面会交流で決めることと手続きの流れ|面会交流を拒否できる条件についても解説
面会交流は離婚後に親権を失う方にとって最後の頼みの綱のようなものです。
また、親権者にとって面会交流を認めることは信頼できない元配偶者が子供に近づくのを許すことになるため、拒否したいと考えるケースも少なくありません。
そこで今回は面会交流の話し合いで決める条件について解説します。
面会交流で扱う条件の詳細や、条件を決める際の注意点を確認しましょう。
親権者が面会交流を拒否できる条件についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
面会交流とは?
面会交流とは親権を失ったことで子供を扶養できなくなった親が子供と会って交流することです。
民法で明確に定められている権利ではありませんが、離婚協議や調停の際の取り決めにおいて、子供の監護の観点から面会交流について定めるべきとされています。
そのため公正証書や調停調書に面会交流の内容を記載できます。
面会交流の取り決めは子供が未成年のうちならいつでもできます。
離婚後でも裁判所に調停を申し立てれば、元配偶者と交渉が可能です。
離婚届には面会交流に関する項目がありますが、空欄のままでも受理されます。
本来、面会交流は健やかな子供の成長を考えて設けられた、子供のためのルールです。
親権を持たない親が子供と会うための権利ではないことに注意しましょう。
面会交流に関する取り決めをする流れ
面会交流の内容について取り決めは次の方法を利用するのが一般的です。
どちらの方法を選ぶかは夫婦仲や取り決めを行うタイミングによって異なりますが、最初に夫婦で話し合い、上手く話がまとまらない場合に調停を行うことが多いです。
それぞれの方法の特徴を見ていきましょう。
夫婦仲が険悪でない場合は、夫婦2人で話し合って面会交流の詳細について決めることができます。
話し合いにおいて最初の壁となるのは面会交流を認めるか否かです。
配偶者のこれまでの行いに問題がある場合、親権者は子供が相手と会うのを嫌がるため面会交流を拒否する傾向があります。
面会交流を認めても会う頻度や場所などで揉めることも少なくありません。
詳細な部分で折り合いがつかない場合は第三者に間に入ってもらうことで上手くいく場合もあります。
どちらにも肩入れしない弁護士や専門のカウンセラーが力になってくれるでしょう。
夫婦間の話し合いでまとまりそうもない、もしくは関係が悪化して話し合い自体が難しい場合は裁判所に面会交流の調停を申し立てます。
調停でも面会交流の詳細について話し合って取り決めを行いますが、間に仲介役となる調停委員が入るため顔を合わせずにやり取りができます。
落ち着いた話し合いができるよう調停委員が相手の主張の要点を整理して伝えてくれるため、直接言葉を交わす場合よりも話がまとまりやすいです。
やり取りが膠着状態になった場合は裁判所から審判が提案されたり、調停を申し立てた側から審判をお願いできます。
審判は面会交流の詳細について裁判所の判断を仰ぐことです。
裁判官が夫婦と調停委員の話を聞いて面会交流の条件について判断を下します。
審判の結果について夫婦が合意できれば面会交流の取り決めは完了です。
調停調書が発行されれば、取り決めは正式なものとして扱われます。
裁判所で行われる面会交流に関する調停や審判では、家庭裁判所調査官による様々な調査が行われ、その結果が面会交流の内容に影響します。
家庭裁判所調査官の調査内容は主に次の2つです。
- 面会交流について子供はどう感じているか
- 面会交流が親や子供にどんな影響を及ぼすか
調査官が行う調査の中で注意すべきなのが試行的面会交流です。
試行的面会交流とは調査官立会いのもとで行われる親権を持っていない親と子供の面会のことです。
裁判所内の一室で行われ、交流の様子が観察されます。
交流が和やかに進めば調査官に良い印象を与えられますが、雰囲気が固く子供が嫌がる素振りを見せれば面会交流が認められない場合があります。
面会交流を求めるなら子供との信頼関係は必要不可欠です。
面会交流の話し合いや調停で決めること
面会交流では様々な内容が話し合われます。
面会交流でできることにも大きく影響するため、どういった内容が話し合われるのか確認しておきましょう。
面会交流の条件について誤解していると後で親権者と揉める原因になります。
面会交流をどの程度の間隔で行うのか、およびいつ行うのかを決めます。
面会交流の頻度や時間帯は親権者や子供に過大なストレスがかからないように決めることが大切です。
面会交流は子供の受け渡しにかかる負担が大きいケースでは、面会交流のたびに親権者と子供がストレスを感じることになります。
子供が10歳以下の場合は相手の負担を考えて月に1回~2回程度に抑えておくべきでしょう。
また、子供が大きくなると受験や部活動で面会交流の時間が無くなる場合もあるので、子供の成長と共に会う頻度を下げることをおすすめします。
面会交流の際に子供を非監護親(親権を持たない親)に受け渡す方法についての取り決めです。
面会交流を始める際と終える際の受け渡し方について決めます。
子供の受け渡し方については次の方法が選ばれることが多いです。
- 非監護親が子供の住む自宅に訪れる
- 親権者が子供を連れて非監護親の自宅を訪れる
- 待ち合わせ場所を設けて、そこで子供を引き渡す
親権者と非監護親の仲が険悪な場合は面会交流支援団体に子供の受け渡しをお願いすることもできます。
面会交流で非監護親と子供の宿泊を認めるかについての取り決めです。
親権者と離れて非監護親と一晩過ごすことになるため、子供が非監護親に対して苦手意識を持っていると大きな精神的負担になりかねません。
子供と非監護親との関係をよく考慮した上で決めることになるでしょう。
非監護親との宿泊に問題無いと感じていても、小さい子供の場合、普段一緒にいる親が近くにいないと夜遅く不安になることもあります。
子供のことを考慮して、宿泊は子供がある程度大きくなってからにするか、よく話し合いましょう。
子供のプレゼントとして与えることができる品物の種類や、品物の価格、さらにお小遣いの金額についての取り決めです。
子供に高額な贈り物をするのを好まない親権者は少なくありません。
久しぶりに会う子供に欲しい物を買ってあげたくなりますが、親権者との関係を悪化させないためにはプレゼントの金額を節度あるものにすべきでしょう。
面会交流の取り決めのなかでも意見が分かれることが多い項目なので、「子供が欲しがる物をあげて何が悪い!」のような態度でのぞまないように注意してください。
非監護親が子供と会う際に立会人を付けるか否かを決めます。
面会交流中、かたわらにずっと立会人がいることになるため子供とだけ会うことができなくなります。
場合によっては交流中に立会人から注意を受けることもあるでしょう。
立会人は親権者が務めることが一般的ですが、非監護親との関係がよくない場合は面会交流支援団体の職員に依頼することもできます。
親権者と非監護親がいがみ合う姿を長時間子供に見せるのは好ましくないため、両者にわだかまりが残っている場合は立会人を面会交流支援団体の職員に任せるべきでしょう。
非監護親が運動会や演劇会といった学校行事や、スポーツクラブのイベントに参加できるようにするか決めます。
親権を失っても子供の晴れの姿を見たいと願う非監護親は多く、親権者に参加を認めるよう強く求めるケースも少なくありません。
参加を認めるか否かは子供の意見を聞いて決めましょう。
子供が学友と同じように両親と一緒に活動に参加したいと考えているなら、子供の意見を尊重して非監護親の参加を認めるべきです。
また、学校行事は親と子のつながりを感じさせるイベントであるため、非監護親が養育費の支払いにより前向きになるメリットも期待できます。
面会交流をスムーズに行うためには子供の送迎や引き渡しにかかる負担を軽くすることが重要です。
待ち合わせ場所を決めて毎回そこで子供を引き渡すようにすれば、親権者と非監護親のやり取りを最小限に抑えることができるため負担の軽減につながります。
待ち合わせ場所を変える場合や、非監護親が子供を急遽帰す必要ができた場合などに、すぐ親権者に通知できるように連絡方法を決めておくことも大切です。
電話番号を教えるのに抵抗がある場合は、万が一の場合に相手をブロックできるSNSなどを利用するといいでしょう。
面会交流を拒否できる条件
離婚した相手が問題行動をする危険性がある場合、親権者なら子供との面会交流を拒否したいと思うでしょう。
そのようなケースに対応できるように、非監護親からの面会交流の申し出を拒否できる条件を紹介します。
面会交流は非監護親の権利ではないので、子供のことを考えて適切に断りましょう
非監護親が離婚後に暴力事件を起こしたり、仕事で預かっている児童に危害を加えたことがある場合は、子供が虐待される危険性があるため面会交流を断ることができます。
子供が非監護親と一緒に住んでいる時に虐待を受けていた場合も同様です。
虐待の危険性を理由に面会交流を断る場合は証拠を用意しましょう。
相手が面会交流の調停を裁判所に申し立てた場合、裁判官に虐待の事実を証明する資料を見せる必要があります。
有効な証拠は医師の診断書や警察が保管している相談記録です。
離婚調停中に子供を連れ去ったことがあるなど、面会交流を認めると非監護親が子供をどこかへ連れていき返さない可能性がある場合も面会交流を拒否できます。
連れ去りは子供の生活環境を暴力的な方法で一変させてしまうため、子供に大きな精神的な負担を生じさせます。
子供の心を傷つける行為は、健やかな成長を重要視する面会交流においてあってはならないことです。
連れ去りのリスクがあることは十分に面会交流を断る理由になります。
ただし、相手が面会交流の立会人を認めるなど連れ去りの対策を提案した場合は、面会交流が可能になる場合があります。
子供が非監護親と会うのを嫌がる場合は、子供の意志を尊重して面会交流を拒否できます。
しかし、子供が小さい場合は身近にいる親権者の影響を受けやすく、会いたくないと親権者に言わされている可能性もあるため、子供の意見は参考程度に留められることもあります。
子供の意見が尊重されるようになるのは年齢が10歳を越えてからです。
自分の考えや気持ちを相手に説明できるようになるため、非監護親と会いたくないことを明確に伝えられます。
非監護親が親権者やその他の家族に対してDVをしていた場合、面会交流を断る理由になる可能性があります。
子供に対するDVに比べて知られていないので、忘れずに覚えておきましょう。
家族に対するDVで面会交流を拒否できる理由は、子供のトラウマ体験が問題になるためです。
過去に非監護親が親権者に対して暴力を振るっている姿を子供が目にすると、それがトラウマになる場合があります。
もし、面会交流で再び非監護親のDVを子供が目撃したら、フラッシュバックが起きて精神的に大きな衝撃を受ける危険性があるでしょう。
子供の健やかな成長のためにもDVをしたことがある非監護親との面会交流は慎重に決められるべきです。
この他にもDV防止法を根拠とした保護命令を受けているケースでは、面会交流を設けることで子供に危害が及ぶ可能性があるため、面会交流を拒否できる場合があります。
面会交流を弁護士に相談すべき理由
面会交流の取り決めは夫婦間で行うことができますが、より効果的な内容にするためには弁護士に内容を確認してもらったり、面会交流の手続きを一任することも検討してみましょう。
これから弁護士に面会交流の相談をすべき理由をお伝えするので、弁護士に依頼しようか迷っている場合は参考にしてください。
家庭の事情や子供の状況によって面会交流の条件は変わります。
夫婦ともに、どういった条件を加えるべきなのか分からずに自分の要望だけを考えて条件を決めると、子供に負担をかけるだけの面会交流になりかねません。
判例に詳しい弁護士のアドバイスをもとに面会交流の取り決めを行えば、加えるべき条件の選定が正確にでき、さらに適切な条件の設定が可能になるため、子供の健康的な成長を考慮した取り決めになるでしょう。
また、相手が不適切な条件を加えようとした場合は、法律を根拠に無効な条件だと指摘してくれます。
面会交流に関する考え方が非監護親と親権者で大きく異なっている場合、取り決めをしようとしても意見が対立するばかりで進展しません。
調停や審判を行っても相手が合意しなければ面会交流が認められないこともあります。
第三者である弁護士が交渉を代行すれば昔の事を蒸し返して衝突することが無くなるため、面会交流の取り決めがはかどります。
依頼者は相手と顔を合わせることなく目的を達成できるでしょう。
また、交渉の時間を今後の生活設計に費やすことができるメリットもあります。
面会交流の取り決めが完成したら内容を記した公正証書を作成します。
公正証書に面会交流の条件を記載すると、その内容が無条件で法的拘束力を持つと考える方がいますが、実際はそうでありません。
法律に違反するような内容は当然無効です。
弁護士が公正証書の作成をサポートしてくれれば、法律に違反するような問題個所は提出する前に修正してもらえます。
また、公正証書は提出する際に公証役場の職員による内容の確認が行われます。
問題箇所があると修正するように指摘されるのですが、弁護士が代行してくれれば適切に対応できます。
弁護士に依頼すると交渉中は相手との連絡窓口になってくれます。
相手と電話で会話する必要が無くなるため、別れた相手の声を聞くのも嫌な場合は助かるでしょう。
相手にとっても冷静に会話ができる弁護士は望ましい存在です。
揚げ足を取られたり、話している最中に横やりを入れられることが無いので意見のやり取りがスムーズにできます。
ただし、弁護士と連絡が取れない場合に備えて緊急用の連絡先を当事者どうしで交換しておくべきです。
弁護士に面会交流の相談をする前に確認しておくこと
弁護士に面会交流の取り決めを依頼すると最初に相談を行います。
この相談では弁護士がどのように面会交流を支援するのかを決めます。
依頼者が望む結果を得るためには、相談の際に正確な情報を提供することが大切です。
どういった情報が必要になるのか確認しましょう。
また、相談の際は弁護士選びのポイントについて知っておくことも大切なので併せて解説します。
面会交流の取り決めは家庭事情を反映したものにするのが一般的です。
子供が学業やクラブ活動で時間が取れない場合や、親権者が立会人を務める場合は時間の都合を考慮して面会交流の日取りを決める必要があります。
弁護士が取り決めをスムーズに行えるように家庭事情に関する情報をできる限り多く提供しましょう。
親権者の勤務実態や、お子さんの活動時間、お子さんに持病は無いかなど面会交流に影響しそうなものをリストアップしてまとめてください。
非監護親の情報も忘れず伝えましょう。
とくにDVに関する記録があれば必ず提供してください。
子供と会う頻度や場所など面会交流の条件について要望がある場合は、箇条書きにして弁護士に渡しましょう。
弁護士は可能な限り依頼者の要望に沿った条件で面会交流ができるよう取り計らってくれます。
取り決めに加えて欲しい条件がどれか明確に伝えることで、弁護士のサポートの方向性が決まるので、何を一番に望むかだけはハッキリさせておきましょう。
また、要望が叶わない可能性が高い場合は早い段階で教えてくれるので目標を修正できます。
弁護士を選ぶ際は複数の弁護士または弁護士事務所と相談してください。
初めて弁護士に面会交流のサポートをお願いする場合、頼りになる先生が誰か分からず困ることは珍しくありません。
弁護士のWEBサイトに掲載されている情報だけで判断せずに、実際に会って話をしてみましょう。
会って言葉を交わせば弁護士が面会交流についてどれだけ詳しいのかが分かります。
相談費用が心配な場合は初回限定の無料相談を活用しましょう。
何度か相談を繰り返せば信頼できる弁護士とそうでない弁護士の違いが分かってきます。
面会交流についてのよくある質問
面会交流の取り決めに関する基礎知識を深めるために、面会交流に関するよくある質問を確認しましょう。
多くの人が感じる疑問と、その答えを知ることで実践的な知識を効率的に吸収できます。
面会交流を拒否できないケースについても、より詳しくなれます。
- 取り決めた面会交流を拒否するとどうなりますか?
- 協議や調停で面会交流に関する取り決めを行ったにも関わらず、親権者が面会交流を拒否して子供と会わせない場合、非監護親から面会交流を求めて法的措置を取られる可能性があります。
代表的な法的措置は履行勧告です。
履行勧告の申し立てがあると、家庭裁判所は面会交流を行なわない親権者に対して、取り決めに従うよう促します。
しかし、履行勧告には法的強制力が無く、勧告に従わなかった場合のペナルティも無いため、無視する親権者もいます。
履行勧告が無視された場合は間接強制の申し立てをされる場合がありますが、これも強制力がありません。
現在の法律では親権者が面会交流を一方的に無視できるようになっています。
- 養育費を受け取らなければ面会交流を拒否できますか?
- 養育費の支払いと面会交流には関連性がありません。
養育費の支払い義務は面会交流とは全く関係が無いため、養育費の受け取りを断っても面会交流を認めることになる場合もあります。
また、面会交流を拒否したうえで、養育費を受け取ることも可能です。
面会交流は親の都合で認めたり拒否するものではありません。
本来、面会交流は子供の幸せを考慮して行われるものです。
面会交流を考える際は、お金の問題を脇に置いて、子供の健やかな成長を最優先にしましょう。
- 再婚を理由に面会交流を断れますか?
- 親権者の再婚を理由に、非監護親の面会交流を断ることは認められません。
子供の本当の両親は何があっても変わらないため、再婚をしても面会交流の取り決めは有効です。
非監護親との面会交流が子供にとって重要なものであるうちは、引き続き面会交流が行われるでしょう。
ただし、再婚によって子供の心境が変わり、非監護親との面会を嫌がっているようなら面会交流を拒否できる場合もあるので注意してください。
面会交流は原則的に子供のためのものですから、子供が嫌がる場合は強要できません。
まとめ:面会交流は子供のことを第一に考えて決める!内容の精査は弁護士に依頼すべき
面会交流は親権を失った親が子供と接する機会を確保するためのものと考えられることが多いですが、子供が心身ともに健やかに成長することを目的としています。
面会交流の取り決めでは会う時間や頻度、子供の引き渡し方、学校行事への参加など様々なことを決めますが、親の都合ではなく子供のことを考慮して決めることが重要です。
面会交流を拒否する場合も子供第一主義で考えてください。
子供が会うのを嫌がるようなら無理強いはできません。
面会交流の取り決めが完了し、公正証書に記録する場合は弁護士に内容の精査を依頼しましょう。
内容に不備があると公証役場で受理してもらえません。
トラブルになることも多いので、弁護士に仲介してもらいながらスムーズに面会交流の手続きを進めましょう。