婚詐欺を疑うことになります。しかし、ただ貸したお金が戻ってこないというだけでは「詐欺」にはなりません。

詐欺師を逮捕して刑罰を課すためには、刑法上の「詐欺」の要件を満たす必要があります。

とはいえ、どのような行為が結婚詐欺にあたるのか、よく知らない人も多いでしょう。法律的な要件を確認しつつ、結婚詐欺にあたる行為とあたらない行為を解説します。

結婚詐欺と法律問題

結婚詐欺は「民事上の責任」と「刑事上の責任」の2つに分けて考える必要があります。民事上の責任は民法に規定されているもので、貸したお金が返ってこないと「債務不履行」となり、被害者は債務(借金)を返すよう請求することができます。

一方、刑事上の責任とは、いわゆる「詐欺罪」として相手を逮捕することができるものです。刑法は詐欺について以下のように定めています。

1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

‘刑法第246条’, Wikibooks,

したがって、結婚をちらつかせてお金を騙し取った(結婚詐欺)と認められれば、10年以下の懲役が課されます。

詐欺に協力した人も同様の罪に問われます。

詐欺罪の構成要件は以下の4つ。

  1. 人を欺く行為があること
  2. 欺く行為に騙されたこと
  3. お金を渡したり、借金を免除したりして詐欺師が財産上の利益を得たこと
  4. 欺く行為との因果関係があること

結婚詐欺にあたる行為

詐欺罪の構成要件に「結婚詐欺」を当てはめて考えてみましょう。

  • 結婚をするつもりがないのに、結婚をしたいと言う(
  • 相手がその言葉に騙される(
  • お金を渡す(
  • 結婚すると偽った言葉を信じてお金を渡している(

こう見ると、結婚詐欺は刑法上の「詐欺罪」に当てはまると言えます。お金を渡すだけでなく、財産の名義を変更させることや宝石などの高価な商品を購入させることもに該当します。

ただし、からまでを全て証明するのは非常に困難です。「結婚するつもりはあった」「相手が自主的にお金を渡した」などと主張する詐欺師もいます。刑法上の詐欺罪を認めてもらうためには、こうした証拠を集めることが大切になってきます。

結婚詐欺にあたらない行為

詐欺罪の構成要件に一つでも当てはまらなければ、結婚詐欺としては認められません。例えば、金銭以外の被害に遭ったケースや相手が金銭を要求していないケースが挙げられます。

詐欺罪は「財産上の利益を得ること(③)」が要件となっているため、金銭以外の被害には適用されません。体の関係を求められたというような被害では、刑法上の責任を問うことはできません。ただし、不法行為(貞操権侵害)として損害賠償請求や慰謝料請求をするなど、民事上の責任を問うことは可能です。

同様に、相手が金銭を要求していなければ、詐欺罪として認められません。詐欺罪は欺く行為があり、それによって金銭を渡したという事実が求められます。

一方的に金銭を渡したようなケースでは、騙されたと主張することは難しいでしょう。

実際の結婚詐欺の事例

ここでは、実際の結婚詐欺の事例をご紹介します。

海外育ちという女性とマッチングアプリで知り合い、結婚をほのめかされた。「私は証券会社の証券本部副部長をしている。為替取引に詳しいから投資をしないか」と持ちかけられ、指示された口座に入金した。計8回の振り込みを行い、現金800万円を騙し取られた。(滋賀県・52歳男性・無職)

参考:結婚ほのめかされた女性から「為替投資しないか」 52歳男性、500万円詐欺被害|社会|地域のニュース|京都新聞

出会い系アプリで知り合った女性から「友達の借金や親族の医療費などの金銭問題が解決すれば結婚できる」というメッセージを受け取った。その嘘を信じて、男性は口座に計400万円を振り込んだが、女性にはすでに配偶者がいた。(広島県・36歳男性・会社員)

参考:結婚詐欺の疑いで夫婦を逮捕 「金銭問題解決すれば・・・」400万円だまし取る 広島県警東広島署 | 中国新聞デジタル

キャリア警官を名乗る男性からプロポーズを受けた。「左遷された」「懲罰を受けた」など嘘の理由で現金計280万円を渡した。後日、男性は警察ではなく、トラック運転手で既婚者だったことが判明した。(34歳女性)

参考:警察“キャリア”になりすまして結婚詐欺 トラック運転手の男“裏の顔”が法廷で明らかに「本当に悔しい」被害女性が怒り|FNNプライムオンライン

結婚詐欺に遭った場合の対処法

結婚詐欺は立派な犯罪です。結婚詐欺に遭った場合には「刑事事件」または「民事事件」として訴えることが可能です。

どちらの場合であっても、相手を特定して罪を償ってもらう、あるいは、財産を返してもらうためには、なるべく早い段階で専門機関に相談する必要があります。

結婚詐欺を疑った時点で、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

刑事事件として警察に相談

刑事事件として、相手を逮捕して欲しい場合には、警察に被害届を出す必要があります。刑法上の詐欺罪の構成要件を満たしていれば、警察は詐欺罪として捜査を開始することができます。

ただし、男女関係をめぐる金銭トラブルは詐欺として認められないことも少なくありません。詐欺罪として認めてもらうには、「結婚する意思はなく騙す目的だった」ことを証明する必要があります。

警察に相談する際には、出会った経緯や過去のやり取り、お金を渡した証拠などを整理しておくようにしましょう。

民事事件として弁護士に相談

民事事件として、不法行為や債務不履行、貞操権侵害などに基づく損害賠償を請求する場合には、弁護士に相談することをおすすめします。詐欺師を訴えるためには、結婚詐欺により損害を発生したことを証明しなければなりません。

こうした証拠を揃えるには専門家に協力を仰ぐのが近道です。

結婚詐欺は立証が難しい

結婚詐欺に限らず、詐欺罪の立証は非常に難しいと言われています。相手の意思を客観的に証明する必要があるためです。

例えば、お互いに結婚するつもりがあって婚約し、相手にお金を貸していたが、相手の心変わりによって別れたというような場合を考えてみましょう。既婚者であることを隠しているなど特別な事情がある場合を除き、もともと結婚する意思がある訳ですから、結婚詐欺とは言えません。

このように結婚詐欺は本当に詐欺なのか、恋愛のもつれなのかの判断が難しく、警察が動きづらいと言えます。相手からは「騙すつもりはなかった」と反論される可能性が高く、被害者の側から有力な証拠を提示しなければなりません。

立証に必要な証拠

詐欺罪を立証するためには証拠が必要になります。結婚詐欺に限らず、お金のやりとりをする際には積極的に証拠を残すようにしましょう。

以下、立証に必要な証拠の例です。

  • 結婚する意思がないことを示す証拠
    例)配偶者や子供の存在を隠す言動、結婚を仄めかす言動、出会いから詐欺までの経緯など
  • 騙されて財産を渡したことがわかる証拠
    例)嘘の事情を説明してお金を無心する言動、渡した日付・財産額など
  • 相手の嘘の発言や偽りの個人情報
    例)偽りのプロフィール、名刺など

騙し取られたお金を回収したいなら弁護士に相談しよう

結婚詐欺は恋愛感情や結婚願望を逆手に取り、お金を騙しとる非常に悪質な犯罪です。しかし、男女間の金銭トラブルを詐欺罪として立証することは非常に難しく、泣き寝入りしてしまう被害者も少なくありません。

詐欺罪として認められたとしても、詐欺師に騙し取られた財産を回収できるとは限りません。財産を取り戻したい場合、詐欺に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

証拠集めのアドバイスを受けることができるほか、被害者の代理として交渉から訴訟まで任せることが可能です。結婚詐欺を疑うことがあれば、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

借金などにお困りの方

まずはお気軽にご相談下さい(無料相談窓口)

0120-177-037( 受付時間 年中無休 10:00〜20:00 )

© 2024 All Rights Reserved.