離婚回避のためにすべきこと|代表的な離婚トラブルごとに回避のポイントを解説
離婚回避は簡単ではありません。
相手が離婚の決意を固めている場合は困難を極めるでしょう。
そこで今回は離婚回避のためにすべきことを解説します。
離婚を決定づける離婚事由を逆手に取った対策や、忘れずにやっておきたい不受理申出など幅広く対処法を紹介していきます。
離婚を回避できた人の事例も取り上げるので、具体的にどうやって夫婦関係を維持するのかイメージできるようになるでしょう。
離婚回避が事実上不可能になる条件
まずは離婚回避が難しくなる条件について取り上げます。
絶対に避けるべき状況を確認しましょう。
これから取り上げる5つの条件は全て法定離婚事由に関連しています。
この条件に当てはまる場合、離婚裁判を提起されたら離婚は回避できない可能性が高いので注意してください。
不倫相手と肉体関係を持つと不貞行為に該当します。
不貞行為は代表的な離婚事由のひとつで、結婚生活を続けたいなら避けるべきです。
注意したいのは不倫をしたから必ず不貞行為になるわけではない点です。
肉体関係がなければ2人だけで会ってデートをしても不貞行為にはなりません。
しかし、配偶者に不倫が知られた場合は関係が著しく悪化する危険性があるため、たとえ肉体関係を持つ意志が無くても避けるべき行為と言えるでしょう。
もし回復が難しい重篤な精神病にかかった場合、配偶者からの離婚の申し出を断れない場合があります。
重い精神病が離婚事由になる理由は婚姻関係を維持できないためです。
配偶者に対する救済措置とも言えるでしょう。
離婚が認められるほどの重い精神病として扱われる可能性がある病気は次のとおりです。
- 統合失調症
- 早発性痴呆
- 麻痺性痴呆
- 偏執病
- 躁鬱病
- アルツハイマー病
- 初老期精神病
- 認知症
- 重度の身体障がい者
しかし、これらの病気にかかったからといって即座に離婚できるわけではありません。
十分な治療を行った事実と、離婚後に誰が面倒を見るのか決まっていなければ離婚裁判をしても認められないことがあります。
3年以上配偶者から身を隠していると、配偶者が離婚を希望した場合に一方的に離婚が認められる場合があります。
配偶者が3年以上行方不明だと裁判で離婚の理由として認められるため、配偶者が分からない場所で連絡を取らず生活していると知らぬ間に離婚手続きが完了している場合もあるでしょう。
行方不明の期間が3年を過ぎると離婚が認められる理由は、長期間配偶者の生死が分からず婚姻関係の維持が難しいと判断されるためです。
滅多にあることではありませんが、不仲になっても配偶者とは定期的に連絡を取るべきです。
相手に住んでいる場所を伝えていても、相互扶助の義務がある配偶者を長期間放置して暮らしていると離婚の申し出を断れなくなる可能性があります。
夫婦の相互扶助を放棄することは「悪意の遺棄」と呼ばれ、離婚事由として扱われます。
悪意の遺棄と判断される行為には複数あり、生活費を渡さない、夫婦共働きにもかかわらず家事の分担を拒否する、家に滅多に帰らないなどが含まれます。
相互扶助は軽く見られる義務ですが、離婚裁判では判決を左右することがあるため、普段の生活においても重要視すべきです。
婚姻関係を続けることを難しくする次のような行為は、裁判で離婚事由として扱われる場合があります。
- 家庭内暴力
- 依存症(アルコール依存症・ギャンブル依存症・買い物依存症)
- 婚姻関係を疎かにするほどの宗教活動に没頭する
- 夜の営みにおける嗜好が合わない
家庭内暴力は適用範囲が広いので注意が必要です。
身体に対する暴力以外にも暴言や、無視、壁を叩くといった精神的な暴力も家庭内暴力に含まれます。
アルコールをはじめとした依存症も程度が強いものは相互扶助の関係が崩れるため問題視されるでしょう。
意外なところでは夜の営みの嗜好の不一致も離婚の理由として認められます。
夫婦の営みとも呼ばれることですから軽視することはできません。
こういった行為を安易に行って離婚を回避できなくならないように注意しましょう。
離婚回避のためにすべきこと|効果的な奥の手も紹介
離婚を回避するためには状況が良くなるのを待たずに、積極的に動くことが大切です。
現在の状況は何かしらの問題を抱えているため、問題の解決につながるアプローチをしましょう。
何をやっても効果が出ない場合の奥の手も紹介します。
離婚を回避するために、まずは離婚の動機を正確に把握しましょう。
離婚の理由によって対処法は異なります。
間違った対応をしないためにも、何が配偶者を離婚したいと思わせるのか調べましょう。
重要なのは相手が離婚の話を切り出す前に対処することです。
離婚の話を配偶者にする時点で離婚を固く決意しているケースは少なくありません。
顔を合わせる機会が減った、自宅にいない時間が増えたなど離婚の兆候があるようなら、最近配偶者と交わした会話の内容を思い出してください。
何かしら不満を口にしているはずです。
準備段階で相手に遅れをとると離婚回避は難しくなります。
普段から配偶者と意識的に会話をして、変化に気づけるようにしましょう。
配偶者が離婚に向けて動いていることを周囲の状況から感じ取ったら、相手が離婚事由に当たる行為をしていないか調べましょう。
もし、裁判で離婚の理由として認められることを配偶者が行っていたなら、配偶者が離婚裁判を起こしても離婚が認められる見込みは薄くなります。
最初に確認すべきは不倫の調査です。
不倫は多くの場合、体の関係を持つため不貞行為をしている可能性があります。
週末や夜の行動を確認して外出する機会が増えていないか調べましょう。
もし不倫の疑いがあれば、それ以降の調査は不倫に強い興信所のサポートを受けながら勧めることをおすすめします。
次は家庭内暴力をしていないか確認してください。
前述したとおり家庭内暴力は精神的な攻撃も含みます。
思いがけない行為が家庭内暴力に該当する可能性があるため、配偶者が行った暴力的な行為をリストにまとめて弁護士や離婚カウンセラーに相談してみましょう。
悪意の遺棄に該当しないように、あなたの収入が配偶者よりも大幅に多い場合は生活費を支払ってください。
相手が仕事をしておらず収入が無い場合、配偶者であるあなたが家族の生活を支える必要があります。
生活費として支払う金額は月額6万円~10万円ほどが相場です。
相手に収入があれば減らすこともできますが、収入を意図的に減らして十分な生活費を受けられなかったと主張されないように相場の額を渡しておきましょう。
また、別居中でも相手に収入が無ければ生活費を渡す必要があるので注意してください。
離婚届は相手の同意書が無くても市町村役場に提出できます。
夫婦2人の署名が離婚届に書かれていれば手続き上は問題の無い書類として扱われるため、そのまま受理されるでしょう。
何もしなければ形式上は2人の離婚が成立したことになります。
このようなトラブルを防ぐために不受理申出を市町村役場に提出しておきましょう。
不受理申出を出しておけば、配偶者が勝手に離婚届を提出しても受理されなくなります。
不受理申出は相手の署名は必要ないため、離婚の動きを感じたら念のため提出しておきましょう。
離婚したくない人の奥の手と言われているのが円満調停です。
円満調停とは夫婦の関係が悪化した場合に、関係改善を目的に行う調停のことです。
離婚調停では離婚の取り決めを行いますが、円満調停では夫婦関係を続けるための条件を話し合います。
円満調停は裁判所で行うため、別居中でも相手と話し合いができるところが大きなメリットです。
落ち着いた環境で話し合いができ、ベテランの調停委員が立ち会ってくれるので話がまとまりやすい点も見逃せません。
調停での取り決めに法的拘束力はありませんが、お互いの真意を確かめ歩み寄る機会になるのは間違いないでしょう。
離婚回避のたまに何をすればいいのか分からない場合は離婚カウンセラーに相談してみてください。
名前だけ聞くと離婚をサポートするように感じますが、実際は夫婦関係を改善させ離婚を回避することを目的とするケースが多いです。
離婚カウンセラーに相談すれば配偶者とこじれた原因を突き止め、関係を修復するために何をすべきなのか教えてもらえるでしょう。
失った信頼を取り戻すヒントが見つかる場合もあります。
相手が離婚事由に該当するような行為をしておらず、離婚を望む理由が分からない場合は離婚カウンセラーに、ぜひ相談してください。
1人で悩むのが一番よくありません。
代表的な離婚トラブルごとの離婚回避のポイント
ここからは具体的な離婚トラブルを取り上げて、その状況における離婚回避のポイントを解説します。
離婚に発展することが多いトラブルの対処法を確認して、問題が発生した際に迷わず行動できるようにしましょう。
夫婦が相手の同意を得ずに家を出て行ってしまった場合、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
相手が離婚事由に当たる行為をすると離婚が難しくなるため、すぐ離婚の危機に陥ることはありません。
無理やり連れ戻すといった安易な行動をせずに落ち着いて対処しましょう。
ただし別居が長期間続き、お互い生活に困っていない場合は婚姻関係が成立していないことが認められる危険性があるため、相手と連絡を取って話し合いをしてください。
相手が応じない場合は共通の知人や弁護士に頼りましょう。
配偶者が不倫をして不貞行為に及んだことが明らかな場合、相手は有責配偶者となるため裁判で離婚できなくなります。
事実上、相手は離婚する術を失うため、当面は離婚のリスクが無くなります。
しかし、不倫は結婚相手への不満が引き金になっていることもあり、その場合は離婚のリスクがくすぶり続けることになるでしょう。
配偶者が不倫をしていると気づいたら、すぐに興信所に依頼して証拠を集めてください。
不倫に気づかれると証拠をつかまれないように慎重に動くようになります。
調査期間が長引けば、それだけ費用がかかるでしょう。
調査と同時に関係改善にも取り組みましょう。
2人だけで話し合うよりも離婚カウンセラーなどに仲介してもらうことをおすすめします。
自分が不倫した場合、離婚については配偶者の判断にゆだねられるため、真摯に謝罪して不適切な関係を即座に解消しましょう。
家庭内別居になる頃には夫婦の信頼関係が壊れており、家計も別で相互扶助が成立していない場合も少なくないため、いつ離婚の話が持ち上がっても不思議ではない状況です。
子供のことや世間体の問題がかりそめの夫婦関係を維持しているだけなので、話し合いも満足にできません。
厳しい状況で離婚を回避するためには第三者の存在が重要になります。
夫婦関係の改善に実績のあるカウンセラーに2人で相談する、もしくは弁護士に相談したうえで関係改善を目的とした別居をするなど環境を変えて、お互いのストレスを解消することが重要です。
一時的な激情で離婚を迫った、もしくは迫られた場合は気持ちを落ち着かせるために、すぐその場を立ち去りましょう。
自宅で言い争った場合は簡易宿泊などで数日過ごしましょう。
その際はLINEなどで自分の居場所を知らせることを忘れないでください。
気持ちが落ち着いてきたらケンカの原因について自身に顧みるべきところがないか考えましょう。
自身にも何かしら問題点があるはずです。
自身の過ちを認めることで交渉で熱くなりにくくなります。
それから相手に電話をして、話がしたいことを伝えましょう。
離婚を避けたいなら絶対にしてはいけないこと
離婚を避けたい人が絶対にしてはいけないことがあります。
もしやってしまったら離婚回避が難しくなるでしょう。
実はこれまで紹介した対処法の中にも、考え無しで行うと危険なものがあります。
- 離婚の申し出に同意する
- 別居の提案に応じる
- 親に相談したり相手の説得に協力してもらう
注意が必要な行為について確認して、判断を誤らないようにしてください。
相手の離婚の申し出に同意して離婚届に署名すると離婚が成立します。
一度成立した離婚を取り消せるのは、相手に脅迫された場合かだまされて離婚届に署名した場合のみです。
相手の強気な態度に負けたくなくて署名したケースでは脅迫や詐欺と判断されることは難しいため、離婚を無効にできません。
相手の挑発に乗って離婚届に署名するのは避けましょう。
また、裁判所で行われる離婚調停で安易に離婚に同意するのも危険です。
離婚に同意したことが調停証書に書かれると法的拘束力を持つので、離婚回避が不可能になります。
別居が解決策になると前述しましたが、配偶者が離婚を強く希望する場合に別居の提案に応じるのは危険です。
別居が長期間続くと離婚事由として扱われる危険性があります。
こちらが離婚事由に当たる行為をしていない場合、同意の無い別居は悪意の遺棄に該当する可能性があるため、配偶者は身勝手な別居はできません。
しかし、別居に同意してしまい、そのまま5年以上別々に暮らした場合は婚姻関係が破綻していると判断される危険性があります。
別居は関係改善を目的としたものだけに応じるようにしましょう。
できれば弁護士や夫婦カウンセラーに相談したうえで行ってください。
配偶者に離婚を申し出された場合に、自分の親に相談するのはおすすめできません。
親は常に子供の見方であるため、親と子で配偶者を責めるかたちになりかねません。
ただでさえ相手に対して苛立ちや不信感を抱いている状態で、相手の親からも責め立てられると関係は絶望的に悪化します。
相手を説得する際は味方を増やしたくなりますが、離婚回避に関しては慎重に人選をしてください。
配偶者が信頼している人の力を借りるようにしましょう。
離婚回避に成功した事例
ここからは離婚回避に成功した事例を紹介します。
離婚を強く望む相手に対して、どのような接し方をして気持ちを変えさせたのか、離婚を取り下げた後の夫婦生活はどうなったのかなど、気になるポイントを確認していきましょう。
夫であるHさんは夫婦で大切していた共有財産を誤って失ってしまいます。
そのことを聞いたHさんの妻は怒りが収まらず別居してしまいます。
そしてしばらくすると離婚を請求されました。
Hさんは弁護士に相談し、妻に謝罪の手紙を送ることを提案されます。
他に有効な手段が思い浮かばなかったHさんは提案に従い手紙を書きます。
弁護士は手紙を何度も推敲し、妻の心に響く仕上がりになったところでHさんは手紙を妻に送りました。
手紙の効果で妻の態度は軟化します。
面会交流を兼ねた日帰り旅行が実現し、交渉を重ねた結果、離婚を回避できました。
妻のGさんは夫と相性が悪く、結婚5年目で離婚の危機をむかえます。
ある日、夫から離婚しないかと言われました。
Gさんは離婚する気はありませんでしたが、夫に対して腰が引けた態度は取れず了承します。
しかし、離婚の話を聞いた両家の両親がこれに猛反対。
Gさん夫婦はなんとか両親の説得を試みますが、逆に別居をして様子を見たらどうかと嗜められます。
Gさんの夫は離婚を諦めきれず、別居後も離婚に向けた話し合いを続けますが、途中から面倒になりお互い疎遠になります。
それから4年の月日が経ち、両者ともに気持ちが落ち着いて、月に数回は子供連れて3人で食事するまで関係が改善しました。
妻のTさんと夫は浪費癖があり、夫と共働きにもかかわらず家計はいっこうに楽になりません。
お金が足りないことについて夫婦それぞれが相手を非難する日々が続き、嫌気がさした夫が離婚を切り出します。
Tさんはお金のトラブルで離婚したら後悔することになると感じ、夫に引っ越しを提案します。
住んでいる家や場所を身の丈に合っているものに換えて、生活を立て直そうとしました。
引っ越しの効果はTさんが予想していた以上のものでした。
固定費のうち多くを占める住居費が大きく下がっただけでなく、人間関係が変わったおかげで交際費も以前に比べて目に見えて減少して、生活の負担が軽くなります。
夫がゴルフ仲間と疎遠になるといったデメリットもありましたが、それを乗り越えて家計が楽になり、夫婦がいがみ合う回数は大幅に減りました。
引っ越し以降、離婚の話が持ち上がったことは無いそうです。
弁護士に離婚回避を依頼すべき理由
離婚回避には法律に詳しい弁護士の支援が欠かせません。
相手が入念に準備したうえで離婚しようとした場合、それに対抗するには正しい法律知識が必要です。
弁護士に依頼するメリットを確認して、必要な時は迷わず支援をお願いできるようにしましょう。
配偶者に離婚を取り下げてもらうには、離婚を決意した原因や動機を見極めることが重要です。
離婚調停や離婚裁判を扱うことが多い弁護士は、依頼者の話から相手がなぜ離婚したがっているか原因を特定してくれるでしょう。
さらに、これまでの経験から適切な対処法を提案してくれます。
離婚回避のために取れる選択肢が豊富な点も魅力です。
夫婦間の相談から調停、裁判などのケースで立ち合いや相手との交渉を任せられます。
別居している場合、配偶者と話し合おうとしても応じてもらえないこともあります。
関係がこじれたケースでは弁護士が代わりに交渉することで難しい状況を打破できる場合があります。
冷静なやり取りができるため、相手も要求を主張しやすいでしょう。
また、相手に問題がある場合は弁護士が指摘することで聞き入れてもらいやすくなります。
法律に詳しい弁護士の指摘ですから聞き流すことは難しいです。
配偶者がどこに住んでいるのか分からないケースでも弁護士は活躍してくれます。
人探しを依頼できる弁護士事務所もあるので、突然出ていった相手と交渉する場合はとくに頼りになるでしょう。
不倫をして不適切な関係を持った場合などは、誤魔化すことなく離婚回避が難しいことを教えてくれます。
離婚を避けられないケースでは協議や調停にどれだけ力を入れても裁判で離婚が認められるため、早期に頭を切り替えて離婚によって深刻なダメージを受けないように対応する必要があります。
弁護士のサポートがあれば財産分与や親権などの争点で優位に立てるものが何か明確に分かるため、離婚後の生活を見据えて対策を立てられるでしょう。
離婚の影響を最小限に抑えられます。
まとめ:離婚回避は原因を特定して配偶者と向き合うことが大切
離婚を回避するためには配偶者に離婚を決意させた原因を特定しましょう。
相手が離婚事由に当たる行為をしたと証明できれば離婚を避けられますが、根本的な問題を解決できなければ離婚問題が再発する可能性があります。
小手先のテクニックに頼るよりも、配偶者とよく話し合って相手の悩みや不満を解消するよう向き合うことが大切です。
関係が悪化して会うだけでお互いに怒りを感じる場合は、弁護士に仲介をお願いしましょう。
こちらの要望と相手の心情を配慮して妥協点を見つけてくれるので、離婚回避につながります。