昨今のデジタル時代において、オンライン上の出会いはもはやめずらしくはありません。中には、オンライン上の出会いがきっかけで結婚へ至る方も増えてきました。

しかし、こうした便利なコミュニケーション手段の裏には、「国際ロマンス詐欺」という危険が潜んでいます。

本記事では、国際ロマンス詐欺を見分けるためのポイントや、万が一の被害に遭遇した際の対処法について詳しく解説します。

国際ロマンス詐欺とは？

国際ロマンス詐欺は、オンラインの出会い系サイトやソーシャルメディアを介して横行している、比較的新しいタイプの詐欺手段です。具体的な手口として、詐欺師は恋愛関係を装って被害者に近づき、信頼と愛情の感情を悪用し、あなたから金銭を詐取します。

詐欺師は、出生国、職業や生活状況などを偽り、被害者の同情を引くために悲痛な現状を語ります。そして、緊急を要する様々な理由を駆使し、金銭を支払うよう要求します。

また、国際ロマンス詐欺の詐欺師は、被害者との実際の面会を避け、常にオンラインや音声通話のみのコミュニケーションを取ることで、自身の身元を隠し続けます。

この種の詐欺は、昨今増加傾向にあり、警察やメディアも注意喚起を促すほどです。

国際ロマンス詐欺を見分け方のポイント

国際ロマンス詐欺を見分け方のポイントは、特定のサインに注意を払うことです。

というのも、国際ロマンス詐欺は巧妙に行われるため、初めは本当の恋愛感情を抱いてしまうケースはめずらしくありません。しかし、詐欺師の行動や言動の最終的な目的は、金銭を搾取することにあり、いくつかの共通パターンが存在します。

たとえば、関係の進展が異常に速い、絶えず金銭的な支援を求める、直接的な対面を避けるなどが挙げられます。

では、具体的に見分けるポイントについて詳細に見ていきましょう。

恋愛感情の展開がとにかく早い

本来、恋愛というのは徐々にお互いの距離を詰めていくものです。しかし、国際ロマンス詐欺の場合、恋愛感情の展開がとにかく早い傾向があります。

たとえば、ほんの数日連絡を取り合っただけで、「あなたは魅力的だ」と言ったり、「あなたを愛している」と言ったり、あなたに好意を抱くまでの期間が短いです。

そして、いかに運命的であるかを演出し、詐欺師はあなたの心を掌握しようと試みます。

実際に会えることはない

国際ロマンス詐欺では、被害者と詐欺師が実際に会えることは基本的にありません。詐欺師は、さまざまな言い訳を用いて直接会うことを避けます。

たとえば、緊急の仕事が入った、家族の問題が発生した、突然の健康上の問題が生じたなど、突発的かつ信じられる理由を作り出しては、対面の約束を破ります。体面を避ける理由は、詐欺師の真の意図や身元を確かめる機会を奪うことが目的です。

会う約束が何度も延期、またはキャンセルされる場合は警戒が必要です。詐欺師は、物理的な距離を保つことで自身の正体を隠し続けることを狙っています。

プロフィールとの矛盾が生じる

国際ロマンス詐欺の詐欺師は、基本的に虚偽のプロフィールを作成します。

このプロフィールは、偽の写真や仕事、生活環境や家族構成などが含まれ、多くの方から見て魅力的な内容になっています。しかし、詐欺師とやり取りを続ける中で、語られる内容とプロフィールの間に矛盾が生じることがよくあります。

たとえば、当初語っていた職業や趣味、過去の経験が後に変わることがあります。また、詐欺師がSNS上などに投稿する写真などが、地域や職業の現実と合致しないこともあります。少し突っ込まれた質問をされると答えられないなど、矛盾が生じてきます。

被害者は、相手を注意深く観察し、的確な質問をすることで、プロフィールとの矛盾に気付けます。オンライン上の関係は、常に情報の整合性を確認しなければなりません。

国際ロマンス詐欺を顔写真で見抜く方法を解説しています。
⇒国際ロマンス詐欺を顔写真で見抜くには？画像検索の手順や見分け方を解説！

メッセージの文面がおかしい

国際ロマンス詐欺の場合、多くは日本に関心を持つ外国人という設定が用いられます。しかし、実際には日本に関する知識すらないケースがほとんどです。

そして、詐欺師から送られてくるメッセージは、翻訳アプリを使用したような不自然な日本語が使われます。少しでも日本語に違和感があれば、やり取りは避けるのが賢明です。

また、最近では日本人が外国人を装うケースも見られます。実際は日本に詳しいにも関わらず、意図的に不自然な日本語を用いて、心を惹きつける演出をします。

実際問題、メッセージ内容だけで国際ロマンス詐欺であると断定するのは難しいですが、少しでも違和感があれば、積極的なコンタクトは避けるのが無難です。

金銭を要求される

国際ロマンス詐欺の最終的な目的は、金銭の要求に他なりません。急な恋愛感情の発展の後、まだ一度も会えていないにも関わらず金銭を要求してくる場合、国際ロマンス詐欺の可能性が一気に高くなります。

たとえば、「日本に引っ越すための費用を支払ってほしい」、「2人の将来のために投資しておこう」などといって金銭を要求してきます。

いったん相手に好意を抱いてしまうと、2人とって必要な出費だと感じてしまい、長期的に金銭を騙し取られる恐れがあります。また、最初は少額の要求が多いため、支払ってもいいかと感じてしまいがちです。

しかし、金銭の要求は、詐欺である事実をもっとも明確に見分けられるポイントです。

特に、オンライン上の関係で金銭的な援助を求められた場合、すぐ支払うべきではありません。実際の恋愛関係では、関係が浅いうちに金銭を要求することは一般的とはいえません。

国際ロマンス詐欺師が潜む場所

国際ロマンス詐欺師は、詐欺を行うために特定のプラットフォームを好んで使用します。

特に、以下で解説する3つのプラットフォームは、多くのユーザーと比較的容易に信頼関係を築ける環境が提供されていて、詐欺師にとって理想的な環境です。

マッチングアプリ

マッチングアプリは、基本的に恋人探しのためのプラットフォームです。

そもそも恋が芽生えやすい環境であることや、恋愛感情によって冷静な判断力が鈍るため、国際ロマンス詐欺師の活動場所として理想的です。

特に、登録や利用が容易な無料マッチングアプリは、国際ロマンス詐欺被害が多く報告されています。

また、最新のマッチングアプリは、写真をスワイプしながら自分の好みに合った異性を探すスタイルが主流です。

そのため、マッチングアプリで知り合った相手から金銭を要求された場合は、決して要求には応じず、冷静に判断できる周囲の方に相談してください。

マッチングアプリでの詐欺は交際あっせん詐欺などあります。
⇒交際あっせん詐欺の5つの手口と対処法
マッチングアプリでの国際ロマンス詐欺について
⇒マッチングアプリを利用した国際ロマンス詐欺の手口とは？対策や相談先について解説

言語学習アプリ

言語学習アプリ、特にハロートークのようなアプリも、国際ロマンス詐欺師が潜んでいます。

本来、ハロートークのようなアプリは言語や文化の交流を目的としたアプリです。ユーザーはネイティブの方と簡単に繋がることができ、様々な外国語を学べるのが特徴です。しかし、このアプリの利便性が国際ロマンス詐欺の温床となっています。

一般的に、言語学習アプリや言語交換アプリは、恋愛目的の利用は禁止されています。少しでも不審な振る舞いに気づいたら、迷わず相手ユーザーをブロック、運営事務局に通報し、詐欺被害に遭わないよう注意してください。

インスタやXなどのSNS

Facebook（フェイスブック）、X（旧ツイッター）、Instagram（インスタグラム）など、広く普及しているSNS上でも、国際ロマンス詐欺師が活動しています。

詐欺師は、まったく交流がないにも関わらず、突然フレンドリクエストやダイレクトメッセージを送り、詐欺に巻き込む相手を探しています。

たとえば、フェイスブックでは、知らない外国人からのフレンドリクエストは不自然なサインです。プロフィールに何か違和感があれば、慎重にコミュニケーションを取るか、あなたの安全確保のためブロックが賢明です。

また、Xやインスタグラムでは、アカウントを非公開に設定しない限り、誰でも簡単にダイレクトメッセージを送れます。

Instagramを使った詐欺について解説しています。
⇒インスタを使ったロマンス詐欺の手口と対処法｜見破る方法も解説

国際ロマンス詐欺の予防策

国際ロマンス詐欺に遭わないためには、予防策を理解し、日常的に実践することが重要です。

たとえば、個人情報の保護、オンラインでの交流における慎重な対応、そして何よりも、疑わしい要求や行動に対する迅速な対応が含まれます。

具体的には、以下の予防策を講じておけば、国際ロマンス詐欺被害に遭う心配はありません。

• 詐欺だと見分けられる証拠を集める
• 金銭の支払いは絶対にしない
• 詐欺師だと感じたら連絡は避ける

①詐欺だと見分けられる証拠を集める

国際ロマンス詐欺に直面した際には、証拠の収集が非常に重要です。詐欺だと疑われるやり取りがあった場合、可能な限りの記録を保持しておきましょう。

たとえば、メールやメッセージのスクリーンショット、通話の内容、送金を要求されたメッセージ、また詐欺師が使ったプロフィールのスクリーンショットなどが重要です。

これらは後に法的な措置を取る際、あるいは警察やその他の機関に報告する際に、証拠として必要になります。また、他の人が同様の詐欺に遭遇した場合の警告にも役立ちます。

詐欺師に現状以上の情報を提供しないように注意し、コミュニケーションは最小限に抑えてください。証拠を集めようとして、さらなる被害を招かないように警戒しましょう。

②金銭の支払いは絶対にしない

国際ロマンス詐欺において重要な予防策は、いかなる状況でも金銭を支払わないことです。

詐欺師は、被害者の恋愛感情を利用し、緊急の事態や困難な状況を装って金銭を要求します。最初は少額の要求がほとんどで、つい支払ってもいいかと感じてしまいがちです。

しかし、重要なのは、どれだけ説得力のある要求であっても、金銭は支払わないという予防策を守ることです。一度でも支払ってしまうと、詐欺師の要求はエスカレートしていき、多額の金銭を要求してくるケースがほとんどで、被害は拡大する一方です。

金銭を要求された場合は、すぐに信頼できる友人や家族からアドバイスを求め、場合によっては弁護士といった法律の専門家に相談してください。

③詐欺師だと感じたら連絡は避ける

オンライン上の関係で、相手を少しでも詐欺師だと感じる瞬間があれば、すぐに連絡を避けることが詐欺の予防に直結します。

詐欺師は、信頼を得ると感情的な心理操作や巧みな言葉で惑わせてきます。詐欺師の目的は、被害者をさらに深く罠にはめ、最終的に金銭を得ることです。

そのため、不審な振る舞いや疑わしい兆候を少しでも察知した場合、即座にコミュニケーションを中断し、相手をブロックすることが最善の予防策です。

連絡を中断する際は、詐欺師に対して説明する必要はありません。簡潔に、これ以上のコミュニケーションを望まない旨を伝え、必要に応じてブロックや通報を行ってください。

場合によっては、プラットフォーム上のプライバシー設定を見直し、他者からの閲覧をロックする等、個人情報の漏洩を防ぐ措置も講じましょう。

また、あなたが詐欺師から受けた精神的な影響にも注意を払ってください。特に、恋愛感情の喪失は心的負担が大きい場合があります。

国際ロマンス詐欺被害に遭ってしまったら

国際ロマンス詐欺を見分けられず、被害に遭ってしまった場合の対処法は次の3つです。

• 国民生活センターに相談する
• 警察に被害届を出す
• 弁護士に相談・依頼する

①国民生活センターに相談する

国民生活センターでは、詐欺被害に遭った際のアドバイスや、他の詐欺被害の情報提供を受けることができます。類似の相談事例があれば、自身のおかれた状況を正確に把握できます。

ただし、国民生活センターでは、詐欺事件の調査等を行うことはできず、詐欺師の特定や逮捕といった手続きのサポートは行えません。

②警察に被害届を出す

国際ロマンス詐欺は犯罪行為です。実際に被害に遭ってしまった場合は、警察に被害届を出してください。

ただし、国際ロマンス詐欺は国際的な犯罪であり、調査に時間を要するケースがほとんどです。相談したからといって即座に解決するわけではない点を理解しましょう。

また、被害届を出す際は、詐欺事件として立件できるだけの十分な証拠が必要になります。

③弁護士に相談・依頼する

国際ロマンス詐欺の被害に遭った場合、弁護士への相談・依頼も視野に入れましょう。

警察というのは、詐欺事件の調査や、詐欺師の逮捕が目的であって、詐欺被害額の返金をサポートしてくれるわけではありません。しかし、弁護士であれば詐欺師からの返金を目的として、法的手続きをサポートしてくれます。

詐欺の返金について詳しくまとめています。
⇒詐欺で騙し取られたお金返ってくる！返金を受け取れる5つの方法

まとめ

国際ロマンス詐欺は、オンライン交流が盛んな現代社会に急増している深刻な問題です。自身を守るためには、詐欺の予防と対処法を正しく理解しなければなりません。

特に、恋愛感情を悪用する詐欺師の存在を知り、よくある行動パターンに注意を払いましょう。急速な恋愛感情の展開、会う約束の破棄、矛盾するプロフィール、不自然なメッセージ内容、そしてもっとも気を配るべきは金銭の要求です。

これらに注意し、詐欺被害に巻き込まれないよう気を付けてください。

また、国際ロマンス詐欺は金銭的な被害だけにとどまらず、感情的な被害も及ぼします。詐欺師との関係から抜け出した後の精神的ケアも重要です。