親権トラブルに強い弁護士の選び方と親権獲得までの手続きの流れ
子供の親権を手放したくないと考える親御さんは大勢います。調停や裁判となれば親権を得るために弁護士に手続きや交渉を一任するケースも少なくありません。
そこで今回は親権トラブルに強い弁護士の選び方を解説します。
親権を獲得するために何をすべきか、裁判では何をアピールすべきかなど実績的な内容を広く取り上げます。
親権獲得までの流れや、親権トラブルの相談窓口についても触れるので、親権を確保したい方は、ぜひ参考にしてください。
まずは親権に関する基礎知識を確認しておきましょう。
親権の目的は何なのか、親権を持つことでどういった権利が与えられるのかなど基本的なところを把握してください。
身上監護権や財産管理権といった親権に関連性の強い権利の詳細についても学んでおくと、親権に関する理解が深まります。
親権とは18歳以下の子供を持つ養育者に認められている複数の権利のことです。子供の利益を保護し、養育者が子供の監護と財産管理をスムーズに行えることを目的としています。
この権利は子供の利益のために行使するのが原則で、親権者の都合で乱用していいものではありません。
親権が問題になるのは夫婦が離婚する場合です。婚姻関係が維持されている間は夫婦それぞれが親権を共有しますが、離婚する際はどちらかが親権を単独で保有することが法律で決まっています。
離婚において親権が争われるのはそのためです。親権を相手に確保されると、それまで認められていた子供に対する権利を行使できなくなります。
また、離婚届けには離婚後の親権者を記載する項目があるため、親権者を曖昧にしたまま離婚することはできません。
離婚をしたいなら親権をどちらが持つか明確にする必要があります。
親権で認められている権利について解説しましたが、ここではその内容をより詳しく見ていきましょう。
親権では子供の監護と財産管理に関する権利が認められていると先述しましたが、それらは身上監護権と財産管理権として法律に定義されています。
それぞれどのような権利なのか見ていきましょう。
身上監護権には子供の監護に必要な権利と、子供の権利が保護されるための親の義務が定義されています。
身上監護とは簡単に言うと「子供の世話」のことで、この権利を持っていれば子供の面倒を見ることができます。そのため必然的に子供と一緒に暮らすことが認められます。
それと同時に子供の心身が健康的に維持されるよう配慮し、適切な教育を受けさせる責務も負います。
子供の世話以外にも次の権利が認められるので一緒に覚えておきましょう。
- 居所指定権(子供が住む場所を決められる)
- 懲戒権(しつけの内容を決められる)
- 職業許可権(子供の仕事に関する決定権)
なお、最近では監護という言葉に子供の権利をないがしろにするニュアンスがあると考える人も多く、身上監護を身上の保護と呼ぶこともあります。
財産管理権は文字通り子供の名義の財産を管理する権利で、法定代理権の1つです。子供の財産をどのように保存するのか、また処分するのかを子供に代わり決めることができます。
財産管理権は子供が持つ財産全てが対象です。子供が親から受け継いだ遺産に関しても管理できます。しかし、子供の財産を好きにしていいわけではありません。
身勝手に子供の財産を使い、子供が不利益を被るような管理は認められません。
また、財産管理権には子供の仕事に関する内容も含まれています。
なお、子供が仕事をして得たお金は子供の同意なしに親権者が受領することができません。
多くの場合、夫婦双方が親権を欲しがります。話し合いで解決しない場合は裁判所に調停や裁判を申し立てることになるため弁護士のサポートが欠かせません。
しかし、現在の弁護士は専門分野の細分化が進んでいるため、親権獲得で力を発揮してくれる弁護士を選ぶことが重要です。
これから弁護士選びのポイントを解説するので、始めて弁護士に依頼する方は参考にしてください。
まず最初に確認すべきことは弁護士の実績です。調停や裁判で親権を勝ち取った経験が数多くある弁護士を選びましょう。
弁護士の実績は公式サイトに記載されている受注件数を参考にしてください。親権に関する記載が無い場合は離婚に関連した実績を確認しましょう。
離婚裁判や調停では親権についても争われるため、離婚裁判を頻繁に扱っているなら親権について詳しい可能性があります。
実績を重視するなら年齢にも注目してください。一般的に20代の弁護士よりも30代・40代のほうが実績があります。
また、人生経験も豊富なのでアドバイスがより適格なところも魅力です。
離婚裁判や調停を数多くこなしている弁護士を見つけた場合、次に気になるのは弁護士が得意としているジャンルです。
借金問題や相続トラブルなど弁護士が取り扱う案件の種類は多岐にわたります。
親権関連の案件を数多く受注しているだけでなく、親権獲得が得意分野である弁護士にお願いしましょう。
ただし親権獲得を得意とアピールする弁護士は多くありません。見つからない場合は離婚調停や離婚裁判を強みとする弁護士を探してください。
離婚手続きは多くの場合、定型的な処理を行うため、離婚問題の解決が得意な弁護士であれば親権獲得にも慣れている可能性があります。
先述したとおり親権には監護権などの複数の要素があるため、どういった方針で親権獲得を目指すかは状況によって異なります。そういった細かな違いを正確に分かりやすく説明してくれる弁護士を見つけてください。
説明が分かりにくい弁護士はコミュニケーション能力が低いことも少なくありません。
依頼者の状況を正確に把握できないため、依頼者と配偶者の監護の程度を見誤ることもあるでしょう。そのせいで親権を諦めることになる危険性があります。
弁護士のコミュニケーション能力が判断できない場合は、法律事務所などの無料相談を活用して実際に話してみてください。
法律事務所を変えながら何度か相談すれば、弁護士ごとに意思疎通の能力に違いがあることが分かります。
親権を獲得できるのは離婚時と、離婚後に親権者が子供にDVをするなどの問題を起こした場合のみです。
まずは離婚時に配偶者と親権を争う場合の流れについて解説します。
親権を獲得するには協議・調停・裁判、いずれかの方法を利用する必要があります。
それぞれの方法の特徴と注意点についても確認してください。
配偶者と1対1で話し合いができる状態であれば、2人で親権について話し合うところから始めてください。
話し合いは離婚協議に該当するものであるため、親権だけでなく離婚に関連する様々な事柄を取り扱うでしょう。
後日トラブルが起きないように相手の合意のもとレコーダーを用意したり、第三者に立ち合ってもらうなどの対策をしてください。弁護士に依頼して話し合いを見届けてもらうのも賢明な判断です。
話し合う内容は主に子供に関してです。離婚における親権問題は子供の負担を軽くすることを重視して行われるのが原則です。
子供のことを考えながら次のことを話し合いましょう。
- 離婚後に子供が住む場所
- 離婚後の子供の生活環境(1人で過ごす時間が増えないかなど)
- これまでにどれだけ子供の面倒を見たか
- 子供の面倒を見る意欲はあるか、実際に面倒を見られるのか
これらについて話し合う目的は、どちらと一緒に暮らしたほうが子供の負担が少なくなるか明らかにするためです。
親権を争う裁判では子供が受ける負担を重視して判決が下されます。より子供が負担なく幸福に生活できるのはどちらか冷静に話し合いましょう。
どちらが親権者になるか決まったら、離婚に関する他の条件についても話し合い、離婚条件がまとまったら、その内容を公正証書に残します。
その後、離婚届を市町村役場に提出すれば親権者が確定します。
夫婦のプライベートな話し合いで親権者を決められなかった場合は家庭裁判所に離婚調停の申し立てをします。
離婚調停が夫婦だけの話し合いと大きく違うところは仲介人がいることです。
夫婦は別々の部屋に案内され、仲介人である裁判所のスタッフの質問に答えるかたちで配偶者と離婚や親権について話し合います。仲介人は夫婦の主張を記録し、担当の裁判官にも伝えます。
離婚調停でも夫婦が互いに自分が親権者に相応しい理由を主張します。調停を繰り返し、夫婦が離婚条件について合意できれば調停成立です。調停調書が作成され、親権者が決定します。
調停を何度やっても親権者をどちらにするか合意できない場合は離婚は不成立となり、調停は終わりです。
調停中に担当の裁判官が審判を提案することもあります。審判は裁判官が夫婦と仲介人の話を聞いて、離婚の細かな条件を決め、その内容を夫婦に伝えます。
審判の結果は審判書に記載され、そこには親権者も書かれます。
調停で親権者が決まらなかった場合は裁判で親権を争います。協議や調停と異なり、裁判では最後に判決を下すため、親権者が決まります。
裁判ですることは主に事実の主張です。なぜ自分が親権者として相応しいのかを、監護実績や今後の子供の生活環境などを根拠に裁判官にアピールします。主張を裏付ける証拠の提出も重要です。
裁判官は夫婦2人の意見を聞き、証拠を精査して、どちらが親権者に相応しいか判決を下します。
判決内容に双方が納得すれば親権者が決定しますが、どちらかが控訴した場合は高等裁判所で再度親権が争われます。
離婚した後に親権者に問題が生じて継続的に子供の面倒を見れなくなった場合や、育児放棄といった親権者にあるまじき行為を親権者が続けたケースでは親権者を変更するために調停や審判を申し立てることができます。
なお、親権者が亡くなった場合も、同様の手続きが必要です。自動的に親権者が切り替わるわけではありません。
親権者変更の申し立ての手順は次のとおりです。
- 家庭裁判所に親権者変更の調停もしくは審判を申し立てる
- 親権者の変更認められたら市町村役場に調停証書か審判書を提出する
親権をめぐる裁判では裁判官に自分のほうが親権者として相応しいと印象付けることが重要です。
裁判官は親権者を決める際にある基準を用いて原告と被告を評価します。
この評価のポイントを把握して、親権者に選ばれる条件を1つでも多く満たすようにしましょう。
それまで面倒を見てきた養育者を変更すると子供に大きなストレスを与え、健全な心身の養成に悪影響を及ぼすことがあります。
そのため暴力やネグレクトといった問題行動がなければ、離婚後も引き続き同じ養育者が面倒を見たほうが子供は安心します。
裁判所がこの考え方を親権者を決める判断基準のひとつにしていると言われることもあります。
実際、親権をめぐる裁判においては、それまで面倒を見てきた者に親権を認められる傾向があるため、無視するのは危険です。
子供の食事や健康のケアといったお世話を普段からしている場合は、裁判で親権者として評価されやすいでしょう。
子供の意見も裁判官の判決に影響を及ぼす場合があります。子供のことを考えるなら、一緒に暮らしたい相手を親権者にすることが望ましいと考えるのは自然なことです。
実際に家庭裁判所で行われる離婚裁判では子供に意見を求めることもあります。しかし、子供の意見は参考程度に留められる場合が少なくありません。
とくに子供が小さい場合は判断が直前の出来事に影響されやすいため、子供の意見だけで決めるのは危険です。
一般的に、子供の年齢が高くなるほど判決に与える影響が大きいと考えられています。10歳以上の子供の意見は裁判を左右する可能性があります。
15歳以上になると裁判で陳述を求められるため、明確に影響力があると言えるでしょう。
親権を得るには子供との信頼関係が重要になります。
子供が複数いる場合、兄弟姉妹は可能な限り同じ場所で暮らすべきとする考え方が一般的です。
両親の離婚に加えて、兄弟が離れ離れになると子供たちが受ける精神的な衝撃は計り知れません。年上の兄姉を慕っていた場合、頼れる相手が1人減ることにもなります。
この兄弟不分離の原則は裁判においても考慮されると考えられます。
兄弟姉妹が離れることを嫌がっている場合は、全員を引き取って養育できる経済力を持った相手が親権者として評価される可能性もあるでしょう。
しかし、実際の離婚裁判では兄弟それぞれが別の親と暮らすことになるケースもあります。
子供の意向が重視されたケースではその傾向が強いです。
初めて親権を争う場合や、親権トラブルが起きた時に相談できる専門家を知っていれば心強いです。
法律関連のサービスを利用したことが無い方でも手軽に利用できる相談窓口をいくつか紹介するので、親権のことで何か気になることがあれば話を聞いてもらいましょう。
専門家に話を聞いてもらいたいけれど高額な相談料を支払う余裕がない場合におすすめなのが、自治体が提供している無料の法律相談です。
利用できるのは地域の住民に限られますが、親権問題はもちろん、離婚に関連するトラブルなら何でも相談できます。
自治体によっては開催期間が限られていたり、相談できるジャンルが限定されていることがあるので、事前に対応できる相談内容を問い合わせた後に申し込むようにしましょう。
法テラスは法務省が幅広い人に法律サービスを提供するために設立された機関です。誰でも3回まで無料の法律相談を受けられます。
相談できるのは法テラスに所属している弁護士に限られるため、多くは地元で活動する弁護士が担当することになります。
離婚や親権問題は地域ごとに特徴が異なる場合もあるため、地元の事情に詳しい弁護士の助言は地域事情を反映した役立つものになるでしょう。
また、法テラスは経済的に余裕が無い人に向けた安く弁護士に依頼できるサービスも提供しています。
自治体や法テラスの無料法律相談は担当してくれる弁護士を自由に選べないため、親権や離婚問題に詳しくない弁護士が担当に選ばれることもあります。
親権を何としても獲得したい場合は、離婚問題に強い弁護士に最初から相談することが大切です。親権獲得に向けた具体的な道筋や、現在の状況から課題を的確に教えてくれます。
親権者となるために選べる手段や、かかる費用、親権者になれる可能性についても話を聞けるでしょう。
相談後に協議や調停といった具体的な行動を取る場合は、すぐに弁護士と契約してサポートを受けられるのも魅力です。他の相談窓口を利用するよりも迅速に行動を起こすことができます。
親権獲得には離婚にまつわる様々な問題が絡むことが多々あります。
数多くのトラブルに対処してきた実績ある弁護士に早い段階で助力してもらえば、スムーズな問題解決につながるでしょう。
親権を獲得するためには弁護士の力を借りるのが一番です。これから弁護士に親権問題の解決を依頼した場合に受けられるメリットをお伝えします。
なぜ弁護士が親権獲得に欠かせない存在なのか確認してください。
家族を支えるために仕事人間を続けてきた場合、どうしても子供の世話を配偶者に頼ることになります。
裁判では子供の世話を見てきた者を親権者とする傾向が強いため、毎日を仕事に費やしてきた人が親権を獲得するのは難しいです。
状況が厳しい場合、弁護士の支援があれば親権の代わりに監護権の獲得を目指すこともできます。
監護権があれば離婚後も子供と一緒の暮らしができるので、子供の顔を見るのが生きがいの方には十分魅力的でしょう。
親権を完全に相手に取られてしまった場合でも、面会交流権を取得できれば離婚後にも子供と定期的に会えるようになります。
自分の子供に会うのに権利が必要なのはオカシイと感じるかもしれませんが、親権者が元配偶者と子供が会うことが子供に悪影響を及ぼすと考える場合、状況によっては面会を制限することができます。
弁護士のサポートで協議や調停で面会交流権を得ることができれば、子供と正式に会えるようになります。公正証書や調停調書に面会交流について記載があれば、元配偶者から不満が出る心配もありません。堂々と子供に会えるでしょう。
親権獲得のためには数多くの関連手続きを正確にこなし、調停や裁判で適切に対応する必要があります。これらの作業を法律知識に乏しい一般の方が行うのは大変な苦労を伴うでしょう。弁護士に依頼すれば、負担の大きな作業を全て一任できます。
複雑な法律関連の手続きと言っても、ほとんどは定型的なものなので慣れてしまえば迅速に対処可能です。年間に何十件と離婚関連の手続きを行っている弁護士なら、滞りなく必要な処理を済ませてくれます。
さらに配偶者との交渉や、調停における仲介人とのやり取りも任せられます。
親権についてより詳しくなるために、親権獲得を目指している人や親権トラブルで困っている人がよくする質問とその答えを確認しましょう。
誤った認識を正すことにもつながるので、親権について正しい知識が欲しい方は、ぜひチェックしてください。
- 親権と監護権ではどちらが強い権利ですか?
- 監護権(身上監護権)は親権に含まれる権利の1つであるため、どちらか一方が優先されることはありません。
親権トラブルが起きた際に、親権と監護権を比較することがありますが、これは監護権だけを親権から分離させて非親権者に渡す場合があるためです。
本来、親権者は監護権も持つのが普通ですが、仕事や生活環境のために子供の面倒を適切に見れないことがあります。
その場合、監護権だけを元配偶者に引き渡します。
この場合、親権と監護権は独立しているため、権利の衝突が起きることはありません。
それぞれの権利を所有する者が、その権利を行使できるだけです。
監護権を持っていれば子供と一緒に住めますし、親権があれば子供の財産管理ができます。
監護権が親権から分離されたら、それぞれ異なる権利になるので混同しないよう注意しましょう。
- 親権に制限をかけられますか?
- 離婚の条件として親権に含まれる一部の権利を行使しないよう制限をかけることはできません。
親権を相手に渡す代わりに財産管理権や代理権に制限をかけたり、親権者の変更に関して新たな条件を加えることは認められません。
そういった内容を公正証書に記載できたとしても、法的拘束力を持たせることはできません。
親権の内容は法律に従うのが原則です。
無効な制限を交渉材料にするとトラブルを引き起こすため、相手が親権に手を加えようとしたら注意しましょう。
親権は離婚する際に争われるため、離婚問題を得意とする弁護士がおすすめです。離婚には親権以外にも財産分与や慰謝料といった様々な争点が絡み合います。
数ある離婚条件から相手が望むものを見定め、交渉を有利に進めらえる経験豊かな弁護士に依頼しましょう。
また、親権の獲得が難しい場合には面会交流権の獲得や、監護権の分離といった方法で子供との接点を確保することも重要です。親権に関する知識と柔軟な対応力を持つ弁護士なら、状況にあわせて上手く対処してくれます。
親権の獲得は離婚手続きと同時に行うのが原則です。夫婦の話し合いで親権者を決めることが多いですが、4割は裁判所の調停もしくは裁判で決定します。
法律知識が欠かせない手続きが数多くあるため、離婚の意思が固まったらすぐに弁護士に相談して、親権獲得に向けて動き出しましょう。